2010年12月12日日曜日

170.中野区中野 天神湯

今日もまた、中野区銭湯へ。
カレンダーが貰えるという浴場組合の情報から中野銭湯に連日赴いているけど、今日はどうだろう。

中野駅の北口を出て、中野ブロードウェイへ行かず右の線路沿いの道へ。
5分ほど歩き住宅街の中に入っていくと天神湯がある。
大体煙突を探しながら銭湯へ近づいていくのだが、天神湯の煙突は途中からポッキリ折られているためその手法は使えない。

 
すぐ隣の新しい煙突を用いている模様。


天神湯の表向きは唐破風で威風堂々としている。
道路を挟んで反対側にコインランドリーがある。
暖簾を潜り、ロッカーに靴を預ける。錠前はSakura。プラスチック製の札を取り、勢い良く開く自動ドアに驚いているとすぐ正面のフロント内部に親父さんがお座りになられている。
番台を裏返したようなフロントでかなり窮屈なご様子。
湯賃をお渡しし、そのまま脱衣場へ。

天井は高く白く塗られていて丸いガラスのランプがいくつかケーブルによって吊られて、ぶら下がっている。灯りは灯っていないが、和の表向きにちょっとモダンな内装、といった感じだ。
しかし全体的には東京銭湯の宮造り建築がやはり印象にある為、モダンというよりも和の佇まいである。

アナログ体重計が一つ、TANAKAのものがあり、ローラーむき出しのクラシカルなマッサージチェア、縁側(暗くて庭はよく見えない)などがある。
縁側にはSANYOの洗濯機があって、誰かが使用しているようでグラグラ揺れている。このSANYOのワンコイン洗濯機が東京銭湯で普及率は99%じゃないだろうか。洗濯機のある銭湯のほとんどがこのSANYO製を使っているような気がする。

さて、ロッカーを一つ確保しパパッと服を脱ぐ。
浴室に入ると、天井高く二段式で空間が広く開放感があって心地良い。
島カランは二列あって、4―□5―5□5―6(ーは通路、□は島)の構成。立ちシャワーが外壁側に二基ある。
面白いのはなぜか島の浴槽側にポールが一本立っていて、先っぽに照明がついているのである。ただ灯りはともっていない。

身体をしっかり洗った後、浴槽を巡る事にする。
奥の壁に沿って浴槽が一つ、3つに分かれているがすべて湯は底等からつながっている。
外壁側に寝ジェット、中央部分に広めの浅い浴槽、女湯境側に座ジェットが二基ある。
まずは座ジェットから。
湯温は42℃ほどで、少し肌にピリッと来るものがある。すぐに慣れるけど、柔らかさがもう少し欲しい気がする。
浴室には湯客が終始6人ほどいらっしゃる。中にはやはり墨の入ったお方もいらっしゃる。

続いて中央部分へ。
こちらにはバイブラの設備があるのが分かるが、そこから泡は全く出ていない。故障中だろうか。あと赤外線ライトが3基、奥の壁に並んでいる。うち一つは故障中。
しばし身体をライトに当て、少し芯まで温まったような心持ちになる。

さて続いて寝ジェットへ。
ジェットの勢いはほどほど。足を伸ばすと縁に届いてしまうので足を縁の上に置いてみる。少し行儀が悪いような気もするのであまり長い事同じ体勢でいる事ができなかった。

こちらの銭湯の背景は丸山氏の富士山。
「本栖湖 18.3.27」と記されている。
月日が経っているので少々痛みも目立つが、ボロボロというわけでもない。
丸山氏の繊細なタッチが楽しめる素晴らしい背景だ。

ペンキ絵の下にはタイル画。金魚とエンゼルフィッシュでかわいらしいものである。
そんな絵を眺めながら十分に温まった後、湯から上がる。

カレンダーを配ったりはしていないようだ。もう終わってしまったのか。
中野の住宅街にある銭湯、天神湯。
駅までの道すがら三毛猫が道の脇から出てきてゴロゴロ鳴きながら近づいてきた。とてもかわいい。クルマも通れないような狭い路地の中、静かで平和な雰囲気が天神湯の周辺に満ちている。


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169.中野区若宮 たからゆ

土曜の午後、中野の銭湯たからゆを訪れた。

中野の銭湯になぜ行こうとしたのかというと、12月は先着順にカレンダーを配布するという告知が雑誌「1010」に書かれていたからだ。

浴場組合のカレンダーはよく銭湯で見かけていたので、手に入るものなら頂きたいなと思っていた。

さて、中野区若宮にある銭湯たからゆは住宅街の中にひっそりと佇むマンション型銭湯。表にはコインランドリーがあり、マンション脇から進んでいくと入り口がある。
銭湯であると同時に介護入浴などデイサービスセンターも兼ねているようである。
→リンクが開きます>>介護事業-デイサービスセンター 健遊館 銭湯 中野たからゆ 


中に入るとすぐに下足スペース。
Oshidoriの色鮮やかな下足入れが並んでいる。マンション銭湯でありながらも旧きその浴場の姿を思い起こさせてくれる。
靴を預け、フロントスペースへ。
天井は低く、床面積も少なめなので湯上がりにゆっくり休憩するスペースはない様子。脱衣場で各自のんびりするべきだろうか。
フロント内には親父さんがお座りになられており、静かな接客。目の前にはノートパソコンがある。
湯賃をお渡しし、左手の男湯側脱衣場へ。

脱衣場も天井は低い。
島ロッカーが二つあり、窮屈に感じる。外側にサッシがありそこから外に出られる。庭はないけどリラックスできるスペースとなっている。
背中に大きく墨の入ったお方がいらっしゃり、近所の人だろうか3人でお話をされている。今日千駄ヶ谷で開催されている柔道の大会の話等をした後、墨の入ったお方が「じゃあまた今度」に対して「じゃあ後で持っていきます」と。

何を後で持っていくんだろうか。

ロッカーはSakuraIIの錠前。しかし中にはOshidoriもちらほら。古くなって故障したものをSakura錠に変えていっている模様。
体重計は家庭用。その他下町の銭湯らしさ、を感じるような一品は見当たらず。

パパッと服を脱ぎ浴室へ。
やはりマンション銭湯、浴室の天井は低いため、開放感はさほど感じられない。
湯煙が立ちこめ、温度も高めなので居心地はいい。
ただ塩素の匂いが鼻につく。すぐに気にならなくなったけど、換気効率が良くない構造なのかもしれない。

浴室外側から奥の壁にかけてL字型に展開している浴槽。それに対してカランは島2列。
□3−6□6ー8(□は島、ーは通路)の構成。

湯客は5人ほどでみなさん介護を必要とされないお元気な爺樣方。
カランを一つ確保しじっくりと身体を洗う。

浴槽は広く設備も豊富。
L時型に広がる浴槽の脱衣場側から、座ジェット2基(足下のみ深めの浴槽)、広い浴槽にはミクロバイブラ、電気風呂、水風呂、そして女湯境壁側の奥にサウナ室が設置されている。直径10cmほどの丸太が輪切りにされておりサウナ室の外側壁面にびっしり貼付けられている。さながらログハウスのようだ。

座ジェットから楽しむ事にする。
湯温は41℃ほど。湯に触れた感じは少しぴりっとする。
水枕も完備されているが、ややぬるめ。ジェットの勢い等優しい感じだ。
こちらの銭湯には背景等一切なく、入浴中はどこを眺めていればいいのかわからない。
とりあえず静かに瞼を閉じ、何も考えない事にする。

続いて広めの浴槽へ。バイブラの位置が中央部なので壁に寄りかかって休みながら浴びる事ができない。勢いも穏やかなもの。

電気風呂の力もかなり穏やかなので安心して深く腰掛ける事ができる。
水風呂には今回は入らず。
湯がぬるめなので、必要にならなかったのだ。またいつか来る時はサウナ室を利用し、水風呂も楽しむ事にしようと思う。

湯から上がりフロント前を抜ける。親父さんは携帯をいじっていた。
カレンダーを配ったりはしていないようだ。12月の頭で配り終わってしまったのかもしれない。

全体的にあまり覇気を感じない浴場。
その逆、気を張る事なく、のんびり落ち着ける銭湯ともいえる。

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2010年12月4日土曜日

168.渋谷区恵比寿 新橋湯

12月初めの土曜日、恵比寿の銭湯「新橋湯」を訪れた。

12月とはいえ日中は15℃以上あり、暖かい一日だった。18時頃から自転車で明治通りを恵比寿に向けて南下する。途中表参道ではイルミネーションのためいつもより多くの人通り、そして交通整理の警官たちも多い。当然クルマの通りも激しいのでぶつからないように気をつけながら恵比寿に向かう。

さかえ湯のある並木橋の前を過ぎ、改良湯を左に見ながらさらに先へ進む。
日も完全に暮れて寒くなってきた。ひざもつかれてくる。最近少し運動不足である。


新橋湯は新橋商店街の中にある。
入り口はコンクリートで高い壁になっているが、その上に少しばかり破風屋根が垣間見えている。左手にコインランドリー。牛乳石けんの暖簾があり、その先には傘立てと鏡(鏡に少し自分が映り込んでしまっている)。

下足入れの錠前は真新しいもので改装してからそう何年も経ってないのかなと思う。
60ほどの下足入れがあり、一番下の段は少し大きめの下足入れとなっている。
靴を預け、右手の男湯へ。

こちらは番台形式の銭湯。
親父さんは眼鏡で笑顔がお優しい。ご丁寧に接客をされている。
湯賃をお渡しし、ロッカーを一つ確保する。松竹錠。
外壁側にずらっと並んだロッカーと小さめの島ロッカーが一つ。床面積が広く感じられる。天井はやや高めで少しモダンな感じ。ふちの部分が二段になっているものの、十字に梁があり、おしゃれな雰囲気である。天井扇も備え付けられているが、12月だからか稼働はしていない。

お手洗いは入り口側にあるサッシを開けて縁側に出たところにある。
ちょっとした庭もあり、裸のまま縁側で涼んでいる方もいらっしゃったりする。
手洗いは清潔で一般家庭にあるような平均的なもの。

アナログ体重計もあり、メーカーはHOKUTOWである。
さてパパッと服を脱ぎ浴室へ。

天井高く二段式で、なぜか天井は1mほどの幅を持って水色、ピンク、緑と3色のストライプに色が変わっている。水色はよく銭湯の壁や天井で見られる色だが、ピンクや緑は違和感がある。ストライプなのは品川の記念湯で見られた記憶がある。

カランは女湯境の壁側から 7ー6□6ー6□ー(ーは通路、□は島)。外壁側はずらっと一列立ちシャワーが5基並んでいる為、カランはない。
6□6の島にはシャワーがないので、そちらは避けてシャワーのあるカランを確保。
身体をしっかりと洗い始める。
土曜日の6時半頃、湯客は8人ほどである。20代の若いお客から60歳ほどまで、バリエーションは広い。女湯側からは初め声が聴こえてきていたが、いずれ何の話し声も桶の音等も聴こえてこなくなった。

シャワーの湯温がかなり高めのため、必然的にカランの湯を桶に受け、それを何度か浴びる。シャワーのないカランを確保していたとしてもそんなに大きな違いはなかったかもしれない。

さて浴槽へ。
こちらは深い浴槽と広い浴槽、二つの構成。
しかし底で両浴槽はつながっているのでさほど湯温に違いはないと思われる。
まずは浅く広い浴槽から。
湯温は42℃ほど。ジェットが奥の壁2カ所から噴出している。なかなかの威力。 赤外線ライトも一基、赤く光っている。ジェット2基と赤外線ライトの位置がそれぞれ近めなので3人が同時に利用することはできないだろう。

しっかり温まったところで一旦湯から上がりクールダウン。
5基ある立ちシャワーはみな湯のようだ。水があればよかったかもしれない。

続いて深い浴槽へ。
こちらも湯温は変わらないが、底からバイブラが勢いよく噴出しており、深浴槽全体の湯の流れが激しい。
こちらで湯を味わいながら背景を拝む。
新橋湯の背景は竹やぶの壁紙。
幅2mくらいで同じ竹やぶの背景が繰り返しとなっている。
世田谷の銭湯にもこの背景があったし、時折見かけるものだ。

さて湯から上がる。
お客は常に8人ほどいらっしゃり、なかなか繁盛している様子。
銭湯はどうみても街に必要なエンターテイメントだ。
自分の住む街、商店街に銭湯がないなんて物足りないことこの上ない。

帰り際、新橋湯をぐるっと回ってみると、すぐ隣の新しいマンションの隙間から煙突を見ることができた。狭い中でなんとか煙りをなるべく空高くへ吐き出そうとしている。



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2010年11月23日火曜日

--.渋谷区代々木 奥の湯

このところは訪れた事のない銭湯を目指さず、地元の鶴の湯によく行っているのだけれど、今日月曜日は鶴の湯は定休日である。
そこで少し足を伸ばして代々木駅を通り過ぎ、南新宿の奥の湯に再度訪れた。

夜、10時頃。湯客は5人ほどだ。
今日は奥さんも一緒であるが後で聞いたところによると、湯客は3人ほどであり、その誰もが長風呂であった(滞在時間一時間以上)とのこと。

男湯には大学生ほどの若者が二名、やたら湯を熱がり、縁に座り続け、水を出し続けていた。いずれは慣れたのか肩まで浸かって気持ち良さそうに湯を楽しんでいるようだった。

歩きで来ているので帰りは徒歩15分ほど。
代々木駅前にあるコンビニのすぐ前で奥さんがiPhone4 を拾ったので、交番に届けた。お礼が必要かどうか記載する欄があったとのことだが、無しとしたそうだ。

しっかり芯まで温まったおかげか湯冷めすることなく家路についた。
明日は勤労感謝の日。
さてどこの銭湯に行こうか。


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2010年10月22日金曜日

167.渋谷区東 さかえ湯

秋も深まり今年もあと2ヶ月ちょっと。キンモクセイの開花も終わってしまった。街から甘い香りがなくなって少し寂しい気分もするが、年末に向けて今度は次第に街や人が賑わいを見せてくるだろう。そうなってくるとだんだん気分も盛り上がってくるものだ。

仕事が終わり、いったん家に帰り自転車にまたがる。
明治通りを南下して並木橋に向かう。ライフが見えてくると並木橋だ。

渋谷区銭湯、さかえ湯は並木橋を代官山方面に向かう橋の麓に存在する。
ビル銭湯であり、1階にそれはある。
2階には美容室「READY STEADY GO」。高校生くらいの頃、雑誌を読んでからこの美容室の前まで来て入ろうかどうしようか迷った事がある。もう20年も前の話だ。
結局その時はそのまま代官山の方まで歩いてそのまま美容室には行かなかったっけ。

それはさておき、さかえ湯の表向きは非常に地味。

銭湯の入り口でなければ駐車場にでも使われていそうな広さの間口に暖簾がかかっている。牛乳石けんの紅葉バージョン。まさに今の季節に合致している。季節感があっていいものだ。

暖簾を潜るとパイプ椅子がいくつかあり、腰掛けている方が二人ほど。
コインランドリーがあるので洗濯が終わるのを待っておられるようだ。銭湯の入り口はその左。下足入れが左右にあり、SAKURAGの錠前。靴を預け、木札を手に取る。
下足入れの上に注意書きがあり、「木札を持ち帰る方がいらっしゃるが刑罰に処せられます」といった内容。ただ木札が欲しくて持って帰る人もいるだろうが、帰りしな靴を手に取り扉を閉め、何も考えずにまた木札を取って持って帰ってしまう人もいるだろう。

引き戸から中に入ると番台にお兄様がお座りになられている。天井の低いビル銭湯一階に、さらに番台というのは窮屈そうである。
脱衣場は狭めである。寮の浴場といった感じであるが、ローラーむき出しのクラシカルなマッサージ機がある事でここが銭湯である事を改めて認識する事ができる。体重計はTANITAのデジタル式。床の木材や壁、天井もそれぞれが昭和を駆け抜けて来たといった存在感のある趣。くたびれてはいるが不潔ではない。

さて服をパパッと脱ぎ浴室へ。
天井はやはり低く、波打っている部分があるので落ちてきやしないかとふと不安にもなる。右手に浴槽があり、左手と奥の壁にカラン、島カランは一列。壁に10のカランと島に4-4、合わせて18の構成だ。島にはシャワーがないので何度も湯を汲み体に掛ける必要があるだろう。

立ちシャワーも一基、あるにはあるがホース付きのハンドシャワーなのでそれを持って立ちながら体に浴びる格好になる。

体をしっかりと洗い、浴槽へ。
ビル銭湯ということで湯の感じにはあまり深く期待も抱いていなかったのだが、感動的な柔らかさのある心地の良い湯。深浅2浴槽のうち、浅い方から楽しむ事にした。
湯温は42℃ほど。壁から一穴式のジェットが二カ所から噴出している。狭めの浴室の割には奥行きのある浴槽で寝湯(湯面に体を浮かべる入浴法)を楽しんでも縁に届いてしまう心配がない。
湯の柔らかさは備長炭であることが明らかである。30cmくらいの幅のある檻の中に数多くの備長炭が入り、湯につけられている。ぬるめの温度設定のせいもあり長めに入浴を楽しむ事ができる。

湯から上がりクールダウン。
カランの水がぬるいので冷たい水で体を冷やす事ができないのが少々残念かもしれないが、湯の良さが全てを圧倒している。

続いて深い浴槽へ。
こちらにはミクロバイブラが設置されている。きめの細かい泡が体を包み込み、湯はさらにマイルドさを増している。

湯客はしばらく私のみであったが最も多い時で3人ほどになった。利用者視点からするとありがたい数である。経営的視点からすると少なすぎる気もするが・・・。

湯から上がりしばし体を冷ます。
ビル銭湯で窮屈感は否めないが、浴槽の広さ、湯の質は何よりも高水準。
ぜひまた訪れたい銭湯である。


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2010年10月12日火曜日

166.渋谷区代々木 奥の湯

渋谷区銭湯、奥の湯を訪れた。

家から近いので自転車で向かう。南新宿駅は静かな駅前。夜中は特に静かでいくつかの飲み屋があるくらい。

駅の目の前に銭湯がある。改札を出て、路地に入り数メートル。10秒くらいだ。
今日は自転車で来ているのでそんなありがたみはないが、仕事帰りに寄ったりするのにはうってつけの銭湯だろう。


銭湯の目の前は駐車場。この通りには住宅が多く、夜は静か。
奥の湯の突き出し看板が渋く灯っている。


街灯と銭湯のマッチングが素晴らしい。
暖簾は垂れが短く、奥の傘入れが覗いている。


下足入れはSAKURAGのもの。
左手が男湯になっている。引き戸は自動扉で勢いよく開く。番台形式で女将さんがお座りになられている。
湯賃をお渡しするも控えめな接客。しかしその瞳の奥には優しさを感じる。
天井は高く、格子天井・・ではないが木枠の天井。
全体的に古い建築だ。
女湯境壁の上にある親柱は立派なもの。
親柱といえば清瀬市にある清の湯の女将さんが「この親柱はお父さんが木を切り倒して運んで来た」というお話を思い出す。その清の湯も寂しい事に廃業してしまったが。

島ロッカーが一つ。
鍵はSAKURAIII。入り口側のスペースが外にせり出す形になっていて、洗濯機と椅子が三つある。ドリンクケースにはパックのドリンクが充実している。
体重計はTANITA。腰までの高さのデジタル式だ。
女湯境の壁向こうには観葉植物の葉が見える。

ロッカーを一つ確保しパパッと服を脱ぐ。
浴室には湯客が5人ほど。3連休の最終日、夜9時頃である。
天井は高く二段式。白ペンキで綺麗に塗られている。塗り直して長い年月は経っていないようだ。床のタイルやカラン、壁なども清潔。開放感もあるしとても心地が良い空間だ。

カランは外壁側から7-5□5-6(-は通路、□は島)。
立ちシャワーが一基、女湯境側に備え付けられている。
カランの数は多いけど、横幅、背面の空間も十分にとられているので窮屈ではない。
カランを確保ししっかり体を洗う。

カランの湯はいいけど、水は少しぬるすぎるような気がする。
火照った体をクールダウンするのに時間がかかるかもしれない。

さて浴槽へ。
広く浅い浴槽と深い浴槽、二つの構成だが底の穴で両者は連結している。
まずは浅風呂から。
こちらには赤外線ライトとミクロバイブラ、そして座ジェット2基が設置されている。
湯温は43℃ほど。湯が固めなので少し熱く感じる。
ミクロバイブラの勢いはなかなか激しい。赤い赤外線の光と、勢いのあるミクロバイブラに包まれているとしばし時の流れを忘れさせてくれる。

座ジェットも楽しむ事にする。
浅い浴槽にある座ジェットなので足は前に伸ばす形になる。2センチほどの着座スペースがあるので少し座り心地はよい。

続いて深風呂へ。
湯温は変わらないが、ジェットなど全くなく、静かな湯面なので浅風呂よりむしろぬるいような気もする。しかし誰かが埋めたのかもしれないので確かな事はわからない。銭湯の湯温は常に変化しているのだ。

こちらから背景を拝む事にする。
奥の湯の背景はチップタイル。紫色から白に変化する何枚かのタイルがランダムに配置されている。
釜場への扉は木戸。
木戸であると浴室の雰囲気もいっそう高まるというものである。

さて湯から上がり脱衣場で牛乳パック(110円)を頂きながら一休み。
そんな中、親父さんが掃除機を掛け始める。
もう仕舞いの準備だろうか。
ややこちらも慌てた感じで銭湯を後にする。
脱衣場は掃除機で少々騒がしくなっているが表の通りは相変わらず静かである。
裏手に回り、煙突を見上げる事にする。


湯のマークのあたりですっぱり切り落とされた煙突。その昔は23mほどの高さまで延びていたのだろうか。燃料を変えながら、現代社会に対応するべく煙突の形を変えながら奥の湯は静かに息をし続けている。


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2010年10月11日月曜日

--.渋谷区千駄ヶ谷 鶴の湯

今日は銭湯の日。
地元の鶴の湯へ赴く事にする。

夜8時頃、秋も深まり過ごしやすい季節になったが、少し肌寒くもある。
温かい湯が恋しくなる。

鶴の湯は千鳥破風の表向き。商店街沿いに建てられているけれど、グリーンモール商店街は人もクルマもあまり通らない、店の数も少ない静かな商店街なので、存在感は控えめながらもこの商店街において圧倒的である。

10月10日、今日はラベンダー湯である。
親父さんに湯賃をお渡し。
湯客は6人ほど。タトゥーが背に入った外人さんもいらっしゃる。
ちょうどよい43℃ほどの柔らかい湯。さらに今日は香り豊かなラベンダー湯だ。
じっくりと温まり湯から上がるとウーロン茶のビンを頂く(120円)。
番台は若女将にチェンジとなっている。
先ほどの親父さんはインディージョーンズ魔宮の伝説を観ておられたが、若女将はバラエティー番組をにこやかに観ておられる。

ウーロン茶のビンを片手に庭のベンチに腰掛け、池を眺める。金魚たちは元気にこの猛暑を乗り越えられたようだ。しばらくして岩の上からちょろちょろと水(滝)が流れ始める。自動スイッチか、女将さんの手動か。聞けばすぐ解決するんだろうけど、ここはやはり永遠の謎として楽しく保管しておく。


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2010年9月26日日曜日

165.杉並区天沼 第一宝湯

今日は日曜日。
昨日は肌寒さを感じた一日だったが今日は一転して過ごしやすい秋の日和である。
荻窪駅北口を降り、四面道交差点を北東へ。回り道になってしまうが、角を一回曲がるだけで到着するはずなのでわかりやすいのである。

今日目指す銭湯は第一宝湯。
なぜ来たかというと今月いっぱいで廃業してしまうという情報をサイトで見かけたからである。
あまり廃業するからといってどやどや押し掛けるというのも気が引けるので、静かに控えめに訪れる事にする。

第一宝湯に近づくと煙突が見えてくる。



近隣は低層住宅街で高層建築物はないが、比較的新しい分譲住宅、低層マンションなど開発は進んでいる地域。銭湯も少し居心地が悪そうである。


中に入ると右手に下足入れ。
靴を預け、中に入ると正面にフロントがある。天井高く、脱衣場とつながっている事からかつては番台形式であった事を伺い知る事ができる。
フロント前右手側にはソファがありテレビもある。ちょっとした休憩スペースになっている。女将さんがフロントにいらっしゃり、お客と会話をしている。廃業に関する事をお話しになっているようである。
湯賃を脇からお渡しし右手の男湯へ。


脱衣場は立派な格天井。しかも折上式である。天井を見上げながら、世界に誇るべき寺社建築の東京銭湯が一つ、廃業してしまう事を考える。
非常に悲しく、寂しい事である。

女湯境の壁に芸能人のサインが飾られている。壁に蛍光灯が仕込まれ間接照明のような演出になっている所にザ・たっち、ココリコ、ダチョウ倶楽部などのサイン色紙。
その他体重計はアナログ式でKEIHOKUのもの。エンジ色である。これは用賀にある「藤の湯」と同じ体重計。藤の湯はよく通っていたので懐かしく感じる。

ロッカーを一つ確保する。鍵はブランドが記されていないもの。下にある貸しロッカーは松竹錠である。
パパッと服を脱ぎ浴室へ。
お客は8人ほど。お年寄りが多いようであるが、お子さんを連れてくるパパもいらっしゃった。

浴室も天井高く二段式。
全体的に白いペンキで塗られ、そしてその大部分が剥げ落ちかけている。昭和の匂いをぷんぷんと漂わせている浴室である。
外壁側にサウナ室。島カランは一列でカランの数は女湯側より6-5□5-4(-は通路、□は島)。立ちシャワーは一基。

カランを確保し、体をしっかりと洗う。
シャワーの温度が低いようであるが、しばらく出していると熱くなってくる。開店が16時で私が訪れたのが16時30分くらいなのでまだ本調子でなかったのだろう。

さて浴槽を巡る。
こちらはペンキの剥げ落ちた雰囲気とは異なり設備が近代的。3つの浴槽があり、立ちジェットが一基、座ジェットが二基ある浴槽と、ミクロバイブラを備えた浴槽、そして水風呂がある。
まずはジェット系から。ボタンを押すとしばらくジェットが噴出されるものだ。立ちジェット(ハイパワージェット)はかなりの水圧。座ジェットも快適だ。湯温は41℃ほど。
ミクロバイブラのある浴槽も底にある水路でつながっている事もあり、水温は同じ。柔らかい湯でぬるめの温度という事もありじっくり長く入る事ができる。

続いて水風呂へ。
水温は20℃くらい。3人は入れるほどの大きさがある水風呂だ。オーバーフローした水が排水口に流れる仕組みも備わっており、きれいな水面だ。
こちらからはペンキ絵の全貌を眺める事ができる。
ペンキは砂浜から仰ぎ見る富士の絵。
富士の大きさは控えめであるがきめ細かく美しい。
おそらく丸山氏の作品。女湯側には岩なども描かれているようだが男湯側の対象物は松、砂浜、ヨット、雲、富士といったあたりである。壁や天井の剥げたペンキと同じように背景も朽ち果てた部分が多く、剥げたペンキの向こう側の絵、そしてそのペンキ絵がさらに剥げてもう一世代前のペンキ絵までもが覗き見える。歴史を感じ、頭がぼうっとなる。

水風呂に長く入ると血がさーっと下の方へ行き、しばしトランス状態となってしまう。
気を取り戻し体をミクロバイブラで温め、休憩。
釜場への扉は木でできている。なかなか釜場への扉まで木でできている所はない。しかしこちらも白いペンキで塗られ、一目で木とは分かりづらい状態。

気づいた事の一つとして天井から浴室に向けて蛍光灯が引き下ろされている。これはなかなか見ない設備だ。あとは島カランの鏡が斜めになっていて、着座した状態でやや見下ろす位置に鏡がある。

さて湯から上がり扇風機でしばしクールダウン。
フロントでお客と会話をされている女将さんの声がよく聞こえてくる。やはり廃業に関するお話のようだ。
やはり寂しい限りである。
ほど近くにある第二宝湯は営業されているようなのでそちらを今後は応援していきたいものである。


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2010年9月23日木曜日

164.新宿区西新宿 梅月湯

新宿区の銭湯、梅月湯を訪れた。

昨日まで30℃を当たり前のように越えていた気温だったが 今日になると急に冷え込み、20℃ほどになった。一日暑くて汗だくになった日の銭湯もいいが、やはり涼しくなると温かい湯に浸かりたくなるものである。

しかしながら今日は涼しい上に雨が激しく降っている。
普通なら家でのんびりと休日(今日は秋分の日である)を過ごすところだが、ふと湯に浸かりたいと思うともう何があっても思いはとどまらない。クルマに乗り、新宿の梅月湯を目指した。
梅月湯は銭湯マップを見ると番台形式ということでこれまで訪れたことのない銭湯だった。一人で行くだけならフロントも番台も気にしないところだが、一緒に行く人がいるとなるとやはり気を使ってフロント形式を選ぶことが多くなるのだ。



梅月湯は西新宿、新宿中央公園のほど近くにある。
目の前の通りにパーキングメーターがあり(1時間300円)、クルマで来るには便利な銭湯といえる。
梅月マンションという11階建てくらいの高層マンションの1階。自動販売機がならび、銭湯の入り口があるのだが下足入れは表側に無く、靴を脱ぎ中に上がると下足入れが左に並んでいる。鍵はカナリア。赤で数字が記載されているので、これは女湯用でひょっとしたらその昔はこの数の倍、下足入れがあったのかなと勝手に憶測してみる。





さて下足スペースにはぶら下がり健康機、3人掛けソファ、新宿区からの表彰状などが飾られている。花の鉢植えなんかもありホッとできるスペースだ。奥にはコインランドリーもある。
驚いたのは今月中に廃業という張り紙がされていること。再開発により燃料置場が確保できない事が理由のようである。14日からは湯賃が300円となっており、廃業間近には無料解放されるようだ。
地元の梅月湯を常湯とされている方々、東京銭湯を愛する私たちにとっては寂しいが現実として受け止めるしかない。


ここから自動ドアが二つ、男湯、女湯の脱衣場に向けて 設置されており、左手の男湯側に入ると番台に親父さんが腰掛けておられる。まだお若くお元気なようであるので今後のご活躍をお祈りしたい。

すでに湯賃は300円の期間である。
番台の目の前についたてがあり、脱衣場の半分ほどは親父さんからはよく見えないようになっている。ロッカーは外壁側にずらっとならび、下の段は同じ大きさの貸しロッカー。島ロッカーも二つある。休憩スペースもありテーブル、3人がけソファがあるので脱衣場は狭く感じる。
天井は低め、しかしビル銭湯にしては高い方である。ほこりが積もっている部分もあり、壁は朽ち果てているところも目につく。長い間多くの湯客を見守って来た銭湯である。おつかれさまと声をかけたくなる。

体重計は家庭用のもの。女湯境の鏡前には漫画雑誌がうずたかく積み上げられている。
さてロッカーを確保しパパッと服を脱ぐ。
脱衣場に3人ほどの湯客、浴室には7人ほど。祝日の夜7時ほど、活気があるように見えるがこのあと1時間滞在しているうちに男湯は私だけになった。

浴室に足を踏み入れると開放感に胸が躍る。天井は高く、脱衣場よりも倍ほどの高さがある。かまぼこ型で抜け落ちたのか張り替えている部分もあったりするが女湯側だ。壁のペンキなど、剥がれているのがいい雰囲気を醸し出している。正に昭和を駆け抜けた、という感じだ。

島カランが一列、外壁より6−5□5−6(−は通路、□は島)、立ちシャワーは女湯境壁に一つ。広々とした浴室で左右カランの幅はゆったりとしているし、通路も広々だ。

カランを確保し体を洗う。
水圧が激しく湯と水をどちらも出して桶に貯めるとほぼ冷水となってしまう。また貯めた湯の中には水道管の鉄さびも見て取れる。ゆっくり水を出せばさびも入ってこないようだ。そもそもそんなに気にすることでもないが。

しっかり体を洗った後、 浴槽へ。
二つの浴槽が奥の壁に並んでいる。外壁側は広く浅い浴槽、女湯境側に深浴槽。
どちらも今日は薬湯である。とくに種類は書かれていないがグリーンの色をしている。
広い浴槽にはミクロバイブラ、そして岩盤泉の効能が貼られている。湯温は41℃ほど。柔らかく肌触りのよい湯だ。
岩盤泉は岩盤が縁に付けられていてそれに体を当てると効能が期待できるというもの。こちらは全く同じ効能(7の秘密)が私の常湯である千駄ヶ谷「鶴の湯」にもある。
バイブラの勢いはなかなか激しく、体をまっすぐに保つのも困難だが楽しく湯に浸かることができる。

続いて深い方へ。こちらも湯温は同じくらい。深い方にジェットが2基。こちらに腰掛け浴室を何気なく見渡す。女湯境の壁には1cm四方のチップタイルの洋風の湖畔。民家などよく銭湯で見るパターンのものだ。
釜場への扉の側に
「太陽建設株式会社
株式会社今井タイル工事店」
と記されている。今井タイル工事店の前にある株式会社はチップタイル一マスの中に小さく記載されているのがかわいらしい。

そしてこちらの銭湯の背景は渓谷のペンキ絵である。
濃淡による遠近感の表現法、木々の描き方などを見ると中島氏のもののようであるがかなり朽ち果てておりペンキが剥げている部分が多い。2年以上は経っているのだろうか。しかしペンキ絵というものは温度や湿度、風通しの良さなどにもより浴場により状態変化が様々なので何年かはよくわからない。いつ書かれたものも書いてない。
剥げた所からは過去に書かれた空や雲などが姿を現している。開業してからいったい何度の背景が塗り重ねられて来たのだろう。創業83年ということなので、2年に1回としても41回・・・、すさまじい歴史の積み重ねである。

女湯側には富士の絵が少し見える。
しっかりと温まった所で湯から上がる。脱衣場にも私一人で悠々と過ごせるが少し寂しい感じもある。しかし脱衣場は台形のような敷地になっていて四角四面の脱衣場を想像しているとかなり違和感があるものだ。

ついたてがあるので銭湯マップで番台とあるからと言って敬遠している女性の方などは気にせず訪れて頂きたい。何よりも今月で廃業となってしまうし、今なら300円、ラストの二日間は無料開放である。

新宿の銭湯が一つ、姿を消してしまうことになるがこちらに梅月湯という銭湯があったことをいつまでも忘れないようにしたい。



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2010年9月20日月曜日

--.福岡県福岡市中央区今泉 本庄湯

用事があり福岡を訪れた。

宿泊先は西鉄グランドホテル。最寄りの銭湯を検索すると「本庄湯」がヒットした。
夜になり9時を回り、湯に浸かる準備を済ますとホテルをでた。
三連休の中日の夜、天神の街は飲み客で賑わっている。ぶらり一人で街を歩いている男など見当たらない。女性が一人で歩いている方が多いような気がした。詳しく統計を取ってみた訳ではないけれど。

西鉄グランドホテルから天神西通りを南へ。
途中アップルストアを通り過ぎ、ちょっとしたホテル街に入る。落ち着いたカフェやバー、マンションなどがある場所に本庄湯はひっそりと佇んでいる。




本庄湯はビル銭湯。4階くらいの高さのコンクリートの建物で2階、3階の窓からは灯りが漏れ、生活感溢れる物たちが窓に立てかけられたり、影を映し込んだりしている。
入り口は男、女で二手に分かれている。
いくつかのお知らせが貼り出され、営業するということに対し、ポジティブな印象を受ける。
すぐに中に入ってみたいという思いを抑えつつ、ぐるりと一周、本庄湯の全体像を捉えてみることにする。ほぼ建物に囲まれその様子はうかがい知ることはできないが真後ろの駐車場の隙間からその様子が見えた。
表向きはビル銭湯ながら裏に回ると一軒家で千鳥屋根も見えて銭湯らしい雰囲気だ。
その中に5mほどの高さしかないかわいい煙突が見える。

さて表に戻り中に入る。
扉を潜るとすぐに下足を脱ぐスペース。幅は2メートルほどしかないし奥行きも数十センチ。下足入れは右手前に設置されていて鍵のブランドは不明。赤字で数字が記されている。番台形式なので靴を脱いで上がるとすぐに女将さんに湯賃をお渡しする。
大人440円。 東京との差はたったの10円である。
女将さんは明るくいらっしゃいませとお声をかけてくださる。自然に短パンが目に留まる。短い髪のおばあさまにはまだほど遠い、元気そうな女将さんである。基本的にはハードカバーの書籍を読みふけっておられる。

さて脱衣場の様子をじっくり観察してみる。
男湯は右手側であり、外壁側には使い古された木のロッカー。鍵はやはりノーブランドか。鍵についたゴムひもがどれもほとんど伸びきっている。木のロッカーは傷も多いが味わいのある深いアメ色をしている。床もそんな色。裸足になると足の裏と木の触れ合いがマイルドで心地よい。

ロッカーは28ほどあるが、手書きの数字は消されて何度も書き直されたりしているので、収納可能な実数と、ロッカー総数とは 食い違っているようだ。鍵がなくなったりしているのだろう。

籠もあり、後に来られたお客さんはそれを自然と使っていた。私は常連客でもないし壁に備え付けられている鍵付きロッカーを使用することにする。
天井は低めで、白く塗り固められている。色落ちもあり見ていて飽きのこない味わいある壁といえる。
体重計はアナログでエンジ色の「IUCHI SCALE」のもの。すぐ隣には輪投げ。輪は少しの木片とロープで作られている。女湯境の壁上には扇風機。羽が四枚あり、年代物の趣だ。静かにその羽を休めているが、ホコリも積もっていないし今にも動き出しそうである。女湯側にもその扇風機があり、間に大きなうちわ。「福満」と大きく江戸勘亭流フォントで記載されている。そしてマッサージチェア。お客が利用している。

外壁側の手前に喫煙席とトイレ。
普通に脱衣場内で喫煙が可能である。これは最近の東京銭湯では考えられない環境だ。さっそく喫煙しているお客がいらっしゃる中、トイレを使用。トイレは新しい木材で改装されており非常に清潔。狭いが快適だ。

さて脱衣場に戻り、服をパパッと脱ぐと浴室へ。
湯客は一人。出入りが激しいので寂しさはない。夜9時30分から1時間滞在で5人ほどの来湯。
浴室は狭い印象。奥の壁にある釜場への扉がミニサイズで一見遠近感というものが狂う。
島カランはなく女湯境壁に3つ、シャワー付き。外壁側には5つ、シャワーなしである。どちらも奥の壁までカランは並んでおらず、左右非対称の構成だ。
浴槽は中央部に小判型のもの、外壁側の奥に畳1枚ほどの浴槽。
そして奥の壁中央部分にミニサイズの扉。高さは110cmほどか。幅は大人の肩幅もないほど。
女湯境壁側には観葉植物がある。あとゴミを拾うトングのようなものがバケツに入れられて置かれている。
東京では味わえない独特の雰囲気。
ここで幸せをかみしめる。
そして今日この銭湯に出会うことを許してくれた湯の神様に対する感謝と、未踏の地への新たな一歩を踏み出した自分の勇気に賛辞を与えておく。

カランはシャワー付きを利用しているお客とは反対側のシャワーなしを一つ確保。
湯を貯め、かぶり、洗いを繰り返す。
カランのレバーに「宝」と書かれている。レバーの仕組みが上から下に押し込む方式でなく、手前から奥に押すことで湯水を噴出できるようになっている。湯と水の間隔が適度で、片手でうまく湯水を調合し桶に汲めるようになっている。使いやすい。

体をひとしきり洗い、浴槽へ。
奥の壁にある小さな浴槽へ。ライオンの口から湯が扇状に放出されている。静かな浴室の中で唯一と言っていいほどの音の出所だ。途中女湯側に学生だろうか若いお客さんが何人か入ってきたようで、途端ににぎやかになるがそれまではライオンのみであった。

静かに湯に浸かる。
浴槽は二段式で深めだが段差の幅が15cmほどしかなく、気を緩めればつるっと最深部までいってしまいそうである。手をつき慎重に行動する。
水色のタイルがいくつも並び、そしてぴっちり並んでいなくて列が乱れていたり、でこぼこしている様子がまた興味深い。
湯温はかなりぬるめで40℃ほど。狭いし段差に腰掛けられもしないので少々ポジションを確定するまでに時間を要する。結局は最深部に腰掛け、ライオンの放出を眺めていることにした。しかしそれだけで時が過ぎるのを忘れてしまうほど楽しい。

湯から上がりしばしクールダウン。
続いて中央に鎮座する小判型浴槽へ。
こちらは広めで3,4人はゆったりと浸かれそうである。深さがかなりあり、120cmほど。大人が腰を付けても顔がでないほどだ。立て膝をついてちょうどいいくらいか。こちらも一段目部分の幅が狭い。嫌がらせかと思うほど腰掛けるには狭い。何パターンかのうちから居心地のよい体制を模索した結果、小判の幅の狭い部分の端と端の段を使用して足、腰を置く。するとちょうど水中に架けられた橋のようになって落ち着いて湯を長く楽しめるのである。

湯温はやはりぬるめ、40℃ほど。ライオンの湯よりはやや温かいような気がする。
小判の真ん中の底にジェット噴出部分がある。泡というほどでなく、水流が強め、といった感じである。それにより若干湯面がうねっている。大海の海面が上下に波打つ(白波は立たないほどに)、そんな雰囲気だ。

湯をじっくり味わいつつ背景を眺める。
1cm四方のチップタイルで描かれた熱帯魚(エンゼルフィッシュ)。女湯側も壁が低めなので見えるがあちらは鶴。リアル志向でなくかわいらしいデザインである。

湯から上がり体を冷ます。
女将さんは静かに読書。女湯側からは若い女子の声。男湯側には私一人。
常連の湯道具が置かれている棚がある。ぼやっとそれを眺めていると、途中湯客が一人訪れそこから道具を取り中に入っていった。今までも今日も明日も、この先ずっと変わらない(でいてほしい)街の銭湯の様子。
写真を一枚、取りたい気にも駆られたがこの情景を指先一つで過去の一枚にしたくない思いもあり、あとただ単に言い出しづらい自分の気の弱さもあり、何ということもなくただ静かに外に出ることにした。

道を進めばすぐに天神の活気ある街の中へ。
また気軽に湯に浸かりに来たい、楽しい街と味わいある銭湯だった。


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2010年8月21日土曜日

163.練馬区桜台 辰巳湯

練馬区銭湯、辰巳湯を訪れた。

中央口から西友を抜け、日乃出湯の前を通りすぎ、大門通りを北へ。


6分ほどで辰巳湯だ。
辰巳湯の前にはスーパーあまいけがある。こちらの銭湯はマンション銭湯で一階の通りに面して歯科があり、右脇から奥に入るとコインランドリーがあり、その先に玄関口。
松竹錠の下足入れに靴を預ける。全部で98足収納可能である。

自動ドアから中に入ると建物の幅一杯がフロントスペース。コインランドリーからも直接フロントに入れるようになっている。

床は木の板がよく磨かれていて気持ちがよい。
ソファは4人が腰かけられるほどの大きさ、地デジ対応済の液晶テレビ、ドリンクケースには牛乳やビールもあり、その他下着類なども販売している。

それでもフロント前は広々としている。
丁寧に接客をされている親父さんに湯賃をお渡しし、左手の男湯へ。

マンション銭湯だけに天井は低い。
ロッカーが並び、サウナ用ロッカーもいくつかある。松竹錠のシリンダ式である。

体重計はデジタル式でKUBOTAのもの。腰までの高さしかなく、控えめな存在感である。
脱衣場はやや狭い印象を受けるが、それはすぐ外側に露天風呂が設置されている為。サッシから露天風呂のすぐ脇に出る事もできるが、その先には貯水槽しかない。
パパッと服を脱ぎ浴室へ。土曜の夕方の自分、湯客は10人程である。あまり広くない浴場ではあるが繁盛しているように見える。
カランは外壁側から3-4□4-5(-は通路、□は島)。立ちシャワーは二基ある。
やはり天井は低く、限りなくフラットに近い。奥の浴槽スペースから脱衣場に向けて緩やかに下り勾配になっている。これなら浴槽で湯に浸かっているときに冷たい水が肩に落ちる事も少ないだろう。

さて体をしっかり洗い浴槽へ。
奥の壁に浴槽が三つ並んでいる。背景はなく、窓が開け放たれている。外には駐車場や低層の建物など。駅前は高層マンションが目立つ練馬だがこの辺りまでくればそういった建物もない。

浴槽は女湯境から円筒形ジェットと座ジェットの浴槽、中央に浅い浴槽(ジェット二基付き)、外壁側に薬湯槽、今日は緑茶である。

まずは円筒形のジェットから。湯温はぬるめ、40℃ほどか。勢いのあるジェットが疲れた体を包み込む。快適だ。
すぐ隣は座ジェット。水枕も完備されており、しっかりと冷えている。
ぬる湯なので体はなかなか温まらないが、しっかりと体に火を入れたいお方はサウナを利用するべきか。サウナは300円のようだ。外壁側に設置されている。

続いて中央の浅い浴槽へ。
こちらにはジェットが二種類。湯はやはりぬるめで、じっくりと長い時間をかけて入浴できるようになっている。

外壁側の薬湯は深めの浴槽になっている。湯温はやはりぬるい。
緑茶の香りはさほどしないが色は濃くて体によく染み込んでくるようだ。
背景もないし、カランも近いので湯に浸かりながらも目のやり場には困る。何となく目を閉じていろいろな思いを巡らして一人楽しむ事にする。

湯から上がりサウナ室の隣の水風呂を通り過ぎる。
あまり体も温まっていないので水風呂という気分でもないのだ。手をつけると水温は22℃ほど。3人は浸かれそうなほどの大きさである。

水風呂の隣のドアから外に出るとそこは露天風呂である。
建物に囲まれている事もあり広い空、という見晴らしは望めないが、外気が心地よい。
5人は浸かれる大きい浴槽には岩型の腰掛けが浴槽内にあり、湯が流れ込む注ぎ口も岩でできていて趣がある。
塩素の匂いがやや鼻につくものの、少しだけなので注ぎ口から離れたところに入ればほとんど気にならない。

さて湯から上がる事にする。
フロント前スペースでエネルゲンを買って一休み。
全体的に湯がぬるめなので、ぬる湯に満足できない方はサウナを利用した方がいい。雰囲気も趣はあまりないけど露天はなかなかいい。
次回来るときはサウナを利用してみようと思う。
帰宅途中、日乃出湯の前を通過する。昔ながらの銭湯を練馬で、というのであれば日乃出湯を利用した方がいいかもしれない。どちらのアプローチからも楽しめる地元の方々は非常にうらやましいものである。


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2010年8月1日日曜日

162.中野区南台 栄湯

8月1日、猛暑である。
ただ外気にさらされているだけで汗がじわっと背中ににじむ。
特に運動もしていないけど、こんな日は暑い湯につかり、冷たい水をかぶり、湯上がりによく冷えた牛乳でも飲みたいものだ。

中野区銭湯、栄湯へ。
中野区の南に位置している銭湯だ。通りを挟んで反対側は渋谷区である。
クルマで来ているので50mほど離れた方南通りにあるコンビニ側のコインパーキングに駐車。日曜日の昼間で一時間400円だ。

 方南通りから斜めに入る狭い小道へ。
住宅が並び、味わいのある通りとなっている。先に煙突が見えている。
栄湯の入り口は唐破風屋根に守られている。自販機を左右に従え、最近では見なくなった公衆電話も。左手にはコインランドリーがある。

暖簾を潜り、下足入れに靴を預ける。
松竹錠の下足入れに、傘入れも備え付けられている。男湯側、女湯側両方に傘入れがある。合わせて100本の傘は収納できそうである。これだけの傘を収納できる銭湯にはなかなかお目にかかれない。

さて左手の男湯へ。
引き戸を開けると女将さんのいらっしゃいませという声が聞こえてくる。
栄湯は伝統的な番台銭湯。
湯賃をお渡ししながら脱衣場を見渡す。
天井は高いが通常の板張り天井。ロッカーは外壁側と島式で合わせて48。松竹錠である。外壁側はせり出しいるロッカーでなく、壁の外側に収納されているので広さを感じる。
他に膝の高さまでの体重計。ASANOと側面台座部分に書かれ、なかなか味のあるたたずまい。その側にはクラシカルなローラーむき出しの体重計だ。

パパッと服を脱ぎ浴室へ。
開放的な浴室。天井は二段式でブルーに塗られた壁と、射し込む光のコントラストがたまらない。高齢のお客が4名ほど、皆じっくりと体をこすっている。
島カランは一列でカランは外壁側から 8-7□7-8(-は通路、□は島)。外壁側の手前二つ、シャワーはあるがなぜかカランが取り外されている。

カランは子持ちししゃものようにふっくらしたカラン。Waguriのものでレバーもふっくら丸いものだ。遊び部分が多いのでがたつきも多いが癒される。

さて浴槽へ。
浅いものと深いもの、二浴槽ある。
浅い方には檻の中に石があり、湯がその石に当たり浴槽に流れ込んでくる演出あり。特にガリウム石などの記述はない。

湯温は41℃ほど。非常に柔らかく心地の良い湯。優しい歌声が聞こえてくるようだ。すーっと肌にしみ込んでくる。
座ジェットは二カ所から。赤外線ライトも一基あるが、残念ながら故障しているのか点いていない。

さて続いて深い浴槽へ。
底でつながっているので湯温はさほど変わらず。
バイブラ状態でジェットは豊富に噴出している。こちらから背景をしばし眺める。
1cm四方のチップタイルで男女ぶち抜きの見事な富士。
しかも浴槽のすぐ上の部分までタイルとなっている。やや淡い色使いなので控えめには写るものの迫力はなかなかのもの。

しっかり温まったところで湯から上がる。
コーヒー牛乳(130円)を頂きながら、縁側へ出てみる。
ほぼ雑草で埋め尽くされた感のある庭であり、あまり見応えはないが鄙びた感じは十分に味わえる。よく手入れされていた時期もあったのかもしれない。
トイレは縁側左にあり清潔。

さて外に出るとする。
女将さんからありがとうございましたとお声をかけて頂く。
肩の力を抜いてほっと湯につかる事ができる地元銭湯。設備は最低限のものしかないが、まぁ柔らかい湯を楽しむだけで十分。夏の銭湯も実にいいものである。


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2010年7月11日日曜日

161.練馬区練馬 日乃出湯

練馬区の銭湯を訪れる事にした。

北口から出てすぐの商店街、北口銀座商店会の一角にある銭湯。
こちらの商店会では福引きをやっていて特賞はちなみに小林幸子公演ペアチケットである。
日乃出湯は銭湯マップを見ると「駅から一分」とあるけど、練馬駅北口の二階から街道の反対側に降り立ち、うまく信号に引っ掛からないように進まないと一分で到着するのは困難だ。


煙突が住宅の隙間から見える。湯の香りもほのかに漂ってくるようだ。



日乃出湯は千鳥破風の表向き。
下足入れに靴を預け、松竹錠の木札を手に取る。
自動ドアの先にフロントスペース。大女将さんがフロントにお座りになられている。フロント手前にいくつも石鹸の入った入れ物があり、お一人お一つお取りくださいとある。強制的であるが、有りがたく頂いておく。
練馬区では本日、イベントで桃の葉湯を実施している。それで先着100名までは粗品をお配りしているそうだ。

他にいらっしゃる常連さん方も頂いていいの?と聞いたりしている。

フロント前の休憩スペースは8人程が休めるソファがある。テレビ、テーブル、植物などは普通であるが、壁の上の方に肖像画があり【初代兼松】と書いてある。

湯賃をお渡しし、右手の男湯へ。
脱衣場は天井高く、格天井。しかも折り上げ式である。床の板張りも綺麗で材質も良さそうである。

月極ロッカーの数が多く、島式の月極ロッカーまである。畳一枚ほどの大きさのそれは高さが膝上程なので腰掛けとしても利用されている。

体重計は家庭用のハローキティ。

パパッと服を脱ぎ浴室へ。こちらも天井高く、二段式。梁が黒く塗り込められている。天井や壁は水色のペンキ。

島カランは一列で女湯側から7-6□6-7(-は通路、□は島)。立ちシャワーは一基である。

湯客は日曜夕方の時分にして7人程。女湯側から元気なおばさま方の声が聞こえてくる。活気が感じられる。

さてしっかり体を洗い、浴槽へ。
大きな一つの浴槽が鉄パイプで三つに仕切られている形。外壁側より座ジェット二基の浴槽、ミクロバイブラ、深湯となっている。

まずは座ジェットより。すぐ側は外壁だが、ガラスブロックで光が取り込まれるようになっている。大井町の朝日湯も同じような形であったがこちらはカラフルでなく透明と灰色の二種類だけ。
湯温は42℃ほど。
続いて、ミクロバイブラへ。
泡の勢いはそれほどではないが噴出口が多いため泡の量が多い。浴槽中央部分はほとんどバイブラである。
こちらから背景を仰ぎ見る事にする。

壁面は広く、一面にペンキ絵を描けば大迫力かと思われるがこちらの銭湯は5m×3mといったほどの長方形スペースの額縁に背景が描かれている。
渓流の絵である。おそらくは中島氏のもの。少し詳細が粗い仕上がりのようにも見て取れる。女湯側は富士。

続いて深風呂へ。
湯温は浴槽がつながっている事もありほぼ同じ。
ジェットなどないので静かな水面となっている。極楽だ。やや塩素のにおいがしないでもないが。

しっかりと温まったところで湯から上がる。

脱衣場の天井からは天井扇が伸びてきているが、稼働してなくて冷風機が冷たい風を送り込んでくれている。湯客は常時7人ほど。なかなか繁盛はしているようである。
フロントスペースで一休み。
梅雨時という事もありパラパラと雨が降り続いている。
窓からは高層マンションがそびえ立っているのが見える。手前には商店街。クリーニング屋や福引き会場など。おばさんが多く歩いている。マンションと商店街、お互いがうまく関係を保ちながら、もちろんこちらの銭湯も末永くこの町を盛り上げていっていただきたいと感じながら家路についた。


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2010年6月20日日曜日

--.渋谷区千駄ヶ谷 鶴の湯

今日は雨は降らなかったが湿度の高い一日。
休日だったしさほど疲れてはいないのだが、日が暮れてくるとなんだか一日の疲れを落としについ銭湯に行きたくなる。
千駄ヶ谷の銭湯、鶴の湯を訪れた。
時間は18時くらい、番台は大女将である。
「いらっしゃい」と元気にお声をかけてくださる。
こちらの銭湯は21時くらいになると決まって親父さんに番台が変わるのだ。番台形式が苦手な女性などは21時前に訪れるといいだろう。

湯客は5人ほど。
釜場への扉は木戸、立ちシャワーは二基、島カランは一列だがシャワーは備えられていない。
浴槽には赤外線ライトも設置されているのだがなぜか今日は点灯していない。
故障中かと思っていたが、途中若者が釜場への木戸を開け中に入っていくと、その後数分して赤外線ライトが点った。ひょっとしたら息子さんなのかもしれない。

その赤外線をしばし体に浴びた後湯から上がる。
脱衣場には6月27日によもぎ湯をやるという告知。ぜひ訪れようと密かに心に誓う。
帰宅する道すがら、99イチバでピルクルを購入。
鳩森八幡神社の緑、ピルクルののどごしが誠に心地よい。


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2010年6月12日土曜日

160.世田谷区三宿 常磐湯

世田谷銭湯、常磐湯を訪れた。

今日は自転車での移動である。つい最近引越をしたものの、自転車だけは以前の住まいに置かれたままだったので今日はそれで転居先に移動しながら、道すがら銭湯を模索し、まだ訪れていない銭湯があれば入ろうという魂胆であった。

用賀、三軒茶屋、駒沢大学辺りはさすがにほとんど行き尽くしていたが、三宿に着いたあたりで見覚えのない煙突を見つけた。
常磐湯である。


三宿には三宿浴場があったが今年になり廃業になってしまった。
常磐湯はどんな銭湯だろうか。
自転車を店頭に停め中へ。
いきなり下足入れが正面に置かれている。透明のプラスチック蓋の下足入れ、鍵はさくら錠である。左に3人が腰掛けられるほどのベンチがあり、棚には大型船舶の模型が二つ。ご主人のご趣味だろうか。狭いながらも休憩スペースとなっている。

右手にはフロントスペース。ご主人が笑顔でお出迎えである。
サウナ料金は250円のようである。
さて右手の男湯へ。のれんはたれが長く、「男」とわかりやすく筆で書かれている。

脱衣場は天井高いが狭く感じる。階段がついており上には休憩室とある。
体重計はデジタル式でTANITAのもの。そのほかIHI製のオゾン発生装置が置かれており、オゾン発生中、と書かれている。そういわれると少し居心地がいいかなという気分もする。
全体的には趣はなく、実用的な大浴場の脱衣場、といった様子。
休憩室を覗いてみるが、灰皿があり、マッサージチェアがある。扉があり個室になっているのでタバコのにおいが充満しているのだろう。嫌煙家の自分としては入室を控える事にする。

さてパパッと服を脱ぎ浴室へ。
天井高く二段式の浴室。
サウナ室が女湯境の手前壁際にある。デジタルでただいまの温度「96℃」と表示されている。
島カランは一列、女湯境より4-5□5-5(□は島、-は通路)となっている。立ちシャワーは一基。島が一列でも広々といった感じもないので幅は少々狭めかなと感じる。
浴槽は奥に浅深の二浴槽、それと水風呂が脱衣場寄りの外壁側にある。贅沢にも岩風呂形式になっている。

湯客は5人ほど。40代〜50代と言ったところだ。
さてカランを確保ししっかりと体を洗う。
岩風呂の壁に張付けられている檜のせいだろうか、香りがほのかに浴室に漂っている。世田谷の藤の湯を思い起こさせてくれる。湯の香りと檜の香りはとても相性がいいと改めて感じる。

続いて浴槽へ。
今日は薬湯のようである。ペパーミント&オレンジとある。色は薄く水色がかっている。浅い浴槽も深い方もそこでつながっているため深浅どちらも薬湯だ。

浅い方はお客が多く入っていたため深い方から。
湯温は42.7℃、とデジタル表示されている。確かにその通りであると思う。ペパーミントとオレンジの香りがほのかに漂ういい湯である。背景をぼんやりと眺めるが、なぜかカラーコードである。10色の色相が3列。何を意味しているんだろう。深く考え込む事もなかったが、意味ありげだ。でもおそらく何の意味もないんではないだろうか。その昔はペンキ絵が描かれていた時代もあるのかもしれない。

続いて浅い方へ。
こちらはミクロバイブラが景気よくぼこぼこと泡立っていてにぎやかだ。
湯温は41.6℃と表示されている。
しっかり温まったところで水風呂へ。
二人が入れば窮屈に感じるほどの浴槽だが、入り口が狭いので実際は一人で満杯と思われる。水温は16℃とデジタル表示。冷たさがマイルドに肌を刺激する。非常に気持ちいい。サウナと行き来すればさらに快適だろう。次に訪れたときの楽しみにとっておこうかと思う。

さて湯から上がる。
フロントは眼鏡の若女将におかわりになられている。丁寧な接客はご主人譲りのようだ。
実用的な銭湯だが水風呂が特筆すべきものとして確固たる地位を確立していると感じる。また近くに来たときは寄ってみたい銭湯だった。


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2010年6月1日火曜日

--.世田谷区玉川台 藤の湯

藤の湯を訪れた。

3年住んだ世田谷から引っ越す事になり、常湯としてよく利用させて頂いていた藤の湯ともお別れとなる。お別れというのは大袈裟のようだが、こちらの銭湯は近くに駐車場はないし、駅からも遠い。離れて暮らすとなると気軽には訪れる事はできないわけだ。

訪れたのは午後5時頃、さっそくフロント前では常連だろうか、おじさんと女将さんが語らっている。

藤の湯のサウナは男湯のみ。これまで気になりながらも一度も利用したことがなかったので試してみようと思う。

サウナ料金は300円。
脱衣場からフロントの女将さんへは小窓を開けて用を伝える。
すると黄色いバスタオルを手渡された。

湯客は10人ほど。年齢層は高め。時おり湯客同士の会話が飛び交っている。
時間が遅くなると学生の姿もちらほら見えるようになってくるはずだ。

さてカランを確保し体を洗うことにする。
サウナ用タオルを引っ掛けるとこがないので、カランの上、湯がかからないほど離れた位置に置く。

ぬるめの檜風呂に浸かり、少々温まったところでサウナ室へ。

脱衣場の外壁側に扉があり、そこから中に入る。
中は天井やや高く、しっかりとしたひとつの浴室であった。

壁は幅10cmほどの模様が高さを違えて縞模様を形成している。モダンである。

そして手前に水風呂、二人が入れるほどの大きさ。その隣には円形風呂。しかしこちらには湯は入っておらず、中にもうひとつ、木の浴槽が置かれている。蓋がしてあるので中を覗いて見るが、残念ながら湯は張られていない。

こちらの浴室にはカランもある。5つ並んでいるが水も湯もでない。
サウナ室(と思っていたがつまり一つの浴室であった)に入って右手に進んだところに真のサウナ室がある。

中に入ると床の木材が軋む音、椅子に腰かけた後は物音は一切聞こえて来ない。非常に静かな空間だ。サウナ室を利用する客が少ないと言うこともあるが、何よりも厚い壁に隔たれた浴室の、さらに内側のサウナ室にいるという事がこの静けさを作り出しているのだ。
乾式サウナで温度計は95℃を指している。しかしこれは壊れているんだろう、実際はそんなにはないはずだ。
テレビをはめ込むくぼみもあるが、中には明かりの灯っていないランプと目覚まし時計がある。

その他、特別なものは見当たらない。汗が吹き出し、あまりの静寂に我を見失いそうになる頃、出て水風呂に浸かる。

こちらの水温は12℃と水温計に示されているが、実際はそんなには冷たくはないだろう。

普段利用している藤の湯の浴室とは空気があまりにも異なり、不思議な時間を過ごすことができた。
昔はどんな使われ方がされていたのだろう。
円形風呂が活躍していた頃はどんな状況だったのだろう。憶測を巡らせながら、さらにサウナ室でストイックに体に熱を入れる。

しっかり温まったところで藤の湯を後にする。
新寿湯が廃業となり、それからはずっと藤の湯を利用してきた。これからもいつまでも瀬田の街に湯の香と煙突の情景を残していって貰いたいものである。
街は変わるがいつまでも見守っています。



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2010年5月25日火曜日

159.世田谷区梅丘 山崎湯

世田谷の銭湯、山崎湯を訪れた。

山崎湯は世田谷区役所の近くにあり、静かな住宅街の中にある。
マンションの一階にある銭湯だ。

100mほど離れたコインパーキングに車を停め、煙突を探す。低層住宅地なのですぐに煙突を発見する事ができる。


どんよりとした空模様、雨がぱらついては気づくと止んでいる。地面は常に湿っている一日だった。そんな中途半端な天気に微塵の迷いも感じさせないほど、まっすぐに屹立した煙突が天に伸びている。
所々黒く筋が走っている。荘厳な石柱のようだ。
 入り口は明るく光を放っている。
湯の香りもかすかに漂い、僕の疲れた体を引き寄せている。
屋号は壁に手書きで書かれている。山崎さんだから山崎湯だろうか。

傘立てがいくつも並んでいる。
下足入れに靴を預け、プラスチックの札を手に取る。
中に入ると休憩スペースが広がっている。通りに面している細長い15畳ほどの広さ。ソファがあり、6人ほどはゆったりと過ごせそうだ。

ご主人がフロントにお座りになられている。威厳があり厳粛な父、といった感じだ。しかし接客は至極丁寧、ほっとする。

湯賃をお渡しし、右手の男湯へ。
中に入るとマンション銭湯にしてはやや天井は高く感じる。白塗りで特に趣は感じられないが、手前側の天井寄りの側壁に湖畔の風景画。
その他、体重計はアナログでYAMATOのもの。

厠を拝借したが、和式でかなり部屋が細長い。畳1.5畳の面積が長方形に広がる感じだ。

脱衣場に戻りパパッと服を脱ぐ。
中央部分にゴザ敷きのベンチがある。よく出会うベンチだが、どこで売ってるのだろうか。大工さんがその場でこしらえてくれるのかもしれない。

さて浴室へ。
浴室への入り口は二カ所。中に入ると湯客は4人。平日の夜中はこんなものだろうか。時間は23時ほど。

天井は逆への字型である。1.5階分の高さまで銭湯部分は占めている。
一階が銭湯のマンションに住むと、入浴料金は安くなったりするのだろうか。入り放題だったらかなりのメリットがあると言える。もちろん銭湯好きでなくては大してメリットはないかもしれないが。

空いている事もあり難なくカランを確保。
体をしっかり洗うと浴槽に向かう。

こちらの浴槽は奥の壁に配置された一つの大きな浴槽のみ。
座ジェットが二基、ミクロバイブラ、赤外線、ガリウム石(断定できないが)といったところだ。
まずは座ジェットから。
湯温は42℃ほど。
水枕も完備されているが、冷たさはあまり感じられない。といっても冷え過ぎもよくないので温度調整は難しいところだ。
湯は柔らかく心地よい。43℃に近い温度だ。お客が頻繁に水を埋めている。

続いてミクロバイブラへ。
こちらには赤い赤外線ライトも側壁についており、バイブラを浴びつつ、赤外線を体に当てる事ができる。浴室にある唯一の張り紙はこちらについている赤外線浴についてのもの。三協鉄工所という大田区にある会社が提供している赤外線ライトのようだ。今もあるのだろうか。

背景は基本的に何もないが、線形で女湯境部分に向かって上がっていく。そして中央部分で女湯の線と接合している。モダンな描写だ。

よく温まったところで立ちシャワーでクールダウン。
続いて浴槽の隅にある檻の中に石が入っているところへ。そこに湯が当たり浴槽に流れ込んできている。これは一般的にガリウム石というのが東京銭湯によくあるパターンなのだが、こちらにはどこにもこれに関して張り紙などがない。単なるその辺にある石なのかもしれない。しかしその湯が石に当たり、浴槽に流れ込んでくるという絵を楽しむだけでも入浴のひとときが楽しいものとなる。

しっかりと温まったところで湯から上がる。
脱衣場は音楽もテレビもなく静か。住宅街の静けさはこちらにも連鎖している。
休憩所はテレビがあり、少し音があるが、全体的に静かで落ち着いた雰囲気だ。

外に出てもやはり静か。
一日仕事で疲れた後、銭湯で静かなひとときを過ごし頭を整理するのにちょうど良い。
明日への活力を注入したところで帰宅する事にする。


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2010年5月23日日曜日

158.三鷹市井口 のぼり湯

今日は、三鷹市銭湯、のぼり湯を訪れた。

駐車場は砂利敷きでかなり広い。10台くらい。駐車場からは銭湯のブルーの煙突を拝める。




建物の側面からは屋根が垣間見える。
正面は車通りの比較的多い道があり、挟んで向かい側にはマンション。その麓からのぼり湯を写真に収める。

正面から見ると、千鳥破風の屋根が見えるが入り口は改装され、下の部分はほとんど青色の壁で隠れている。

下足入れは松竹錠。
靴を預け木札を手に取り自動ドアを潜ると中は休憩スペース、三人分くらいの椅子がある。マッサージチェアもあり。テレビを見ながらゆったりできそうだ。

フロントは男湯、女湯を背にして中央部にあり女将さん接客をされている。湯賃をお渡しし、右手の男湯へ。

脱衣場は天井高く背丈ほどの高さまでの壁はグレーでシック、天井は二段式だけど平たく格子状にはなっていない。
改装されて何年も経過してはいないようで清潔だ。

体重計は膝までの高さのもの。パネルが自分しか見えないようになっていて、レンズを見下ろすようになっている。他のどこでもみた事のない、面白い形をしている体重計だ。
ロッカーの鍵も松竹錠、洗面台など新しくおしゃれなものをチョイスされている。庭などはないが清潔なので居心地がよい。

パパッと服を脱ぎいざ浴室へ。
こちらも天井高く、開放感がある。しかし二段式ではなく船底天井。
外壁側は木材が使われたりしているが全体的にはグレーのペンキ、おしゃれである。

外壁から奥の壁にかけてL字型に浴槽が配置されている。女湯境に露天風呂、ドアから出る形になっている。

湯客は10人ほど。お子さん連れの方もおり、賑やかだ。カランを確保ししっかりからだを洗う。島カランの上には落ち着いた灯籠のような照明器具がある。カランの鏡も丸型や三日月型もあり凝っている。

さて浴槽へ。
L字の浴槽はすべて繋がっている模様。奥壁にはミクロバイブラ、外壁にはジェットが側壁から一ヶ所噴出している。
あと、やけに浅い浴槽が手前にある。半身浴ようだろう。湯温もどれも41℃ほどとぬるめで体を気遣った設定となっている。しかしいい湯だ。

続いて露天へ。
ドアを出ると左手にベンチ二基、4人はゆったり座れそうだ。右手に浴槽。岩は若干高い位置にありごつごつとその姿を示している。女湯の境壁があるが、その先はおそらく女湯の露天だろう。
岩に足をかければ子供でも容易に覗けてしまいそうである。

湯温はやはりぬるめの41℃。
5人くらいはゆったり入れそうな大きさである。塩素の香りも全くしない、柔らかさのあるいい湯だ。

さて湯からあがる。
壁には今月のイベントという紙が貼り出されており、生バラ湯やジャスミン湯など、面白そうな湯がイベントとして組まれている。今日は残念ながら何もない日だが、主に日曜、週に一回ほどは楽しめるようだ。


お客も多く、地元に愛された銭湯とお見受けする。
設備もしっかりとしており、清潔感漂う居心地のよい銭湯。
次に来る時はぜひ他の種類の湯を楽しみたいものである。


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2010年4月24日土曜日

157.清瀬市中清戸 宝湯

清瀬市銭湯、宝湯を訪れた。

ここには以前間近まで来たことがあるのだが、駐車場有りと謳いながら(銭湯マップにそう書かれている)どこにも見当たらないため諦め他に行くことにしたという経緯がある。
その後どこかのサイトで市役所の駐車場が利用可能と言うことを知ったので、再度来訪。



到着すれば確かに宝湯の目の前は広大な市役所の駐車場。昔から市役所と共にこの街の発展を見守って来たと言うことで駐車場も共同なのだろう。
時間は15時半過ぎ。
駐車場からは宝湯の煙突も望める。周りに高層建築が皆無なので煙突も我が物顔で居心地がよさそうだ。

ぐるりと一周巡ってみると廃材置き場があり、ペンキ絵のお試し?のような板も置かれたりしている。


そして広告板もある。


釣り宿・舟、とあるが柳瀬川で釣りでもしたのだろうか。
いや、隣の川島交通というタクシー会社は市外局番が04992である。長いなと思い検索を掛けてみるとこれが伊豆大島。なぜここに伊豆大島の看板が・・・。ご主人は伊豆のご出身だろうか。


煙突には郵便受けがくくりつけられている。清瀬の宝湯と書くだけで簡単に郵便が届けられるだろう。こんなに分かりやすいランドマークは他にない。


宝湯を囲むようにクリーニング屋、魚屋など銭湯街が小規模に展開されている。ひなびた感は拭えないがその昭和の埃っぽさが肌にビシビシ感じられてたまらない。


そしてネコも何匹かひなたぼっこをしている。警戒心が強いのでそこまでいい思いばかりをしている訳でもないらしい。なので離れた位置から写真を撮らせていただく。

さて銭湯へ。
千鳥破風がちらちらと壁上に見えるが基本的には改装され隠れてしまっている。改装といっても最近ではないようでそこかしこに朽ち始めが見てとれる。


中に入ろうかとしていると、ご主人だろうか、中に駆け込みながら「4時からだけど中に入って待っていていいから」とのこと。

今は15時40分くらい。
下足入れに靴を預け、鉄の札を手に取る。中は寂れた街のスナックのような、そんな内装。椅子が丸く腰当ての部分が少し高くなっているまさにスナックの椅子で、それと床や壁のカーペットや壁紙の暗い感じがそれなのである。


テレビを付けていただいたので眺めながらしばし開店までの時を待つ。

天井は低く、銭湯のフロントという感じはあまりない。ドリンクケースが二つ。1010の4月号が置かれているけど2月号まであるので地元の方々にはあまり銭湯情報を吸収しようという積極的なお方は少ないようだ。

ご主人は男湯に入り、女湯に入り、どたばたと開店準備をされている。そんな中、湯客(皆女性)が何人か訪れ、吸い込まれるように脱衣場に入っていく。時間はちょうど16時。ご主人もぴたりと準備を終えたようでその方々から湯賃を回収していく。

私も続いて脱衣場へ。
男湯は左手だ。男側では一番乗りで中に入る。
入ると同時にご主人が駆け込んでいきサウナ室に消えていく。床にはぞうきんがあったりする。とにかくどたばたしているご主人である。

男湯側はまだ開店準備が万全でないようだが 、気にせずロッカーを確保。
パパッと服を脱ぎ、脱衣場の観察をする。
天井は高い。しかし白い天井で味わいはない。体重計はアナログでTANAKA製。レトロ感というよりガムテープなどで補修されてボロボロ感がある。相当酷使されてきたようだ。

庭が壁までの1mほど、横に数メートル広がっている。苔むしているしそんなに見所はないけど明るいので若干気分も清々しい。

女湯境の壁上にテレビがおかれているが電源は入ってない。まだ開店したてなのだ。いろいろと電源は入ってなくてもおかしくはない。サウナ室やカランなど、まだ十分に熱くなっていないんじゃないだろうか。

さて浴室へ。
青い壁に天井に、そして富士のペンキ絵。まずこれは印象的だ。丸山氏の富士。湯につかるのも忘れて鑑賞気分となる。
天井は高く二段式。外壁側にはサウナ室があり、カランが4つ。島カランは一列なので外壁側から4-6□6-5(-は通路、□は島)。立ちシャワーは女湯境の壁に一基ある。

一番乗りなので余裕でカランを確保。案の定、湯はでない。まだ温まりが足りないようだ。しばし出し続けるもずっとぬる湯なので諦めてシャワーを出す。シャワーは適温である。
体をしっかりと洗い、浴槽へ。

こちらは奥の壁にずらっと浴槽が並ぶ形だ。外壁側に水風呂、中央にミクロバイブラと座ジェット二基、女湯境の壁際に森林浴ルームがある。

まずはミクロバイブラから。ここは半円型に洗い場側に浴槽の縁がせり出している。そちらに背を当てると背景をじっくり拝める。残念なのは森林浴の個室があるせいで座った状態では富士を見ることができないということ。

それはさておき、湯温は42℃ほど。ミクロバイブラ浴槽は座ジェットなども同じ広い浴槽なので 湯温はいずれも同じ。
壁に檻があり中に岩が二つ、ゴロンと置かれている。それに湯が当たり湯船に流れ込んでくる。ガリウム石などの張り紙はされていない。その湯が流れ込んでくる所のすぐ下に袋があり、中に備長炭が入っている模様。その張り紙はされており、備長炭風呂によりアルカリ性となった湯は心地よい、というようなことが書かれている。

湯は柔らかいが塩素臭が漂う。水風呂からだろうか、徐々に薄らいでいくようなので開店したてだからかもしれない。

丸山氏の背景は「西伊豆 22.2.9」と書かれている。今年に書き換えられたものでまだ状態はいい。岩の淵の優しい筆致がすっと瞼に入り込んでくる。心地よいひと時だ。

続いて座ジェットへ。二基あるが浅い座ジェットと深い座ジェットの二通りとなっている。水枕は共通でしっかりと冷たいが、残念なことに少し位置が高い。

十分温まったところで水風呂でクールダウン。水温は19℃ほど。キンキンに冷えている。
水風呂の栓を抜かないこと、という注意書きがあったが、そんなことをする方がいらっしゃったということか。

続いて森林浴の個室へ。
引き戸から中に入るとミストが噴出されていて、正方形の浴室は2人が入れるほど。湯温は同じ42℃ほど。フィトンチッドの香りは感じられないが、マイナスイオンが充満した個室で疲れを取ることができる。

丸山氏の背景を最後にまた眺め、湯から上がる。
気づくと湯客が増えて7人ほどになっている。

清瀬の市役所前にある銭湯。
昭和の香りを今でもほのかに残している銭湯だ。

帰りに清瀬駅前を過ぎ、清の湯の前を通り過ぎる。廃業となってしまったようだ。お気に入りの銭湯だったのでなくなってしまうのは寂しい。しかし時の流れはどうにも止められない。記憶の中にいつまでも残る銭湯であり、そこに銭湯がなくなる映像を見ないように、特にマンションなどになってしまったら悲しいのでいつまでもそこにあるのだと思い込んで過ごしていくことにしよう。


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2010年4月11日日曜日

156.新宿区神楽坂 熱海湯

新宿区神楽坂にある銭湯、熱海湯を訪れた。

今日の気温は20℃ほど。
街の桜の木も、花びらが舞い落ちて、葉の緑が濃くなってきている。
休日の今日は池袋で買い物をした後にぶらぶら湯を求めてさまよい歩いていると、なんとなく江戸川橋公園を過ぎ、 なんとなく神楽坂まできてしまった。
春は何ということもなくただ街を歩きたくなってしまう季節なのかもしれない。

 神楽坂上から早稲田通りを下って途中の路地裏へ。細くてくねくねと魅力あふれる小道が多い街だ。自転車も車もバイクも自由に出入りできない道が多いのは歩いている人間にとっては非常にうれしい。

そして熱海湯の入り口の前にきた。


手入れされた盆栽が飾られている。花をつけているものもあり美しい。
のれんはたれが短く、ほぼ中は丸見えと言っていい。けど、中は別に見えていいものだし(番台裏の壁)、たれの長さは京都など中が見えると困る地域と比べて短いものとなる。

靴を脱ぎ、下足入れに靴を入れる。錠前はカナリア。番台の女将さんの背中が窓から見えている。番台の窓を開け放っている。男湯は右側。引き戸を開け脱衣場に入る。
天井は高く、格天井。隅は折上げられてはいないけど、丸くなっていて白く塗り固められている。

女将さんに湯賃をお渡しし、ロッカーを確保。
常連さんが脱衣場に4人ほど。競馬の話や、野球の話で盛り上がっている。女将さんもそれらの話にうまく合わせており、会話がキャッチボールとなり途切れそうにもない。

島ロッカーが一つあり、外壁側にもずらっと並んでいる。膝の高さに月極ロッカー。
女湯側にはコインロッカーがあったが、男湯の手前壁側には池がある。あと木彫りの観音様が二体。池は二段式になっていて、金魚の池と鯉の池。水もきれいで音も楽しい。狭いが長く見ていても飽きない。

隣に厠があり、広さは畳半畳ほど。よく手入れされていてきれいで、小さな窓から池の音が聞こえてくる。

女湯境の壁上は地デジ対応の液晶テレビ。
このごろの銭湯も地デジ対応が進んできているようだ。
ロッカーの錠前は松竹錠。
パパッと服を脱ぐ。脱ぎながらもロッカーの上を何となく見ると、大きな戦艦の模型。詳しくないのでよくはわからないが大和か紀伊だろうか。特に名前は書かれていない。ご主人のご趣味なのかもしれない。

浴室へ入る前に体重計に。
アナログ体重計でメーカーはHOKUTOWのもの。
だいたい銭湯の体重計は浴室に向かって立つように設置されているものだけど、こちらの銭湯は番台の方に向かって立つようになっている。

引き戸を開けて浴室へ。
手動なのでしっかり閉める必要がある。
天井は二段式で開放感がある。最上部の天井はやや狭い気もするが、まだ時間は16時くらいで明るく、光が存分に差し込んでいて気持ちがいい。

島カランは一列。女湯境より6-6□6-6(□は島、-は通路)。島にはシャワーも鏡もなくカランのみ。鏡がないと言っても端の鏡も狭くよく映った自分を確認できないものなので、こちらの銭湯は入浴中にさほど鏡を必要としないスタンスである必要がある。

立ちシャワーは女湯境の壁、脱衣場寄りに一基。湯しかでないシャワーである。
湯客は5人ほど。終盤は私以外では一人となった。夕方の時分なのでもう少し遅くなるとまたピークがくるのかもしれない。
カランで体をしっかりと洗い浴槽へ。

浴槽は浅深二浴槽。
浅い方には赤い赤外線ライト一基と座ジェットが二基ある。
湯温は43℃ほどで、しっかり温まる。
他の湯客が浸かるたびによく水埋めされており、実際のところはもう少し高めになりそうだ。
カランで水を浴びクールダウンした後に深い方へ。
こちらは備長炭風呂になっていて、奥の壁にびっしり備長炭が並んでいる。それを見ているだけでも圧倒されるけど、湯にそれが染み込んでいると思うとありがたい気持ちになる。
香りはそれほどしないが、湯は柔らかく感じる。
深い方の湯温は44℃ほど。

こちらから背景を仰ぎ見るが、富士山の壮大なペンキ絵。
やや剥がれている部分が目立ってきている。今は亡き早川氏の作品であるので剥がれてもいいからいつまでもあり続けていただきたい。
「富士川 早川氏 平成19年6月2日」。と記されている。
川だけに早川氏ならではの波しぶきは見えないが、静かながらも迫力のある筆致だ。

ペンキ絵の下にはタイル画があり、鯉と金魚が泳いでいる。湯を楽しみながらも数を数えてみた。鯉8、金魚7だった。章仙だろうか、画銘は書かれていないようだ。
女湯境にもタイル画があり、繊細な描き方である鯉や金魚と違い、女湯境側のタイル画は壮大なアルプス・針葉樹林・浅く広い河川の迫力のある描写。

湯から上がり、最後に煙突を見てから帰宅することにした。
マンションの非常階段のすぐ前に煙突。階段から煙突を見てみたいと思った が、憶測にとどめておくことにして帰ることにした。


備長炭の湯も楽しめるし、ペンキ絵も貴重、狭いながらも印象的な庭の池(男湯だけだと思われるが)、それに合わせて銭湯を取り巻く街の雰囲気もいい。近くに住んで毎日のように通いたい銭湯に出会った一日だった。

 
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