2008年12月30日火曜日

63.世田谷区若林 鶴の湯

今日は2008年の仕事納めである。
今日はぜひ銭湯に行きたいと思うので、納会が終わるとクルマで銭湯へ。

世田谷区の松陰神社の近く、鶴の湯へ向かった。
近場のコインパーキングに駐車し、商店街を鶴の湯方面へ向かう。
鶴の湯という屋号には少なからず期待を膨らませてしまう。

鶴の湯と書かれた看板が破風造りのすぐ側で煌煌と輝いている。
しっかり営業しているようだ。

千鳥破風。
全体的に朽ちている様子。

暖簾には赤い字で「ゆ」と書かれている。

下足入れに靴を預ける。入口は自動ドア。素早く開く感度のいい自動ドアだ。

番台形式で、親父さんが座っていらっしゃる。湯賃をお渡しし、ロッカーへ。
島ロッカーが一つあり、その上にはとんかつ屋のマッチがたくさん。あとうちわと1010が置かれている。

壁際にもロッカーがあり、お手洗いへの扉には「しずかにしめること」と書かれている。
このお手洗いを利用したが、板張りの床に窓は端が割れておりすきま風が吹き込んでいる。

倒壊しないだろうか。少し心配になる。

天井は高く格天井。しかし白い天井であるので安い造りなのだろうか。
女湯境にテレビ、そして新しい時計がある。
時計の後ろに縦長の板が貼付けてある。
おそらく昔は柱時計が備え付けられていたのであろう。

体重計はYAMATOのデジタル。
デジタルとはいえ、液晶はレトロ調の色をして、全体的に渋い雰囲気。いつかデジタルもレトロであると言われる時代が来るのであろうか。

シャンプーなど、入浴グッズもいくつかケースに入り売られているものの、ドリンク類は置いていない模様。外にある自販機を利用する他なさそうだ。

あとは洗濯機が二基、旧型の乾燥機もある。

パパッと服を脱ぎ浴室へ。
とても広い浴室だ。天井高く、ん?天井に赤い大きなマル印。あれは日の丸だろうか。

不思議に思いつつもカランを観察。
島カランが二列あり、外壁から6-5-5-5-5-7。
外壁の6のシャワーはホース付きである。
外壁よりの島カランにはシャワーがなく、それに両端のカランの両端のシャワーヘッドは外されている。
おそらく、入浴するお客、脱衣場へ行くお客・入ってくるお客に対してシャワーが当たらないようにする為の配慮、だと思われるがひょっとしたらたまたまそれらが壊れただけなのかもしれない。

一つのカランを目指して歩き出す。
その途中でなにか突起物を踏んでしまう。
どうやらタイルが剥げて転がっているようだ。中には鋭利なものもあるので注意して歩く必要がある。
剥げ落ちている床タイルの場所は決まっているので、お客が座っている場所付近は剥げている床が見当たらないことから、常連さん達はそれを知って行動しているものと思われる。

体を洗いつつも女湯境のチップタイル画に目が止まる。
白鳥5羽に風車小屋が並んでいる。
洋風なデザイン。銭湯の「和」とのギャップが面白い。

体を洗い終わり、浴槽へ。
三槽あり、外壁側が「エッキス」湯、中央が浅風呂、女湯寄りに深風呂である。
エッキスが気になりつつも浅風呂へ。

「超音波気泡マッサージ器」と書かれ、その下に現代人の疲れを癒すための・・ようなことが書かれている。
ミクロバイブラにジェット二基が元気に噴出され、浴槽全体に湯が流れ踊っている。
赤外線ライトも設置されているようだが灯りは付いていない。
湯が柔らかく、とてもマイルド。心地よい。
湯温は42℃ほど。

次に深風呂へ。
湯温がやや高くなり43℃。しかし中央の浴槽とは中でつながっている。
この深風呂から見える位置にタイルの施工が葛西タイル工業であると書かれているのが見える。深風呂のタイル一つをとってみてもとても素晴らしい造り。
壁の部分のタイルは水色、そして下にいくにしたがって濃い水色となり、青となる。
それも単なる青でなく、いくつかのタイルの組み合わせで色を表現している。
まさにその表現するものは海のようである。

ここで背景を仰ぎ見ると、男湯側に富士山があり、女湯側は見える範囲では何が描かれているのかよくわからない。
手前には海があり、浴槽とまさにつながっているようである。
浴槽のタイルが一つ剥がれており、ヘリの部分に置かれていたがその水色のタイルも一色でなくぼかしの技法を使って作成されている。

体も充分温まり、一旦カランに戻り水をかぶってクールダウン。
立ちシャワーがないので何度か水をかぶる。

続いてエッキスの湯へ。
こちらはにごり湯である。透明度は7センチほど。
壁に能書きがあり、昭和なイラストと共に効能が書かれている。
天然の鉱石から作られている入浴剤のようだ。カリウムやナトリウム、カルシウムなど様々な鉱物の栄養分が記されている。
気持ちのよい湯である。湯温はややぬるめで42℃ほど。
さらさらと体に馴染み、芯まで作用しているようである。隣の浴槽とのへりにかき混ぜ板が置かれており、年季を感じるものであった。

さて湯から上がり、脱衣場で着替えているとお客はもう誰もいないようで、親父さんが女湯境の扉を開けっ放しで行ったり来たり、閉店準備を進めている。
テレビでは自動車による事故を放送中。親父さんは「車に乗るならしっかりやれっていうんだ」と私に聞こえるようにお話しになられている。

隙を見てスタンプを頂こうとすると、「仕事が増えるから初めにいっぺんに出してくれ」とのこと。入店時に出せということらしい。

確かにそうかもしれない。
初めはそうしていたのだが、一見さんと思われることに不満があり、最近は帰り際に頂くことにしていた。そのおかげで湯の感想など、お話をするチャンスにも恵まれるようになったのだがこちらの親父さんにはそうもいかなかったらしい。

少し考えて今後どうするか決定しようかと思った。
その後、親父さんは売上金をしっかり向きを揃えて管理しているとお話し。
今までお金を貸しても名前を聞いたりしない、それでも皆しっかり返してくれるともお話しになられた。
売上金を千円札で何百枚もお見せいただいた時は少々面食らったものの、親父さんはとても曲がったことが大嫌いなちゃきちゃきの江戸っ子であった。


大きな地図で見る

62.新宿区市谷柳町 柳湯

柳湯へ。
25時まで営業のようだ。着いた時間は24時頃。1時間もあればじっくり湯を楽しめるだろう。

柳湯はマンションの一階にある。
張り紙がしてあり、「1DK空き部屋あり」と書かれている。
一階が銭湯のマンションだなんてぜひ住んでみたいものだ。銭湯の利用料が無料になったりなんかしたらかなりのメリットだと思うがどうだろう。

柳湯の入口にはライト付きの看板があり、サウナ(無料)と書かれている。
ぬくぬくとね、と書かれた牛乳石鹸の暖簾をくぐり、まず右手の下足入れに靴を入れる。
そして左手のフロントで湯賃を親父さんにお渡し。
男性のみ下足板を預け、ロッカーキーを頂く。
とても笑顔がお優しく、丁寧な接客をして下さった。気持ちがよい。

脱衣場へ行くと、中型の銭湯といった感じの大きさ。
マンション銭湯だけに天井は高くないが低すぎもない。
テレビがあり、音が脱衣場に広がっている。しかし女湯側にテレビはないようだ。

パパッと服を脱ぎ浴室へ。
お客は4〜5人。
島カランが二列あり、奥行きはそんなにない。幅もそんなに広くないものの、通路のスペースが狭くなっているので島カランが二列にできたようだ。
女湯境に6のカラン。うち2つはシャワーなし。4-4-3-4と続くので全部で21か。

パパッと体を洗い浴槽へ。
天井はマンション銭湯にしてはやや高い。M字型の天井で、外壁からフラット状態で2メートルほど天井が続いた後、ほんの少しの傾斜が中央に向かって付いている。
湯煙はものすごく、視界が悪いが雰囲気は良い。
フル回転している一基の換気扇だけではこの銭湯の湯煙を排出しきることは無理のようだ。

浴槽は大きく二つに分かれており、右手は寝ジェットと浅風呂。
左手には座ジェット一基とエステジェットが一基。
まずは座ジェットから。
水枕完備でしっかり冷たい。湯温は42℃ほど。奥行きの狭い浴槽なので足を伸ばすと端についてしまうものの気持ちのよい柔らかい湯。
注意書きに書いてあるが、薪で100メートルの地下水から組み上げられた水を湧かしているそうだ。しかも今日は薬湯で茶色の湯。おそらくジッコウの湯だろう。最高。

続いてエステジェットへ。
こちらは強力ジェットに深風呂の組み合わせ。しっかり手すりをつかんでいないと流されてしまう強力ジェットだ。

続いて浅湯へ。
こちらではのんびり温まりつつも背景を確認。
壁には一面に竹林。
これは既製品なのだろう。あまり雰囲気には感銘しないものの、なかなか癒される背景だ。

外壁側の浴槽は寝風呂。常に激しく泡が噴出しており、そこは全く見えない。横になると湯温が43℃ほど。この寝ジェットのすぐ横には「熱湯が出ることがあるのでご注意ください」と記載されている。
ゆっくり体の芯まで温まることができた。

続いてサウナに挑戦。
スチームサウナで温度は50℃ほど。
二人も入れば一杯となる狭いサウナであるものの、無料であれば問題なし。快適だ。
外に出ると水風呂があるので、何度か往復を楽しむ。
水風呂は水温17℃ほど。
井戸水のせいもあって少々色がついて濁っている。
濁りというか、沈殿物がとけ込んだ様子。

立ちシャワーが一基あり、ボデイシャワーもあるが、こちらはスイッチを押しても起動しないので壊れているのかもしれない。

さて、しっかり体も芯から温まり湯から上がる。
フロントは若い青年に変わっている。次の世代の親父さんであろうか。メガネで知的な感じであるが、丁寧な接客で将来に期待が持てる。
外に出ると看板のライトが消えた。本日の営業は終了のようだ。
この先何年も、何十年もマンションと共に、この街と共に生きながらえていってほしい銭湯である。


大きな地図で見る

61.渋谷区本町 天龍泉

金曜の夜、渋谷区の天龍泉へ。
駐車場が8台あると銭湯マップに書いてあるものの、到着してみると4台置けばもういっぱいという感じ。
8台置くにしても縦長の敷地なので、前に置かれたクルマを一旦外に出したりしないといけないだろう。
看板には奥から駐車して下さいとある。
鍵をフロントにお預けくださいともあるので、奥のクルマが出る場合は手前のクルマを移動させてくれたりするのだろう。
クルマは二台駐車されている。

入口は広く、スーパー銭湯の趣。屋号がネオンサインとなって光り輝いている。
今日は露天風呂が女湯で、打たせ湯は男湯とのこと。
下足を預け、中に入ると右手にフロント。
休憩所が広がっている。
そして50インチはあろうかという液晶テレビ。
目の前にソファが設置されているが距離が近すぎて圧迫感がありそうだ。

フロントには若いお姉さん。娘さんであろうか。
入浴券を券売機で購入。奥さんも一緒に来ているので二枚買ってお姉さんにお渡しする。接客は明るく反応も早い。フロント業務をされて長いのだろう。

右手が男湯だ。
脱衣場は銭湯というよりもジムのお風呂場といった感じ。
デジタル体重計があり、洗濯機が二台。
トイレは和式だった。
パパッと服を脱ぎ浴室へ。

これまた銭湯という雰囲気ではない。
壁のタイルや浴槽の手すりなど、風呂というよりもプールである。
カランは外壁に沿ってあり、島カランは二つであるが、カラン3-3の島カランが二つ。本当に「島」といった感じだ。
数えると23あった。立ちシャワーは二基。

体をしっかり洗い、浴槽へ。
大きく分けて二つ浴槽があり、左手はいろいろな種類の浴槽がある。
まず座ジェットへ。
二基あり、水枕も完備。しっかり冷たい水枕だ。座ジェットとはいえ二つそれぞれに差があり、噴出口の位置が異なっている。
それにしてもあまりに狭い幅の座ジェットである。やや太めの方でさえ腰掛ける際にお尻が左右の壁に突っかかるだろう。

湯温は41℃。ぬるめである。
じっくりつかってもなかなか体は温まらない。
続いてエステバスへ。
こちらは深風呂になっていて、猛烈に激しいジェットが噴出しているのを体に当ててシェイプアップするというもの。
かなり激しいので手すりにつかまっていなければ吹き飛ばされてしまう。体も浮いてしまう。
気持ちいいけどやはり銭湯って感じじゃないなぁ。

もうひとつ、浮き風呂があり注意書きによると寝た状態でスイッチを押すと床から泡が出てからだが浮いてしまうらしい。
しかしそこまで強烈な泡ではないので、エステバスでは体が浮いたものの、こちらは体が揺れる程度。つまりバイブラだ。

もう一つの浴槽は深い部分と浅い部分のある広めの浴槽で、湯温がやや高く42℃ほど。しかし塩素の匂いがなぜか強く、銭湯の趣からはより遠くかけ離れてしまった。

立ちシャワーで火照った体をクールダウンし、打たせ湯の扉を開ける。
二階上ほどまで吹き抜けで、二メートルほどの高さから湯がどぼどぼ流れ落ちて来ている。
下に小さな浴槽があり、腰掛けられるようになっている。完全に一人用の浴槽だ。型を当てしばし湯に打たれる。
確かに心地いいが、目の前の扉から次に入って来たら気まずいなと思いながら打たれる。窓ガラスは霞んでいて視界はほとんど得られないので、誰かが入って来てしまう可能性はある。
肝心の打たせ湯の方は、まぁ気持ちいいがこんなもんかというところ。

浴槽に戻り、すぐ左にロイヤルなんとかというサウナ室への扉があるが、サウナ料金はお支払いしていないので行くことはできず。
サウナがかなり重要度を占めている銭湯であるような気がする。
そう感じるのは全体的に湯温がぬるいこと。
それにこの浴槽だけでは面白みに欠けるということである。

次はぜひサウナ料金を支払ってサウナを利用しようと心に誓った。
休憩所で大型液晶でしばしテレビを鑑賞。首が痛くなり目が疲れた。
次はどんな銭湯に出会うことができるだろう。
どの銭湯も潰れずに今少し、僕が行くのを待っていて欲しいと思う。


大きな地図で見る

2008年12月23日火曜日

60.世田谷区世田谷 天狗湯

12月23日、明日はクリスマスイブである。
しかし銭湯にクリスマスは関係ない。
寒い日はただ温かい湯に浸かりたくなる。
いつか一生付き合いたくなる銭湯に出会うことができるだろうか。

今日は世田谷駅近くの天狗湯へ。
国道246号の駒沢辺りを世田谷駅方面へ進むと10分ほどで付近に到着。
クルマなのでコインパーキングへ。
30分200円。やや高め。

入口にはベンチ。
やや離れたところ右手にコインランドリーがあるが同じ人が経営しているのだろうか。
コインランドリーと銭湯は本当に切っても切れない深い縁がある。
だいたいどの銭湯に行っても当たり前のように鎮座している。
神社の狛犬のようだ。




暖簾は牛乳石鹸。
「そとはさむいネ ぬくぬくあったまろ ぬくぬくネ」
季節に合った癒される文章である。

下足入れが左右に配置され、中央には鏡。
扉のような枠なので番台への入口かなと思いきや、扉ではない。

靴を入れ、引戸から中へ。
左手が男湯だ。
番台にはメガネのお姉さん。文科系である。
最近文科系の番台さんによくお会いするような気がする。

脱衣場の天井は高いが白天井。
二段型の天井で外壁側の天井は低い。
ロッカーの鍵にはメーカーの名前がなく、一周させると鍵が開く。
閉めるときも一周。
ロッカーの扉の内側に「下駄箱の鍵などをお入れください」とビニールのポケットがついている。銭湯を利用していると下足入れの鍵をなくしたというお客によく出会う。それだけにこういうサービスも出てくるんだろう。

トイレをお借りしたが、扉の薄さに反比例してかなり重厚な開き方をする。
ずっしり重いのだ。
しかも鍵が閉まらない。
ガチャガチャやるのもあれなので、早めに用を済ませ出ることにする。
さて、パパッと服を脱ぎ浴室へ。

浴室は広め。
湯煙が濃いめで雰囲気は抜群だ。
7~8人のお客の入り。
島カランが二列で、6-6-6-6-6-5でなんと35もカランがある。
しかも全てステンレス製でキラキラ輝いている。
立ちシャワーが左右壁の脱衣場寄りに二基。
さらに外壁の浴槽寄りに立ちシャワーコーナーがあり、ここに三基の立ちシャワー。
カランだけを見ると大型銭湯と言えるけど、床スペースはそれほどでもない。

まずは体を洗おう。
島カランの上にはステンレスの棚があり、物を置ける。
混み合った時にはここに入浴グッズを移動させて、ゆっくり湯に浸かることができる。
サウナがあれば余計に便利な棚だろうけど、ここにはサウナ室はなし。

目につくのは注意書き。
なぜか雑貨屋のポップのように注意書きのメモがカランの上の棚に貼付けられている。
「シャワーの水を出しっぱなしにしないこと」
「軽石、シャンプーなどを使用しているときは水を止めること」など。
基本的に無駄に水を使うなという内容。
番台形式だと入浴中のお客のマナーにはよく気がつくのだろう。

体を洗う。
シャワーは使い初めに「シュパパパ」と音がする。
次第に普通の水圧になる。

浴槽ヘ行くとしよう。
こちらは浅風呂と深風呂の二つ。
浅い方には「ぬるめ」と書かれ、深い方には「あつめ」と書かれている。
ではまず浅い方から。
ぬるいのかと思いながら浸かると43℃ほどの湯温。決してぬるくはないような気がする。
ジェットは二基で、端の方はミクロバイブラ。
ミクロというほどではない泡だからバイブラ、かな。

天井を仰ぎ見て、とても高い二段型であることを確認する。
背景は白樺のタイル。
今日はスカイミントの湯だ。とても心地よい。
深風呂の方に「スカイミント」と書かれているが、下で浴槽はつながっているのでどちらも同じ湯の色。
となると「あつめ」とはいえ、そんなに熱さは変わらないだろう。
と思っていると、浴室へ10人ほどの高校生くらいの学生が入って来た。
皆太めの体つき。相撲部といったところだろうか。
次々とカランを埋めていき、直ちに自分のカランスペースのすぐ側にまで相撲部に占拠されてしまった。
彼らが浴槽にみんな浸かったら湯がなくなってしまうぞ。
そんな危機感を覚えつつ、深い方の浴槽へ。

やはりさほど湯温は変わらず。
相撲部の動きを眺めていると、カランのボタンをくるくる回したりしている。
確かにここの押しボタンはひねるカランのような溝付きの形をしているのだ。
しかし何度も回している。銭湯に来たことがないのだろうか。

しゃべっている言葉も東北の訛りが激しく、おそらく東京に試合かなんかで来ている感じだ。
すると相撲部連中が皆一斉に湯に浸かりに来た。
そそくさと湯から上がる。
相撲部連中が次から次へと入っても浴槽の湯は溢れたりはしていない。
うまく浴槽の湯量は調整されているんだろう。ほっとした。

さて脱衣場では残り一本のフルーツ牛乳110円を頂く。
女湯境の壁の上にはテレビが設置されている。
ペンキ絵がないだけで、実用的な銭湯といった趣になってしまう気がした。
ただ湯に浸かりに来たんですよといった感じだ。
今日湯に浸かりに来た相撲部連中にぜひ立派な東京銭湯のペンキ絵を拝ませてやりたかった。
それだけで彼らの今後の人生に少なからず影響を与えたかもしれないのだ。

天狗湯という屋号に期待を膨らませていたが、現代にしっかりと息づく銭湯だった。
昭和の香りはかなり薄い。
今の時代は平成なのだ。無理もない。
コインパーキングまでの帰り道、たこ焼き屋が一件。
妙にそそられるものの、奥さんの待つ家への道を急ぐことにした。


大きな地図で見る

2008年12月21日日曜日

59.杉並区桃井 秀の湯

12月21日、今日は冬至である。
冬至と言えばゆず湯。
浴場組合のサイトをチェックしていると、杉並区の銭湯はスピードくじ付きとのこと。
では杉並へ向かおうか。

杉並区は銭湯のサイト(こちら>>>)があり、googleで「せんとう」と入力し検索すると一番上にくる。しっかりSEO対策されている模様。

肝心の内容もしっかりしており、営業日や写真、休業情報など頻繁に更新されている。公衆浴場への情熱が感じられるサイトだ。将来は杉並に住みたいなと考える。銭湯に関して言えば大田区も捨てがたいのだが。

羽田経済新聞の記事によると今日東京浴場組合の銭湯で使用されたゆずは25トン。
5キログラムの箱5000個というからものすごい数だ。

都内最多、大田区の銭湯70軒で「ゆず湯」−高知産2トン超使う(羽田経済新聞)

大田区は銭湯の数も多いが、大田区浴場組合の専用ホームページは今のところ存在しない。
大田区のサイトに少し銭湯のコーナーがあるだけ(こちら>>>)。
これだけではどうにも寂しいので、ちゃんとした情報ページを作っていただきたいものだ。
世田谷に住んでる分際でこういうことを言うのもなんだが。

ちなみに世田谷区の銭湯ページはリストも載っていて少し情報量も多いが(こちら>>>)、休業してしまっている南烏山の松の湯や、既に廃業している弦巻の弦巻湯がまだ掲載されているところを見ると頻繁に更新はされていない模様。
でも2008年6月に廃業した玉川の新寿湯は掲載されていないから一年に2回ほどは見直しているのだろう。

さて、今日は「秀の湯」へ。

青梅街道の環八近く。
角を曲がるとすぐに秀の湯はある。
駐車場は50メートルほど離れた位置にあり、12台駐車可能。
12台とはいえ軽自動車しか停められないスペースもあるので注意が必要だ。

隣にコインランドリー、中華料理屋があるがこちらは定休日だった。
小腹が空いたので何か食べようと少し歩き、青梅街道を渡り「一圓(いちえん)」というラーメン屋へ。
「上荻セット(890円)」を頂いたが、餃子が肉いっぱいでジューシーでおいしく、味噌味の上荻ラーメンもおいしかった。

お腹もふくれたところで銭湯へ。
建物の形は正面からは把握できない。非常に奥まったところにあるのだ。
下足入れに靴を入れ、中に入ると右手にフロント。
そして左手には休憩所だ。
マッサージ器が3つあり、イスもいくつか。子供が好きそうなおもちゃが端の方にうずたかく積み上げられている。

湯賃をお支払いし、くじを引く。
奥さんもいるので二回。
ポカリスウェットの小さいやつと、共通入浴券が二枚当たった。
女将さんは「大当たり〜」とおっしゃっていた。

クルマの鍵を預け、駐車位置をお伝えする。
名前も聞かずに預けるのか。少々セキュリティー的に不安である。

右手が脱衣場。
脱衣場へ行く道には水槽があり、グッピー、コリドラスジュリーなどが芋洗い状態となって泳いでいる。とくにコリドラスは巨大である。7~8センチほどの体調。これは大きい。

脱衣場は天井高く、白い天井。
お客が10人ほどいらっしゃる。
浴室を覗いてみてもお客はかなり多い。
冬至のせいか繁盛しているようだ。でも、普段ガラガラの銭湯にいきなりこれだけのお客が集まるとも思えない。普段から人気のある活気ある銭湯なんだろう。

脱衣場にはテレビもあり、4人ほど腰掛けられるソファもあり。
サッカーのクラブW杯チャンピオンシップの3位決定戦をやっている。

パパッと服を脱ぎ、浴室へ。
それにしてもお客が多い。空きカランを探すのに苦労する。
島カランが一列で、女湯境にずらっとカランが11並び、島カランは6-6なので全部で23。
いや、こちらの銭湯には露天風呂ガあるのだがそちらにあと3つカランがあるので全部で26だ。
しかし露天のシャワーは一基故障中。

立ちシャワーは二基ある。
サウナは脱衣場側にせり出す形で設置してあり、バスタオルがサウナ利用証代わりになっている。

しっかり体を洗い、浴槽へ。
外壁側が浴槽に使われているのでL字型に配置されている。
ちょうど同じ杉並区の小杉湯の浴槽配置に似ている。

サウナ室よりに水風呂、隣に電気風呂、ミクロンバイブラがあり、座ジェットは三基、そして薬湯の深風呂槽。きょうはもちろんゆず風呂である。

そして通常釜場へ行く扉がある位置に露天への引戸がある。
なのでこちらの銭湯には背景がない。

まずは空いていたミクロンバイブラへ。
長いことミクロバイブラかと思っていたがここはミクロン。
内容に違いはないか。

湯温はぬるめで41℃ほど。
バイブラの上にあぐらをかいてもバランスを崩してしまうほどの威力ではない。
でも充分心地よい。

続いて空いていた電気風呂へ。
電気パワーはなかなか強力。
奥の壁に背中を付けることができないので手前でビリビリ。

続いて座ジェットへ。ここまでが同じ浴槽。
深風呂になっており、水枕も完備でしっかり冷えている。
ジェットの威力はかなり弱め。
背景もないので温まりながら天井を仰ぎ見る。
二段型で高い天井。水色のペンキがきれいに塗られており、改装されて長い時間は経っていないのだなと思う。

次はゆず風呂へ。
こちらの湯温はやや高めで43℃ほど。
ぐちゃぐちゃに潰されたゆずがネットにたっぷり入っていて、種や身が全部出ている。
初めから潰した形でネットに入れたんだろう。

香もよくストレスが和らぐ。
休日なのでそんなにストレスもないのだがとにかく癒される。
お客の数にしてはかなり居心地のよい銭湯だ。

ぬる湯では温まりにくかったが、ゆずのおかげで少し温まった。
立ちシャワーでクールダウンし、露天風呂へ。
引戸の先にはカランが3つ。
岩風呂となっていて、鉢植が岩の上に何個か置かれている。
湯温は驚くほどぬるい。38℃ほどか。
浅い風呂で3人ほど入れる大きさ。
ベンチがあるので内風呂で温まった体を冷ますのもいい。

空を見上げると屋根の隙間から星空が見える。冬は比較的星がよく見える。
釜場への扉が露天の先にある。
浴室と釜場の間に露天風呂をこしらえた形だ。

湯から上がる。
お客も多いが、居心地もよく、よく考えられた設計といえる。
地元にあれば重宝する銭湯だ。

フロントは若めの女性に変わっていたが、愛想がない。しかも景品のポカリスウェットを飲みながら業務についている。
クルマの鍵を受け取り外に出るがひと言もありがとうの言葉はなく、少々虚しさと切なさを覚える。
こんなときは高輪浴場を思い出してストイックな気分に逆戻りすることにしよう。

明日は千代田区のいくつかの銭湯でゆず湯がある。
せっかく高知から25トンのゆずが運ばれて来たのだ。
一日ではもったいないので明日もぜひ楽しむことにしたい。


大きな地図で見る

2008年12月20日土曜日

58.世田谷区上馬 明の海

金曜日、前から存在には気づいていたが行く機会がなかった銭湯に行ってみる。

駒澤大学駅近く、明の海である。
自宅から自転車で15分ほど。
時間は夜、10時。忘年会の季節、クリスマスも近いせいか街は活気付いている。

明の海は246号を環七沿いに数メートル進んだところにあるマンション銭湯。






















目の前はバス停で「上馬」。
銭湯の右手にコインランドリーがあり、入り口はシャッターが下りるようになっている。少しシャッターが下りた状態になっていて、頭上注意と内側に書かれている。故障してしまったのだろうか。

下足入れに靴を入れる。
なぜか全て赤色の数字。ひょっとしたら黒色の下足入れは改装する際に廃棄してしまったのかもしれない。
だとするとマンション銭湯になる前は伝統的銭湯の趣だったのか・・。
そう憶測を楽しみつつ、中へ。

フロントがあり、3人ほど腰掛けることのできるソファがある。
フロントには稗田神社の石。触るとご利益があるようだ。しかし、照れくさくて触ることができないよな。

フロントにお座りになられているのはお若い感じの女将さん。メガネをかけていて生徒会室にいそうな文科系の雰囲気。
湯賃をお渡しし、脱衣場へ。
暖簾をくぐるがいきなり狭い。50センチ位しかない奥行きを左手に折れ、脱衣場へ。

脱衣場はマンション銭湯だけに天井が低い。それでもロッカーはところ狭しと40以上ある。
一番下に常連ロッカーが並んでいるが10程あるそれは全て契約されているようだ。

ロッカーの上になぜか金色の蛙。
これまたご利益がありそうだ。

レトロな体重計はHOKUTOWのもの。昔から愛用されてきているようだ。

さて、パパっと服を脱ぎ中へ。

かなりコンパクトな浴室。
薬湯のいい香りが漂ってくる。湯に浸かるのが楽しみだ。

カランは5-5-5-6。島カランは一列。
島カランへの水道管が宙を通ってきている。普通は床を通すのだろうけどなんか不思議な感じだ。
しかもその水道管は島カランを通って端まで行き、立ちシャワーの方へ伸びていってる。
立ちシャワーは一基。

金曜の夜だけあってかお客が多い。10人ほど。
客層は若いが、中には60代とお見受けする親父さんもいらっしゃる。
女湯のほうから女子大生が何人もいるのだろうか、楽しそうな笑い声・話し声が聞こえてくる。

島カランのうちひとつを確保。
よく見ると島カランの脱衣場側の端の一つは鏡がない。ここに座ると少し切ないだろうな。

体をしっかり洗い浴槽へ。
浅風呂、深風呂の二つ。
どちらも薬湯となっており、酵素風呂と書かれている。
紫の色をしている。

まずは浅い方から。
湯温は43℃ほど。赤外線ライトが二基、そしてジェットが二基。
しかし赤外線は微妙な位置についている。
赤外線を利用するとジェットを利用している人に干渉してしまうような位置にあるのだ。
まぁ赤外線に体を押し当てている人もなかなか見ないのだが。

ジェットは二穴のもので、力は弱いかなと思いながら体を当てると、意外に勢いは結構あって腰の位置にガンガン当たって心地よい。

さて次は深い方へ。
こちらはバイブラが激しく、湯の色もあってそこがまったく見えず浸かるときは要注意。
そしてなぜか電気風呂。
幅が広いので中央に腰掛けてもあまりぴりぴり来ない。
初心者向けのパワーかな。
背景をどんなものかと眺めてみるが、タイルでモダンな感じの変な模様。

しっかり温まり湯から上がる。
フロントは若い感じのお兄さんに代わっている。
先ほどの女性の旦那さんかな。
ドリンクケースにはヤクルトが山ほど。ヤクルト好きがこの界隈には多いのだろうか。

さて寒空の中、自転車で自宅まで。
冬であるがしっかり家まで体は冷えずに到着。
これで自転車で行ける範囲の銭湯は行きつくした。
この地域で今のところ一番のお気に入りは・・上馬の栄湯だろうか。
また近いうちに温まりに行こうかと思う。


大きな地図で見る

2008年12月16日火曜日

57.清瀬市松山 清の湯

仕事が終わり今日は実家へ帰る用事がある。
その道すがら、実家近くの清瀬市にある清の湯にお邪魔することにした。

中学生くらいによく清瀬の商店街にあるゲームセンターに遊びに来ていたものだ。
しかし銭湯が商店街(ふれあいどーり)にあるというのは全く気づかなかった。

一本路地裏に入り、スナックがいくつか軒を連ねている辺りに清の湯はある。
立派な千鳥破風。
目の前にコインランドリーがあり、その正面の姿は拝めない上、夜も更けているのではっきりと識別できない。時間は夜8時。

入口の暖簾はかわいらしいオリジナルのもの。子供が喜びそうな暖簾である。













下足を預け、引戸から中へ。
番台形式。
親父さんが小さなテレビを見ながらお店を取り仕切っていらっしゃる。
湯賃をお渡しし、脱衣場を見渡す。
とても広い。
天井も高く、格天井が広がっている。
女湯境には柱時計も現役で時を刻んでいる。

島ロッカーが一つ。
外壁沿いにもロッカーがある。
籐籠が10ほど、積み上げられている。

庭もあり、所々ビニールテープで補強されたベンチが二つ。
こちらで庭を眺めながらのんびりできそうだ。

浴室はよく二段型になっているものをみるが、面白いことにこちらは脱衣場も二段型になっている。
端のロッカーのすぐ上の天井は低くなっている。

パパッと服を脱ぎ、浴室へ。
お客は3人。
ジェットの音も控えめで、会話もなく、厳かな雰囲気である。
ここには昭和の時が今も流れている。

島カランが二列。鏡もシャワーもない。
両端にはシャワーあり。
7-4-4-4-4-6の構成。
シャワーありのカランを確保し、さっそく体を洗い始めるものの、シャワーの湯温が火傷せんばかりに熱い。
よく見ればどのお客もシャワーを利用せず、桶からザブンと体に湯を掛けている。
シャワーは便利だがこう熱くては何も意味がない。
気持ちを切り替えてケロリン桶をフル活用する。

カランのレバーは♨の赤いマークが湯、川の字が水。とても分かりやすくそして扱いやすい。
古くなっているが新しいものよりもとても親しみやすく懐かしいカランである。

鏡はぼろぼろであり、特に外壁側の鏡はくすみきっておりよく映っているものが識別できないほどだ。

女湯境には立派なチップタイル画。
四つの橋が並んでいる。章仙などのタイル画に比べたら安いものだろうが、とても雰囲気に合っている。

さて湯に浸かるとしよう。
浅風呂、深風呂が並んでいる。
蛍光灯が浴槽の少し上にあり、浴槽が照らし出されている。
浴槽の水面、かすれた塗装、はげたタイルなど、それらが調和して美しい色を演出している。浴槽を蛍光灯で明るくすると、何となく熱帯魚店の水槽を見ているようである。

まずはぬるそうな浅風呂より。
湯温は40℃ほど。ジェットが二基、ボコボコと泡を噴出しているが、時折強くなったり、弱くなったり、とても曖昧で自然的な噴出を続けている。
湯温計があり、35℃を指している。どうやら故障しているようだ。

ぬるいが柔らかく心地よい湯。のんびり背景を眺める。
背景は(野尻湖)15.8.20とある。
優しいタッチが早川氏を思わせる。
湖なので特に印象的な造形はないが、松やヨット、民家が一件、押さえるポイントはしっかり押さえられており。富士と違い、控えめな印象だが見ていて飽きがこない。
それにしても描かれてから5年も経つのに、はげている部分がほとんどない。
何か特殊な保存方法でもあるのだろうか。

続いて深風呂へ。
入る前に番台にお座りになっていた親父さんが深風呂の湯温を手で確かめた後、釜場へ戻り、そしてまた湯温を確かめに来ていた。
ぬるくなっていると見て温度を上げているのだろうか。
確かに41℃はぬるいと感じた。
ちなみに浴槽は二つとも中でつながっている。

釜場への扉は木戸。
年季が入っている。その木戸が開いている時、ひんやりとした空気と共に、何か懐かしいおばあちゃんの家の香が浴室へ流れ込んで来た。昭和の香である。

さて、親父さんが釜場へ戻っていったのを見計らって深風呂へ。
あ、熱い。
47℃ほどであろうか。
こんなに急に熱くなるものであろうか。と思うほど、急激に熱くなっている。
これは久々にアツ湯である。
深風呂はジェットなどなく、静かな水面。
その物静かな優しさ溢れる滑らかな動きとは裏腹に、湯温は激しく高く肌に突き刺さる。

カランに戻り、作戦を練る。
このまま帰るのは面白くない。浅風呂でちびちび体を温めるのも男でない。
ここは水を何度かかぶり、準備を整え、深風呂へ突入するという計画を立てる。

水をかぶること10回。
しっかり臨戦態勢を整え浴槽へ。
うん、これなら行ける。

じっくり背景を眺める余裕もある。いい湯だ。
背景の下には背景広告社とあり、いくつかの広告が並ぶ。
よく見かける多摩クリスタルのものなど。
ここの背景は外壁側にL字になって描かれている。とても大きいものだ。

じっくり温まっている頃には浴室には自分一人。
女湯側にも気配が感じられず、自分一人の世界となっていた。
贅沢な昭和の時間を、ただ一人で浮遊していた。

湯から上がり、脱衣場へ。
番台はいつの間にかおばあさまへ交代されていた。
ベンチに腰掛け、置かれているアルバムを手に取る。
風景の写真が何枚も。
少し埃っぽいので入浴する前に読むのがいいだろう。

スタンプをいただくと、おばあさまはいろいろお話を聞かせてくれた。
84歳だそうでとてもお元気である。
旦那さんが28の時こちらを建てて、もう50年になるそうだ。
他にも千鳥破風であることや、表の彫刻は日光東照宮でも仕事をされた方のお弟子さんが手がけられていること、外の御所塀は京都の物と同じで見ものである、ハワイに二度行ったことなどなど、時間にして30分以上お話をした。

にこやかでとても楽しい。
いつまでもお話をお伺いしたいとこだが、足が冷たくなって来たのでおいとますることに。
彫刻や千鳥破風など、昼でないとよくわからないのでまたおいで下さいとご丁寧にお誘いいただいた。ぜひまたお邪魔させていただきたいと思う。

清瀬は何度も来たことがあるのに一度も清の湯の存在に気づかなかったというのは人生の楽しみを損していたように感じる。
その損していた部分を今日は随分取り返せたんじゃないのではないだろうか。
銭湯全体に漂う空気感がたまらない。
貴重な体験ができた12月の夜であった。
おばあさん、いつまでもお元気でいて下さい。


大きな地図で見る

2008年12月14日日曜日

56.世田谷区南烏山 第二千歳湯

日曜日。
クルマで銭湯へ向かう。
昼まで寝た上に一日ごろごろしているので疲れはないが、愛犬の散歩で少し体が冷えた。
しっかり温まろうと思う。

カーナビに第二千歳湯の住所を入力。
大体電話番号で検索するが、第二千歳湯は電話番号の登録がないのか検索してもヒットしなかった。住所は世田谷区南烏山3-11-26。
11-26・・・。「いいふろ」か。
電話番号の末尾が1126になっているのは見かけたことがあるが住所は初めて見た。

さて実際いい風呂ならいいが。

最寄りのコインパーキングに停め徒歩2分。路地裏にひっそりと第二千歳湯は佇んでいる。





















表は千鳥破風。左手に細い道路があり、そちらから浴室の窓が見える。おそらくこちら側が男湯だろう。

裏手には煙突と釜場。煙突は10メートルほどの高さでスパっと切られた竹のようになっている。短い。

薪を使っている訳ではないようだ。これでは煙たいと近所から苦情が来るだろうし、大体煙突の長さは23メートル以上と定められている。23メートルにしたところで昨今の高層マンションブームでは近所の苦情から逃れられそうもないが。

さて、正面から入り、下足入れに靴を預ける。
おしどりの下足入れ。かなり鄙びている。きれいではないもののとても味わいを感じる。














そして正面、番台裏のタイルは尾長鶏のもの。





















ポスターが貼られ全部は拝めないものの、傘入れなどが置かれて全く隠れてしまうよりはいいだろう。

左手の「殿方」と書かれた引戸から脱衣場へ。
親父さんは言葉少なではあるものの、はっきりと元気な接客。
常連客も何人かいるようだが、世間話はほどほどでとても気持ちがよい。

島ロッカーが斜めに置かれている。そして外壁側には木製の籐籠をそのまましまえる大型ロッカー。番号が大きくはっきりと描かれ、とてもレトロである。

四谷の蓬莱湯にもこの形の木製クラシカル大型ロッカーがあった。

これを利用したいが、一回目の利用ではおこがましい気がする。
今日のところは島ロッカーにしておこうか。

境壁の上に招き猫が薄汚れて鎮座している。
これまで何年もの間腰掛けてお客を招き続けて来たのだろう。思わず微笑んでしまう。
薄汚れたという表現が正しいかどうかは分からないが、全体的に白壁、天井、ロッカーとそんな色をしている。
長年かかって壁が徐々に色を鈍らせて来ているのだ。これはこれで時の重みを感じることができて心地が良い。

体重計はKEIHOKUのアナログ。
ローラーむき出しのマッサージチェアもどっかり腰を下ろしている。
サッシがあり、庭も見える。

壁には木曜日がラベンダー。日曜がじっこうの薬湯と書かれている。
今日は日曜日、じっこうの湯の日だ。少し得した気分である。

天井は高いが白塗り。格子状ではない。
品格は感じないが、古いながらも控えめな輝きを感じる。
何が何でも格天井がいいという訳ではない。安く仕上げたのかもしれないが、それでも立派な銭湯だ。悪くない。

パパッと服を脱ぎ、浴室へ。
正面には立派な背景の富士山。中島氏の作であろう。
広告が貼られる下部のスペースまでペンキ絵で塗られている。

さて、空きカランへ。
島カランが一列。
5-5-5-6。女湯境の6のうち一つはシャワーが抜けていてない。
女湯境の壁にはこれまた富士山。チップタイルで描かれている。
端から端までの長さ。右端には風車小屋もある。
どうやらタイル画のおかげかこの列に人気が集まっているようだ。

体を洗い、浴槽へ。
深風呂と浅風呂がある。
まずは浅風呂へ。やや茶色味がかったじっこうの湯。湯温は44℃ほどか。
バイブラがぼこぼこしており、ジェットは二基。
高めの設定だが湯が柔らかく熱さをあまり感じない。とても気持ちのよい湯だ。

立ちシャワーが一基ある。
こちらでクールダウンし、続いて深風呂へ。
全く泡の出ていない湯で、水面が穏やか。久々に静かな湯である。
よく見てもきれいな湯で、こちらのお客が皆しっかり体を洗い入っているのがよくわかる。
お客は8人ほど。
日曜日に6時くらい。多くもなく、少なくもないちょうどいい人数である気がする。

深風呂はやや熱い気もするが、どちらも中でつながっており、ほとんど湯温に変わりはない。
静かな水面に心も穏やかになるようである。
じっこうの香がまた、肌にも精神的にも癒される。

しっかり芯まで温まり、湯から上がる。
脱衣場ではビン牛乳130円をいただきながらベンチで一服。
この脱衣場は改めて昭和の香りをぷんぷん感じる。
古くさいが昭和を感じるくすみ方が素晴らしい。
しばしその空気の中に入り込んでしまう。

最寄りの松の湯は休業中。あちらもぜひ行ってみたいものだが。
日曜の夜、明日から始まる新しい一週間を迎える準備がしっかりできたように思う。
家から近いので是非また湯を楽しみに来たいと思う第二千歳湯であった。


大きな地図で見る

55.港区南麻布 麻布黒美水温泉竹の湯

今日は職場の忘年会。
夜は銭湯へ。

表参道にある清水湯へ行こうとしたのだが・・・
現地に着くとマンション建設中。所在地辺りを探るものの、やはり建設中のマンション辺りが清水湯のようだ。
ケータイで浴場組合のサイトをチェックしてみると、<休業中>の文字。
最初に調べておけばよかった。

気を取り直し、近場の銭湯へ行こうかと思うが時間はもう22時。
このままでは銭湯に入れなくなるかもしれない。
というわけで、タクシーを捕まえて銭湯マップで目に入った港区の竹の湯へ。

近いかと思ったが、10分ほどかかった。しかも深夜のため割増となり1400円かかった。銭湯に入るのにタクシーに乗って割増料金を払う。
そんな自分に笑えてくる。
まぁ、たまにはいいじゃないか。
隣にいる奥さんは呆れ顔。
忘年会の後で少々お酒が入っているせいもあるのか判断力が鈍っていたかもしれない。

それはさておき、竹の湯は韓国大使館の裏手にある。
銭湯マップには温泉マークが付いている。黒湯のようだ。楽しみである。

竹の湯は4階建マンションの一階にある。
入口は大きな看板が設置され、温泉の文字が燦然と輝いている。
































黄色いネオンがまぶしい。

下足入れに靴を入れる。自動ドアをくぐるとフロントが右手にある。
メガネの親父さんはテレビをご覧になっている。
既に23時になっており、念のため終了時間を確認すると23時半とのこと。
時間きっかりに終わるのかが気になるとこだが、時間になると湯を抜きますとおっしゃられた。特にゆっくり浸かっていて下さいとは言われなかったので、きっかりに終わってしまうようだ。

脱衣場へ。
天井はさほど高くはない。こじんまりとしているようだ。土曜の夜という事もあってか混み合っている。

パパッと服を脱ぎ浴室へ。
背景が迫力ある日本丸のランダムチップタイル。壁全面が日本丸だ。
黒湯の浴槽も見える。
まずは体を洗おう。
カランの空きを探すが、中も混み合っている。なかなか空きは見つからないが、やっと一つを確保。
カランの数は4-4-4-4-4の20。島カランは二つである。
立ちシャワーは二基あり、サウナ室もある。

天井はビル銭湯の高さ。低い。
面白いのはかまぼこ型でもへの字型でも、もちろん二段型でもなく、四角い中央が少しだけ高くなっている天井。
体を洗うと浴槽へ。

浴槽は二つ・・ではなく一つ。中央辺りで区切ってあるが、角材で分断してあり、その下には簡単なブリキ板みたいな仕切り。湯はどちらも同じもので黒湯。

どちらにもジェット湯がある。全部で3基。
湯温は43℃ほど。蛇口からも黒湯が出るようだ。
さすがに黒湯は心地よく、色も濃い。ややオイリーな感じの黒湯だ。サラサラ度はその分低くなる。好みは別れるかもしれない。

充分温まり湯から上がる。
フロントで奥さんの到着を待ち、さっそく女湯の状況を確認。
背景はなんと日本地図だったとのこと。
各都道府県に赤い点が点いており、東京は金色だそうだ。
銭湯の背景が日本地図とはかなり興味深い。
ぜひ一度見てみたいものだ。
→港区南麻布 麻布黒美水温泉竹の湯のHPに載っています。
こちら>>>


大きな地図で見る

54.品川区西品川 記念湯

クルマで品川の記念湯へ。
戸越銀座商店街の中にある。
ローソンの前に20台ほどのコインパーキングがあり、そこから歩いて2分ほど。入口はサウナと別れている。もちろん銭湯の入口へ。




















こちらはサウナ入口。

金曜の12時過ぎ。あと一時間で閉店だ。













こちらは建物正面。

靴を預け、入口から中へ。
フロントが左手にあり、親父さんが座っている。
湯賃をお渡しし、広いロビースペースを横目に左手の男湯へ。
今日は奥さんも一緒だがここでお別れ。

天井は高く、脱衣場・ロビーと一体型の天井だ。柱が一本立っており、それを中心に円形に天井が広がっている。格天井ではないが、昭和のモダンな様子が見て取れる。

パパッと服を脱ぎ、浴室へ。
ここは奥行きが広い。
天井はかまぼこ型で、低いのだけど奥行きの広さでとても広大な空間であると感じる。カランがずらっと並び、島カランは一列で立ちシャワーが三基。
浴槽もいろいろ充実している。

まずは体をしっかり洗い、とにかく一面に広がる浴槽へ。
背景はヨーロッパの湖に洋館が建っている。その向こうに山脈が広がっている。チップタイルで、浴槽ぎりぎりまであるので浴槽と湖がつながっているように見える。
広い浴槽には寝風呂が並び、3つのボタンが壁についている。
押すと強くはないがジェットが噴出される。
スイッチの付いていないところはただ横になるのみ。それでも十分に心地よい。

面白いことにボイラー室(釜場)への扉が湯の先にある。
つまり湯の上を歩かないとボイラー室には行けない仕組みになっている。横幅が狭いだけに仕方ない設計だったのだろう。
湯温は41℃ほど。ぬる湯である。
しかしすぐ側に高温浴槽があり、デジタル表示では44.4℃となっている。
確かにアツ目の湯で、さらに湯は沸いており、温度は上がって行く。
ボタンがあり、「押して調節してください」の注意書きがある。
しかし、どう押してもデジタル表示など変わることなく、結局は諦めることにした。どういう仕組みになってるんだろうか。

さて、続いては森林浴の湯へ。
フィトンチッドの香を楽しめる浴槽がある。
思えば大岡山浴場にも同じ香りを楽しめる個室があった。久々である。
4人は入れる大きめの浴槽に森林の香りが漂っている。
金曜の夜、一週間働いて貯まったストレスもす〜っと洗い流されていくようである。

隣には露天がある。
こちらも大きめの浴槽。5人はゆったり入れるだろう。
天井部分がスライド式で空を拝める。月がちょうど良く見える位置にある。岩風呂となっており、外気が肌にひんやりと当たる。ぬる湯であるが、月を眺めつつ、じっくりと体を温めようという気になる。
少々塩素の匂いが気になるが、たまに吹く自然の風に匂いも飛んで行く。

露天から出ると水風呂がある。
2人も入れば窮屈に感じるほどの狭さであるが、17℃くらいという冷たい設定。病気の人は入らないでくださいの注意書きも見える。確かにこれは冷たい。サウナもないので高温浴槽との行き来を何度か楽しむ。

すっかり温まり、湯から上がる。
ロビーは広く、大型液晶テレビがありその前にイスがミニシアターの如く8席並んでいる。地デジを受信している。
フルーツ牛乳を飲みながら、後で上がって来た奥さんから事情聴取。
女湯側の背景は教会であり、鶴がいたという。また、露天はなかったとのことだ。
少し得をした気分である。

お客は皆若く、とても廃れつつあるイメージがある銭湯とは趣が少々異なる。戸越銀座という街自体に銭湯の需要がかなりあるようだ。
今度はぜひサウナを楽しみに来ようかと思う。きっとまた新しい発見に胸を躍らせることができるだろう。


大きな地図で見る

2008年12月11日木曜日

53.港区高輪 高輪浴場

仕事の帰り、クルマで高輪方面へ。

港区に仕事の用事があったため、高輪浴場へは4kmほどの距離。クルマを飛ばし、東京タワー付近を走り抜ける。

そういえば昔、泉岳寺の辺りで映像制作の仕事をしていたっけ。魚藍坂のピーコックやら高輪消防署やらを目の当たりにすると色々想い出が頭の中を駆け巡る。
魚藍坂上のピーコックの近くにあった、広場にベンチがあるだけという シンプルな公園が既になく、建物や駐車場に開発されてしまっているのをクルマの中から見て少しセンチメンタルになる。

高輪浴場は港区で最後の番台形式銭湯。これから新たに銭湯ができて、それが番台形式でない限り港区に番台銭湯はない。

大きなマンションがそびえ立ち、一階には「LINCOS(リンコス)」というスーパーマーケットが入っている。その目の前にコインパーキングがあるので駐車。そこから1分も歩くと高輪浴場だ。
高輪消防署は火の見やぐらにイルミネーションがついている。おしゃれな出で立ちである。高層マンションを見上げ、イルミネーションを見ながら高輪浴場のある路地へ入る。













そこには時が止まった空間が確かに存在した。

暖簾は出ていないが引っ掛ける場所もなく常に出ていないと思われる。

銭湯に暖簾がある必要がどこにあるのだ?
確かにそうかもしれない。

入口からして男湯と女湯は別れている。
けど傘入れの前は通り抜け可能だ。
イスもないので恋人同士で来た場合、神田川の歌詞のようになるだろう。

時間は22時くらい。
営業は22時30分までということでかなり終わりが早い。
右手が男湯。
中に入ると番台には小説を読みふける女将さん。
いらっしゃいの声もない。
湯賃(500円)を番台の木皿に入れる。
木皿は二つ並んでおり、私が硬貨を入れた木皿ではない方の木皿に50円硬貨が置かれた。

それからロッカーへ向かうところ声をかけられる。
「入浴セットはお持ちですか。ここは温泉じゃないんですよ」
どうやらスーツに手提げカバンというサラリーマンスタイルの当方が手ぶらで入浴に来たと勘違いされたようだ。

カバンを指差し持ってきているとお話し。
確かに客観的にみれば風呂に入りに来た格好には見えないかもしれない。無理もない。

脱衣場はコンパクトだが天井高く、格天井。木の色が良い。
アナログ体重計は亀井製作所と書かれたかなり重量感のあるクラシカルなもの。105kgが上限値。血圧計や身長計測器もある。

そこかしこに注意書きが貼られているのが気になる。
庭へのサッシに「あけるべからず」。その先に庭があるかどうか知る由もないが。
トイレの電気のスイッチの側に「トイレのスイッチは右の方を見よ」。番台へ問いかける前に注意書きを見よということか。
浴室側には「洗濯はしないように」
〜するなという内容のものがほとんどだ。

ロッカーの上には常連客のものとおぼしき入浴グッズがいくつか並んでいる。
ロッカーの上は埃が積もりがちなのだがここはきれいにしてある。常連を大切にしているスタンスが伝わってくる。そうなると私のような客は目障りに感じられるのかもしれない。

パパッと服を脱ぎ、浴室へ。
島カランが一つ。鏡もシャワーもない。
外壁側のカラン列にもシャワーなし。
女湯境側のみにある。
銭湯にシャワーが必ずしもすべてのカランに必要でしょうかと問いかけられているかのようだ。そう、確かにすべてのカランに必ずしもシャワーは必要ない。

6-5-5-5。6にシャワーが設置されている。シャワーの水量はちょろちょろで、結局は桶に湯を溜めてザバンとやるのが心地よい。
お客は一人いらっしゃったがすぐにお帰りになられた。
一人きりの湯である。

体を洗う。
鏡の下側には葬儀社の広告。
タイルに横向きの菱形模様が入り、とても味のある雰囲気だ。
体をしっかり洗い、浴槽へ。
深風呂、浅風呂が並んでいる。
浅い方へまず入る。湯温は43℃ほど。柔らかい湯の肌触り。
長寿泉とかすれた文字がかろうじて識別できるが、その文字の下に檻があり、例の如く湯が石に当たり、それが浴槽へ流れ込んでいる。

足を伸ばし、しばし心地よい湯に身を委ねる。
天井を見上げ、背景を・・・。
しかしここには残念ながら背景がない。
水色の壁は剥げ落ち、天井のペンキも剥げ落ち、まるで古代遺跡のように朽ちかけている。
かつてペンキ絵が塗られ、天井の艶やかな白い色を思い馳せる。お客が湯をかぶる音。桶が床を叩く音。湯を楽しむお客の話し声。どこからかそんな音が聞こえてくるかのようだ。
しかし今、この銭湯にはお客が一人もいない。

背景がなくとも、そこにペンキ絵は見えた。
なぜ描かなくなったかは分かりかねるものの、水色の壁にペンキ絵が銭湯に必ずしも必要ですかと問いかけられている気分だ。
そう、確かに必ずしも銭湯にペンキ絵は必要ない。そこに薪で沸かした心地の良い柔らかい湯があればそれで充分なのだ。

高輪浴場の注意書きは壁に直接マジックで書かれている。
かすれてよく読み取れないものの、水を埋めすぎるな、浴槽の湯を掛けるな、サウナではないので水ばかりかぶるな。といったやはり〜してくれるなという内容のものばかりだ。

お客が一人入ってくる。全身墨の入ったお方だ。

直接浴槽の湯をかぶり、浴槽のすぐ側で体を洗い始めた。注意書きはなんの効力もないようだ。

続いて深風呂へ。
湯温は浅風呂とつながっていることもあり、変わらず43℃ほど。

古代遺跡の湯を楽しんでいると、長寿泉の湯の流れが止まった。スイッチが切られたようだ。
時間はまだ22時30分前であるはずだが・・。少々気も焦ってしまう。

しんと静まり返った浴室に二人きり。

せっかくの湯なのでじっくり温まっていると、墨入りのお客は慌てて上がってしまった。
番台の女将さんと22時30分で終わりなのかと確認している。どうやら常連客ではないようだ。

また一人になりさらに古代遺跡の湯を楽しむ。

しかし、続いて脱衣場の電気が消されてしまった。
完全に追い出しに入っているようだ。

ここまでお客に気を使わない銭湯も珍しいだろう。
こちらの常識として「ゆっくり湯に浸かって行ってね」「終わりの時間が来ても入っていていいからね」「またいらっしゃいね」という反応を期待しているのだがそんなことは微塵もない。

そうだ、なぜそこまで銭湯側がお客に優しくある必要があるのか。
いや、全くそんな必要はないだろう。こちらの常識は勝手に作り上げてしまっている銭湯のイメージ。銭湯は長い歴史の中生き抜いて来た。そこまでしてお客に媚びる必要はないのだ。

さすがにこのままでは扉も閉められてしまいそうだ。
湯から上がり、水を何回かかぶるが注意書きが頭をよぎる。あまり水をかぶりすぎるのはよそうかと思う。

火照った体の温度は下がらず、脱衣場に行ってもなかなか汗が引かない。
急いで帰ろうとする気持ちとは裏腹にじわじわ汗が湧いて出てくる。

ふと番台を見ると誰もいない。
女将さんは閉店準備に行かれたのだろう。
しかし焦る必要もないのだろうが、何か落ち着かない。
最後にありがとうという声を待っている自分もいる。
しかし、お客に感謝の気持ちを伝える必要が本当にあるのだろうか。
女将さんはそんな必要はないと言っているのかもしれない。

ワイシャツに汗を滲ませながら、一人戸を開け路地へ出た。
もう一度全景を見ようと顔を上げると、煙突が窮屈そうにすぐ側のマンションより低い位置でやりづらそうに身をすぼめていた。

開発が進む中、この銭湯は〜するなと懸命に自己主張を続けている。
お客に媚びることなく自分をアピールし続けている。
近い将来、またこの自己主張の湯に浸かりに来たいと心に誓った。


大きな地図で見る

2008年12月7日日曜日

52.渋谷区西原 仙石湯

都心での用事を済ませ、家へと帰る途中に銭湯に寄ることにした。

幡ヶ谷にある仙石湯。
すぐお隣の笹塚に学生時代一人暮らしをしていたせいで、この幡ヶ谷の商店街にもなじみがあり、歩いていると懐かしい気分に浸れた。
歩いたのが7時過ぎということもあって、ほとんどの店は店じまいの時間であったけど、人々の活気や食事処から漂ってくるいい香りなど、当時の雰囲気が色濃く残っているなと感じた。

車で来たので幡ヶ谷駅前のコインパーキングへ駐車。一時間400円。
そのまま商店街に入り、3分ほど歩くと右手に仙石湯が見えてくる。左手にはスポーツセンター。運動をして疲れた体を銭湯で癒す、そんな使われ方が思い浮かばれる。

左右をコインランドリーに挟まれ、入口には仙石湯のオリジナル暖簾がひらひらと風になびいている。













立派なビル銭湯。
歴史を感じるしっかりとした造だ。なにか格調高いものを感じる入口である。





















下足を預け、ピカピカの床を進む。
このロビーにはイスが4つあり、待ち合わせが可能だ。外気が入ってくるのでこの季節はかなり寒かろうが。

中は番台形式で上品なしゃべり方の女将さんが微笑みながらお出迎えをしてくれた。
湯賃をお支払いする。番台の前には大きな壁があり、脱衣場のすべては見渡せないような造りになっている。
番台の目線が気になる人には親切な造と言えるだろう。
それにしても床がきれいだ。まばゆいばかりに光り輝いている。
天井はさすがに低い。控えめに二段型になっている。
アナログの体重計はTANAKA製だ。しかしこれは新品同様のもの。身長計測器があり、ドリンク自販機もある。
ソファが設置され、テーブルには数多くの雑誌。なぜか芸術系の雑誌が多い。
こちらのご趣味であろうか。

パパッと服を脱ぎ、浴室へ。
お客がなかなか多い。10人ほど。
天井は低く、かまぼこ型である。上部の丸い部分は非常にわずかな円弧を描いている。
横幅がゆったりとあるため、狭さは感じない。
湯煙が充満した浴室はこれから湯を楽しむ胸の高鳴りをさらに盛り上げてくれる。

カランは7-7-7-9。島カランが二つなのだが、外壁側はサウナ室と薬湯の浴槽があるためカランはない。立ちシャワー2基と、ボデイシャワーもある。こちらは「湯」と「水」のボタンがついている。

体をしっかりと洗い、浴槽へ。
座ジェットが3基あり、普通の浴槽が並んでいる。座風呂の方には水枕もしっかり完備。
まず普通の浴槽へ。
湯温は41℃とデジタルで表示されている。たしかにぬる湯でそれくらいの温度だ。
初めの湯としてはちょうどいい温度である。
少し体も温まり、続いて座風呂へ。
こちらは3基がしっかりと手すりで分けられており、浴槽に入る部分から手すりが続いている。水枕は適度に冷たく心地いい。足を伸ばしても、イスのように腰掛けてもしっかり収まる構造。座ると水枕の位置が低く感じ、寝るには少し高い感じがする。
自分の体が少々大きすぎるのかもしれない。

さて、次は薬湯の方へ。
本日は「カモミール」湯。
ハーブティでカモミールはよく飲むが、まさに同じ香り。
安らかな眠りを誘う香がする。
湯温は44℃の表示。高温槽と書かれており、ヘルシーバスとも書かれている。
薬湯にしては湯温が高めかなとも思うが、浸かってみるとそんなことはない。とても肌触りのいい薬湯で湯温はむしろぬるい位に感じる。
芯まで温まり、すぐお隣のボディシャワーへ。「水」のボタンを押し、ブースの中に入る。何十カ所もの穴からジェットが噴出。冷たく一気にクールダウンされる。少々ジェットが体に痛いくらいだ。
サウナ室がすぐ隣なので、水風呂がない分このシャワーでクールダウンするのが温冷入浴の常套手段となる。

カモミールの湯へ再び浸かり、何度かこの往復を繰り返す。
そんな折、背景を眺めてみるが、壁は茶色のタイルで何もなし。少々寂しいが、その代わりに脱衣場境のすりガラスに注目だ。
熱帯魚に水草、そして裸婦が一体。わかりやすいタッチで描かれている。
時折すりガラスのある銭湯に出くわすが、女性である確率はかなり高い。こちらのすりガラスも例に漏れず。なかなか楽しめるすりガラスだ。

注意すべきは浴室の床。
タイルが無地のものなので、注意して歩かないとつるっといってしまう。子供などは素早く動きがちなのでこういうタイルでは危険だろう。

湯から上がり、スタンプをもらう。番台がご主人にお変わりになられている。
「色々なところを廻ってるんですね」とお言葉を頂いた。
こちらの銭湯は静かで雰囲気があっていいですね、とお返しした。
実際テレビがなく、お客の数は多いがやかましいことがない。ゆったりと湯を楽しめるのだ。お客の年齢層が高いというのも雰囲気を良くしているだろう。
それと何よりも床のきれいなこと。これは素晴らしい。一瞬にしてこの銭湯の質の高さが伺い知れるというものだ。
ビル銭湯であるのになにか深いものを感じてしまう。背景がないのは物足りないが、それが逆に銭湯特有の浮世な雰囲気を消し去る効果もある。銭湯全体から懐の深さを感じてしまうのだ。

表に出て、パーキングまでの道すがら、体は薬湯のおかげでいつまでもあたたかかった。
次にくるときはサウナを楽しむことにしよう。
学生時代に一度来ていれば今日は再訪となったわけか。そのころは銭湯には全く興味がなかった。一歩青春を立ち止まり、仙石湯に浸かれば多少考え方も変わって来ていたかもしれない。
そう考えだしてもまったく今となってはどうしようもない思いを巡らせながら車を走らせ家路に着いた。


大きな地図で見る

51.北区十条仲原 十条湯

クルマで十条の銭湯へ。

狭い道を抜け、駐車場が見えた。十条湯専用駐車場と書いてあり、三台のスペースがある。
十条湯の裏手にあるようだ。

クルマを停めて、ぐるっと銭湯周りを一周してみる。
大きな煙突はなく、銀色の煙突が脇から5メートルの高さほどまで伸びている。












正面に回ると、十条湯の屋号が書かれた暖簾。左手には喫茶スペースが見える。フロントに座る親父さんも見えるが、どうやら喫茶店を兼ねているようだ。













さて、下足を預け、右手の広いコインランドリーを見ながら自動ドアを過ぎる。
フロントの親父さんは小声でいらっしゃいませ。
湯賃は二人分をお渡しした。今日は奥さんも一緒だ。
右手が男湯。
脱衣場に入ると、二階へ行く階段がある。サウナ利用者の専用休憩スペースがあるようだ。
一階にはテレビが三台。中央のテレビの音声が響いているが、他のテレビの音は出ていないし、あまり意味がないような。
天井はなかなか高く、昔は伝統的銭湯であったのではないかと思われる。

パパッと服を脱ぎ、浴室へ。
すると正面に背景。これはいきなり目に飛び込んでくる迫力。
鶴二匹が太陽に向かって突き進んでいるチップタイル画。ランダムチップだ。渋谷の武の湯や用賀の栄湯などがランダムチップであった。

カランは6-7-7-3。立ちシャワーが3つ。
広くもないが、通常の銭湯面積に浴槽の種類が3つ、サウナもあるのでかなり有効にスペースを使っているといえる。

体を洗い流し、浴槽へ。
まずは外壁よりのミクロバイブラから。湯温はかなりぬるめで40℃を下回っている。ここはじっくり長風呂を楽しむと見える。
お客は3人ほど。土曜の7時ほどだが、少し少なめだろうか。もう少し遅くなると混んでくるのかもしれない。

続いて隣の浴槽。
こちらは力なくバイブラが出ているが、湯温が43℃ほどなのでとても心地よい。じっくり浸かると体が芯まで温まり、水風呂に行きたくなる。
水風呂は女湯境の壁下に設置してある。湯温は22℃ほど。
3人ほどは入れる大きめの浴槽。サウナもある訳だし水風呂は欠かせないだろう。

続いて残りの浴槽は座ジェット(座風呂)。三基あって浴槽の形が削り取られた形になっているので、端の座ジェットに座ると足が伸ばせずちょっと狭い。深風呂になっていて座る訳だから足を伸ばす必要もないのだが。

湯から上がると喫茶スペースでヨーグルメットを頂く。
フロントはおばさまに変わっており、さらに小声の接客。無愛想という訳でもないが・・。
次々入ったり出て行くお客達の愛想の方がとてもいい。
皆常連のようだ。
話せばきっといい人であるに違いない。
フロント脇に1010の95号が置かれていたので頂いた。
北区の銭湯は今日が初めてだったが、土地の条件も良いのかお客の活気が伝わってくる銭湯だった。


大きな地図で見る

2008年12月3日水曜日

50.大田区上池台 亀の湯

仕事が終わり、クルマで銭湯へ向かう。
大田区の銭湯を目指すが、今日は国の湯へ。

定休日が金曜日ということだが、到着してみてもまったく灯りが見えない。
どうやらシャッターが降りているようだ。
張り紙も全くなく、なぜ休みなのかが分からない。

後で調べてみると・・
廃業(と思われる)東京都銭湯リストに2008/4/30より休業しているとの情報が。
楽しみにしていたのに。

仕方ない。事情はよくわからないが、一日も早く問題が解決して、復活してくれる日を心待ちにしたい。

ここから近くの銭湯となると、稲荷湯。
しかし水曜日が定休日なのでこちらは無理。
歩いて行ける範囲だと明神湯だがつい最近行ったばかりなので、少し離れているが亀の湯へ。

車で5分も行くと着く。
亀の湯の側には駐車スペースらしき空間があるが、銭湯マップには駐車場マークが付いてないのでやめておき、道路を挟んだ反対側のコインパーキングへ駐車。

亀の湯の全景を眺める。
面白いことに煙突が建物から7〜8メートルほど離れた位置に設置されている。
建物自体は和風伝統建築でなく、なんだか体育館のようだ。













暖簾をくぐり中へ。
番台の親父さんの背中が傘入れ上の窓から見え隠れしている。

下足を預け、引戸を開き中へ。少々立て付けが悪く手応えが重い。

親父さんから小さな声で挨拶をされたがよく聞こえず。
ドリンクはビールをはじめ、ビン牛乳などを販売。少々だが駄菓子も売っている。
女湯境の時計(普通の時計)周りには、浴場組合のポスターが年代を追って並べられている。ソファがあり、正面には腰の高さほどのロッカーがあるが、その上に大きな水槽。大きく育った金魚が何匹も優雅に泳いでいる。

天井を仰ぎ見る。
少々高めの天井だが、なんと花柄だ。
内側が高い二段型になっていて、それぞれ違う花柄となっている。
明るい色じゃなく、暗めの色なので花柄とはいえとても落ち着いたイメージだ。

確保したロッカー上にはイタチの剥製が。気になりつつもパパッと服を脱ぎ浴室へ。

とても広い浴室。
天井は一段型なので低い。
かまぼこのような形をしている。
ビル銭湯じゃないのに一段型は来たことがなかった。
湯気抜きが大変なようで、左右天井近くに設置されている換気扇がフル回転している。
それでも湯煙が立ちこめている。
湯煙の雰囲気は好きなので悪くない。

しかし奥行きが広い。
カランはずらっと並び、女湯境から9-8-8-3。
島カランは一つだ。
3つ並んだカランの側には立ちシャワーブースが三基あり、なんと立ちシャワーブースの中にもカランがある。
となると正しくは、9-8-8-6ということか。
かなり大型。

お客は3名のみ。
体をじっくり洗い浴槽へ。

浴槽は3つあるが、3つとも紫色の湯だ。
ラベンダーの湯だ。
けど、天然のラベンダーでなくバスクリン系の色。
すべての浴槽が紫色だとなんか妖しい雰囲気だなぁ。

L字型に浴槽が並んでいる。女湯境の下は座ジェットが二基。深風呂になっている。
湯温は45℃ほど。
久々にアツ湯だ。
御徒町の燕湯、田町の万才湯以来だ。
しかし、そこまでは熱くなく、適温よりやや高めといった感じか。

続いて広めで外壁側まで続いている浴槽へ。
ミクロバイブラと赤い赤外線ライトが設置されている。バイブラ力がすこぶる高く、時折泡の高さは30cmほどにもなる。
ここの湯温が一番高そうだ。バイブラの勢いでより体感温度は高く感じる。

一旦出て、立ちシャワーでクールダウン。

さて、残りの浴槽ヘ行こう。
カラン側へせり出したような形の浴槽で、隣の浴槽とつながっているので湯温もほぼ同じかやや低いくらい。
泡が少々出ているが少ない。
ここは座って背景をじっくり眺めるところか。

背景はタイルで海外の山脈が描かれている。
手前には洋風の民家。
そんな時、女湯の方から外国語で話す声が聞こえてくる。
この背景のせいで、雰囲気も外国のようになってしまうのだろうか。
しかしよくよく聞くと、やはり日本語ではなかった。
どうやら女湯側は国際色豊かな状態になっている模様。

じっくり温まり、湯から上がる。
気づくとお客は自分一人になっていた。
平日の夜、こちらの銭湯はさほど混み合うことはないらしい。アツ湯もいい感じだしおすすめだ。

女湯境の壁には植物がいくつも飾られている。
時計の形も立方体で緑色。モダンな感じで、全体的に昭和のモダン銭湯といった雰囲気がある。

さて、脱衣場へ。
コーヒー牛乳110円をいただきながら、金魚を眺める。
そこでやたら九官鳥の声で「こんにちは」が女湯側から聞こえてくる。
あちらには九官鳥がいるのだろうか。
親父さんにお伺いすると、「昔は男湯に置いていたんですけど今は女湯に置いてあるんですよ」とのお答え。とても気持ちのいい笑顔である。初めはむすっとした暗いイメージの親父さんであったが、その実は違ったようだ。

またいつか男湯側に置くかもしれないとのことで、またいつか来て様子を見てみようと思う。

コインパーキングへ。
なんとこのコインパーキングはおつりが出てこない。小さく注意書きがしてあり「おつりは出ません」とのこと。
400円の支払いだったが、500円玉を入れると、確かにおつりは出てこなかった。
今時何という不親切なコインパーキングだろう。

亀の湯には電車&徒歩で来るのが一番なのだなと感じた夜だった。

2008年11月30日日曜日

49.大田区南雪谷 明神湯

非常に寒い日。
風も強い。太陽が出ているのが救いか。

今日はクルマで大田区の明神湯へ。
この銭湯は近くに駅がなく、歩くと10分以上かかる模様。
クルマで来ても駐車場はないので、近くを捜索すると東調布公園があり、ここのコインパーキングを利用できる。

明神湯の正面は立派な唐破風造。
しかしもう空は真っ暗なため、よく見えず。
この辺りは街灯も少ないので全体的に暗い。
銭湯は伝統的な造りで昭和初期を思わせる素晴らしい造りなのに、正面には大型マンションが建ち、時代の移り変わりを感じさせる。

入口を入り、下足を預ける。
番台に座る女将さんの背中が見える。

この銭湯は右手が男湯だ。
引戸を開けようとするが、片方は動かない。番台よりの引戸が動いた。













迫力のある男湯の文字。気合いが入るな。
ご丁寧な口調で「いらっしゃいませ」の声。
先にスタンプをいただくのはやめておこう。一見さんと思われてしまうのも気まずいからな。

湯賃をお渡しし、ロッカーの一つを確保する。
サッシの外は庭が広がっている。。後でじっくり鑑賞することにしよう。

天井は高く、格天井。木目がきれいに浮かび上がっている情緒ある天井。
アナログの体重計はKEIHOKUのものだ。
壁の上に「盗難除」の札が貼られている。番台なら盗難も少ないだろうけど、この札の効果も期待できそうだ。思わず微笑んでしまった。

パパッと服を脱ぎ浴室へ。
お客は4人。カランは5-5-5-5-5-6。島カランが二つだが、こちらにはシャワーがない。でも気にせずこの島カランを利用しているお客もいらっしゃる。

立ちシャワーが一基。さて体を洗おう。
湯煙はほとんどなく、うまく湯気抜きがされている。だからといって温度が低い訳でないので居心地がいい。

浴槽は3つ。
深風呂にラベンダー湯。そして普通の深風呂。浅風呂は気泡風呂になっている。

ラベンダー湯から。
湯温は42℃ほど。天然のラベンダーが袋に入り、やや紫の湯の色になっているがほとんど透明。香りがよく、とても柔らかく心地の良い湯。バイブラの泡が肌を優しく通り抜けて行く。
三軒茶屋の栄湯で味わったラベンダー湯にとても似ている。湯温しかり。あちらの方が泡が心地よかったか。

次は真ん中の深風呂へ。
湯温がやや高い気もするがほんのわずかだろう。
背景を眺める。
志摩と書かれ、海と松と青空が見える。ヨットも何艘か浮かんでいる。いい雰囲気だ。
立ち上がって女風呂の方の背景をみるとこれは立派な富士山。
こちらの銭湯は女性の方が少しお得かもしれない。

代わりに女湯境のタイルが富士山。女湯側はどうなのだろう。

さて立ちシャワーで少しクールダウン。
と思いきや、立ちシャワーは湯のみ出る仕組み。
島カランを使ったお客に対しての立ちシャワーということだろうか。
仕方なく、カランの水をかぶる。これでも充分なのだが。

続いて気泡風呂へ。
杉並の小杉湯や清瀬の喜多の湯である湯である。
とても細かい泡が肌に貼り付き、すべすべになるようである。

お客が段々増えだした。脱衣場には少年3人組もやってきている。10人ほどになりそうだ。

しっかり温まり、湯から上がる。
庭を眺めながらネクター120円をいただく。
スタンプをお願いすると女将さんが番台から降りてきて、ロッカーにしまったスタンプを取り出し、ベンチにて押してくれた。しかも5分以上かかって乾かしていただいた。
なんと丁寧なことだろう。

庭には濡縁があり、寒くなければじっくり外で過ごしたいところ。池はないが手入れが行き届いた庭。灰皿が設置してある。
お手洗いは濡縁に出て右手。和式で古く、電気のスイッチがあり得ない高さにある。これは少年にはとても押せまい。
清潔で落ち着くトイレだ。

帰り際、女将さんより「遠くからわざわざありがとうございます」のお言葉をいただいた。

銭湯の近くで住宅が売りに出ていた。
明神湯まで歩いて5秒と行ったところか。
これは十分にメリットになり得る条件だ。検討してみようか。
毎日通いたくなる、女将さんの接客、雰囲気にとても心打たれた銭湯であった。

2008年11月28日金曜日

48.世田谷区給田 給田湯

金曜の夜、めっきり寒くなった11月の終わり。
こんな夜はやはり銭湯。
一週間ぼちぼちがんばって働いた体をじっくり温かい湯で癒すとしよう。

時間は9時くらい。もう遅いので地元世田谷辺りでまだ行ってないところを探す。
まず目星をつけて向かったところは千歳烏山の「松の湯」。

松の湯という屋号を語る銭湯にはハズレはないなと勝手に感じているので、ちょっと期待を膨らませつつも車を走らせる。

コインパーキングに駐車し、目的地を目指す。
京王線の線路のすぐ側に煙突がにょきっと生えている。
コインランドリーがあり、煌々と灯りがともっているが、肝心の松の湯からは灯りは洩れていない。
ちょっと不安に思いつつも、線路を渡り、正面へ。
案の定。
「当分の間休業致します」の張り紙。
遅かったか・・・。
しかし、当分の間っていうのはかなり長いようなイメージである。
先が見えないんだな。でも廃業を決断されなかっただけよかったかもしれない。
いつか復活する日を心待ちにするとしよう。
それでも左右に設置されているコインランドリーは元気に営業中。

というわけで、次は近くの増穂湯へ行こうかと思ったけど、こちらはフロントなのでまた今度。最寄りの番台銭湯というと給田湯があり、そちらへ向かう事にした。

コインパーキングはちょっと離れたところにしかなく、車で行くには向いてないかも。
20分100円。まぁまぁ安い。

給田湯はわかりやすく世田谷区給田にある。
給田という地名も珍しいし、ググってみても給田湯は世田谷区のみ。オンリーワンだ。

給田湯はマンションの一階。
マンションというよりもアパートか。アパ銭?
上には2フロアしかない。
電気は全くついてないので誰も住んでないのだろう。
部屋に行ってみたい気持ちがあるが我慢しよう。
しかし、一階の銭湯部分はかなり天井が高そうだ。2階部分までの高さを銭湯が占めているといってもいいだろう。




















「ゆ ゆ」と書かれた暖簾。とても素直で心に響いてくる。













もう一枚撮ってしまった。














下足を預け、傘置きがよく置いてある番台裏スペースをみると立派なタイル絵。
こうして宝船に守られているかと思うと安心するだろうな。

引戸はからからと軽く開く。
番台であるが、誰も座っていない。
4人ほどのお客に混じって会話をされている中の一人がご主人のようだ。
湯賃を手渡しすると、親父さんは番台の扉を開けお金をしまう。
そしてまたお客との会話をし始める。
そういえば「いらっしゃい」と言われてないな。

脱衣場は天井高く、とてもこの上に部屋があるとは思えない。
格天井のような天井。しかし、正方形の格子ではないので正統派ではない感じ。
それにしても全体的に流れるこの昭和の雰囲気はたまらない。

アナログの体重計はTANAKA製。
庭も見える。広くはないけど、なかなかいいではないか。
それにしても親父さんはよくしゃべっている。
常連さんが来ているからだろうが、お客と時事ネタで盛り上がっている。

さてパパッと服を脱ぎ浴室へ。
こじんまりとしている浴室。しかし天井は高い。本当にこの上に部屋があるのかと思う。
島カランは一つ。5-5-5-5で20。立ちシャワーが一つあり、なんとサウナが無料。
あとでじっくり楽しむとしよう。

奥行きもさほどなく、幅も広くないのだが、とても開放感がある浴室。
天井が高いことの効果はかなりあると思う。
それと、この湯煙。
全体に白く湯煙が広がりぽかぽかとしているのがいい。

カランの一つを確保し、体を洗い始める。
たまたまだがそこのカランはお湯も水もどちらも水色の印がついている。
赤い印がなくなり、水色を付けたのだろうか。

お湯は熱めでちょうどいい。
水を混ぜなくてもなんとかなるが、少し入れるとちょうどいい感じ。

女湯境の壁にはギリシャのパルテノン宮殿のようなタイル絵。
宮殿。給田。
考え過ぎかもしれないが給田と宮殿で掛けているのかもしれない。

さて浴槽へ。
深・浅の二槽式。浅風呂へ。
広い浴槽で片側はバイブラになっている。反対側は檻があり中に石。ガリウム鉱石だろうか。でもどこにも張り紙はなく、ただ湯が石に当たり、それが浴槽に流れ込んできている。

深風呂との境は壁がほとんどないので湯温は同じくらいだろう。43℃ほど。
湯が柔らかくとても心地よい湯だ。
首を浴槽の縁にもたげ、背景を仰ぎ見る。
おお、富士山。ペンキ絵だ。
控えめな大きさであるが立派。手前には湖だろうか。松の木も見える。
女湯との境には島。
剥げ落ちてる部分もなく、状態はかなりいい。しばし湯を楽しみながらペンキ絵の中に自分を投影する。

すっかり体も温まり、立ちシャワーでクールダウン。
そして深風呂へ。
こちらは座ジェットになっていて、二基ある。
水枕があると完全に寝た状態になりたいとこだが、深風呂なので座るのにいいようになっている。こちらはポジショニングが少々難しいか。

さて次はサウナだ。
湿式サウナで温度は50℃の表示。
3人ほどが座れるほどの大きさ。ベンチの後ろにチューブが通っていて、時折そこから水が出てくる。ベンチの汗を流す為のものだろう。
砂時計も何もないが、無料なのは何よりも嬉しい。
何度か立ちシャワーとの往復を繰り返す。最高ではないか。

湯から上がり、火照った体を冷ましていると、やはり親父さんはまた違う常連さんとお話をしている。まだ一度も番台に腰掛けている親父さんを見ていない。
ずっと男湯側の脱衣場に立っており、新聞を見たりテレビを見たり、常連さんとお話を楽しんでいる。まるで友のように会話をしている。

スタンプをもらうチャンスを伺っていたが、話が一段落ついたとこでお願いする。
いろいろ行ってるんだねとのお言葉をちょうだいした。

ドリンクはコーヒー牛乳110円をいただいた。「ありがとうございます」の言葉はなく「うむ」とおっしゃる。帰る時も何もなし。
接客という概念はなさそうであるけれども、とても親しみはわく。お客として扱うのでなく、親父さんが沸かした湯に入りにきた近所の人といったような温かいコミュニティーに加わっている感覚を覚えた。
すぐにお仲間に入れてもらえそうだ。

しかし外へ出てこの建物を眺めるが・・上にある部屋が気になる。
銭湯の上に住むとやはり湿気に困るのであろうか。
床暖房のように床は温かいのだろうか。
一度、住んでみたいなと思う今日この頃である。

2008年11月24日月曜日

47.江戸川区西小岩 吉野湯

東京浴場組合のHPをチェックすると、今日は江戸川区の銭湯はリンゴ湯であるという情報が書かれていた。
三連休の中日であるし、江戸川区へ車で向かう。
駐車場が完備されている吉野湯へ。

駐車場を見つけるまでに時間がかかったが、一方通行の道を進み、なんとか発見。銭湯のすぐ裏なんだけど、一方通行のせいでぐるっと回ってこなければならない。駐車スペースは5台ほど。2台空いていた。ついている。













入口は千鳥破風。立派である。













江戸情緒溢れる粋な暖簾。













リンゴ風呂のポスターもあり。

右手にコインランドリー。下足を預け、入口から入るとすぐにフロント。フロント前にベンチがあり3人ほど座れるようになっているが、ここに座ると受付業務に支障をきたしそうだ。

石鹸とシャンプー・リンスを忘れたので小さいのを購入。90円だった。
リンゴもくれた。女将さんの接客もよく、気分がよくなる。

さて左手が男湯。
脱衣場は天井がやや高く、格天井。焦茶色で趣がある。
番台を逆さにしてフロントにしたもので、天井はフロントと同じ空間でつながっているため、狭く感じるがコンパクトでいい感じだ。銭湯に無駄に広い空間は必要ないのだ。

端にサッシがあり、その先は物置スペースとなっている。現役から退いた模様のTOAと書かれた体重計がひっそり眠っている。
脱衣場にあるのはYAMATO。どちらもレトロなアナログ体重計だ。

パパッと服を脱ぎ、浴室へ。
眼前に広がるは巨大なチップタイル画。いやはや大きい。
ヨットが中央にあり、全体的に青い色。和風では全くないが・・。これもまた良し。

女湯側は滝とのこと(後で奥さんに聞き込みをした)。
カランは8-6-6-5。大型ではないが、小さくもなくちょうどいい大きさの銭湯だ。立ちシャワーは3つ。
体をきれいに洗い、浴槽へ。
時間は夕方くらいだが、お客が多い。今日はリンゴの湯だからだろうか。少年も3人ほどいて、大人のお客は12人ほどいらっしゃる。
活気があるではないか。

浴槽は大きく分けて二つ。
右に深風呂。薬湯になっている。
左手は浅風呂で座ジェット二基、電気風呂には赤外線ライト付き。
そして何もないスペースがあり、ここはゆっくり湯を楽しむスペースのようだ。
まずは浅風呂の電気風呂へ。
湯温は42℃ほど。
電気力は強く、とても壁に設置されている赤外線ライトにピッタリ背中を付ける事ができない。

続いて隣の座ジェットへ。
こちらは深風呂になっており、座ってジェットを浴びる事になる。
ジェットの方には流れがあって来ないがリンゴが11個漂っている。
あと4個がオレンジ。しかしこのオレンジはなぜかプラスチックのもの。なんでこれ入れたんだろう。
あと、リンゴが一個かじられた後がある。子供がかじったのかね。

前に行った練馬の栄湯のリンゴ湯は50個もあったけど、こちらは少ないな。江戸川区の銭湯はリンゴをプレゼントしてくれるから、湯に浮かす分が少なめなのかもしれない。

さて、深風呂へ。
こちらは湯温が42℃後半。
薬湯で「生薬」と書かれている。その側に「じっこう」とも書かれている。そして、備え付けの看板に「宝寿湯」。これは新宿の「弁天湯」にもあった看板だな。
漢方のとてもいい香りがする。
しばしチップタイルのヨットを見ながら湯を楽しむ。
用賀の「栄湯」もこんなランダムな形のチップタイルだった。あちらは夕焼けでやはりヨットが描かれていた。ひょっとしたら同じ会社によるものかもしれない。

さて立ちシャワーでクールダウンし、湯から上がろう。
脱衣場にはソファがあり、自販機もある。フロントに休憩スペースがないのでここで一休み。

次から次へとお客が来る。
銭湯が珍しくなく、とても地元に浸透しているような雰囲気だ。
私が住んでいる二子玉川には銭湯がなく、こんな雰囲気はとてもうらやましい。いつまでも地元に愛される銭湯でいてほしいと願いながら外に出た。
すぐ側にはおそば屋さんがあり、少し惹かれつつも駐車場へ。
明日も休日だ。
明日はどの銭湯へ行こうかと考えを巡らせながら家路へとついた。

46.渋谷区本町 羽衣湯

羽衣湯
今日は羽衣湯へ。
土曜の夜、さてどんな銭湯だろう。

駐車場があるとの事なので、車で向かう。
渋谷区であるが住宅街に入って行く。
そして羽衣湯に到着。
表向きは立派なビル銭湯。






















駐車場はなかなかの広さで7台ほど停められる。けど、自転車やバイクが多く停められて駐車場が狭くなってしまっている。今日はお客が多いようだ。かなり活気のある銭湯の模様。
下足を預け、ふと下足入れ上の壁を見やると、羽衣をまとった天女が彫られている木がある。これは素晴らしい。
その昔、ここが立派な破風造の銭湯だったとき、おそらく作られた彫刻なんだろう。













さて、入口から中へ入ると右手にフロントが見え、左手には広い休憩所。そして漫画が棚一杯に一面並んでいる。ここはマンガ喫茶か?
イスもいくつかあり、10人ほどは休憩しながら漫画が読めるほどの広さ。
すでに7,8人がまったりと漫画を呼んでいる。

さて、親父さんに湯賃をお渡ししスタンプノートをお見せすると「いろんなとこに行かれてるんですねぇ」とご感想をいただいた。渋谷区はまだまだ未踏の銭湯が多い。やはり居住区の世田谷区に行く機会が多いな。

左手が男湯。
暖簾をくぐり脱衣場へ。
天井は低く、寮かビジネスホテルにある浴場のようだ。
デジタル体重計あり。テレビもある。
服をさっさと脱ぎ、浴室へ。
浴室への引き戸をくぐると洗濯機とトイレがあり、洗面所がある。
浴室は階段を上がり、その向こうにある模様。
プールのタイルみたいな壁を見ながら二階へ。
その先には左手にカランがずらっと並び右手に浴槽。
さらに先には浴槽がありそうだ。縦長の構成。

体を洗い流し、浴槽へ。
手前の浴槽は電気風呂と浅風呂。デジタル湯温計があり42.5℃を示している。ジェットもバイブラもない浴槽なのでなんかぬるく感じる。
電気風呂があるのでここでしばし電気を浴びる。電力が弱く、自分でも深く腰掛けて電気を当てる事ができた。電気を当てると指が変な形に曲がり、血管が浮き上がってくる。コリがよくほぐれそうだ。

しかしお客が多い。
年齢層が若く、大学生が多そうだ。うじゃうじゃ湧いて出てくるようだ。そして皆一様にあそこをタオルで隠している。
銭湯でタオルを持ち歩き、しかも隠すとは。若いよな。

奥の浴槽ヘ行こう。
途中右手にサウナ室あり。
ここはホタテみたいな形をしている。ホタテの丸形のとこに奥の浴槽がある。内側は露天の模様。
奥の浴槽はジェットが二基、そしてドリームバスと名付けられた浴槽。あと水風呂がある。
ドリームバスは完全に横になり、くぼみに体を沈める形で寝て、水枕に頭を預けると非常に快適。湯温がぬるく、表示では41.7℃。おかげで浴槽には人間が溢れている。
なかなか体もあったまらんもんな。サウナ室には人が少ない様子。これならサウナも行ってよかったかも。

次は露天ヘ行ってみた。
3人も入るときついほどの大きさ。高麗人参の薬湯となっている。
外気もほどほどに心地よい。湯温41℃弱と一番ぬるい。
壁は高く、天井は空に向けて抜けている。快適。
次々とお客が露天目指して入ってくるので、のほほんとはしてられない。少し温まると後続へ譲る事にした。

予定より時間を早めて湯から上がる。
これだけ混んでいるとゆっくりあったまってもいられない。サウナが少しこころ残りだな。

湯から上がり、ビン牛乳130円をいただく。ちと高い気がするぞ?
それから適当に漫画を一冊チョイスし読みふける。
天井が高いせいもあるのか、少し休憩所は寒い気もする。
もう少し空調をなんとかしていただきたいと感じた。湯冷めが一番嫌だからね。

女湯の方も年齢層は若いと奥さんが話していた。
近所には銭湯が必要な住居に住んでいる若者が多いんだろう。時間は0:00時を回っているので皆電車で帰る訳ではないだ。きっとこの辺に住んでるはずだ。

駐車場に行き、車で帰る事にする。
渋谷も奥が深い街だ。松濤が高級住宅街なら、ここら当たりは一般庶民の穴蔵だ。敷地も狭く、ぎゅうぎゅう詰め。
羽衣湯はミニスーパー銭湯と言ってよい銭湯。
趣は全く感じられないが現代を生き抜く銭湯として、いつまでも頭にとどめておく必要はあるだろうなと感じた。

2008年11月21日金曜日

45.仲六郷 照の湯

金曜日の夜である。
一週間仕事をしてきた自分を湯に浸かり癒してやりたいと思う。

今日は大田区の温泉銭湯へ。
多摩川沿いの仲六郷にある照の湯に行った。
銭湯マップによると黒湯に露天と至れり尽くせり。銭湯天国の大田区だけに、とても楽しみである。

車で向かったが照の湯には駐車場がないので近くのコインパーキングへ。30分100円。なかなか安いコインパーキングだ。

今日は奥さんも側にいる。腹が減ったと近くの食事処を捜索。
商店街の外れのため、お店も見当たらないなと思いつつ「華かがり」というお店を発見。
飲み屋のようであるが、メニューにラーメンの文字も見えるので入店。
中はカウンターのみで8席ほど。ご主人がお一人でやられているようだ。
みそラーメン(600円)、正油ラーメン(550円)、餃子(300円)を賞味。
とてもおいしくいただけた。
割り箸のはいった袋に書かれた「華かがり」の文字が手書きであり、何かぬくもりを感じた。カウンター内側に一枚飾られたお子さんの写真にも胸を打たれた。
こんなお店が近くにあるといいなと思う。
しかし、あまり地元にあるこじんまりとしたお店には今さら行きづらいんだよな。

さてお腹もふくれたところで「照の湯」へ。

こちらはマンションの一階にあるいわゆるマン銭。
暖簾をくぐると天井のパトランプがいくつもついたような回転灯がぐるぐると回る。一応お出迎えしてくれているようだが・・・。
下足入れがあり、壁は一面ディズニーチックな可愛い絵。しかし決してディズニーではない。
おもてなしされている感はギンギンに伝わってくるなぁ。

中に入るとフロント。
休憩所が奥にあり、天井は高い。
つまり番台型をフロント型に改装した感じだ。
となると昔は破風造りの銭湯であり、そして時代の流れでマンション銭湯として生まれ変わったというのだろうか。

女将さんに湯賃二人分をお渡し。
むすっとした感じの女将さんかなと思いきや、お声は優しくほっとする。
休憩所にはテレビあり。
ソファは3人がけ。一人がけのイスが3つほど。
そして奥に大きな大きな花の絵だ。タタミ3枚分ほどはあろうかという巨大ピクチャーだ。
スタンプを押してもらい、奥さんとはここでお別れ。

男湯は左手。
さてここはどんな銭湯であろうか。

脱衣場に入ると女将さんがお客とお話ししている声が聞こえてくる。
フロントの話し声は脱衣場にダダ漏れだ。
「スタンプって何?」とお客が女将さんに聞いているようだ。

脱衣場はマン銭とは思えないほど天井が高い。
伝統的破風造の天井の高さに比べれば、少し劣る訳だけれどもマン銭としたらとにかく高い。
銭湯の良さというものを保ちつつ、マンションにしたんだろう。銭湯への愛を感じる。

まぁとにもかくにもパパッと服を脱ぐ。
浴室へ入ると、いきなり眼前には浴槽が飛び込んでくる。
ここは中央に浴槽があり、周りをカランが囲む形。

桶とイスをとり、カランへ向かう。まずは体を洗うのだ。
おや、ここはイスが備え付けだ。石のイスでそれぞれのカラン前に設置されている。
なのになぜ風呂イスが入口にあったんだろうか。
その理由は石のイスが設置されていないカランがあるからのようだ。
石のイスをどうしても好んで使う事ができない人のためだろうか。

せっかくなので自分はこの珍しい石のイスを試す事にする。
高さは30センチほどでしっかりとした四角のイスだ。
風呂イスに慣れている自分からしてみると少々高いような気もするが、シャワー位置などこの石のイスに合わせた作りになっているようで、使い勝手は良い。

さて浴槽はどこから攻めようか。
中央に集中している浴槽だが、まず高い位置に檜の浴槽がある。そこの湯がオーバーフローし、下の浴槽に流れ込む形になっている。
ここはかなりの優越感に浸れそうだ。後回しにしよう。

低い位置には普通の入浴スペースと、電気風呂、ジェットがある。
ジェットは強烈。体が流されるのでしっかり固定して臨む。
幅が狭く、両手をヘリに乗せてのんびり浸かれる。
湯に浸かる時に手のひらも湯につけていると指がふやけてしまうのでなるべく避けたいところ。
なので快適にジェットと湯を楽しむ事ができた。
湯温は41℃ほど。ややぬるいか。

次は電気風呂へ。
しゃがもうとするが、ピリピリと腰に電気が来る。
むぅ、これは無理だ。やめておこう。
しばらく電気風呂から離れていたせいかすっかり初心者に戻ってしまった。
また次の機会にチャレンジしよう。

次は黒湯。
浴室に入るとすぐ黒湯の浴槽であるのだが後回しにしていたのだ。
3人ほど入れるスペースに黒湯が溢れている。
ちょろちょろ湯が流れ込んでいるが、浸かるとどばっとオーバーフローする。これがとても気持ちよい。
どの浴槽も溢れ出る湯を見るのがいいのである。

湯にアカが浮かんでいるのは見るに耐えないが、溢れ出る湯が排水溝に流れ込んで行くため、湯アカが溜まりづらい。とても清潔なのである。しかも溢れ出る湯を見るのはなんかいいもんである。

ここの黒湯は煮豆の煮汁のようだ。もっとオイリーな感じでつやつやしている黒湯もあれば、薄いところもあった。黒湯にも様々なタイプがある。
こちらは濃いめ。しかしオイリーでなくさらっとしている。
湯温は42℃ほど。
じっくりつかり、芯までポカポカだ。
そうそう、ペンキ絵がこの黒湯槽から見るととても良い眺めなのだ。
ここのペンキ絵はなんと立派な富士であろうか。
女湯ぶち抜きの巨大富士山。
ペンキ絵でここまで巨大な富士山は見た事がない。素晴らしい。
早川氏の作品で西伊豆と書かれている。
ハゲた部分もなく、かなり状態がいいのでつい最近に描かれたものと思われる。日付がないのでいつかは分からないけど。

中央に松が一本。乙である。
それと女湯境の壁の中央当たりにツボが置かれているがあれは何だろうか。
落ちてきやしないか?
そのすぐ側にパイプみたいなものが天井に向かって伸びていて、天井には何やら四角い空気孔のようなものもある。
何だろうかあのツボ。

さて黒湯の源泉へ行ってみよう。
入口の側にあるのだが、温度は18℃。
これまた素晴らしい。
オーバーフローして行く黒湯を眺めるのは心地よく、ペンキ絵も拝める位置。なんと贅沢な金曜夜の過ごし方であろうか。

クールダウンできたところで露天へ。
ここがまたスゴい。
5人はゆったり浸かれそうなスペースに岩を配した露天。しかも黒湯だ。さらにこちらにもオーバーフローの演出あり。
竹(残念ながら偽の竹)壁には小さな穴があいており風も吹き込んでくる。
その穴の外に赤いイルミネーションも見える。和ではないが、内風呂とは雰囲気が違い、またいい感じではないか。
岩には黒湯がしっかり染み込んで黒い岩になっている。これが黒湯の湯の花か?
これだけ染み込むとなると檜に黒湯を注ぎ込む訳には行かないと思う。確かに内風呂の檜の湯には白湯が使われていた。檜に黒湯はなんかイメージ違うもんなぁ。

端に狸の置物あり。なぜかゴルフクラブを振りかぶっている。
極楽。とにかく極楽の湯だ。

中に戻り、源泉でクールダウン。
さらにサウナだ。
まだまだ照の湯は終わらない。サウナがなんと無料。
大田区恐るべし。ここまできてさらにサウナまで提供してくれるとは。
そういえば久が原湯もサウナが無料だった。あそこも良かった。サウナが湿式と乾式あったし。

こちら照の湯のサウナは乾式サウナ。2人も入ると苦しいが、最高は8人ほど入れそう。
温度は80℃くらい。12分計がありそれを眺めながらひたすら汗を流せる。
すこしサウナにしてはぬるい気がするけど、まぁ無料なので文句なしだ。

外に出て水風呂。
そして、サウナ。たまに露天。
そんな循環を繰り返す。いつのまにやら体が一週間の疲れをすっかり忘れてしまっている。

立ちシャワーが二基あるので黒湯を洗い流し、次は檜風呂へ行ってみよう。
ちなみにここの立ちシャワーはセラミックを通して柔らかい水に変化するらしい。
たしかに柔らかい。シャワーの穴が細かいせいもあるだろうが・・。あとこの能書きの影響も大いにあるだろう。

檜風呂はなかなか人気があり、お客は常に7、8人いたがいつも一人か二人は檜風呂に入っていた。
さてどんな感じだろう。
ヘリに手をつけると木の肌触りが心地よい。
そして足が浴槽の底に触れた時に覚える安らぎ。
ふんわりした気持ちになる。白湯なので心が澄み渡る感じがするな。
檜にはやはり透き通った湯がいいだろう。
中央に浴槽があるとカランの人間と目を合わせる事もなく、落ち着いて湯を楽しむ事ができる。お客もみなマナーがしっかりしており、ひたすら湯に専念できた。
素晴らしい。

さて少々時間をオーバーしてしまった。
慌てて休憩所へ。
奥さんと合流し、女湯側の情報を聞き出す。
女湯側の鏡はなんとすべてハート型だったとの事。
男湯は普通に四角なので、ずいぶん可愛い演出である。
あと露天にはガラスがあり、その奥にバイキンマンなどの置き物があったとの事。
そのガラスには上から水が伝って流れ落ちる演出もあったそうで、見てみない事にはよくわからないが見る事もできないので想像でなんとか我慢する。

ドリンクはラムネをいただく(110円)。
休憩所には灰皿があり、タバコが自由に吸えてしまう。
湯上がりにタバコの煙を浴びるのは嫌だな。ここはマイナスだが、大田区の桜館も休憩スペースでタバコはOKだった。
そんなに大田区銭湯に数多く行った訳ではないが、これが大田区銭湯の社会通念なのかもしれない。なので我慢。

華かがりのラーメン、餃子、雰囲気も良かったし、照の湯も最高だった。
近辺に住みたいと本気で思う銭湯だ。
またぜひ、黒湯と早川氏のペンキ絵を味わいにやってきたいと思う。
心も体も心からあったまった11月の寒風吹きすさぶ大田区の夜だった。

2008年11月16日日曜日

44.石神井台 たつの湯

今日11月16日は練馬区の銭湯でりんごの湯をやっている。

というわけで16時半くらいに車で練馬区のたつの湯を訪れた。
霧雨の降る天気の中、駐車場を12台も完備したたつの湯には車が4台駐車されている。




















12台のしっかり舗装され区画が整理されている駐車場を利用できるのはなんと贅沢な事だろう。すでに癒されている自分がいる。

入口は立派な唐破風造。
暖簾は珍しく縦長のものでミッキーマウスとミニーマウスが湯に浸かっているもの。かなり縦に長いので、これは銭湯用ではなく、家庭用のものかな。

下足を預ける。防犯カメラはない模様。
悪い事をする訳ではないが、防犯カメラがあるとなんか緊張してしまう。なので、ないと少しほっとする。

引き戸を開けると、番台には女将さん。

湯賃をお渡しする。番台はよく磨かれていてまぶしいほどに輝いている。床も壁もとにかく清潔だ。

格子ではないものの天井は高く、境にある柱時計は年代物。しっかり現在も時を刻んでいる。境の壁には大きな鏡があり、その下の棚に野菜がいくつか置かれている。300円と書かれているから販売しているようだ。

あと、高さ1mほどの小さなドリンクケースがあり、窓際には畳ベンチ。
そこに腰掛けると窓の外に庭が臨める。
砂利が敷かれ、椅子にテーブルがあって灰皿もあり喫煙できるようになっている。
池はないがとても落ち着けそうだ。

そして日本代表のユニフォームが飾ってある。
地元の選手がオリンピックにでも出たのだろうか。

それにしても最近は奥さんと銭湯に行く事が多く、フロントの銭湯にばかり行っていた為、久々に番台だとなんか見られているようでドキドキしてしまう。そんなわけはないとわかってはいるんだが。

さてさて、パパッと服を脱ぎ浴室へ。

広い浴室。天井も高い。トップは丸くなっていて二段型。
ブルーのペンキがきれいに塗られている。
塗り替えられてさほど日が経っていないのだろうか。
浴室は外気とあまり変わらない温度。湯気抜きが良くされているようだが、ちょっと寒く感じる。早く温まろう。

島カランが一列。8-5-5-7で25。島カランにはシャワーなし。

体を良く洗うがお客が何人か連続でいらっしゃったため、すぐ隣のカランも埋まった。島カランにシャワーがないためどうしても両端が混んでしまう。
そんな中、一名が島カランでじっくり体を洗って流している。

浴槽へ行こう。
ここはなんと浴槽が一つのみ。
当然広々としている。ほぼ長方形であるが、水の蛇口が二つあるため、ひょっとしたら昔は浴槽が二つあったのではとも思うがそれは飛躍しすぎかもしれない。

リンゴがぷかぷか漂っている。赤いのやら青いのやら様々である。数にして50個。
しかし浴槽が広いため決して多いようには思えない。
しかもジェットだのバイブラだので流れがあるのでどうしても一方の片隅に固まってしまっている。

そんなリンゴ達をおじいさんが中央へ手で押しやっている。それを中央に浸かった自分がさらに端の方へ受け渡す。リンゴを全体に平等に回す作業のようだ。

湯温は41℃ほど。ぬるいとは思うが、壁を見ると「熱いときは水をうめてください」の張り紙。これを見たら埋めたい人は喜んで埋めてしまうだろうなぁ。

たつの湯は毎週日曜が薬湯の日と銭湯マップに書いてあったが、確かに今日は緑のバスクリン色をしていて薬湯のようだ。だが、リンゴも入っている訳だから、漂ってくる香りはというと・・う〜ん、なんか中途半端。
しかし湯から上がると体にはほのかにリンゴの香が付いている。
これはリンゴを見ながらのんびり温まるといった感じで楽しむのがいいかもしれない。

ジェットは三カ所あるが、実際噴出しているのは二カ所。
あと、赤外線の赤いライトが付いていて、その前にミクロバイブラ。

後はとにかく広いスペースである。
足を伸ばしてのんびり寝浴が楽しめる。圧力も少なく、長湯が心地よい。
なかなか温まらないので時間をかけてじっくりいくとしよう。

肝心の背景はどうだろう。
こちらは立派な赤富士。
そしてその風景が湖面に映り、逆さ富士となっている。
ヨットも何艘か漂い、そして舟が一艘。二名乗車している。
後は岸辺に民家が一軒。水車が・・・これは全く同じモチーフをどこかで見たな。
どこだろう。
それは四谷の蓬莱湯だ!
赤富士に、逆さ富士、そして湖に民家、水車。
このどれもが蓬莱湯のペンキ絵と同じ構成。
自分の中で連鎖が感じられる。
蓬莱湯の情景が頭に思い浮かんだ。あそこもいい湯だったな。

しかし、少し違うのは湖面に浮かぶ舟か。二名が乗船しているが、これは確か蓬莱湯になかった。

湯から上がり、畳ベンチでクールダウン。
今日はリンゴ湯のせいか女湯側がとても騒がしい。子供達がお母さんと一緒にやってきているみたいだ。

男湯側はじいさまが多く、昔から長くここの常連としていらっしゃってるのだろう。
こんな広い浴槽で、とてもうらやましく思う。
そんな中、野菜を購入されたじいさまがいらっしゃった。
自分も家が近ければきっと購入しているだろう。













表に出ると日はすっかり落ちている。
唐破風の内側がライトアップされ、練馬の街を温かく見守っているように見えた。
そこへ二名のお客がいらっしゃっている。
いつもの銭湯の様子。
何でもないその風景にとても幸せな心地になる事ができた。

2008年11月15日土曜日

43.幡ヶ谷 武の湯

金曜の夜、今日は渋谷区幡ヶ谷の武の湯へ行った。
時間は12時。

武の湯は道路を挟んで、目の前に駐車場四台を備えている。コインパーキングだが、武の湯を利用すれば一時間半まで無料。利用しないと30分500円。
こりゃ事実上武の湯専用駐車場だな。













さて、武の湯へ。
左手に並んでいる下足入れに靴を入れる。
数は全部で108。煩悩の数か。
下にいくつか大きめの下足入れがあるので、ブーツや登山靴(いないと思うが)でも問題ない。

中に入ると小さな休憩所があり、3人ほど座れるようになっている。
そしてフロント。
番台型の銭湯をフロント形式に改装した模様。
天井は高く、フロントの上も天井まで空間が広がっている。

メガネのお若い方、娘さんだろうか。湯賃をお渡しする。
「駐車場ご利用ですよね」
駐車場を使っている場合は初めに申告して、下足板を預けるようだ。

左手が男湯。
脱衣場はフロントがせり出しているし、さらにサウナ室も脱衣場側に設置されている為、狭くなっているかと思いきや、なんとこちらにも休憩所があり、これはフロント前の休憩スペースよりも5倍ほど大きい。
新型のマッサージチェアが4台もあり、イスもあって、さらにプラズマディスプレイ。50インチほどはあるぞ。
しかも、しっかり地デジを受信している。
なかなか銭湯で50インチのプラズマディスプレイに地デジを受信しているところはない。

デジタルの体重計がある。天井は高めだ。
さて、パパッと服を脱ぎ浴室へ。

まず感じるのはとても明るいこと。
蛍光灯がたくさんあり、照らし出しているせいもあるがタイルや壁が輝くほどにきれいだ。

天井には少し黒ずみなど目立つが、蛍光灯が当たる部分は清潔。
気分がいい。

奥行きはそれほどでもない銭湯ながら、横幅が広い。
島カランが3列になっている。
女湯境には水風呂があり、5-5-5-5-4-4の総数28。
立ちシャワーが3つある。

しかし背景が気になる。
いつもはのんびり湯船に浸かりながらチェックするのだが、ここのはあまりにも目立っている。
チップタイルの背景で、赤ん坊を抱える女性と、女湯側には男性。
とても抽象的ではあるが、愛のようなものを漠然と感じる。
女性の髪は長く、それはバックグラウンドになじんでいるので一見、髪のない女性にも見えてしまう。

しばらくするとこの背景にも慣れ、あまり気にならなくなってきた。
しかし巨大で迫力はある背景。あまり威圧感を感じないのは寒色を多く使った色合いのせいか。

体をしっかり洗い、浴槽を攻めてみることにしよう。

外壁側に深風呂でエステバスなるものがある。これは強力なジェットが二基設置されていて、ジェットで湯が浴槽から溢れ出さんばかりにボコボコしている。
体を支えていないと吹き飛ばされてしまうので要注意。ボタンを押してスタートする形式でなく、常にこれだけのジェットを出し続けるその気力が凄まじい。

そのお隣は寝ジェット。二基あって水枕も完備。これはしっかり冷たくて首元がクールダウンされる中、長湯を楽しめる。
そういえばこれらの湯温は42℃ほど。ややぬるめか。

隣の浴槽は浅風呂で湯温がやや上がり43℃ほど。
ミクロバイブラと電気風呂だ。
細かい泡のおかげで湯が柔らかくなり、肌に優しく作用する。
電気風呂は電気力はさほど強く感じないが、とても心地よい。
浅い風呂なのでしっかり腰掛けないとその恩恵にあまり預かれない。

一旦立ちシャワーでクールダウン。
その後、個室になっているラドンを試してみようかと思うがこちらは有料のようだ。サウナ室を利用する料金で入る事ができるのだろう。そういえば銭湯入口にはラドン発生装置があった。これはこの武の湯の売りの一つなんだろう。
しかし、武蔵野市の鶴の湯では銭湯料金内でラドンに入れたよなぁ。それぞれにサービスの価値観は違うからな。

ラドンの正面には水風呂。
ここの水風呂はかなり深くて驚く。1メートルはあるだろうか。
入った時に少し焦るくらいの深さだ。
温度は水温計によると18℃。もう少し高い気もするが、浴槽の底の方は確かに冷たくそれくらいありそう。

浅風呂と水風呂を何度か往復し、体を芯までしっかり温める。

湯から上がると広い休憩所でテレビを楽しむ。
お客は常に7,8人ほど利用していて、混んではいるのだが皆静かに利用しているので居心地が良い。あまり学生や若者が来る雰囲気ではなさそうだ。

ドリンクは自販機が脱衣場にあるが、フロント前にはドリンクケースがありビールも販売している。そんな中、不二家ネクターをチョイス。
銭湯でネクターを売っているのは初めて見た。

フロントは少しお年を召された女将さんにチェンジしていた。さっきの女性のお母様であろうか。

下足番の数字を告げると、コインパーキングに入れるコインを三枚くれた。一枚につき500円分の価値がある模様。
駐車場に行くと、1500円の表示になっていた。

駐車場は満車で、その後からもう一台やってきて駐車場が空くのを待っている。
なかなか盛況な銭湯。日曜は朝6時から営業しているとのことで、とても気合いの入った経営を為されているご様子。50インチのプラズマディスプレイが女湯側にもあったという事で(マッサージチェアは2台だったらしい)、資金も潤沢なのかもしれない。
それだけ地元の人々に必要とされている証拠なのだろう。
銭湯の数が日を追うごとに減ってきている中、今でも生き残っている銭湯はどこかしらに理由があるというものだ。

ラドンを楽しみたかったなという課題を残しつつ、次回に来た時はぜひ入ろうと心に誓い、幡ヶ谷の街を車で疾走し帰宅の途へ付いた。

2008年11月13日木曜日

42.調布市菊野台 寿湯

調布市の銭湯へ。
初めは深大湯を目指したのだが、あいにく今日は木曜日で定休日。
それではと亀の湯へ行ったものの、なんとマンション建設中。残念なことに廃業していたのである。

東京浴場組合のHPで廃業浴場リストを確認してみたが、確かに亀の湯が記載されていた。悲しいことだ。
廃業浴場リストもいいが、あと少しで廃業してしまう浴場リストも欲しいところ。そういった東京全体の情報をつかめるのはやっぱり浴場組合しかないよなぁ。

次に目指したのは寿湯。
駐車場完備、サウナ、露天と設備充実系だ。

通りに面しており、寿湯の全貌がよく把握できる。しかし月極駐車場や私道に阻まれており、目に見えているものの寿湯の駐車場に行くのは狭い私道を曲がり、また曲がりして行くしかない。

ここの駐車場はなんと25台完備。
具体的な台数は砂利の駐車場なのでよくわからなかったが、寿湯のHP(こちら)に書いてあったのだ。え?サウナが50円!?知ってれば利用したのに・・・。

駐車場には車が3台停まっているのみ。これだけ土地があると地主の方も駐車場でなくマンションにしちゃったりするのではなかろうか。自分がとやかく言う筋合いはないがなぁ。













正面は改装され、モダンな入口になっている。「コミカ風呂 HALF TIME KOTOBUKI湯」か。

この入口の向こう側には破風造の屋根が垣間見える。さらに向こうには煙突。「サウナ 露天風呂」と書かれている。

靴を下足入れに預ける。ここは木札の下足入れでなんだかほっとする。
自動ドアをくぐると、すぐ右手にフロント。
やたら笑顔で丁寧な接客をなさるご主人がお座りになっている。
今日は奥さんも引き連れているので二人分の湯賃をお渡しする。
「ありがとうございます〜」とこれまたご丁寧なお返事。
入る前から気分も良くなってしまう。

休憩スペースはかなり広め。10人以上すわれるソファがL字に並び、テレビもある。

男湯は右手。
脱衣場に入ると、天井はやや高いが白い壁紙で趣はモダン。
照明も球形二つで和の体裁は全くない。

壁は藤の花のタイル。このタイルは世田谷のえのき湯のものと一緒だ。
あと、小竹向原の大黒湯。あそこは外壁がこれだったな。
物事はいろんなところで連鎖しているのだ。きっとこの壁もなんらかの理由があり、えのき湯大黒湯と連鎖しているんだろう。

ロッカーの上に軟水の事に関して書かれている。
ここは軟水風呂だ。
そしてそのすぐ右には「貴重品は風呂ントにお預けください」のパネル。
そんなふざけた文章を見てフロントに預ける気にはならんよなぁ。
でもまぁ面白い。
パネルになっているってことは東急ハンズなんかで売ってるのだろうか。

さてパパッと服を脱ぎ浴室へ行こうとする。
浴室への扉ともう一つ、サウナ室への小さめの扉がある。
ここは脱衣場からサウナ室へ行く事ができるようだ。

まぁ自分は50円でサウナを追加できる事を知らなかったので、今回は入浴のみ。

浴室へ入る。
ここは面白い。
よくある銭湯の形式とは配置が全く異なる。
まず浴槽が奥になく、女湯境の壁に沿って配置され、カランは横向きになっていて島カラン2列ある。4-4-4-4-3で19。そしてなぜか座りシャワー(?)が一基。しかしこれにはホースが付いているので立っても使えるようになっている。

立ちシャワーは二基。
右手に通路があり、サウナ室へ行く道となっていて手前を左に行くと露天に行く道となっている。

さぁ、まず体を洗おう。
お客は5人ほど。4つしかカランが並んでいないので窮屈な感じだが、お客も少ないので問題はなかろう。

浴槽を攻めてみる。
まず脱衣場よりの方から。
脱衣場と浴槽の50センチほどの隙間に踏み石スペース。
そして、広い浴槽は大きく浅風呂と深風呂の二つに分かれており、脱衣場側は浅風呂。

まずは何もない浴槽だが、若干ジェットが出ている模様。しかしほとんど感じられない。
湯温は41℃くらいかな。ぬるめ。
つぎはバイブラ。
面白い事に水枕が完備なのでバイブラの上であぐらをかく、といった利用法でなく、水枕に頭を付けてバイブラをももの裏に浴びせるといった感じだろうか。
水枕が全く冷たくないのが残念なところ。
背中のあたりにはジェット二基。下から横から忙しい忙しい。
軟水はやや感じるものの、それほどぬめぬめした感じではない。やわらかさは感じる。

続いて深い風呂へ。
電気風呂がある。電極が二カ所から出ているが、片方は座り、片方は立って利用する。
でも二人が入るには狭すぎるので、どちらも一人でやるしかない。
最近ボウリングをしてやや筋肉痛状態なので電気がやたら気持ちよい。
立って使う方の電極が強力な模様。ビリビリ来て血管が浮き出てくる。あ〜極楽だ。

続いて立ちジェット。
強力なので手すりにつかまっていないと流されてしまう。
しかしここの深風呂は底がよく見えないので注意が必要。
ただでさえ泡で見えないし、しかも浴槽が濃い青を基調としているので暗くてよく見えないのだ。一見さんはとくに危ないな。

そのお隣は丸形のボディマッサージ。それほどジェットは強くないが全身にジェットが当たるので気持ちよい。

浴槽の一番奥にあたる場所にはコミカ風呂。
これがコミカ風呂か。よく銭湯の入口に書いてあったりするが、実際どんなもんかは知らなかった。
イスがあり、座った状態できめの細かい泡が背中に当たり、体にはその気泡が張り付いている。おそらくこのきめ細かい泡がコミカ風呂なんだろう。きっとそうなんだろう。
しかし確信はない。
コミカ風呂=設備のいろいろある近代的な風呂の総称かもしれない。
よくわからない。

背景はかもめのタイル。
なんで?と思う気持ちを抑え、よく見てみると七羽飛んでいる。
少し運気がアップした気分だ。

すっかりほてった体を立ちシャワーでクールダウン。

続いて露天へと向かう。
扉を出ると外気のひんやりした空気に体が包まれる。
天井は天窓となっていて開閉が可能。今日はしっかりオープンとなっていて、満月も見える。
なんと風流な事だ。
浴槽は高い位置に一つ。水風呂。
そしてやや低い位置に一つ。
30cmくらいの高さから湯が注ぎ込んでいる。
岩風呂で照明も暗く、露天のムードがよく出ている。

湯温は意外に高く、内風呂よりも熱めの42℃。
底の穴からあつ湯が湧き出してきている。

充分熱くなってくると水風呂へ。
こちらは22℃ほど。少し水風呂にしてはぬるいかな。

まぁでも何度かここを往復して楽しんでみる。
サウナも利用すればよかったな。
サウナから扉を外に出ないと水風呂に行けないのは少しアクセスが面倒かもしれない。
目の前が水風呂の方が嬉しいだろう。

さて、湯から上がり広いロビーで休憩。
ドリンクケースは巨大。
天井に付かんばかりの高さがある。
ビールやらビンコーラやら何やらありとあらゆるドリンクあり。
その中からマウンテンデューをセレクト。これ好きなんだよね。

ジュース一本買う時にもご主人の接客はご丁寧で最高だ。
今まで行った銭湯の中でこれほど当たりのよいお方がいただろうか。
まったく嫌みがない。
スピーディーさには欠けるが、とても人の良さがにじみ出ている。これがコミカ風呂か?(そんなわけない)

奥さんが出てくるのを待ち、帰宅する事にする。
湯もいいが、ご主人の接客も最高。
疲れは吹き飛ぶ事間違いなし。
心のしがらみも薄らぐほどの接客だ。
なんか自分も人に対していい事をしたいなぁと思ってしまう。
そんな木曜の夜のハーフタイムだった。

寿湯は金曜日が定休日。つまり明日か。
明日お休みだからご主人も機嫌が良かったのかなぁ。
いや、きっといつ行っても心地よく過ごす事ができるだろう。次回はサウナに挑戦することをぽかぽかした心に誓い、帰宅の途についた。

2008年11月10日月曜日

41.下石原 鶴の湯

調布市にある鶴の湯へ。

鶴の湯という屋号は本当に多い。
松の湯や梅の湯も多いが、鶴の湯にはたまたま入浴する機会も多く、個人的に本当に多い気がしている。実際は松の湯が一番多いらしいが。

今日は日曜日。
車で調布市を通る際に鶴の湯へ立ち寄ってみた。




















駐車スペースは4台。
訪れた時間は5時頃で1台だけ空きがあった。
煙突が立派に天へとそそり立っている。













入口は改装されていて本来の銭湯の佇まいというものは包み隠されてしまっている。これまで築き上げてきた歴史があるのだろうが、しかしこの距離からではそれを知る由もない。

入口をくぐり、下足を預ける。
中に入るとフロントが右手にある。左手はロビー。6人ほどが腰掛けることのできるソファあり。テレビもありだ。

笑顔が明るいおばさまに湯賃をお渡しする。
ロッカーの鍵を選んでくださいとのこと。何番がいいか分かるはずもないので適当に一つをチョイス。
脱衣場の鍵はフロントで管理しているようだ。これなら浴室での鍵のすり替えや、鍵を持って帰ってしまったなどなくなる話なのかもしれない。

さて脱衣場へ突入だ。男湯は左手。
YAMATOの体重計がある。シンプルな造りだ。マッサージ機は最新式のものが一台ある。
盗難が発生しましたと張り紙がある。
そういう事件をきっかけにしてロッカー鍵をフロント預かり式に変更したんだろうな。
パパッと服を脱ぎ、浴室へ。

まず気づくのは湯煙。
浴室全体が白く霞がかかったようになっており、ぽかぽかしている。
湯気抜きはしてないのかな。でも、澄み切った空気よりもこの方が雰囲気も高まるし、湯の温度と室温に差がありすぎるのも嫌なのでよろしい。

お客は8人ほど。天井はかなり高い二段式。湯煙のせいで天井もはっきり見えず、余計高いものに見える。
奥行きがそれほど広い訳ではない銭湯だ。しかし設備が充実している模様。
カランが4-5-5-5の19。
そして、女湯境側から仕切られた個室の中に人口ラドン温泉、そして円形浴槽(回転ジェット)。並んで超音波風呂がある。これは長方形をしている。
それから水風呂があり、向かいにサウナ室。なんとここはサウナが無料。

まずはカランを確保し体を洗う。
ここのシャワーは温度が高いな。少々肌がびっくりするくらいだ。

さて、まずは円形浴槽から。
ここには張り紙があり湯温40から41、ぬる湯ですとある。
まず体を慣らしてくださいや、水を埋めすぎると公衆衛生法上問題があるとも記されている。
水を埋める輩に対する厳しいメッセージだなぁ。

湯温は41℃くらいかな。
回転式なので体が流されかけるもそれほど強いジェットではない。
湯が柔らかいな。とても心地いい湯だ。

さて、続いてとなりの長方形の浴室へ。
ここには「あつ湯です 42〜43℃、源湯なので水を埋めないでください」とある。
源湯?この湯が隣の円形浴槽につながっているようだ。

縦長の浴槽なので奥の方ヘ行き足を伸ばす。湯温は確かに43℃ほど。
奥の壁に檻があり、中にガリウム石のようなものがあり、湯がドバドバ当たってこちらに流れ込んでくる。あれはガリウム石だと思うが、記述はいっさいなく「超音波風呂」とあるのみ。
音波は感じられんが・・。

ジェットが二基噴出しており、ゆっくり浸かる。
かなり長い浴槽なので寝浴するのがよろしい。流れ込んでくる湯はなかなか熱く、気持ちがいい。これは最高だ。

さて、一基ある立ちシャワーでクールダウンし、サウナ室へ行ってみる。
無料は嬉しいな。
こちらは湿式サウナで、3人ほどが入ることができる。かなり小さくかわいらしい砂時計が一つあった。

無料だけあって、みなサウナ室をよく利用している。一様に桶を抱えて入ってくる。
出る時にお湯で流すようだ。

どこかのサウナで桶を持ち込まないでという注意書きを読んだことがあるので抵抗があるのだが、ここでは流して出るというのがマナーなのかもしれない。

さてサウナ室正面には水風呂あり。湯温は20℃だ。サウナの後の水風呂は心地いい。目を閉じじっと水に体を浸すと心が自然と落ち着きを見せる。
集中力も高まってくるようだ。

無駄におしゃべりするようなお客もいない。みなこの銭湯を一人で楽しみに来ている。居心地がよい。

さて、残すはラドン温泉。
引き戸を開け、中に入る。
天井には葉っぱがびっしり描かれた壁紙。
少し薄暗く、正方形の浴槽だ。
湯温は少しぬるい。40℃くらいかな。
しずかに身を湯に預けていると、じわじわ体内に浸透してくるような感覚を覚える。
注意書きに汗をかきやすくなるのでよく体を流すようにとある。
これは毎日つかりたい湯だ。

さて、表に出て立ちシャワーでクールダウン。
背景を見ていなかったが、よく探してみるもこちらの銭湯には背景がない。
藤の花を表すようなタイルの並びだが、よくわからない。
世田谷のえのき湯のようなタイル。
まぁ、ここはサウナが無料だし、ラドンもあるので問題なし。

湯から上がり、ロビーでビックル120円を購入。
スポーツ新聞を読みながら、今晩の日本シリーズ第七戦の結果を予想してみる。
巨人が勝てばいいなと思うが、なんか西武が勝ってしまいそうな気がする。

そんなとき男湯側からおじさんが出てきてフロントにキーを渡す。
「さっきの若い兄ちゃんが忘れて行ったよ」とのこと。
あ、ロッカーキーのことか。しまった自分のことだ。
それから入ってきたお客が「駐車場がいっぱいだから困っちゃったよ」とのこと。
あ、自分もクルマだ。早くどかさなくては。

ということでフロントのおばさまにキーのこととクルマをどかしますと詫びを入れるが、笑顔で「いいのよいいのよ」と言われた。

ロッカーキーのシステムはつい忘れてしまっていた。次は気をつけよう。
クルマに飛び乗り駐車場から脱出。
休日だしお客も多いようだ。
サウナが無料。水風呂も心地よく、人口ラドン温泉も素晴らしい。
おばさまの接客もいいし、また立ち寄りたい湯の一つになった。
明日からまた仕事がんばるか。

2008年11月9日日曜日

40.桜丘 世田谷温泉四季の湯

土曜日の夜。
東京はこの季節一番の寒さとのこと。
確かに寒い。
寒いだけでなく風も吹きすさんでいる。

こんな日は温かい湯に浸かり、温かいまま布団に入り込むに限る。

さて、車で環八を北上し、桜丘の世田谷温泉四季の湯へ。
今日は奥さんも一緒である。

奥さんは温泉が好きなのだが、世田谷温泉は名前にこそ「温泉」が付記されているが実際は温泉は湧いていない。
前もってそのことを話さないでおき、後で温泉ではなかったと気づくだろうか。とりあえず内緒にしておこう。

狭い路地を抜けると看板が目に入る。




















住宅街なので他に店はなく、いきなり銭湯がある。
そしてマンションの一階にある銭湯である。マン銭。




















駐車場は5台ほど。なかなか使いやすい駐車場でいい感じだ。
さて、入口から入り下足を預ける。
右手にフロントがあり、左手には広いロビー。テレビを放映中だ。日本シリーズ第6戦。
最後の一球。西武が勝った。久々の第7戦だ。明日は盛り上がりそうだな。

券売機でチケットを購入し、フロントへ。
フロントにはとっても若い高校生らしき女の子。しっかり業務をこなしている。
さて左手の男湯へ。
ここは日替わりで入れ替わるようだ。左側はどんな湯だろうか。

脱衣場は天井低く、まるでジムかプールのようだ。
必要な設備はすべてそろっているが、懐かしさを感じるようなアイテムは・・籠があった。5個ある。おそらく昔はここに破風造の銭湯があり、この籠も愛用されていたんだろうな。マン銭になる時に5個に絞られたんだろうなぁ・・・って憶測大会だ。

パパッと服を脱ぎ浴槽へ。
さて桶とイスをと思いきや、すべてカランの前に出ている状態。どうやらここは入口にまとめることをしないようだ。

しかし雰囲気はプール。
床のタイルは銭湯らしくなく普通のタイル。
そしてカランは少なめで23個。天井は当たり前のように低い。
少々灯りが暗めで落ち着いた雰囲気。
学生三人衆がよくおしゃべりをしている。タイミングが悪かったか?しかしまた出直すという訳にもいかない。

とりあえず体をしっかり洗い、やかましい三人衆を避けるように奥の扉から露天風呂へ。
誰もいないのを確認し、ゆっくりと湯に浸かる。
まず感じるのは塩素臭さ。ほんとにプールのようだ。
雰囲気は岩風呂で、竹の壁で天井まで組み上げられている。
ぽっかり天井から空を見ることができる。近くのマンションなどから覗かれないようにする為には、これくらいしっかり壁を作らないと都会では無理だろう。

湯温は41℃ほど。
ほどほどにして切り上げ、中に入り主浴槽へ。
座ジェットがあり、あとは広い浴槽で電気風呂。すべて同じ浴槽だ。

座ジェットは水枕がない。なかなか心地よいものの、一基しかないと一人で独占してしまっているようで、いつまでも浸かっている訳にもいかず、しばらくして主浴槽の湯を楽しむことにする。
なかなか心地よい湯だ。
充分温まったところで水風呂へ。
温度は21℃。この冷たさが癖になってしまう。

それから電気風呂へ。
威力はなかなか。ピッタリ背中を壁に付けることもままならない。
けれども、前よりは電気風呂が苦手ということもなくなった。慣れてきたのかもしれない。

さて湯から上がり、ロビーで一服。
フルーツ牛乳120円をいただく。
テレビではスウィングガールズを上映中。フロントは女の子からおばさまに変わっておられる。
マッサージ機が二台、足モミマッサージ機もある。

奥さんと合流し感想をヒアリング。
女湯側には薬湯があったそうで、今日は人参の湯。代わりに露天がないとのこと。少々優越感に浸るものの、塩素臭いからなぁ。

住宅街の中にとけ込む世田谷温泉四季の湯はクルマで行きやすい銭湯。
寒い季節につい立ち寄りたくなる銭湯だ。趣はないけど、懐古主義に走ることなく、湯を楽しむ実用的な雰囲気がビシビシ感じられる今風の銭湯だ。もちろんペンキ絵もなかった。それはそれで寂しいが、マンション銭湯で無理矢理ペンキ絵を書くのもどうかと思うのでこれはこれでいいのだろう。

奥さんは世田谷温泉には温泉が湧いていないことに気づかなかった模様。やはり一般客にとってはそこに気づかない人もいるだろうなぁ。ぜひ紛らわしくない名前にしてもらいたいものだが・・。

39.余丁町 弁天湯

一週間仕事をしてきて、一番テンションの上がる金曜日。
そうだ、銭湯へ行こう。

というわけで仕事が終わり、クルマで新宿の銭湯へ。新宿に駐車場付の銭湯もあまりないが、銭湯マップを眺めていると弁天湯に目が止まる。

露天付である。
弁天湯にクルマで行くには一方通行の道をかなり離れた道より入り込まなくてはならず、車幅が1.8mあるのでカーナビがその道を案内してくれず、しばらく時間がかかってしまった。

というわけでかなり狭い路地に弁天湯は存在している。横に更地があり、売り出し中のようだ。おかげで煙突が天に向かって今にも打ち上げられんばかりの迫力を味わうことができる。

駐車場は5台。
すでに二台停まっており、水戸ナンバーがある。水戸から銭湯マップを頼りにやってきたのか。んなわけないか。
























さて入り口は駐車場の裏側。コインランドリーが左手にあり、入り口は改装されている。
側面から見た時にもわかるように昔は破風造が全面に来ていて銭湯の趣を感じられたんだろう。今では少し離れて背伸びをしないと見えない。

下足入れに靴を入れ、自動ドアのいきなりの素早い動きと大きい音に多少ドキドキしてしまう。

フロントが左手にあり、奥は立派なロビー。ソファや椅子が並び、8人位はゆったり過ごせそうだ。
プラズマTVもある。しかしあれは地デジじゃないな。アナログ放送を受信している。

フロントには恰幅のある親父さん。お若い感じだ。お歳は40くらいかな。
湯賃をお渡しし、右手の男湯へ。

番台形式を改装した形で、フロントスペースには屋根もないのでよく脱衣場の様子が把握できそうだ。
脱衣場からフロントに話しかける小窓もあるし、コーナーミラーがあってフロントから監視できるようになっている。

脱衣場は少し高めの格天井。やや明るめの木の色が鮮やかである。

女湯境の時計をよくかける壁の位置にやたら大きな時計。ツリーの形でいくつもの穴があいている。人形が見えるので、時間になると出てくるのだろう。かなり賑やかになりそうだ。

脱衣場にもテレビあり。ここはテレビが多い。フロント正面の天井近くにもあったんで、女湯側があるとして4台はあるのかな。

デジタル体重計にマッサージ機はふくらはぎもやってくれるやつ。ロッカーも新しい。懐古気分を味わうことができるアイテムは見当たらないかな。

さてパパっと服を脱ぎ浴室へ。

全体的に清潔な雰囲気。白が眩しい。
カラン前に椅子・桶が出っぱなしのとこが多いようだ。この辺りのお客は片付けないのが流儀なのか。

浴室の広さは中型銭湯と行ったところで島カランが二つ。5-5-5-5-4。外壁側にはカランがなく、露天岩風呂への引戸と水風呂、サウナ室がある。女湯境に立ちシャワー二基。お客はまぁまぁ混んでいて7人ほど。

体を洗い、浴槽巡りへ。

まずはぬるそうな薬湯へ。
丸形の浴槽で宝寿湯(高麗人参等)と書かれている。
湯には茶色の色がついており、ほのかに漢方の香りが漂っている。

湯温は40℃ほど。じっくり長湯ができる気持ちのよい湯だ。

丸形の浴槽は少しカラン側にせり出しており、その後ろに大型浴槽が広がる。
外壁側にはミクロバイブラ。すぐ側からは湯が滝のように流れ落ちている。
大型の浴槽は42℃ほどだ。
バイブラはモリモリ泡が湧き出ており、静かに座っていられない。しかしそこが腕の見せ所。あぐらをかき、しばらくバイブラの勢いをバランスよくしのぎきる。

さて、続いて寝浴。二基あり、水枕は残念ながら設置されていないものの、角度がよく寝心地はよい。

お隣は足温浴。ここからは深風呂になっていて、座った時にふくらはぎなどをジェットがマッサージしてくれる。
それから、スポットパワー。威力の強いジェットだ。
あとはつぼ浴。小さな丸形浴槽にはまるタイプのやつ。浴槽が色々あり、楽しめる感じだ。

立ちシャワーでクールダウン後、引き戸を開け露天へ移動。
建物横のスペースを有効活用し、岩風呂とちょっとした庭となっている。

岩風呂は外気を若干感じることができる。
湯はカモミール湯とのこと。
ヘルスケミカルの黄緑の湯だ。

岩風呂はいいが、湯の色がちょっと岩風呂にマッチしていない。
湯温は42℃くらいかな。

中に入り、背景を探してみるが、この銭湯にはペンキ絵などが全くない。
奥の壁がせりだしていて造花が一列並んでぶらさがっている。
せりだし部分に赤外線ライトが四色ならんでいるがこれは体に何か作用するのかな?
下の浴槽をかすかに照らしている。

再び浴槽に浸かり、十分に温まったところで水風呂へ。
温度はなんと16℃。
入るとわかるがかなり冷たくて素晴らしい。

火照ったからだがきゅっと引き締まる。
湯から上がり、ロビーで一服。
ドリンクはかなり豊富。アイスもある。
ビンのコーヒー牛乳100円を一気飲み。あ〜うまい。
ロビーには賞状が二つあり、衛生的に素晴らしい浴場ということで受賞したことがあるようだ。確かにかなり清潔だった。

賞状に書いてあるが、ここのオーナーのお名前は銭元さん。
なんと銭湯をやるべくしてやられているような銭湯にぴったりのお名前ではないか。

サウナは未体験だが、次ぎにくる時はじっくり楽しむとしよう。
余丁町の銭湯は、モダンに生まれ変わった形跡がはっきりとわかる銭湯。見事に次の時代へモデルチェンジを果たしている。
これからも末永く素晴らしい湯を人々に提供していってほしいものだ。