2009年11月29日日曜日

138.豊島区西池袋 桃仙浴場

豊島区銭湯、桃仙浴場へ。

私の父は豊島区で幼少を過ごしたそうなので、ひょっとしたらこちらの銭湯に訪れた事があったかもしれない。

浴場へは池袋西口から10分ほど歩いた所。警察署を通り過ぎ、椎名町の方へ向かう住宅街の中途にある。



マンションの一階にある銭湯で、牛乳石鹸の暖簾がやや低めの位置に吊るされており、その先はまだ建物の中ではなく脇の通路なので何の為の暖簾かなとふと思う。



古めのサッシを開けると左右を下足入れに囲まれた幅1.5mほどの玄関。そして目の前にはまるで役所の受付のようにガラス戸の向こう側に女将さんがお座りになられている。
入ると同時にお孫さんだろうか、女の子が男湯、女湯構わず走り抜けていたりする。それを見て自然と女将さんも私も笑顔になる。

フロントとはいえ休憩スペースはなく、ドリンクの販売もない模様。
湯賃をお支払い右側の男湯へ。
脱衣場入口には洋式の扉があるが常に開いており、そして垂れの長い暖簾がかかっている。
女湯側は扉が閉まっている上に暖簾がかかっているようだ。

時間は16時頃、こちらの銭湯は16時より開店なのでまだ始まったばかりの様子。しかしながら脱衣場には4人ほど、浴室にも5人ほどの湯客。盛況であるようだ。
盛況と受け取れるものの、それ以前にこちらの銭湯は狭めである。脱衣場は8畳間ほどのスペースしかなく、さらに二階への階段もある為閉塞感がある。二階は休憩スペースでロッカーが3つあり、外窓が開いているが、その先はとなりのマンションなので視界は悪い。

一階のロッカーを確保し、パパッと服を脱ぐ。
浴室へ行くとこちらも脱衣場の1.5倍ほどと銭湯というよりは寮の浴場といった趣。
脱衣場二階分の高さが確保されている天井。フラットな天井で水滴が今にも垂れてきそうにいくつも大きくなっている。四角柱が浴槽の中から天井に伸びていてこちらも窮屈に感じるが、女湯境壁際、二階部分の高さにある裸婦のチップタイル画、そして外壁側にあるヴィーナス像と洋風な公園のチップタイル画がその狭さを帳消しにして脳内を解放してくれる。
裸婦のチップタイルはじっくり眺めるという訳にもいかないほどあからさまな表現である上に、その壁の向こうは女湯であるかと思うとさすがに照れくさくなる。

カランは外壁に沿う形で10。しかし一つは角にあり鏡もなく、もうひとつのカランが使用されていれば座る事もできないほどのもの。実質9しかないといえる。
カランを一つ確保し、体をしっかり洗う。
徐々に鏡が曇りだし、すぐに浴室内は湯煙でいっぱいになる。開店したてでまだ浴室内も温まっていなかったようだが、湯気抜きの設備も少なく、小さな換気扇二つほどで賄っているようなのでぽかぽかと居心地の良い温度になってくる。

女湯とはすっかり壁で分け隔てられているのも湯気で一杯になる原因の一つと考えられるが、タイルのデザインのせいか、想像も膨らむ効果があり、なにか独特の雰囲気が漂っている。

浴槽に向かう。
こちらの銭湯の浴槽は奥の壁沿いに二つ。
広い浴槽には丸形のボディマッサージと寝ジェット、あと大きな柱。まずは丸形から。
なんとか一人分入る事ができる筒の中に腰を入れ、ジェットを浴びる。
腰掛けて足を伸ばすと反対側のへりに足が届くが、右側面からもジェットが出ているのが見える。しかし足を伸ばすとこちらのジェットを利用する事ができなくなるので、足を縮めつつも湯を楽しむ。
湯温は41℃ほど。ややぬるめであるが、細かい泡が心地よく体を包み込む。

続いて柱の反対側、寝ジェットへ。
湯はやや固めながらも泡の細かさがあり気持ちのよい湯。
少し残念なのは柱があるので横になりながらもチップタイルを見る事ができない。見たくてもゆっくり見る事ができないのは、マイナスでもあり、またプラスでもあるかもしれない。

続いて鉄鉱泉の浴槽へ。
こちらは池袋の住宅街に湧いている温泉だ。黄土色の湯で肌触りはさらさらとしている。湯温は41℃。成分が体に染み込んでくるようだ。ぬるめの温度という事もあり、つい長湯をしてしまう。狭い浴槽なので、あまり独占するのもよくないので一度出て、水をかぶりクールダウンしたのち、他のお客が行かないようであれば再び湯を楽しむ。

湯から上がり、二階の休憩スペースで火照った体を落ち着ける。
宮造り銭湯とは趣が全く異なるが、違ったアプローチで昭和を掛け抜けて来た銭湯だ。私の亡き父も訪れていたかもしれないかと思うと、少々感慨深いものがある。近くに来た際はぜひまた立ち寄りたい貴重な温泉銭湯の一つである。


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2009年11月28日土曜日

137.杉並区堀ノ内 子宝湯

杉並区の銭湯、子宝湯を訪れた。

子宝湯といえば小金井公園敷地内にある「江戸東京たてもの園」に移築されたものを思い浮かべる事ができるが、こちらも立派な唐破風の宮造り銭湯だ。

新高円寺駅を降り、南に歩き始める。
最短距離で7分ほど。大通り沿いに行くともう少しかかる。

眼前に小学校があり、子供の成長を見守るかのようにこの銭湯は佇んでいる。
子宝湯は明日(2009.11.29)で廃業となる。そのため、建物の周りを歩きながら煙突を見上げている方や、長い時間をかけてその姿を写真に収めているお方もいらっしゃる。







16時過ぎ、屋号の入ったオリジナル暖簾を潜り中へ入る。
廃業を知らせる紙が傘入れの前に貼り出されていた。





松竹錠の下足入れに靴を預け、引戸を引き開けるとすぐに女将さんがいらっしゃる。



銭湯マップには番台と記されているが、番台はこちら向きになっており、脱衣場を見る事はできないようになっている。これなら脱衣場で盗みをしたりする輩などに目を配る事はできなくなるため、番台形式とは言い切れないような気もする。

番台というだけで敬遠するうちの奥さんのようなタイプのお方もいらっしゃるだろうし、ひと言銭湯マップにくらいは記述されていてもよかったのではないかと思う。「番台ですが、脱衣場は見えませんので、ほぼフロント形式といっていい銭湯です」と。

くるっと裏返った番台は光もあたらずやや暗い印象を受ける。開けた空間もないので常連客が居座ってのんびりお話、というのもしづらいようだ。

脱衣場は天井高く、折上格天井。外壁側は二段式になって低くなっている。
ローラーむき出しのクラシカルなマッサージ機があり、アナログ体重計はHOKUTOWの比較的新しいもの。どこを見ても明日廃業してしまうような雰囲気はない。

立派な庭もあり、シカの大きな置き物も顔を覗かせている。
柱時計も壁にかかり、浴室への引戸の上にある壁スペースに油絵がずらりとかかっている。世田谷区弦巻の「弦巻湯」にも油絵がいくつも脱衣場に置かれていた。何の因果か弦巻湯も廃業されている。

パパッと服を脱ぎ浴室へ。
白く清潔な床のタイルがまばゆいばかりだ。
天井高く二段式。湯客は7人ほどで、皆さん背景を見たり、思い出話をされたりしている。今の時代に順応した、活気ある銭湯だ。

島カランは一列で外壁側より7-5-5-7。外壁側には立ちシャワーが二基あり、そのせいもあって非常に窮屈なカラン配置。特に釜場側の壁のカランともなると、お子様用かと思うくらいに狭くなっている。

カランの湯温はややぬるい。まだ開店したてなので温まりも遅いのだろうか。湯客の多さもあるのかシャワーが時折全くでなくなる。きれいに磨かれたタイルや、お客の活気も感じるが、設備としては目に見えない部分で老朽化が進んでいるのかもしれない。

体をしっかり洗い浴槽へ。
これぞ東京銭湯と感じずにはいられない浅深の二浴槽。
両浴槽はへりの上から湯が行き来しているので湯の熱さ、質などはほぼ同じだろう。
まずは浅い方から。
こちらには赤い赤外線ライトが奥壁側に二基。そしてミクロバイブラ。
湯温は42℃ほど。まだ時間的に少々シャープさのある湯だが、それでも初めからマイルドさのあるやさしい湯だ。

洗い場では風呂椅子に腰掛け、鏡にではなく浴槽側に向かってじっと座っている方がいらっしゃる。まさか浴槽の客を見ている訳でもなく、背景を眺めているのだろうと思う。

深い浴槽に移り、背景を拝む。
(西伊豆)20.5.12と記されており、岩の縁の描き方、松を描く繊細なタッチ、全体的に淡い色使いの明るめなペンキ色構成から丸山氏の作品である事を確信する。
一年半ほど前の作品であり、ペンキの剥げた部分も目立ち始めている。

しっかり温まった所で湯から上がる。
脱衣場では思い出話が繰り広げられている。経営者の息子さんかと思われる方もいらっしゃる。自分は常連客ではなく、ただ東京銭湯が好きなだけであるが、やはり切ない気持ちは感じずにはいられない。

ケロリン桶が積み上げられ、「ご自由にお持ちください」とあったので記念に一つ頂いた。番台の女将さんにひと言ご挨拶をし、表に出る。

二度と来ないだろうという気持ちで銭湯を離れる事はないが、今日ばかりはどうしようもない。建築計画も貼り出されており、取り壊しも確実である。
なくなってしまう銭湯はいつまでも営業されている頃のイメージが皆の心に残る。それは悪い方向へ行く事は少なく、多くは良いイメージのままいつまでも心に染み込んでいるものだ。地元のかたは寂しいはずだが、銭湯の良さをなくなって気づく人も多いと思う。
日本人は大切な日本の文化を放り出して知らない振りをしていることに早く気づいた方がいい。



明日、子宝湯は営業が終わってしまうのでぜひ最終日に行く事ができる方は訪れて頂きたいと思う。




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2009年11月23日月曜日

136.武蔵野市緑町 武蔵野浴場

武蔵野市の銭湯、武蔵野浴場を訪れた。



正面には大型マンションがそびえ立っている。向かいに千鳥破風の銭湯。時代は違えどどちらも堂々としたものだ。
車で訪れたがすぐ隣に砂利道があり、駐車場への道となっている。月極の駐車場スペースが数十台あり、武蔵野浴場の駐車場は浴場に沿った形で二台置けるようになっている。



煙突が屋根の向こうに顔をのぞかせている。時間は5時頃。間もなく日が暮れる時間だ。



牛乳石鹸の暖簾を潜り、松竹錠の下足入れに靴を預ける。木札を手に取り右手の男湯へ。
引戸を開き、番台の親父さんに湯賃をお渡しする。
「遠くからいらっしゃったんですか」とお声を掛けて頂いた。
メガネの親父さんは落ち着いた佇まい。番台は低めであるが女湯側には布で目隠しがされており、番台からもよく見えないようになっている。

ロッカーは30ほど。島式ロッカーもあり低めなので上に載せて着替えをすることができる。
番台の正面にドリンクケースがあり、小さな金魚鉢二つにかわいらしい金魚が何匹か泳いでいる。番台から眺められるので大切にお飼いになられているみたいだ。

外壁側にコインランドリースペースがある。庭もあるがコインランドリーを増設したのか少し狭め。狭いが池もあり鯉もいる。岩に付いたコケを顔を出して突っついているのが見える。

アナログ体重計はKEIHOKUのもの。
柱時計はなくテレビが置かれている。大相撲中継だ。銭湯といえば野球に大相撲。ムードは次第に高まってくる。

天井は格天井であるが全面木材でなく梁の部分だけ。隅の処理も折上げ式ではない。
所々たわみがあり、昭和を長い事生きながらえて来た証拠といえる。床の木材も清潔ではあるがくたびれた状態だ。

島式ロッカーを確保しパパッと服を脱ぎ浴室へ。
第一印象は湯客が非常に多いこと。比較的お年寄りが多いようだが、みな女湯境、外壁側のカランを確保している。
島カランが一列。女湯境より7-6-6-5の構成。島カランにはシャワーがないので湯客はあまり腰掛けていない。
風呂椅子と桶を手に取り島カランへ。木の椅子が一つ、木桶が二つあるが誰も使っていない。壊してしまうと申し訳ないので皆控えているのかもしれない。

立ちシャワーが一基、もう一基打たせ湯形状のシャワーが一基外壁側に設置されているので、その近くのカランを確保した。これなら泡だらけになった状態でも気軽に立ちシャワーを利用できるというものである。

パパッと体を洗い、浴槽へ。
一槽、どんと大きな浴槽が眼前にある。ジェット二基、深風呂までもが一緒の浴槽となっている。
湯温は42℃ほど。非常に柔らかく肌に優しく浸透してくる湯である。広いので6人ほど同時に湯に使っていてもなんの不自由もない。足を伸ばし、体の節々を動かし疲れを取りながら、天井を見たり、背景を見たり、ひたすら無になり時をやり過ごしたりする。

天井は二段式。二段目は扇形に丸くなっている。背景は故早川氏の壮大なぶち抜き富士山。「20.4.3 戸田美浜 早川」と記載されている。
戸田といえば西伊豆、美しい光景である。やや荒さも感じてしまうが、細かい事も気にならない。所々ペンキが剥げて来ているのでもう先も長くないかもしれない。目に、記憶に、深く焼き付けておく。

湯から上がり脱衣場で一休み。
番台は女将さんにお代わりになられている。
いつまでも長く営業を続けてほしい番台銭湯である。サウナもあるのでまた訪れる時にはぜひ利用したい。
女性の方も、目隠しがあり番台からの目を気にせず入れるようになっているので迷わずにこちらをぜひ訪れて頂きたい。



外に出るとすでに暗くなっており、月も出ている。煙突のすぐ側に月が仲良く並んでいるのが見えた。銭湯の煙突に月、実にマッチする光景である。


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2009年11月21日土曜日

135.大田区萩中 小町湯

二週間ぶりの銭湯。
その間は内風呂を使っている訳だが、やはりどこか満たされないものがある。
広々とした空間に反響する湯の流れる音に、桶の音、湯客の話し声に、カランの音。そして柔らかく温かい湯。
のどの渇きを水で潤すかのように、渇いた心を温かい湯で潤したい。
そんな事を考えながら向かうのもまた楽しい。
久々の銭湯も良いものだ。

今日は大田区の銭湯、小町湯を訪れた。

糀谷の商店街をクルマで抜けて行くが、路上に駐輪された自転車が幅を利かせている。地元ではないので慎重にゆっくりと抜けていく。
比較的高齢な歩行者も多いので注意が必要だ。
時間は夜8時頃。商店街の店も閉店の時間である。

小町湯付近にスーパーマルエツがある。同じ建物に文教堂やヤマダ電機も入っており駐車場も広い。小町湯には駐車場がないのでここへ駐車する。1000円の購入で90分駐車可能である。

マルエツから歩いて1分ほど。
歩くとすぐに静かな住宅街になり、街灯も少なめで暗くひっそりしている。
その中に、5mほどの高さで切られた煙突が見えてくる。






小町湯は切妻屋根が少し見えているがフロント部分が全面にせり出して来ている。
暖簾を潜り、下足入れに靴を預け木札を手に取る。

やや反応の鈍い自動ドアを抜けフロントへ。
休憩スペースは形の違うソファにクッションのタイプも異なり、友達の家のようなアットホームな雰囲気である。6人ほどが座れる広さ。
フロントには親父さんがお座りになられている。番台をひっくり返してフロントに改装したようでフロントの上には脱衣場の天井が広がっている。

男湯は左手。
蛍光灯の照明は暗めで扇風機やテレビなど動いてるものは脱衣場にないので、よくいえば落ち着いた雰囲気。しかしながら活力を感じないので寂しさはある。
体重計は家庭にあるような小さなもの。さすがにこれでは体重を測ろうかなという気にはならず。

ロッカーは島式のものが一つ、外壁側に一つで40。面白いのは女湯境の壁際にベビーベッドがあり、その下もロッカーになっている。ここに二つ。

パパッと服を脱ぎ浴室へ。
サウナ室が外壁側に脱衣場にめりこむようにして設置され、立ちシャワーが隣に一基。
島カランは一列で外壁側から4-3-3-4-4-6。
島カランにはシャワーはない。
天井は高く二段式であるけれども、二段目の天井には急な傾斜が付いている。
お客は二人。女湯の方からも声は聞こえてこないので少々寂しいかもしれない。

カランを難なく確保し体をしっかり洗う。
カランや床のタイルがやや古びて来ているようだ。なによりも鏡の傷が激しく、そしてやたら低い位置にあるので普通に座っていては自分の姿は下半身しか見えない。まぁ鏡をじっくり見る必要もないので飾りと思ってみれば何も感じない。
ちなみに島カランの鏡の高さは通常の高さのようだ。

浴槽へ。
広めで浅い浴槽と深い浴槽。典型的な東京銭湯パターンだ。
広い浴槽には半分がミクロバイブラ。一方深い浴槽は静かな湯面で底の小さなタイルが青く美しい。
まずは浅い方から。湯温は42℃ほど。
泡の奥には青いタイル。砂利のようなタイルで昭和の香りがプンプンする。とても気持ちのよい浴槽だ。

続いて深い浴槽へ。
浅風呂とつながっているので湯温の違いはないかなと思うも、熱い湯が奥から次々と注入されており、44℃ほどになっている。こちらから背景を拝む。
女湯ぶち抜きの富士山。ヨットや岩にあたる波しぶきなどが描かれている。中島氏の作品だと思われる。

さて湯から上がり、サウナ室へ。さすが大田区銭湯、無料で利用できるようだ。
乾式サウナで木の椅子にはタオルなども敷かれていないのでそのまま座る事もできないが、立ったまましばらく体を温める。温度は110℃となっている。

外に出て立ちシャワー。クールダウンをして何度か湯を楽しんだりサウナ室を利用したりする。終始湯客は2〜3人ほど。少なめであった。

さて湯から上がる。
着替えてフロントを通過すると親父さんから女将さんにスイッチされている。常連客と楽しそうにお話をされておりありがとうのお声は頂けなかった。
帰り、マルエツで買い物をして帰宅。
これから寒さも本格的になってくる。銭湯を利用しながら楽しく冬を乗り越えて、清々しい気持ちで暖かい春を迎えたい所だ。


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2009年11月9日月曜日

134.杉並区成田東 ゆ家 和ごころ 吉の湯

杉並区成田東 ゆ家 和ごころ 吉の湯

杉並銭湯、吉の湯へ。
駐車場有りとの事なので車で向かう。現地は住宅街に曲がりくねった道が続く、非常に車では行きづらい銭湯。
駐車場は3台のみで、付近にはコインパーキングはなく、一番近くても直線距離700mも離れた位置にある。

一度目は満車状態。仕方なく他の銭湯を探すが、天狗湯は休業日、その後再び吉の湯へ行くと、一台空いた状態だった。



「ゆ家 和ごころ 吉の湯」は切妻屋根の下に唐破風のような屋根が設置されている入口。趣を無理矢理演出しているような雰囲気。

下足入れに靴を預け、鉄製の鍵を手に取る。
フロントはカウンターのようになっており、入浴券を購入する自動販売機でビールやソフトクリーム等も購入する事ができる。
休憩スペースはかなり広く10人以上がテーブル席でテレビを見ながらゆっくりできる状況だ。

これは武蔵小山の清水湯に似ている雰囲気だ。近代型銭湯の見本といった所か。

フロントにはアルバイトだろうか、女性従業員が二名。
下足の鍵を預け、代わりに脱衣場のロッカーキーを受け取る。混雑しているので、というお断りをして頂いた。

男湯は右手。
脱衣場は天井低く、籐が網の目ののようになっている壁紙が貼られている。
体重計はTANITAの新しい体重計。その他、トイレが新しく広いものだが特に目新しい部分はなし。

パパッと服を脱ぎ浴室へ。
浴室への通路があり、STAFF ONLYのデッドスペースがある。浴槽を一つ置けるほどはあるので無駄なように思うが、何か重要なものが置かれているのかもしれない。

中央に浴槽があり、周囲3方をカランが取り囲んでいる。立ちシャワーは3基。カランの数は17。日曜日夕方5時頃に訪れたのだが、ほぼカランは埋まっており繁盛している。子供や若いお父さんが多いように思える。

天井は高く、切妻屋根に中央部分がくりぬかれるように二段式になっている。

なんとかカランを確保し、体をしっかりと洗う。
シャワーは放水口部分をひねると打たせ湯にもできる新しい形式のもの。
浴槽へといく訳だが、こちらは露天スペースもあるようだ。
まずは室内から。
本日は杉並区の銭湯はリンゴ風呂の日。
ネットの中に20個くらいのリンゴが詰め込まれて浮かんでいる。
電気の湯、ジェットエステ、ボディジェット、ミドルエステと並んでいる。
湯温は41℃ほど。ジェット系は強めで放出口が異なる3タイプだ。
電気は弱めなので初心者向けといった所か。

壁の丸形ライトの一つに茶色のネコの飾りが付いている。他はそんな演出がないので少し浮いているように見えるが見てしばし楽しむ事ができた。

続いて露天へ。
露天とはいえ、天井部分は木製の柱が組まれており、さほど開放感はない。昼間であれば明るく気分も晴れやかになるかもしれない。

室内と同じくらいのスペースが広がっており、サウナ室、つぼ風呂が二つ、水風呂、高濃度炭酸泉、そしてプラスチックの椅子が何脚か。
つぼ風呂は五右衛門風呂のように丸形の一人が入るタイプのもので、中に入ると湯が激しくオーバーフローする。これは演出でこぼれた湯はしっかり排水口に吸い込まれていく。湯温はやや高めで43℃ほど。湯から上がると湯が注ぎ込まれ調整される。
湯の溢れる音の爽快さ、そして湯温も適度で素晴らしい気分だ。
そして水風呂との往復を何度か繰り返す。水風呂の温度は19℃ほど。3人は十分に浸かる事ができる。

高濃度炭酸泉、こちらは青山の新型銭湯、清水湯にもあった湯であるが、炭酸が湯に溶け込んでいるものだ。肌を包み込む炭酸が心地よく、湯はぬるめで長く浸かっていられる。おかげでなかなか湯客が出て行かず、気軽に入る事はできない状態だ。
しかし炭酸泉は見ても楽しむ事ができる湯なので(細かい泡がきれいである)、できれば明るい室内で楽しみたいものだ。

湯から上がり休憩室で一休み。
本日は奥さんも一緒で感想を伺う。最近は奥さんも銭湯のマナーに詳しくなって来ており、体も洗わず浴槽へ飛び込む子供や、混雑しているのにカランに入浴グッズを置いたまま行ってしまうお客、露天に家族で入りいつまでもいつまでも会話をしながら出て行かない行為に少々腹を立てている様子。

子供のマナーに関してはやはり親が一番注意するべきだろうが、必要とあらば自分でも注意できるようにしたい所だ。
住宅街にひっそりと佇む新型銭湯。完全に周囲から認知されている様子だが、遠方からわざわざいくほどの面白さは感じなかった。設備は充実しているのでそういった銭湯が好きならぜひ一度行って頂きたいものである。


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2009年11月2日月曜日

133.大田区鵜の木 第二栗の湯

大田区銭湯、第二栗の湯へ。

銭湯マップに駐車場ありと書かれているが、銭湯の駐車場というのは(もちろん事前に電話やネットで確認すれば問題ないが)実際行ってみないとどういうものか分からない。

こちらの第二栗の湯はすぐ隣が広大な月極駐車場スペースで、そのうち二台分が第二栗の湯用に割り当てられており、背面部分にご利用者様専用と書かれている。

文化の日の前日、月曜日の夜であるが小雨もぱらつき気温もぐっと下がったせいで銭湯に行きたくなるような寒さである。







第二栗の湯はマンション銭湯。
煙突は直方体で、照明がふもと部分から当てられており幻想的な表情を見せている。椅子に腰掛け、ワインでも飲みながらしばし眺めていたいような煙突である。





マンション名は栗山コーポ。屋号もそういった所からとられているに違いない。



中に入ると水槽。金魚やメダカが泳いでいる。水槽の大きさからしてみると、その数は少なめである。

下足入れに靴を預け、木札風のプラスチック札を手に取る。
中に入ると休憩スペース。テレビがあり、6人ほどが休めるソファがある。
フロントは男湯、女湯入口の側ではなく少々離れた位置。親父さんに湯賃をお渡しし、左手の男湯へ。

脱衣場はマンション銭湯にしては高め。
天井に鶴が舞う絵(背景は無地の木材)や、フロント寄りの壁には岩に当たる波しぶきの大きな絵がかすれながらも大きく描かれている。

外壁側には浴室からサウナ室がせり出していて、狭い感じを受ける。サウナ室の天井は瓦屋根。なぜか女湯境の天井近くにも瓦屋根が設置されている。
体重計はTANITAのデジタル。天井のライト等、全体的にモダンな洋式である。

パパッと服を脱ぎ浴室へ。
天井は限りなくフラットに近いが、中央に向けて角度がやや付いており逆への字型。
背景は大きな◇型が茶色のタイルが出っ張り形成されている。
島カランは二列で、外壁側より6-0-5-5-5-5。立ちシャワーはサウナ室前に一基、女湯境壁側に二基ある。
外壁側にはガラスブロックがズラッと並んでいる。

お客は3人ほどで、それぞれが空間を開けてゆったりと銭湯を楽しんでいる。
風呂椅子と桶(屋号入りの黄色い桶)を手に取り、カランを確保。体をしっかりと洗う。

浴槽は三槽あり、外壁側には草津の湯、中央部には広めの浴槽で電気風呂、バイブラ、赤い赤外線ライト、ガリウム石となっている。そして女湯境側には座ジェット3基の浴槽がある。

まずは広めの浴槽から。湯温は42℃ほど。奥行きがあまりないので寝浴とまではいかないが背を預けて足を伸ばす程度は問題ない。
電気風呂が珍しく手前側の内側にあるので、そこから浴室に入ったお方は突然のビリビリに驚かされる事だろう。しかし、そこまで強い電気力ではないのでおそらく問題ないと思われる。

そしてガリウム石の入った檻があり、その中は赤いライトで妖しく照らされている。説明書きがあり、よく見る「石和田章三教授、発見、指導」とある。その後にも長々と書かれているがつまりはラジウム温泉と同じ効果が期待できるというもの。ありがたい限りである。

続いて座ジェット浴槽へ。
窮屈ながらも3つの座面があり、湯温は同じ42℃ほど。水枕完備で少々高い位置にあるものの、手すりも適度な位置にあるので座り心地は至極快適。水枕はキンキンに冷えており湯にのぼせるのを防いでくれる。

さてしっかり温まった所で立ちシャワーでクールダウン。
その後、草津の湯へ。
湯の花がヘリに溜まっており、体にもよく付着する。湯温はやはり42℃といった所。洗い場側に流れ出ないように排水処理がされた浴槽である。
二人が入ると一杯なほどの狭い浴槽だが、湯の花も充分な量がとけ込んでおり、温浴効果がかなりありそうだ。

最後にサウナ室へ。こちらの銭湯はサウナが無料である。
乾式サウナで温度は100℃ほどを指している。
狭めのサウナ室だが非常に清潔。ラジオも流れ、12分計もしっかり稼働。脱衣場が窓から見える。なぜかあまりサウナ室を利用する方がおらず、終始貸し切り状態だった。何度か立ちシャワーとの往復を繰り返し、サウナ付き銭湯ならではの充実したひと時を過ごす。

湯から上がり、休憩スペースでコーヒー牛乳を一杯。
全体的にはモダンな味付けで、脱衣場には鶴、岩の絵、脱衣場から浴室へ渡るガラスの上にはステンドグラス。そしてガラスブロック。和洋が混在し独特の雰囲気がある。日本というのはそういった雰囲気が作り出されやすい環境にあるのかもしれない。
何はともあれ、一気に寒さを増した11月に、サウナと草津の湯で芯まで温まる事ができた夜であった。


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2009年11月1日日曜日

132.三鷹市牟礼 神明湯

三鷹市の銭湯、神明湯を訪れた。
11月1日、今日は映画の日である。映画を一本、1000円で鑑賞して来た後(Michael Jackson's This is it、最高だった・・)、小雨もぱらつき始めた日曜の夕方、空は次第に闇に吸い込まれつつある。



そんな中、煙突からはもくもくと黒煙が。



そんな様子を目の当たりにすると、湯への熱い思いが沸々とたぎってくる。
目の前に駐車場3台分、コインランドリーも離れにある。駐車場はこの他にも歩いて50mほどの所にかなりのスペースがある(10台ほど駐車可能)。



目張りがしてあってどうにも建築の全貌は把握しようがない。
中に入り透明の扉の下足入れに靴を預ける。プラスチックの鍵を取り中へ。
フロントの前に休憩スペースが広がる形。
4人ほどが座れるL字型のソファ、そして日本シリーズ第二戦がテレビで流れている。
フロントには女性、若奥さんだろうか。声は小さいが丁寧な接客をされている。



牛乳石鹸の暖簾を潜り、男湯の脱衣場へ。

脱衣場は天井高く、格天井。折上式ではない。
アナログ体重計は「IUCHI SCALE」のレトロなもの。72くらいのロッカーが外壁側に広がり、中央部分には傷だらけの趣きある木の机と、長椅子二つ。その他に無駄なものは見当たらず。
庭へ通じるサッシがあり、何かなと覗いてみるとなんと露天へ通じる扉であった。これは脱衣場から直接露天へ行けるという事である(当たり前か)。

脱衣場には銭湯にしては最近の曲が流れている(Bump of Chickenなど)。フロントの若奥さんの趣味だろうか。まぁそれはさておき、パパッと服を脱ぎ浴室へ。

中は活気がある様相。10人ほどのお客がいらっしゃる。
天井高く、3段式の天井でペンキもきれいな状態で晴れやかな気分。
二段式の所から増築したのだろうか、と想像を膨らませる。

島カランは二列で、外壁より5-6-6-4-3-4。立ちシャワーは一基。横幅も広く、通路もゆったりで敷地が広いからこそかなう贅沢な空間だ。
お客も多いが、カランも多いので難なく場所を確保。体をしっかり洗う。

浴槽は3つ。
サウナ室が脱衣場寄りの女湯境にあり、その隣に水風呂がある。
奥壁には広い浴槽(座ジェット、檻、電気風呂)が一つと、外壁寄りに薬湯槽(ミクロバイブラ)が一つ。
そして脱衣場寄りに外の露天へと通じる扉がある。

まずは広い浴槽から。
檻の中に石があり、そこに湯が当たり浴槽に湯が流れ込んで来ている。特にガリウム石というような記述は見当たらないがありがたく湯を堪能する。薪で燃やされている湯のせいか、柔らかく心地のよい入浴感。湯温は42℃ほどだ。

電気風呂へ浴槽の中をそのまま移動し電気を浴びる。電気の力はやや強め。左右の電極の高さは高低に差がつけられており、腰に当てたりする事も可能だ。
座ジェットの浴槽へは歩いていけないが、湯が敷居の上を通過しているので湯温に変わりはない。ジェットは強めで水枕も完備。これが冷えていすぎる事もなく適度な温度を提供してくれる。

湯から一端上がり、水風呂でクールダウン。一人入ると一杯になるような小型浴槽であるが、オーバーフローした湯は排水口へと流れる仕組みとなっており、溢れる水を眺める楽しみもある。水温は21℃ほど。蛇口があるがひねってみても水は出ない。水が減ると自動的に給水されて一定の水量に保たれるようだ。

続いて外壁にある薬湯槽へ。本日ははちみつプロポリスの湯(と休憩スペースに書かれていた)。浴槽はバイブラでもあるのでボコボコと泡が噴出している。湯はやや甘い香りがする。こちらから背景を仰ぎ見ると立派な山脈が控えめながらに描かれている。「松原湖 21.8.14」と記されており、女湯境側には湖畔に建物も一軒見える。
繊細な岩の描き方、山脈の霞がかかった感じの筆致が丸山氏の作品である事を物語っている。こちらの柔らかい湯にふさわしい、身に染みいる作品である。

さて体も芯から温まり、水風呂でクールダウン。
続いて露天風呂へ。
いくつか置かれた灯篭から控えめに照らされる光の中で、ぼんやりと岩と湯が見て取れる。岩は丸形が主で、ごつごつした日本海の玄界灘のような岩はない。湯温は41℃ほど。泡は一切出ておらず、正面の道路もない裏手にある露天なので静かな空間だ。
小雨が肌を打ち、やや冷たく感じながらもそれが心地よい。
目張りが高い位置までしてあるので景色はもちろん見えないが、庭の草木、石が調和を持って配置されており見ていて飽きない。

脱衣場からもお客が出て来て一休みしていたり、皆が思い思いの時間を過ごす。これも広めの露天があればこそだ。

何度も水風呂や薬湯、そして露天を楽しみ湯から上がる。
休憩所では日本シリーズが続いている。今日は巨人が劣勢である。正面のフロントから若奥さんも眺めているがさほど興味はなさそう。いらっしゃるお客さんの為に仕方なくチャンネルを合わせているのかもしれない。



休憩スペースに薬湯の紹介板がある。



こちらは休憩スペースの眺め。

神明湯、充実した設備に柔らかい湯、露天の雰囲気は下手な旅館へ行く手間もなく味わえる最高の雰囲気である。車も訳なく駐車できるのでまた訪れたい銭湯の一つとなった。


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