藤の湯を訪れた。
3年住んだ世田谷から引っ越す事になり、常湯としてよく利用させて頂いていた藤の湯ともお別れとなる。お別れというのは大袈裟のようだが、こちらの銭湯は近くに駐車場はないし、駅からも遠い。離れて暮らすとなると気軽には訪れる事はできないわけだ。
訪れたのは午後5時頃、さっそくフロント前では常連だろうか、おじさんと女将さんが語らっている。
藤の湯のサウナは男湯のみ。これまで気になりながらも一度も利用したことがなかったので試してみようと思う。
サウナ料金は300円。
脱衣場からフロントの女将さんへは小窓を開けて用を伝える。
すると黄色いバスタオルを手渡された。
湯客は10人ほど。年齢層は高め。時おり湯客同士の会話が飛び交っている。
時間が遅くなると学生の姿もちらほら見えるようになってくるはずだ。
さてカランを確保し体を洗うことにする。
サウナ用タオルを引っ掛けるとこがないので、カランの上、湯がかからないほど離れた位置に置く。
ぬるめの檜風呂に浸かり、少々温まったところでサウナ室へ。
脱衣場の外壁側に扉があり、そこから中に入る。
中は天井やや高く、しっかりとしたひとつの浴室であった。
壁は幅10cmほどの模様が高さを違えて縞模様を形成している。モダンである。
そして手前に水風呂、二人が入れるほどの大きさ。その隣には円形風呂。しかしこちらには湯は入っておらず、中にもうひとつ、木の浴槽が置かれている。蓋がしてあるので中を覗いて見るが、残念ながら湯は張られていない。
こちらの浴室にはカランもある。5つ並んでいるが水も湯もでない。
サウナ室(と思っていたがつまり一つの浴室であった)に入って右手に進んだところに真のサウナ室がある。
中に入ると床の木材が軋む音、椅子に腰かけた後は物音は一切聞こえて来ない。非常に静かな空間だ。サウナ室を利用する客が少ないと言うこともあるが、何よりも厚い壁に隔たれた浴室の、さらに内側のサウナ室にいるという事がこの静けさを作り出しているのだ。
乾式サウナで温度計は95℃を指している。しかしこれは壊れているんだろう、実際はそんなにはないはずだ。
テレビをはめ込むくぼみもあるが、中には明かりの灯っていないランプと目覚まし時計がある。
その他、特別なものは見当たらない。汗が吹き出し、あまりの静寂に我を見失いそうになる頃、出て水風呂に浸かる。
こちらの水温は12℃と水温計に示されているが、実際はそんなには冷たくはないだろう。
普段利用している藤の湯の浴室とは空気があまりにも異なり、不思議な時間を過ごすことができた。
昔はどんな使われ方がされていたのだろう。
円形風呂が活躍していた頃はどんな状況だったのだろう。憶測を巡らせながら、さらにサウナ室でストイックに体に熱を入れる。
しっかり温まったところで藤の湯を後にする。
新寿湯が廃業となり、それからはずっと藤の湯を利用してきた。これからもいつまでも瀬田の街に湯の香と煙突の情景を残していって貰いたいものである。
街は変わるがいつまでも見守っています。
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