2010年9月23日木曜日

164.新宿区西新宿 梅月湯

新宿区の銭湯、梅月湯を訪れた。

昨日まで30℃を当たり前のように越えていた気温だったが 今日になると急に冷え込み、20℃ほどになった。一日暑くて汗だくになった日の銭湯もいいが、やはり涼しくなると温かい湯に浸かりたくなるものである。

しかしながら今日は涼しい上に雨が激しく降っている。
普通なら家でのんびりと休日(今日は秋分の日である)を過ごすところだが、ふと湯に浸かりたいと思うともう何があっても思いはとどまらない。クルマに乗り、新宿の梅月湯を目指した。
梅月湯は銭湯マップを見ると番台形式ということでこれまで訪れたことのない銭湯だった。一人で行くだけならフロントも番台も気にしないところだが、一緒に行く人がいるとなるとやはり気を使ってフロント形式を選ぶことが多くなるのだ。



梅月湯は西新宿、新宿中央公園のほど近くにある。
目の前の通りにパーキングメーターがあり(1時間300円)、クルマで来るには便利な銭湯といえる。
梅月マンションという11階建てくらいの高層マンションの1階。自動販売機がならび、銭湯の入り口があるのだが下足入れは表側に無く、靴を脱ぎ中に上がると下足入れが左に並んでいる。鍵はカナリア。赤で数字が記載されているので、これは女湯用でひょっとしたらその昔はこの数の倍、下足入れがあったのかなと勝手に憶測してみる。





さて下足スペースにはぶら下がり健康機、3人掛けソファ、新宿区からの表彰状などが飾られている。花の鉢植えなんかもありホッとできるスペースだ。奥にはコインランドリーもある。
驚いたのは今月中に廃業という張り紙がされていること。再開発により燃料置場が確保できない事が理由のようである。14日からは湯賃が300円となっており、廃業間近には無料解放されるようだ。
地元の梅月湯を常湯とされている方々、東京銭湯を愛する私たちにとっては寂しいが現実として受け止めるしかない。


ここから自動ドアが二つ、男湯、女湯の脱衣場に向けて 設置されており、左手の男湯側に入ると番台に親父さんが腰掛けておられる。まだお若くお元気なようであるので今後のご活躍をお祈りしたい。

すでに湯賃は300円の期間である。
番台の目の前についたてがあり、脱衣場の半分ほどは親父さんからはよく見えないようになっている。ロッカーは外壁側にずらっとならび、下の段は同じ大きさの貸しロッカー。島ロッカーも二つある。休憩スペースもありテーブル、3人がけソファがあるので脱衣場は狭く感じる。
天井は低め、しかしビル銭湯にしては高い方である。ほこりが積もっている部分もあり、壁は朽ち果てているところも目につく。長い間多くの湯客を見守って来た銭湯である。おつかれさまと声をかけたくなる。

体重計は家庭用のもの。女湯境の鏡前には漫画雑誌がうずたかく積み上げられている。
さてロッカーを確保しパパッと服を脱ぐ。
脱衣場に3人ほどの湯客、浴室には7人ほど。祝日の夜7時ほど、活気があるように見えるがこのあと1時間滞在しているうちに男湯は私だけになった。

浴室に足を踏み入れると開放感に胸が躍る。天井は高く、脱衣場よりも倍ほどの高さがある。かまぼこ型で抜け落ちたのか張り替えている部分もあったりするが女湯側だ。壁のペンキなど、剥がれているのがいい雰囲気を醸し出している。正に昭和を駆け抜けた、という感じだ。

島カランが一列、外壁より6−5□5−6(−は通路、□は島)、立ちシャワーは女湯境壁に一つ。広々とした浴室で左右カランの幅はゆったりとしているし、通路も広々だ。

カランを確保し体を洗う。
水圧が激しく湯と水をどちらも出して桶に貯めるとほぼ冷水となってしまう。また貯めた湯の中には水道管の鉄さびも見て取れる。ゆっくり水を出せばさびも入ってこないようだ。そもそもそんなに気にすることでもないが。

しっかり体を洗った後、 浴槽へ。
二つの浴槽が奥の壁に並んでいる。外壁側は広く浅い浴槽、女湯境側に深浴槽。
どちらも今日は薬湯である。とくに種類は書かれていないがグリーンの色をしている。
広い浴槽にはミクロバイブラ、そして岩盤泉の効能が貼られている。湯温は41℃ほど。柔らかく肌触りのよい湯だ。
岩盤泉は岩盤が縁に付けられていてそれに体を当てると効能が期待できるというもの。こちらは全く同じ効能(7の秘密)が私の常湯である千駄ヶ谷「鶴の湯」にもある。
バイブラの勢いはなかなか激しく、体をまっすぐに保つのも困難だが楽しく湯に浸かることができる。

続いて深い方へ。こちらも湯温は同じくらい。深い方にジェットが2基。こちらに腰掛け浴室を何気なく見渡す。女湯境の壁には1cm四方のチップタイルの洋風の湖畔。民家などよく銭湯で見るパターンのものだ。
釜場への扉の側に
「太陽建設株式会社
株式会社今井タイル工事店」
と記されている。今井タイル工事店の前にある株式会社はチップタイル一マスの中に小さく記載されているのがかわいらしい。

そしてこちらの銭湯の背景は渓谷のペンキ絵である。
濃淡による遠近感の表現法、木々の描き方などを見ると中島氏のもののようであるがかなり朽ち果てておりペンキが剥げている部分が多い。2年以上は経っているのだろうか。しかしペンキ絵というものは温度や湿度、風通しの良さなどにもより浴場により状態変化が様々なので何年かはよくわからない。いつ書かれたものも書いてない。
剥げた所からは過去に書かれた空や雲などが姿を現している。開業してからいったい何度の背景が塗り重ねられて来たのだろう。創業83年ということなので、2年に1回としても41回・・・、すさまじい歴史の積み重ねである。

女湯側には富士の絵が少し見える。
しっかりと温まった所で湯から上がる。脱衣場にも私一人で悠々と過ごせるが少し寂しい感じもある。しかし脱衣場は台形のような敷地になっていて四角四面の脱衣場を想像しているとかなり違和感があるものだ。

ついたてがあるので銭湯マップで番台とあるからと言って敬遠している女性の方などは気にせず訪れて頂きたい。何よりも今月で廃業となってしまうし、今なら300円、ラストの二日間は無料開放である。

新宿の銭湯が一つ、姿を消してしまうことになるがこちらに梅月湯という銭湯があったことをいつまでも忘れないようにしたい。



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