2009年5月16日土曜日

101.港区南青山 清水湯

以前、訪れたときに建築中であった南青山の清水湯へ。

2009.4.22にリニューアルオープンしたとのこと。表参道にクルマを駐車し、歩いて向かう。
21時過ぎ。食事や遊びの帰り、にこやかに仲間同士で駅までの道を歩く人々。みな服装に気を使い、実におしゃれである。そんな中、私は銭湯へ向かう。

清水湯は青山で創業100年以上の歴史を持つ。
そんな伝統銭湯がどのように改装されたんだろうか。



青山通りより路地に入ると、右手に白いマンションが見えてくる。6階建てのマンションは半地下に駐車場を備え、入居者募集と書かれている。そう、このマンションに清水湯は入っているのだ。マンション名は「ア・コルソ」。



corso(コルソ)とはイタリア語で「軌跡、流れ、様々な経験」などを意味する。清水湯の歴史が凝縮されているように感じるネーミング。

白塗りの壁には「ゆ」という字が象形文字のように変形させて描かれている。
入口までは階段が据えられており、スロープもある。
スロープということは車椅子でも・・と思ったが車椅子で行くには幅が狭いスロープ。飾りとしてみせるデザインとしてスロープを設計したのだろうか。

下足入れに靴を預ける。どこを見てもオープンしたてだけあって綺麗だ。
中に入ると縦に細長いロビースペース。
フロントはバースペースにもなっており、お酒やソフトクリームも売っている。それらのチケットや入浴料はすべて券売機で購入する模様。

券売機は二台あり、入浴グッズもいろいろ販売されている。サウナは別料金550円。
フロントのおばさまにチケットをお渡しし、脱衣場へ。

脱衣場への暖簾もなにやら円形を複数連続させて描かれたデザイン。入口の「ゆ」の文字といい何か統一されたセンスを感じる。

左手が男湯で、中に入るとロッカーが50ほど並んでいる。
フロントで受け取った電子鍵を使いロッカーのボタンを押すと解錠される。使い方が書かれた文字も小さく、爺さまにはわかりづらい鍵だろう。

TANITAのデジタル体重計があり、浴室へのサッシともう一つの浴槽部屋へ窓がついている。こちらの窓は磨りガラスになっており、裸婦と鳥が描かれている。この裸婦の磨りガラスは見栄えがいい。ペンキ絵などはないようだけど、こういった絵を眺めることができるのは入浴中に楽しみが増えるというものだ。

パパっと服を脱ぎ浴室へ。
中は天井が低めだが二段式で高くなっている部分もある。
照明は抑えられているが、湯へのスポットライトが効果的に使われているため天井に水面の反射光が渋く照り輝いてゆらゆらと揺れている。

カランはしきりがついていて椅子も高い。いちいち運ばずともどのカランにも椅子、桶が置かれたまま。カランの数は14。TOTOのもので、湯温も変えることができるタイプでシャワーもうたせ湯にもミスト状にもできる最新式。シャワーもカランも時限式なので数秒で止まってしまう。WAGURIのカランに慣れていると少し使いづらい。しかし最近のスーパー銭湯はどこもこのタイプだから、こちらの方が使いやすいというお方も多いだろう。
水は明らかに軟水。とろみが心地よい。シャワー、カランで少しとろみに違いを感じる。石けんの泡立ちが非常によく、肌も喜んでいるようだ。

体をしっかり洗い、浴槽へ。
入浴スペースは浴室半分を埋めるほどの大浴槽ともう一つ、脱衣場に並んだ形で配置されている二つの浴槽。こちらには引き戸を開けていく必要がある。
まずは広い浴槽から。
手前にミクロバイブラがある。湯温は41℃ほど。
奥にはリラックスジェット、ボディジェット、ハイパージェットという風に書かれている。
リラックスジェットはいわば座ジェット。水枕はないが座り心地がいい。広い浴槽で他にお客も少なかったため、ゆったりと湯を楽しむ。
ボディジェットは強烈なジェット。ゆったりとはしていられないが腰に当てるとマッサージ効果は強力なもの。
ハイパージェットもボディジェットとほぼ同じものだがジェット噴出口の位置が変わっている。

引き戸を開け、もうひとつの入浴スペースへ。
こちらには浴槽が二つあり、「高濃度人工炭酸泉」と「シルク風呂」がある。
まずは「炭酸泉」から。
湯温はやはり41℃ほど。
水中に二酸化炭素を多く含み、皮膚が炭酸ガスを吸収することで血行改善や疲労物質の分解が早まるとのこと。
よく見ると湯は確かに炭酸であり、泡がはじけている。肌触りはやや柔らかいが普通に入浴すれば白湯とさほどの違いは感じられない。長く入ると体の温まりはさすがに違うような気がする。

つづいてお隣の「シルク風呂」へ。
細かいミクロ単位の白い泡が毛穴の老廃物を除去するとのこと。こちらの湯は他の銭湯でも何度か目にしたことがある。例えば清瀬の喜多の湯であったり、杉並の小杉湯などなど。
こちらの浴室は女風呂と天井がつながっており、よく話し声が聞こえてきた。女湯側はお客が非常に多いようだ。うるさいくらいの話し声が入浴中ずっと続いていた。時折笑い声も入り交じり、やかましいほどである。話の中で「おちつかない銭湯ね」という声が聞こえてきたが、確かにあなたたちのおかげで落ち着いて入浴ができない。

浴室には水風呂もある。水温は18℃ほど。非常に冷たく心地の良い水風呂。サウナ室もあるが、誰も利用していない模様。水風呂もあるので、サウナの利用価値も高くなるというものだ。

ロビースペースで一休み。
液晶テレビも高い壁に設置されており、限られた敷地を有効に活用している。洗練された銭湯だ。近くに住んでいれば頻繁に利用したいところ。ただ、入浴する上で人と人のつながりを感じる伝統的番台銭湯とは違い、カランのしきりに見られるように人と人をなるべく交わらせないように設計されているため、時折マナーの悪いお客を見るとカチンと来てしまう。
落ち着いた入浴の究極計は内風呂となる訳だが、その一歩手前まで来ている銭湯だろう。
こちらの対極にあるのが伝統的番台銭湯であるという訳だ。
100年の歴史がある清水湯、今後100年間を生き抜いていく形として一つの回答を得たと思える。しかし次はぜひ下町にある昔ながらの銭湯に行きたいと思う。心にぽっかり穴があいた気分なのだ。湯は非常にいいのでぜひ一度訪れていただきたいと思う。


大きな地図で見る

0 件のコメント: