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2014年12月6日土曜日

--.埼玉県吉川市平沼 松乃湯

越谷に行く用事があり、すぐお隣の吉川市にある松乃湯へ。

吉川駅から徒歩7分ほど。
吉川中央総合病院の増築工事を横目にうなぎ屋や薬局を通り過ぎてあいさつ通りを進むとある。お寺の側、駐車スペースは道沿いに砂利が敷かれている2台ほどの大きさ。

窓から漏れる明かりを見てほっとする
過去にも何度か訪れた事はあるのだけれどその度に営業時間外だったり、休業日だったりで中に入る事ができなかった。
窓から漏れる明かりをみて安堵のためいき。寒さもあるのでここで湯につかれないとなると厳しいものがある。

暖簾を潜ると右手が女湯、左手が男湯。
下足入れスペースは男女それぞれ28と少なめ。
男湯の扉(開き戸)は少々力を必要とする。開くとみしっと音が立つ。
中の親父さんにご挨拶して湯賃(430円)をお渡しする。

中は地方の小銭湯といった趣で、こじんまりとしているがクラシカルなマッサージチェア、女湯境の壁に大きな一面鏡、籐籠などのアイテムが揃っている。

窓際にあるロッカーは10位と数が少ないが湯客は5名ほどであり、その殆どが脱衣かごをご利用という事で余裕がある。
ぱぱっと服を脱ぐと浴室へ。

浴室は2段式の天井で水色に塗られ清々しい。天井の一番高い部分はかまぼこ型になっている。カランは外壁側から5−2−6なのだが、この2というのが脱衣場を背にする人と窯場側を背にする形で2人が向かい合うカラン。ここを向かい合って使うのは同性同士だと気まずさが漂うはず。鏡で仕切られてもいないので。

風呂椅子は20センチほどの高さの小さめの椅子。白い桶は無地だが一つだけケロリン。外壁側のカランに腰掛けると窓の前に鉢植えが10個ほど。ランや竹などが目を楽しませてくれる。

ペンキ絵は中島氏の富士。女湯境壁にも3つのペンキ絵があり、これらも中島氏。
身体をしっかりと洗うが、このカランのレバーが絶妙に軟らかく押しやすい。また金具の隙間から湯が溢れ出ているのも親しみが湧く。

さて浴槽を巡る。
奥の壁に浅風呂と深風呂の二つの構成。
浅風呂にはバイブラもあるので浴室にはボコボコといったお決まりのSEが流れている。
まずは浅風呂から。
湯温計は45℃を指し示しているが実際は湯は軟らかく42.5℃ほど。肩までしっかりとつかりしばらくつかっていても苦ではない。
そこで壁の注意書きが目に留まる。

あたたまりすぎ、長湯はしないでください。
「守れない人はお断りします」

あたたまりすぎる、長湯、というのは言われなくてもしなさそうではあるが、この湯の心地よさを考えると身にしみてよくわかる注意書きである。

そしてこの浅風呂の外壁側には水槽があり、メダカ(赤・白)がこれまた心地良さそうに30匹ほど泳いでいる。これを眺めつつ湯を楽しむと時間の経過を忘れてしまう。

続いて深風呂へ。
こちらも湯温計は45℃。実際はそこまでないがしっかりと温まる湯。
2段の高さがあり、一段目に腰掛け湯を楽しみ慣れると、さらに一つ深い二段目で肩に近いところまで。そして浴槽の底(までつけると溺れるので)、肩まで使って歳の数を目を閉じ数える。
時折女湯境の松島の風景を見ながらいくらでも湯につかっていられる。

湯から上がると脱衣場で親父さんや常湯とされているお客の会話を聞きながらクールダウン。女湯側からは一度も音は聞こえてこなかったが、親父さんたちは「女は安売りに弱い」「男は女に弱い」「おれおれ詐欺はいつまでもなくならないなぁ」など話されている。

今季一番の寒波が襲来しているという今日という日ではあるものの、しっかりと温まっているおかげで一枚着ている服を鞄に納めて帰る。なので鞄はパンパンになってしまうがそれも仕方ない。
振り返ってみて浴室のあの注意書き、
「あたたまりすぎ、長湯はしないでください」
というのを思い出し微笑んでしまう。

趣のある銭湯である上にしっかりと温まる湯、水槽に鉢植えにペンキ絵、プチ島カラン。どれも興味深いエンターテイメント性に優れた銭湯。
また近くに来たらぜひ立ち寄りたいものである。



2009年3月1日日曜日

--.埼玉県越谷市登戸町 登龍湯






















普段は東京の銭湯を巡っているが、今日は埼玉の登龍湯を訪れた。
建物自体は普通だが、正面の「ゆ」マークがかなり迫力がある。
駐車場も広く、建物横に数十台置けるスペースがあるようだ。

下足を預け、広大なロビースペースへ。
天井は高いが、和の趣は微塵もない。フロントには若いお嬢さんがお座りになっていて、はっきりとした声で元気に接客をしている。
白く清潔で肉厚なソファがいくつも。大型液晶テレビを前にして何人もの子供達やお客樣方がのんびり過ごしている。かなり繁盛している模様。

湯賃をお渡し。
埼玉の銭湯料金は410円なのだろうか。得した気分である。
脱衣場への暖簾を潜り、右手の男湯に入る。
これがまた広大。
天井は高いが白く洋風。
屋号とは裏腹にスーパー銭湯のように広大でこぎれいである。
スパ銭というよりは巨大銭湯といった感じ。
トイレが並んで二つある。土地があるからこそできるわけだが、とにかく便利であることには変わりない。
時計も普通のものだったり、ロッカーも普通だし、便利ではあるけれど昭和を感じるアイテムは見つからない。

パパッと服を脱ぎ浴室へ。
これがまた広大。東京銭湯では到底出会うことのできない規模の銭湯である。
島カランは一列ではあるけれど、11-11-11-4。しかも外壁側に引戸があり、その先に露天風呂スペースがあるのだがそこにも7のカランがある。
となると合計44。お客もけっこう入っているため、隣り合って使用しているお客もいる。20人はいるだろう。

小学校の体育館ほどはあろうかという空間。ペンキ絵などはないので湯につかるだけではあるけれど、まずはその規模に驚かされる。

カランを確保し体を洗い始める。シャワーがボタン式で、ワンプッシュで3分は出るので困る。なのでシャワーはなるべく使わずに済ませる。
ぬるぬるした湯で、軟水である模様。しかもかなり軟水度は高し。世田谷の塩の湯が個人的には軟水度ナンバー1なのだが、それに次ぐほどの軟水度。軟水のありがたさがわからない人はこのぬるぬる感が気になるだろう。

さて浴槽へ。
これがまた充実している浴槽群。奥の壁にずらっと並ぶジェット形の浴槽。ショルダーマッサージやエステ、ボディジェット、ジェット、などなど。湯温はぬるく40℃ほど。体を刺激しながらゆったり楽しむことができる。
脱衣場寄りにはジッコウの湯。そして水風呂。
半身浴の部屋があり、ここはつまりサウナ室なのだが半身浴ができる湯船がある。マンガ雑誌を読みながらいつまでも入っているお客もいる。

そして外壁の中央寄りに五右衛門風呂。「高温」と書かれているが湯温は43℃ほどで、これが普通の湯温か。
バイブラも程々に丸形の浴槽が背中にフィットし心地よい入浴感。他のお客も高温という注意書きに恐れをなしてかなかなか入ってこないので独占できる。

露天風呂は岩風呂で、たっぷり10人は浸かれるほどの大きさ。湯温は40℃。カランが外側にあるし、壁もあるので景色は楽しめないが、外気に身をさらしながら快適なひとときである。

さて湯から上がる。
五右衛門風呂のおかげでしっかり体は温まっているが、これだけの充実した設備の中で立ちシャワーがないのが不思議である。なくてもさほど困らないが、東京銭湯では9割型設置されている立ちシャワーであるから、この規模の銭湯にして、それがないのは実に謎である。埼玉に立ちシャワーがないのは常識なのであろうか。まだ一つしか訪れていない段階で結論を出すのは早いだろうが気になるところである。

この付近にはイオンレイクタウン店がオープンし、いずれスーパー銭湯も完成するとのこと。そうなるとこちらの営業も厳しくなるかもしれないが、お手軽料金でこれだけの軟水、これだけの浴槽を楽しめるのはかなりお得。
ぜひまた訪れてみたい銭湯である。
ただ、昭和の伝統銭湯が好きな自分にとってはどこかしら虚しさの残る入浴時間であった。やはり和の趣というのは銭湯にとって重要なファクターのようである。ただ湯に浸かるというのであれば充分内風呂で事足りる訳なのだから。

2009年1月27日火曜日

76.世田谷区池尻 月の湯

今日は電車での移動。
仕事帰り、池尻大橋で下車する。

目指すは月の湯だ。
南口を出て、246号からささくれの様に伸びる測道を進み、サンクスを越えて左へ。

栄養学校が左に見えると月の湯は右手の緩やかな坂の下にある。ここまで4分。


やや高台から銭湯の全貌が拝める。

千鳥破風の立派な出で立ち。左手には松の木が伸び、その奥には庭があるようだ。男湯はこちら側だろうか。
月の湯オリジナル暖簾が迫力のある書体でお出迎えしてくれる。

改装されフロント形式に生まれ変わった様子。
下足を預け、中へ入ると二人ほどが休めるコンパクトな休憩スペースがあり、正面にフロント。笑顔豊かなメガネの若旦那がお相手してくれる。

スタンプノートを見て、「あと少しですね、がんばってくださいね」
とのお言葉を頂いた。
左手に入り、ロッカーを確保しているとまた旦那さんが登場して、
「庭には池もあり鯉もいますんでどうぞ見ていってください」
ともおっしゃられた。

脱衣場の天井は高く、折り上げ格天井。
床の木の艶も深みがあり落ち着きあるもの。
窓が大きく、わずかに凹凸がある古いガラスだ。一定の平面でないところがまた良い。

その向こうは庭が広がり、池がある。
そこに泳いでいるのは立派な鯉。
全長60cmはあるものもいる。
中には尾びれが長く、ひらひらと優雅に泳いでいる鯉、ヒレ長錦鯉(wikipedia)も見える。
少々窮屈そうではあるが、皆これだけ大きく育っているところを見ると幸せにやっているのだろう。

縁側に出て左手にはお手洗い。
さぞ古めかしいお手洗いかと思いきや、改装され異世界の如くきれいな洋式便所。
また、お手洗いに向かう途中でセンサーに反応し、チャイムが鳴る。そして明かりが点く。何の演出かはわからないが、おそらくお手洗いを利用している人がいるかどうかを把握されたいのが理由だろう。

体重計はHOKUTOW。それほど古くはないようだ。
あと目を引くのはうさぎ薬局と書かれた大きな温度計。

パパッと服を脱ぎ、浴室へ。
大型の浴室だ。島カランは一列で6-5-5-6の構成。立ちシャワーは一基。
お客は6人ほどいらっしゃる。平日の8時台だがなかなか賑わっている様子だ。
しかし女湯の方からは物音がしてこないので、誰もいないのではと思う。

カランを確保し、体を洗う。
湯がぬるいというか冷たいほどで、しばらく放出していてもなかなか熱い湯は出てこない。
シャワーはしっかりとした湯が出てくるのだが。

さて浴槽を攻めよう。
大きく分けて二つの浴槽。広めの浅風呂には打たせ湯、寝風呂、ハイパワージェットである。
鉄の籠があり、備長炭が入っていると記されている。
湯温は42℃ほどで柔らかい心地よい湯だ。

打たせ湯は外壁よりのくぼみにあり、しかしどうやら壊れている模様。
他のお客が打たせ湯のしたに背を付けるが、それはそのくぼみの座り心地が良いというだけで、決して打たせ湯を利用しようとして座る訳ではないようだ。

その隣に備長炭の籠。そしてハイパワージェット。
これは一穴の強力なジェット。深めになっており、自由に体を動かしてジェットを当てることができる。

寝風呂は奥行きがあまりないので、書いてある通り寝るわけにはいかないが体育座り程度なら可能。水枕はあるものの、機能していないのは残念なところ。

設備的に少しメンテナンスが必要なようだ。

湯は素晴らしいので体はしっかり温まっている。ここで立ちシャワーでクールダウン。
立ちシャワースペースには鶴のタイルがある。二羽が寄り添いこちらを見ている。

さて、続いて深風呂へ。
薬湯になっており、マゼンタ色の湯だ。
湯温は44℃。湯温もちょうど良く、柔らかい湯に薬湯。これは最高のコラボレーションである。

背景を仰ぎ見る。
その立派なペンキ絵は女湯境に富士山が位置し、裾野が広がっている。手前には湖。ヨットもたくさん浮かんでおり、松の木も何本か。
字は書かれていないが松の木の描き方、緑を描くハケの使い方などから見て中島盛夫師の作品に思える。

富士を従える青空は浴室天井の青へとつながり、二段式の天井自体が自分を包む大きな空のように思えてくる。

何度か薬湯と立ちシャワーを行き来し、体の芯までしっかり熱を入れる。
気づくとお客は自分一人となっていた。
女湯側から相変わらず物音が聞こえてこないし、どうやら今現在この浴室には自分しかいないようだ。なんと贅沢な空間の使い方であろうか。

設備的に残念な部分もあるが、何よりも池に鯉、熱意を感じる若旦那、富士山に折り上げ格天井、見るべき物は数多くある深みのある銭湯だ。
なぜ月の湯というのだろうか。
そんなことを考えながら、湯から上がり鯉を眺めながら火照った体を夜風にさらす。
答えは見つからなくてもいい。
ああでもないこうでもないと、勝手な憶測をつけて過ごすことが楽しいのだから。

旦那さんに挨拶をして表へ出る。
緩やかな坂道の下に、昭和を越え平成の今日に至るまで、長いこと池尻の街の変遷を見守って来た銭湯。ぜひまた湯に浸かりに来たいと思わせる、名銭湯であった。


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