今日は足立区へ。
タカラ湯に行こうかなと思っていたのだけど、300m離れた駐車場が満車になっていた為、今日はやめたと適当に道を走っていると出会った銭湯、緑湯。
唐破風屋根が左右の大木の間から見える。昭和の香りがすでに漂ってくる。
近くのコインパーキングに車を停め、裏手から緑湯に向かって歩く。
ロケット型の煙突が2月に澄み渡った青空に一直線に伸びている。
近くには新しい大型マンションも建っているけど、この銭湯の周りだけは昭和の香りが今もなお漂っている。煙突の付け根の当たりに廃材の山があって、やけに小さな木片なんかもばらばらと無造作に置かれている。
季節的に乾燥しているから火の元には気をつけて欲しいところだ。
正面に周り、竹が描かれた垂れの短い紺色の暖簾を潜る。
正面に傘たて。 右手が男湯になっている。
松竹錠の下足入れに靴を預け、木札を手に取る。
湯客はさほどでもないはずだが、差し込まれている木札は残り少ない。
引き戸を開き中に入ると番台には親父さん。
一本くゆらせていたようで少々煙たい。
湯賃をお渡しすると明るく「はい、いらっしゃい」。
接客は良さそうである。
脱衣場の天井は高く、格天井。折り上げ式でかなり急な折り上げになっている。
色は焦茶色でくたびれた感じを出している。これは白壁も同様でさびれた雰囲気をよりいっそう盛り上げている。
島ロッカーが二つ置かれている割に広々とした床スペース。幅広な銭湯である事が伺える。脱衣場に湯客は1人。これからお入りになられるようである。
私もロッカーを一つ確保しパパッと服を脱ぐ。
体重計は小豆色のアナログ式で、KEIHOKUのもの。
用賀の藤の湯にも同じタイプのものがある。
その他広告や区のちらしなどまったく貼られていない渋い壁面。シンプルであり、なおかつ鄙びている。一つ、朝日新聞のブリキ看板はあった。
浴室に入るとさらに空気がずっしり重たくなっている。
女湯境壁上と外壁側、脱衣場側に2本ずつある蛍光灯だけの灯りに照らされた浴室は、その高い二段式天井の天頂部分まで十分に届かずに、天井が思っている以上高い位置にあるように見える。
遺跡に一歩足を一歩踏み入れたかのようだ。
カランは女湯境の壁側から7ー6□6ー7(ーは通路、□は島)。島カランにはシャワーなし。
一つを確保ししっかり身体を洗う。
シャワーの取っ手がゲームセンターの筐体についている操作レバーのようなもの。手にしっくりなじみ扱いやすい。
カランの湯もシャワーの湯もぬるめ。
床のタイルが楽しい。
おむすび型や丸形のランダムなサイズのタイルに加え、カニの形、あさり、しじみ、はまぐりといったタイルもまざっている。低い位置でのこういった演出は小さな子供に大変ウケる事だろう。
女湯境壁にはよく見る西洋の湖畔風景、レンガ建築の民家がいくつか立ち並ぶチップタイルだ。
さて浴槽を巡る。
こちらは三槽式で外壁側から広めの浅風呂、深風呂があって、釜場への扉、そして端に畳一畳分の狭い深い薬湯槽がある。
広めの浴槽は湯温が41℃ほど。肌触りの良い湯で全身が気持ちよさに身震いをする。特に最初に浸かった時の感覚は忘れられない。
ジェットが二カ所から噴出しているが一穴式で勢いも弱め。浴室内にジェット水流の音が漏れ出す事もなく、静かで重厚な雰囲気を邪魔する事なくひかえめでいい感じだ。
続いて深風呂へ。
底で浅風呂とつながっているのでさほど湯温は変わらず。
一般的な銭湯にある深風呂を超越した深さなので気軽に足を入れると驚くはずだ。へりに手を付け慎重に入る必要がある。
こちらから背景をじっくり眺める事にする。
荒々しい筆致、女湯ぶち抜きの広大な富士の絵は故早川氏のもの。西伊豆である。
所々剥がれかけているが、壁の白ペンキがそれ以上に剥がれて黒ずんでいるので全く問題はない。最高だ。
外壁側の磨りガラスにはいくつもの楓の葉っぱが刻まれている。ただの磨りガラスに終わっていない所がいい。そういうデザインに気がついた時も気持ちがいいものである。
最後に薬湯槽へ。
こちらはバスフレンド森林浴の板が貼ってある。
香りはあまりしないが、何よりも湯温が熱め。45℃はある。
気づくと浴室には10人程の湯客で溢れていたが、どなたも入ろうとしない。
確かに熱めだが気合いを入れて湯に浸かる。子供には入れない熱めの湯である。
男湯はお客も増えてきているようだけど、終始女風呂は静か。
時間帯のせいかもしれない(17時頃)。
さて、カランの水を浴びてクールダウンした後、湯から上がる事にする。
番台には女将さんがお座りになられている。
お客とニュースについてお話しされている。私はお手洗いへ。縁側の木が抜け落ちそうになり冷やっとする。畳半分ほどのスペースに和便器が押し込まれている離れにあるお手洗い。電灯も暗くてよく見えない。夜中に来るときっと怖い。
女将さんにどうもと声を掛け家路に着く。
足立区の銭湯はまだまだ訪れていないところが多く、今後が楽しみである。
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