今日は近くの北沢川緑道側にあるコインパーキングに車を停め、歩いて向かう。
入口のすぐ側におじさんが立っており、目の前の通りを行き交う人や車等を眺めたりなどしている。一枚銭湯の写真を撮ろうかなと思うのだけれど、なかなか行ってくれないので諦めて帰りに撮る事にする。
「淡島湯温泉」と書かれた小豆色の暖簾を潜る。
下足入れは珍しく横向きに木札を差し込むタイプ。松竹錠だ。
いくつも並んでいるのに、なぜか右半分が男性専用、左側が女性専用の下足入れになっていて、数字の色も黒と赤に塗り分けられている。番台形式で入口から左右に分かれているのならまだしも、フロント形式なのに分かれているのは変な感じだ。もし女性専用の下足入れに入れたらどうなるのだろうかと思ったけど、多分何も言われないのだろうから試すまでもない。
フロントへの自動扉を抜けると自動音声で「いらっしゃいませ」の声。
3人ほどが座って休めるこじんまりとしたロビースペースがあり、フロントには誰もいない。すると後ろからついてくる人がいる。
さきほど入口で街を眺めていたおじさんである。どうやら銭湯の親父さんだったようである。
湯賃をお渡しすると、下足入れの木札を求められる。
木札を預けると、ロッカーキーを渡される。下足入れの番号と、ロッカーキーの番号が同じであった(たまたまかもしれない)ので、こちらの銭湯に慣れてくれば下足入れを見た時点でどの位置のロッカーが埋まっているかどうかを判断する事ができ、脱衣場で混み合った位置で着替えをしたりする事を避ける事ができるのだろう。
そうなると、下足入れが男湯、女湯で分けられているという事に説明がつく。
駐車場の事をお伺いすると、右手奥の道を進んだ所に一台停められる(もちろん空いていれば)、との事である。
右手の男湯の暖簾を潜る。なぜか男湯も女湯も暖簾の垂れが片方あげてある。
脱衣場はさほど広くはなく、ロッカーが30(こちらも松竹錠)、YAMATOの腰までの高さのデジタル体重計。マッサージチェアなどがある。天井は低めで板張り。特に昔ながらの、といった雰囲気はない。しかし全体的な鄙びた感が昭和を醸し出しており、古い友人の家に遊びにきたような感覚がある。
パパッと服を脱ぎ、浴室へ。
中に入ると感じる静けさ、あと肌寒さ。
湯煙が少なめで、湯客も少ないからだろうか。
天井は二段式になっているが、二段目が狭く、低い屋根部分の面積が多い。
ほぼ白く塗られており、一部分の柱は水色に塗られたりもしている。
カランは女湯境側から7ー5□5ー4(ーは通路、□は島)。立ちシャワーが2基、外壁側に設置されている。
湯客は3人。カランは問題なく確保でき、身体をしっかりと洗い流す。シャワーの出しっ鼻も最初冷やっとする。使っていけば温まるのかと思いきや、止めて、出すたびに冷やっとした。
さて浴槽を巡る。
3つの槽に分かれていて、女湯境側から座ジェット2基、浅風呂、最後に「あつゆ」と書かれた浅風呂である。
座ジェットと浅風呂に湯客がいらっしゃった為、望ましくはないけど最初から「あつゆ」に入る事にした。
淡島湯温泉と謳うだけありこちらの銭湯は黒湯を用いている。3つの浴槽とも黒湯。
あつゆの浴槽は湯温43℃ほど。カランがないので水を足す事ができず、熱めの湯を楽しむにはうってつけである。
黒湯はやや薄い感じで、浴槽の底がぎりぎり見えないくらいであるが、30センチ〜40センチ先までは見通す事が可能である。
「あつゆ」浴槽は壁に湯の吹き出し口があり、こんこんと熱い湯がわき出してくる。
バイブラなどはないが、循環される湯が奥の壁から手前に向かって流れており、壁に当たり跳ね返りの湯にまた流れが当たる事で幾重もの波の模様が連続して美しい。
単なる透明な湯でなく、黒湯であるという事も要因としてあげられる。
さて続いて座ジェットの浴槽へ。
こちらの銭湯で静けさを感じる要素の一つにはジェットの音がしない、という事があげられる。座ジェット浴槽にはボタンが備え付けられており、これを押す事でしばらくはジェット音が浴室に満たされるが、普段は桶の音、カランの音、シャワーの音、くらいなものである。
座ジェットは深めの浴槽になっており、黒湯なので底がよく見えないため注意する必要がある。湯温は41℃ほど、じっくりと黒湯を肌で楽しむ。
さて浅風呂に入る。
こちらも湯温は41℃ほど。3人はゆったり入れる広めの浴槽でのんびり黒湯に浸かる。
背景を眺めると男女ぶち抜きの富士山。やや遠目に描かれた富士の手前側には湖がありヨットが何艇も浮かぶ。中島氏の作品である。所々ペンキは剥げかけてきており、そろそろ新たなペンキ絵を見たくなってきているお方も多いのでは、と考える。
しっかりと黒湯を楽しみ、湯から上がる。
シャワーで水をかけクールダウンするが、内側からぽかぽかと火照った体はなかなか収まってくれない。
源泉の水風呂があれば、とないものねだりをしてしまう。
さて着替えを終え、フロントへ行くと女将さんにお代わりになられており、常連さんとお話をされたりしている。
親父さんがさきほど店先にお立ちになられていたのは、ひょっとしたらお出かけになられていた女将さんがフロント交代の時間になっても帰って来ず、見たいテレビもしくは空腹のため、いらいらしつつ店先で女将さんの帰りを、今か今かと待っていたのかもしれない。
自動ドアを抜けると女性の自動音声で「ありがとうございました」。さほど離れていない三軒茶屋の千代の湯をふと思い出す。
帰りしな一枚。左手にはコインロッカーがある。 |
池尻の静かな住宅街。
北沢川緑道の道も歩くと楽しい。火照った体は11月の夜の散歩でもなかなか冷える事はない。
さて帰っておいしいビールでも飲む事にしようと決意を固め、家路を急ぐ。
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