ブリジストンの工場正面から垂直に延びる通りを行くと西武線の踏み切りがある。
それを渡り右手のファミリーマートの側の道を進むとすぐ栄湯がある。すぐ隣に軽トラックが駐車されており、裏にたくさんの廃材が見える。
建物は宮造りではないものの切妻屋根の下に木の飾りがある。
暖簾を潜ると松竹錠の傘入れ。そして左右におしどり錠の下足入れがあるが、なぜか右手の男湯側の下足入れは横に伸びる形で108あり、その前が畳1.5畳程のちょっとしたスペースになっている。
女湯側は外壁側に下足入れが並ぶ通常のタイプ。所々番号が消えてしまっており、ひなびた雰囲気が漂っている。
引き戸から中へ。
眼鏡の女将さんが番台にお座りになられている。
湯賃をお渡ししようとすると財布に万札しかなかったのでお釣りを貰うのも悪いかと思い、回数券を購入した。
島ロッカーが一列、天井が高く開放的な脱衣場だが格子にはなっていない。
外壁側には縁側が広がっている。しかしすぐコンクリートの壁があり、趣はない。
お手洗いは縁側から右手へ。驚くことにたてつけがかなり悪く、木戸がなかなか開かない。開いたと思っても、今度は閉めることができない。コツをつかむには時間が必要だろう。
トイレは和式で清潔。タイルが輝いている。
縁側にはお釜式ドライヤーが置かれている。現役を引退したのだろうか。
あとSANYOの洗濯機もあるが、こちらは電源も入っていて現役のようだ。
あと脱衣場にはTANAKAの大きめのアナログ体重計がある。
さてパパッと服を脱ぎ浴室へ。
中はかまぼこ型天井。
お客は二人ほどと少々寂しい。ちなみに訪れた時間は土曜の夜、7時ほどだ。
島カランは一列で外壁より6-5-5-6。女湯境側の列は全てに仕切りがしてあり、全てがホース付きのハンドシャワーになっている。そのうち一つに立ちシャワーが一基あるが、椅子を置けば独占できてしまう感じだ。
カランを確保し体を洗う。
体を洗いながら天井を眺めるが、所々黒ずみがあり、昭和の足跡を感じる事ができる。女湯境の壁の上あたりをギザギザに4つ、30cm四方くらいの穴があいている。湯気抜きがしっかりされているのだろう、かまぼこ型ながら湯煙はほとんど生じていない。
さて浴槽へ。
浅く広い浴槽が一つと、深い浴槽が一つ。典型的な東京銭湯の構成。どちらもバイブラでぼこぼこと景気よく泡立っている。
まずは浅い方から。
ミクロバイブラのスペースと座ジェット二基が設置されているスペースがある。
ミクロバイブラの湯に浸かる。
湯温は42℃ほど。足を伸ばしてもつっかえる事ない広い浴槽だ。座ジェットには水枕も完備され適度な冷たさ。しかしながら高さがおかしい。背もたれに背をもたげても水枕に頭が届かず。結局最後までベストな体勢を探し当てる事ができなかった。
続いて深風呂へ。
湯温は期待するほど熱くなく、42℃ほど。それもそのはず下で浅風呂とつながっている。どちらかといえばミクロバイブラ付近の方がアツ湯であった。
深さがかなりあり、想像するよりも5cmほど深いので平均的東京銭湯の深風呂の深さを若干上回っているのではないかと思う。
こちらより背景を拝む事にする。
(瀬戸内海) 19.1212
と書かれている風景。離れて小島がポツポツと浮かび、ヨットもある。岩の淵の描き方、民家の几帳面なディテールを推し量るに丸山氏のものではないかと思われる。
女湯境の壁が低めなのと、背景の高さがあることもあり、立ち上がって女湯側を見る事もできるが変わらず瀬戸内海であった。
背景の下には広告スペースもあるが、水色のペンキで塗りつぶされ広告は一件も貼り出されていない。
主体として描かれている対象物がない背景であるが、丁寧に描かれている為心が清らかになるイメージ。二年前に描かれているがすでに全体的に剥げている部分が多い。残念な事だが年月を重ねるというのはそういう事だ。じっと受け入れるしかない。
肌に優しくなじむ湯を堪能し、上がる事にする。
脱衣場で服を着ながら縁側を見やる。庭があって初めて意味があるはずの縁側だろうに、悲しいかな壁しか見えない。その昔はおそらく庭があったのだろう。人間は想像という武器がある。しばし恋の泳ぐ池、手入れのされた庭を作り上げ、失われた銭湯の過去に憶測の触手を伸ばしてみた。
全体的に昭和の香を強く感じる事ができた銭湯。ひなびた雰囲気、宮造りではないが趣は十分に感じる事ができる銭湯だ。次にいく時は厠の戸を開けるのもうまくなっているかもしれない。また近くに来たら寄る事にしよう。
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