2009年12月26日土曜日

141.小平市小川西町 栄湯

ブリジストンの工場正面から垂直に延びる通りを行くと西武線の踏み切りがある。
それを渡り右手のファミリーマートの側の道を進むとすぐ栄湯がある。すぐ隣に軽トラックが駐車されており、裏にたくさんの廃材が見える。



建物は宮造りではないものの切妻屋根の下に木の飾りがある。
暖簾を潜ると松竹錠の傘入れ。そして左右におしどり錠の下足入れがあるが、なぜか右手の男湯側の下足入れは横に伸びる形で108あり、その前が畳1.5畳程のちょっとしたスペースになっている。
女湯側は外壁側に下足入れが並ぶ通常のタイプ。所々番号が消えてしまっており、ひなびた雰囲気が漂っている。

引き戸から中へ。
眼鏡の女将さんが番台にお座りになられている。
湯賃をお渡ししようとすると財布に万札しかなかったのでお釣りを貰うのも悪いかと思い、回数券を購入した。

島ロッカーが一列、天井が高く開放的な脱衣場だが格子にはなっていない。
外壁側には縁側が広がっている。しかしすぐコンクリートの壁があり、趣はない。

お手洗いは縁側から右手へ。驚くことにたてつけがかなり悪く、木戸がなかなか開かない。開いたと思っても、今度は閉めることができない。コツをつかむには時間が必要だろう。
トイレは和式で清潔。タイルが輝いている。

縁側にはお釜式ドライヤーが置かれている。現役を引退したのだろうか。
あとSANYOの洗濯機もあるが、こちらは電源も入っていて現役のようだ。

あと脱衣場にはTANAKAの大きめのアナログ体重計がある。

さてパパッと服を脱ぎ浴室へ。

中はかまぼこ型天井。
お客は二人ほどと少々寂しい。ちなみに訪れた時間は土曜の夜、7時ほどだ。

島カランは一列で外壁より6-5-5-6。女湯境側の列は全てに仕切りがしてあり、全てがホース付きのハンドシャワーになっている。そのうち一つに立ちシャワーが一基あるが、椅子を置けば独占できてしまう感じだ。

カランを確保し体を洗う。
体を洗いながら天井を眺めるが、所々黒ずみがあり、昭和の足跡を感じる事ができる。女湯境の壁の上あたりをギザギザに4つ、30cm四方くらいの穴があいている。湯気抜きがしっかりされているのだろう、かまぼこ型ながら湯煙はほとんど生じていない。

さて浴槽へ。
浅く広い浴槽が一つと、深い浴槽が一つ。典型的な東京銭湯の構成。どちらもバイブラでぼこぼこと景気よく泡立っている。

まずは浅い方から。
ミクロバイブラのスペースと座ジェット二基が設置されているスペースがある。
ミクロバイブラの湯に浸かる。
湯温は42℃ほど。足を伸ばしてもつっかえる事ない広い浴槽だ。座ジェットには水枕も完備され適度な冷たさ。しかしながら高さがおかしい。背もたれに背をもたげても水枕に頭が届かず。結局最後までベストな体勢を探し当てる事ができなかった。

続いて深風呂へ。
湯温は期待するほど熱くなく、42℃ほど。それもそのはず下で浅風呂とつながっている。どちらかといえばミクロバイブラ付近の方がアツ湯であった。

深さがかなりあり、想像するよりも5cmほど深いので平均的東京銭湯の深風呂の深さを若干上回っているのではないかと思う。
こちらより背景を拝む事にする。

(瀬戸内海) 19.1212
と書かれている風景。離れて小島がポツポツと浮かび、ヨットもある。岩の淵の描き方、民家の几帳面なディテールを推し量るに丸山氏のものではないかと思われる。
女湯境の壁が低めなのと、背景の高さがあることもあり、立ち上がって女湯側を見る事もできるが変わらず瀬戸内海であった。

背景の下には広告スペースもあるが、水色のペンキで塗りつぶされ広告は一件も貼り出されていない。

主体として描かれている対象物がない背景であるが、丁寧に描かれている為心が清らかになるイメージ。二年前に描かれているがすでに全体的に剥げている部分が多い。残念な事だが年月を重ねるというのはそういう事だ。じっと受け入れるしかない。

肌に優しくなじむ湯を堪能し、上がる事にする。

脱衣場で服を着ながら縁側を見やる。庭があって初めて意味があるはずの縁側だろうに、悲しいかな壁しか見えない。その昔はおそらく庭があったのだろう。人間は想像という武器がある。しばし恋の泳ぐ池、手入れのされた庭を作り上げ、失われた銭湯の過去に憶測の触手を伸ばしてみた。

全体的に昭和の香を強く感じる事ができた銭湯。ひなびた雰囲気、宮造りではないが趣は十分に感じる事ができる銭湯だ。次にいく時は厠の戸を開けるのもうまくなっているかもしれない。また近くに来たら寄る事にしよう。


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2009年12月23日水曜日

140.大田区上池台 小松湯

今日は冬至、柚子湯である。

仕事を終え、寒風吹きすさぶ中駐車場へ。車で大田区銭湯へ向かう。
小松湯は洗足池の近く、坂道が多い街並の中にある。50mほど離れた位置にあるコインパーキングに駐車し、小松湯の正面へ。

切妻屋根が垣間見えるが表向きは改築されフロント前の休憩スペースになっている。







オリジナル暖簾を潜り、119ある下足入れの一つに靴を預け、中へ。
フロントでは女将さんがナンクロをやって時間をつぶしている。
フロント前から横長に休憩スペースが広がっている。
湯賃をお渡しするとロッカーキーを差し出される。右手の男湯へ。
脱衣場は天井高いが白い紙が貼られた普通の天井。デジタル体重計に、踏み石が30cm×50cmほどの大きさで置かれている。
その他島ロッカーもなく、4人がけのゴム張りベンチが置かれているくらいで広いスペース。ロッカーは外壁を取り囲むように配置されている。
壁にガリウム石の説明文が貼り出されている。だいたい浴槽の壁に貼られているもので、よく見ているので中身を覚えてしまっているが、それでも着替えながらつい目がいってしまう。

午後9時頃。脱衣場にはお客はいないが、浴室を覗くと4人ほどいらっしゃる。
パパッと服を脱ぎ浴室へ。
こちらも天井高く二段式。湯煙がスゴい。湯気抜きはしていないようだが、今日のような寒い冬の夜はそれでもいいだろう。

島カランは二列。外壁側より4-3-3-5-5-6の構成。立ちシャワーは一基で女湯境壁に配置されている。カランの湯は熱めで、水はぬるめだけど、シャワーは少しぬるすぎる。体が冷えているので余計そう感じるのかもしれない。何度かカランの湯を浴びる。

排水口のアルミ蓋の溝が絵になっており、カニが描かれている。また他の排水口を見てみるとそちらはヨットだった。一応全て見回ったがこのどちらかだった。

さて浴槽へ。
外壁側のカランが少なめであるだけに、外壁側の浴槽が若干洗い場にせり出して来ている。
広めの主浴槽、そして女湯境側に深風呂。その全てに柚子を入れた袋が浮かんでいる。やや香も漂い、湯にも黄色みがかった色がついている。

まずは浅めの主浴槽へ。「ぬるめ」と壁に貼り紙が出ている。
こちらには座ジェット二基、バイブラがある。
湯温は43℃ほど。初め柚子の成分だろうか熱めに感じるが、しばらく入るとすぐに慣れる。柔らかい湯でとろみもある。さすが柚子の力だ。柚子をそのまま袋に入れているのもあるが、ミンチしたものを入れている袋もあるせいで柚子風呂らしさが存分に出ている。いい湯だ。

バイブラはやや強めで、上であぐらをかき続けるのがしんどい。
座ジェットは奥行きも水枕もベストの設定。広すぎず狭すぎず、水枕は冷たすぎる事なく高さも申し分ない。湯煙に白く包まれた浴室の中、柚子の香を楽しみながら極楽の湯を満喫する。

深風呂の方は「あつめ」と書かれているが湯温は変わらない。
ガリウム石はこちらの浴槽にある。檻があり、その中にガリウム石。そして石のカエル親子も居座っている。背中に子を背負っているのである。吉祥寺辺りでこの石カエル親子を見かけたような気がするが、どうだっただろう。

さて、背景を眺めてみるが、白樺の木の壁紙だ。少し味気ないが湯が何にも増して素晴らしいので不満は特に感じない。

しっかりと体が温まり、湯から上がる。
脱衣場で着替えをしているとフロントスペースで女将さんとお話をする常連の湯客が何名かいらっしゃるのが声でわかる。女将さんがフロントにいらっしゃるせいか今の時間は女湯の方がホットなようである。寒さが厳しいという話等、盛り上がっている様子。

改築されモダンな雰囲気の漂う清潔な銭湯。
浴槽も広く快適。湯煙の濃さ、石カエル親子とガリウム石、湯の質もいいのでぜひまた来たいと思える銭湯だった。


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2009年12月12日土曜日

139.大田区西糀谷 幸の湯

土曜日。朝から大田区銭湯の幸の湯を訪れた。
幸の湯は朝湯を定休日である月曜日以外やっている銭湯で、以前に一度訪れたことがあるのだが、ちょうど昼休憩に入るところでその時は入ることが出来なかった。

午前9時頃。
今日は朝湯が11時までであるのを知って早めに来たのである。

車で100m離れた位置にあるコインパーキングに駐車。
西糀谷辺りは住宅街が広がり、高層建築は見当たらない。車の通りも少ない地域なので落ち着いた雰囲気がある。





幸の湯はビル銭湯。
入口から入ると松竹錠の下足入れ。プラスチックで中が透けている下足入れだ。
靴を預け中に入るとフロントには女将さん。
休憩スペースは観葉植物がいくつかあり、テーブル、椅子がきれいに並んでいる。ちょっとしたカフェのような雰囲気がある。テレビは地デジ対応でHITACHIのwoo。アナログ受信の銭湯が多い中で、しっかりとした対応がされているといえる。

左手の男湯へ。
脱衣場は天井低め。ロッカーは縦に細長いものもあり、常連向けの小さな貸し出しロッカー
もある。
パパっと服を脱ぎ浴室へ。
天井はやや高めで屋根のように外に向けて低くなっている。
カランはマンション銭湯に多い横に並ぶタイプ。
外壁側に3-3-4-4-4-2、女湯境に3ある。なぜかこの三基のうち一つだけシャワーが設置されていない。

体をしっかり洗い、浴槽へ。
女湯境の壁にずらっと浴槽が並んでいるが、それに加え露天、二階への階段もありサウナ室・水風呂につながっている。

まずは広い浴槽の座ジェットへ。湯温は41℃ほど。奥の壁に背をつける形なので浴室全体を見渡すことが出来る位置にある。ジェットの勢いはやや強めなのであまり長い間浴びていると内出血してしまいそうだ。

続いてボディジェット。丸形の狭い筒のような浴槽に体をはめ込むものだ。あとはジェットエステがあり、一穴式の強力ジェットの設備がある。

続いて電気風呂へ。
電気の力は弱めなので背中をピッタリ電極に押し付けても問題ない。腰に当てられる位置に電極があるので、腰痛持ちにはいいだろう。

浴槽の隣には温泉浴槽がある。
温泉といえば黒湯が主体の東京銭湯だが、こちらはやや茶色身があるがほぼ透明に近い湯。ナトリウム・カルシウムが主成分と表記されている。
湯は柔らかく肌がすべすべになる。ぽかぽかと芯から温まる感じをしっかり受けることができる湯である。

二階への階段の先にはサウナ室と水風呂があるが、今回のところはやめておこう。次回また利用する時に楽しみを取っておこうかと思う。

立ちシャワーでクールダウンし、その後露天へ。
露天は外壁側の扉の外に出るとある。岩風呂であり、目張りが竹のようなプラスチックでしっかりと設置されている。趣はやや薄れるものの、広めの浴槽で4人程がのんびりと湯に浸かることが出来る。湯温は意外に室内の浴槽群よりも高めで43℃近く。しかしながら外気に肌をさらしているので設置されているベンチで体をさましたりもしながら極楽のひとときを過ごす。

湯から上がり休憩所で一休み。
ジュースを買うがひっかかり出てこない。女将さんはおばあさまにお変わりになられていたが、自販機を開けて出していただいた。笑顔で楽しそうに仕事をされている。
湯客も多くにぎやかで活気のある銭湯。
毎日やっている朝湯は、燕湯か幸の湯というほど貴重なのでまたぜひ訪れたいと思う。


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2009年12月6日日曜日

--.世田谷区玉川台 藤の湯

今日一日、東京の空は晴れ間が広がっていた。
買い物をしたり、食事をしたりと休日を楽しみ、夜に地元の銭湯、藤の湯へ。

環八と246が交差する、瀬田交差点より100mほど用賀駅方面に向かった位置にある銭湯。
コンビニ側の路地裏にあり千鳥破風の表向きだ。
フロントにはめがねで細身の女将さん。
親父さんもフロントにいらっしゃる事が多いが、11時ごろより閉店作業が始まる。

10時頃に浴室に入ると湯客は7人ほど。学生も何人かいる。
月に何回か訪れる銭湯ではあるが、今日の新しい発見は浴室への引戸が半自動に変わっていた事だ。これまではしっかりと手で最後まで閉めていたが、閉じる動作を始めようとするとかなり速いスピードでさっと残り20cmほどの位置まで引戸が自動で閉まり、その後ゆっくりと音が出ないように閉まっていく。スプリングかなにかで閉まるようになっているのだろうか。

檜の香が漂う浴室で、湯を存分に味わい湯から上がる。
今年もあと数日。
冬至の柚子湯をどちらの銭湯で味わうか。また新年の初湯はどちらへ行こうか。
そんな事を考えながら246の坂道を自転車で駆け下り家路についた。