2008年10月31日金曜日

36.四谷 蓬莱湯

四谷の蓬莱湯へ。

11月が近づき、寒さが段々増してきている。

仕事が終わり、会社の外へ出て寒さに身を震わせると、つい湯の温かさが頭に思い浮かぶ。
そして今日もまた、新しい銭湯との出会いがある。

蓬莱湯の蓬莱とは、「古代中国で東の海上にある仙人が住むといわれている山。」(wikipediaより)とのことだ。

小学生のとき、クラスの女の子の実家でやっている中華料理屋の名前が蓬莱軒だった。
縁起のいい名前なんだろう。












立派な唐破風の出で立ち。
目の前には四谷保育園がある。
そして、入口の両端にコインランドリーがある。
男女で分かれている訳ではなさそうだが、ひょっとしたら自然と男は左、女は右のように利用者は分かれるのかもしれない。













牛乳石鹸の暖簾をくぐり、左手の男湯へ、

下足の木札はかなり少ない。何十人もお客が入っているとは思えないので、おそらくは持って帰られてしまったか、壊れてしまったんだろう。

音がガラガラと響き渡るがかなり滑りのよい引き戸を開け、番台へ湯賃をお支払いする。
番台の板はくぼみがあり、小銭が転がり落ちないようになっている。自然とそのくぼみへ小銭を納める。

番台のおじさんはなかなか楽しそうに仕事をしておられる。
テレビは女側にあり、それを見て機嫌がいいのかもしれないが、鼻歌を歌ったりなんかしている。

脱衣場の天井は高い。
格子で木目がつやつやと光輝いている。多少板が歪んでいるのが年季を感じさせる。
アナログ体重計があり、keihokuのもの。クラシックなローラーむき出しのマッサージ機もある。壁の目の高さには扇風機。
天井からは棒が伸び、天井扇風機が付いていた後があるが、今はその羽が取り外されてしまっている。

外壁側のロッカーが見物で木製で横広のものだ。かなり大きなロッカーで年代物のようだ。自分のような若輩者が利用できるような代物ではない気がする。
ここは大人しく二列ある島ロッカーを利用することにしよう。こちらはオーソドックスなロッカーだ。

下足の木札を床に落とし、すぐには拾い上げずにロッカーを開けたり荷物を置いたりなぞしていると、後から入ってこられた外国人の背の高いお方がそれを見つけ拾い上げようとしてくれた。
すかさず礼を言い自分で拾い上げる。
なんと優しいお方だ。

さて、パパッと服を脱ぎ浴室へ。

浴室の天井はさらに高い。
光源が手前の蛍光灯しかないということもあり、天井に近づくにつれその光が弱くなっていき、ぼんやり照らし出される天井がさらにその高さを感じさせる。

カランは8-6-6-8。
両端の奥側にはシャワーなし。
お客は5人ほどだ。
うち一名はさきほどの外国人のお方だ。

やたら椅子の数が少ない割に桶のストックは多い。桶は「蓬莱湯」と書かれた黄色のものでケロリン桶の大きさと同一か。

カランの一つを確保し、体を洗い始める。

全体的に年を経て設備は痛みを見せているが、まさにそれが魅力的である。
放置されたような不潔感はない。長年利用されてきた証を所々に見ることができる銭湯だ。

特に鏡の痛みが激しくそれに映る自分の姿は崩れて見える。
まぁ的確に反射されても仕方がないほど毎日付き合っている自分の姿なので、今さらじっくり観察したいとも思わない。

湯船は二槽で半円形。中央には釜場への木戸がある。
杉並の小杉湯も釜場への扉が木戸であったがなかなかここが木戸の銭湯には出会わない。

浴槽右側は深風呂。
こちらの浴槽には誰も入っていなかったのでまずは入ってみる。
湯温は42℃ほど。ジェットが二ヶ所から噴出しているが威力は弱い。

泡立ちが少ないせいもあり、湯垢が目立ってしまっている。
それを外国人のお客が手ですくって外に出してくれる。そして自らは浅風呂の方へ入浴した。湯垢を私の為に外に出してくれたのだろうか。素晴らしい。

さて背景を見てみよう。
背景は富士山。赤富士である。しかも逆さ富士まで描かれている。何の因果か逆さ富士が描かれている駒澤大学の弦巻湯は明日で廃湯だ。
20年6月20日と記されている。なかなか新しい。
茅葺きの民家が一軒、水車が回転しているのが見える。お決まりのヨットも何槽か水面に浮かんでいる。

女湯側はどこかの湖のようだが詳細は不明。
女湯とはつながった背景でなく独立して描かれている。

男湯のみ孤立して描かれたペンキ絵を眺めていると、まるでキャンバスに描かれた絵画を鑑賞しているかのようだ。飽きることなく長い間、その景色で様々な空想を抱くことができた。

先ほどの外国人教授風紳士は口をすっぽり湯の中に沈め、体の9割9分を湯の中に深々と沈めている。瞑想に耽るかのごとく、目を閉じ静かに湯と対峙しているようだ。

さて、カランの水で少しクールダウンした後、浅風呂の方へ。

浅風呂はやや広目でジェットは三ヶ所から出ている。しかしやはり弱い。当ててはみるがマッサージ効果は弱そうだ。強ければいいと言うものでもないが。

こちらの湯温も42℃ほどかな。どちらも熱くはない。
半円形なので中央部分は奥行きがあり、全身を伸ばしても足がつかないほど。

木曜の夜9時ほど。
とても静かである。女湯側には3名ほどが利用している雰囲気。
男湯側も静か。みなそれぞれ一日の疲れを湯に浸かりながら癒している。
全体の雰囲気といい、醸し出される雰囲気は大人の空間である。

湯から上がる。
どちらもぬる湯と感じたが湯から上がってもいつまでも芯まで暖まっていた。
何かこの銭湯の底力というか魔力のようなものを感じる。

脱衣場でビン入りブルガリアヨーグルト120円を購入。
クラシックなローラーむき出しマッサージ機の側にある三人掛けソファに座り、日経新聞を広げ東証平均株価が9000円を割り込んだニュースを読んだ。

相変わらず番台のおじさんは鼻歌を歌っている。
頭を下げ外へ出る。
元気にありがとうございますとお声をいただいた。
今日は何かいいことがあった日であるのだろうか。それともおじさんの平均的接客レベルとしての行動なのか。
とにかく気持ちよくお店を出ることができた。

そういえばさきほど入浴していた外国人のお客はまさに蓬莱か。東の山の上に住む仙人だったのかもしれない。またここへ来るときお会いできたらいいなと思いつつ、新宿通りへほくほくとした身を進めることにした。

2008年10月28日火曜日

35.武蔵野北町 鶴の湯

今日はクルマで吉祥寺へ。
前から行きたいと思っていた銭湯へ向かう。

鶴の湯。駐車場付きとのことだが、細い路地に入ると確かに駐車場らしき空間はあるものの、奥にニッサンのティーダが停まっており、もし自分の車を停めたらあれは出られないだろうと思い、路地奥にあるコインパーキングに停めることにした。












ファサードは唐破風造。黄色で塗られている。
なかなかに迫力があるが、目の前の路地は狭く、離れた位置から拝むことができない。

向こうに見える煙突には「つるの湯」。入口には「鶴の湯」。どっちが正しいのだろうか。浴場組合のHPには鶴の湯だから正しいのは漢字の方か。

煙突は鶴って字を書きづらいからひらがなにしたのかもしれない。それか遠くから見ても鶴の漢字は認識しづらいからかもな。

夜、7時に到着。牛乳石鹸の暖簾をくぐる。

右手が男湯だ。
下足を預け、引き戸を開け中に入る。

番台はおじいさん。
ラジオの音が流れ、広い脱衣場に響き渡っている。

湯賃をお支払いし、スタンプ。自分で押してとのことで押しては見たものの失敗してしまった。かろうじて鶴の湯と読めるが、果たして平気だろうか。

脱衣場の天井は格子でとても高い。古く、趣がある。床も古びた木だが何年も経てきたというくたびれ感がたまらない。比較的清潔な様子である。

いくつか籠が散乱している。前の客がそのままにしたものだろうけど、全部で18個。かなり多い。きっといまでもこの籠はメインで使用されているに違いない。

扇風機が目の高さくらいの壁にあり、すぐ側に扇風機で髪を乾かさないでと書いてある。髪の毛が飛び散り、他のお客に迷惑だからだそうだ。いつも自分は扇風機で髪を乾かしてきたが、髪の毛が飛び散っているという認識はなかった。以後気をつけなくては。

アナログの体重計があり、寺岡式自動秤。貫、匁の目盛りが入っている。錆びてはいるが全体的にきれいだ。
庭もある模様。後でのんびりしよう。

さて、パパッと服を脱ぐ。
いざ浴室へ。

こちらも天井が高い。二段式でしっかり湯気抜きがされており、むしろこの季節にしては寒いくらいだ。
奥行がさほどない代わりに幅が広いようだ。

島カランは2。両端7、片方の島カランは6-6でシャワーも完備。もう一つは片側に蛇口のみ。この島カランはなんか殺風景だが、シャワーを使うのも水が無駄なのでここで十分かもしれない。

お客は5人ほど。若者がおり、最初はやかましかったが帰ったあとは静かでお客は自分を含め2人になった。

それでは体を洗うことにしよう。
カランの一つを確保し、体を洗い始める。
床は全体的にカビが目立つようだ。しかしカビも年季が入っており、昨日や今日できたカビではないので臭くはない。ここのカビはしっかり根付いたまま死んでしまったようで、こうなるともはやカビとは呼ばないのかもしれない。

浴槽は二つ。
浅風呂、正方形の深風呂。典型的な組み合わせだ。王道といっていい。
浅風呂にはジェット二基、赤外線もあるようだが明かりは灯っていない。
ガリウム石温浴泉の能書きがあり、奥の壁に檻。石が入っていてどぼどぼ石に湯があたり、そして浴槽に流れ込んできている。

ん?檻の中に石とともにカエルが座っている。しかもかなり大きい。
これもガリウム石なのだろうか。湯温は43℃ほど。湯温計が故障しており、35℃を指している。表情は普通。なんか見られているようで少しだけ落ち着かない。

それにしても湯が柔らかい。肌触りがいい。カランの水も冷たく、浴槽で十分に暖まってからのクールダウンが最高の心地だ。

次は深風呂へ。
バイブラで湯温は浴槽下で浅風呂とつながっていることもあり、ほぼ同じ。やや熱いくらい。

さて、ペンキ絵を拝むことにしよう。奥利根川 早川 二十年四月四日。と記述がある。

奥利根川は初めてペンキ絵としてみるが、松があり、しぶきがあり、岩がある。全体的に違和感はない。女湯側には富士山が見える。うらやましいとこだ。

そして素晴らしいのがペンキ絵下にある章仙のタイル絵。これはほんと素晴らしい。
鯉が滝を上っているところで11尾いる。あと鴨に鶴。ん?鴨が悠然と泳いでいるところを見るとここは滝ではないのか。

そしてタイルの一つがくりぬかれ、亀の像がある。湯口のようだ。亀の口に穴が開いているのだ。
その口からは湯は出ていないがもし出ているなら深風呂に流れ込む位置だ。

さらに女湯境の壁にはやはり章仙作のタイル絵。
三ヶ所にある。
タイル絵があると浴槽にぐっと品が備わる気がしないでもない。

何度も水を浴び、そして浴槽への往復を繰り返した。
お客も少なく、自由に湯を楽しむことができた。なんてシアワセなんだろうか。

湯から上がると番台はおばあ様に変わっておられた。
女客と話し込まれており、最近の若者について話をしている。いろいろ聞き込んでいるようだが向こう側にいるお客は銭湯マニアかな?

そんな中、自分は庭を拝見させていただく。
手入れがよく行き届いており、縁側も広く心地がよい。池はないが大皿に水が貯まっている。金魚は・・と期待したもののいないようだ。

ビンコーラ90円を購入。ばあ様は虫眼鏡で新聞を読んでいる。
この銭湯はじい様とばあ様の暖かい笑顔が印象的だ。いつまでも失われて欲しくない銭湯。
じい様とばあ様は不老不死で元気で番台に上がり続けてほしい。

廃湯となる日がいつか来るのか想像するとそれだけで切なくなってしまった。
たまたま今日、駒沢大学の弦巻湯が10月いっぱいで廃湯となることを知り、センチメンタルな気分であったのだ。

それに加え、脱衣場の蛍光灯が少し暗く、音が全く流れていない。じい様はラジオを聞いておられたが、ばあ様は無音。
そして脱衣場のロッカーの上に放置され埃が積もった風呂桶やシャンプーなどの常連グッズ。
それもまた、感傷的にさせる要因の一つなんだろう。

いい湯でしたとばあ様に声をかけ、外に出た。
鶴の湯は柔らかい湯を提供してくれる、そして番台の温かい笑顔が心地よい、武蔵野の伝統的銭湯であった。

2008年10月27日月曜日

34.千駄ヶ谷 鶴の湯

今日はおふくろのマンションがある千駄ヶ谷へ。

一泊させてもらうため近くの銭湯へ向かう。時間は23時少し前といったところ。鶴の湯は23時半までが営業時間のようだ。早歩きでグリーンモールを抜ける。
99円ショップがあり、郵便局が見えてくる。

その先に鶴の湯は居を構えている。













敷地内にコインランドリーもある。
破風造に雰囲気も高まるところだ。暖簾をくぐり、右手の男湯へ。
正面の傘置きがよく置いてあるスペースにはチラシを置くスペースになっている。
さて、下足を預け、戸を中へ。

女将さんの大きくはないが、丁寧な「いらっしゃいませ」に気を良くしつつ、湯賃をお支払いする。

一応閉店時間を確認。23時半とのことだが、24時を回ると掃除をさせていただきますが、それでもかまわないならどうぞ入ってらっしゃってくださいとのこと。

それを聞いて、のんびり湯を楽しもうかと気分にゆとりが出てくる。

さて、天井はそれほど高くはないが、格天井で、木材のいい色がでている。天井扇風機がとても古そうで、止まってしまってはいるが、今にも動きそうな感じである。ちなみに女湯側も止まっている。

振り子時計が立派に男女境の壁に張り付き、すぐその下には気持ちよいほどの笑顔で大黒様。

お、外には庭があるではないか。縁側もあり、池もある。金魚も泳いでいる。
これは湯上がりはここで牛乳でも飲みながら風情を楽しむとしようかな。

女将さんが鍵をくれた。
「ロッカーは鍵ある?」とのことだが、たくさん鍵は付いていたが、とりあえずいただくことにする。
その鍵は縦長ロッカーの鍵で、上着を畳むことなくぶら下げることができる程度の大きさ。ただ、ハンガーは付いていなかったが。

パパッと服を脱ぎ浴室へ。
お客は5人ほど。年齢層は若めで30代、40代といったところ。

正面にどーんと富士山。素晴らしいが、珍しく湖や海などの「水」が描かれていない。これはホントに珍しい。今まで入浴してきた銭湯でペンキ絵があって水が描かれていなかったのは初めてじゃないだろうか。しかも富士山に水がないってのは変な感じだ。

でも、迫力はあるので問題なし。しかし、水は湯船の水とつながるイメージなので重要なものと感じていたが、水を描かなかったことになにか意図はあるのかな。
答えは闇の中だが。

外壁側は大きめの窓がならんでおり、昼間は採光が良さそうだ。
女湯側は建物が建っており、窓があっても光は入ってこないだろうな。男湯側には庭もあるし、窓から光も入るし、男でよかったと感じる銭湯かもしれない。

浴室の天井はかなり高い。脱衣場の高さよりもグンと高い気がする。
浴槽は二つ。深風呂、ジェット二基、赤外線が緑のライトがひとつ。

体を洗い、まずは浅い風呂のジェットから。
湯の温度は・・・これはなかなかのアツ湯。44℃ほど。
それでも万才湯ほどではないが。
ジェットを背中に当て、じっくり湯を楽しむ。
あ〜極楽。
そういえば「あ〜極楽の銭湯史」というのを最近テレビでやっている。全四回だ。銭湯の歴史を学べて面白い。

それはさておき、しっかり火照った体を立ちシャワーで冷ます。
立ちシャワーは二基完備。

さて、次は深風呂だ。
浅風呂が44℃ほどで、こちらはもっと熱いかと思ったが、かなりぬる湯状態で41℃ほど。誰かが水を埋めたのかな?それともこちらはぬる目の設定にしているのだろうか。
しばらく浸かっていると奥の方がどんどん湯温が上昇してきているのを感じる。うむ、もとはアツ湯だったのだろう。よしよし、がんばって熱くなれよ。

さて、30分ほど浴室にいると、徐々にお客が入り、混みだしてきているのがわかる。
この時点でお客は10人ほど。
もう閉店時間は過ぎているのに増加しているというのはなかなかお店側のことを考えないお客が多いもんだ。って自分も遅い時間にやってきているから人のことは言えないな。

さて、ここで女将さんが戸を開けこちらに顔を出し、「お兄さんお兄さん」とお呼びになっている。私のことか。
聞くと、お財布を落としたでしょうとのこと。お客が番台に持ってきてくれたそうだ。私のロッカーの前にあったそうで、声をかけてくれたそうだ。これは助かった。
届けてくれるとは素晴らしいお方だ。
また、番台という形式も少なからずいい面を出したかもしれない。フロントだったら財布拾っても番台の目がないだけに持って行かれてしまいそうだ。
いやいや、それでもそのお方は届けてくれたかもしれない。とにかく素晴らしいお方だ。

しばらく湯を楽しみ、上がると女将さんからお財布を受け取り、そのままビン牛乳100円を購入。お財布の中身がなくなっていないか調べてくれとのことだが、もちろん問題なし。まぁ1000円くらいしか入ってなかったし、そんなに心配はしていなかったのだ。

庭では池を金魚が泳いでいる。
牛乳を飲みながら、金魚を眺める。
池は始め静かな状態だったが女将さんが電源を入れてくれたのかちょろちょろと水が岩を伝って流れてきた。

脱衣場を見ると12時を回っているのにお客が入ってくる。
浴室には10人以上のお客がいるではないか。
なんと盛り上がっていることか、土曜夜の鶴の湯は。若めのお客さんが多いようである。

女将さんに頭を下げ、外へ出る。
すっと暖簾はしまわれたが、それでもお客が入って行くのが見えた。
この辺の住民にとても必要とされている銭湯であるようだ。
湯も熱めで心地よく、庭も楽しめる。これはかなりオススメな千駄ヶ谷の銭湯であった。


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2008年10月25日土曜日

33、高円寺北 小杉湯

高円寺の銭湯、小杉湯ヘ行った。

杉並の銭湯は一つも行ったことがないので、ちょっと狙っていたのだ。
車で向かうが、銭湯マップによるとなかなか駐車場付きの銭湯がない。杉並のしかも高円寺辺りだと道も狭いだろうし、難しいだろうなぁ。

そんな中、小杉湯にターゲットを絞る。
駐車場付きだとのことだけどどうかな。

早稲田通りを進むと目的地周辺に到着。
しかし案の定狭い道の連続で、後少しのところで断念してコインパーキングに駐車。

降りて歩いて行こう。
すると、すぐ近くに「ゆ」のマークとチカチカの照明がある。
よくランプを点滅させているベランダがあるけど、そんな感じのチープな点滅。
「なみのゆ」だ。
煙突が立派で、なぜかライトアップされている。
迫力あるなぁ。光を当てると。
また今度来てみよう。

目の前の狭い路地を歩いて5分ほど。
「小杉湯」に到着。












おお、狭い路地の目の前に立派な唐破風造。
す、素晴らしい。
光の当たり方もまた妖艶でよろしい。
右手にはコインランドリーが見える。

駐車場は路地を出たとこにある模様。
1時間30分まで利用できるみたいだ。今さら車に戻るのも面倒なので、今日のところはこのままコインパーキングを利用することにしよう。














暖簾は錦鯉。とても和であり、上品である。牛乳石鹸の暖簾とは趣が異なるなぁ。












改装したてのようであるけど、単なる壁ではなく、とても雰囲気を大事に破風造を魅せることを意識して正面を設計している。これは気分が高まるってもんだ。

さて、錦鯉暖簾をくぐり抜け、下足を預ける。
右手から中に入るとフロントがあり、左手に女湯。右手に男湯。
奥はロビースペースで漫画本がずらっと並び、銭湯ギャラリーと書かれている。
絵が何枚か飾ってあるようだ。

そして、自然回帰水を飲むことができる場所がある。
コップもあるが、ペットボトルなんかに自由に汲んで持ってかえっていい様子。
ふ〜む、まずはフロントの女将さんに湯賃をお渡しする。
とても丁寧にはっきりと接客をしておられる。好感が持てますな。

さて、脱衣場へ。
こちらはなかなか天井が高く、格子の天井。焦茶色でとても渋い雰囲気だ。
体重はデジタルで、マッサージ機も新しいものがある。
設備は新しいが、そこかしこに歴史を感じるものがちらほら。

しかし人が多いことよ。
金曜の夜9時過ぎ。
脱衣場には5人ほどだが、中をのぞくとカランが一つ飛ばしで埋まっている。
しかも若者が多い。かなり活気がある様子だ。

負けてはおられん、パパッと服を脱ぎ捨て、いざ浴室へ。

中はとにかくきれい。
床のタイルは白くまぶしいほど。天井は二段式で薄いブルー。全体的にそこまで大型銭湯ではないんだけど、清潔だからか広く感じる。

しかし空きを見つけるのが大変だ。
カランが空いていると思っても入浴グッズが置いてあったりする訳で、これは一苦労だ。

ぶらぶらしつつ、カランの数をチェック。
6-6-6-6-2の構成。2は座位置が高くなっているもの。体の不自由な方にお譲りくださいと書かれている。
そして脱衣場よりに二基の立ちシャワー。半個室になっており、思う存分シャワーを浴びることができる。

やっとこさ空きカランを見つけ、体を洗う。
周りは20代が多いようだが、やかましくない。
とはいえ、みんな何人かで来ているようで話をしているわけだが、適度に静かに話をしている。スパ銭のお客とは品質が違うものよのぉ。

さて、浴槽のチェックだ。
外壁に沿ってL字型の構成。
まず手前から水風呂、そして広めの浴槽がミルク風呂、アツ湯の浴槽、そしてツボマッサージ浴槽、ボディジェットと、ボディマッサージ(丸形)がある。
これは贅沢だ。

とにかくミルク風呂が印象的。
都内ではここだけと注意書きがある。
そうそう、ここはいちいち注意書き、能書きが多い。
しかし、読むのは楽しい。ちょっとうるさい感じがするものの、まぁ努力が感じられるしいい湯につかってるんだなという気にもなるし(ほんとにいい湯なんだが)、一石二鳥くらいは行くだろう。

さて、どこも混んでいるので、まずは空いているツボマッサージから。
これは座ってジェットを背中の各所のツボに浴びせることができる。水枕が冷たく心地いい。
湯の温度は42℃くらい。ややぬるめか。

次はボディジェットコーナーへ。
こちらは深風呂になっており、じっくりジェットを味わえる。二基とも♪のボタンを押してスタート。
体が飛ばされるほどの強烈なジェットである。
やりすぎると内出血をしたりする。
丸形のボデイジェットも心地よい。ここのは丸が大きいので、少々体が太めの方もすっぽり入ることができるだろう。

さて、水シャワーを浴びて、次はアツ湯へ。
ミルク風呂は人気で、なかなか空かない模様。

アツ湯は43℃ほど。そんなに熱くは感じないが、後で見ると温度計が45℃を指していた。
しかし、そんなに熱さを感じないんだよな。それはこの自然回帰水という水のせいかな。
能書きによると平成18年度のアンチエイジングの賞を取ったとある。かなりエネルギーを含んだ水のようだ。
肌触りがソフトで優しい。とろとろではないが、お肌がすべすべになるといった感じ。あと、通常の湯より湯温が浸透して行く速度が早い気もする。個人差はあるだろうが。

さて、水風呂に行ってみる。
サウナがないのに水風呂があるのは珍しい気もするが、限られたスペースに水風呂を設置するとは素晴らしい心がけだ。
温度は25℃ほど。はっきりいって冷たくはないが、水の質がいいせいか、お肌によく作用する。これはいい。
なんどかアツ湯と往復。
アツ湯の方は湯温がどんどん上がっている。
さっきは誰かが水を埋めた後だったのだろうかな。

そうだそうだ、ペンキ絵をチェックしよう。
こちらは駒ヶ岳のペンキ絵。
平成20年3月13日とあるから、7ヶ月前くらいか。新しいぞ。

中央には空が広がり、迫力のある造形はないものの、爽快感がある。
松の木も二本、情緒豊かに描かれている。民家の屋根が一軒見えるな。ふ〜ん。富士山のように強く主張してくるものはないけど、そこが控えめで好感が持てるな。

ちらっとミルク風呂を見ると、空きスペースを発見。
ようやく味わえるぞ。

ミルク風呂は一番広い浴槽。
にごり湯のように薄く白い湯だ。
牛乳臭さは全くない。

なめらかさがあり、ぬるめの温度設定のせいもあり、長湯が心地よい。これはなかなか空かない訳だ。
浴室全体も湯煙で白く濁っている。とても心地良い銭湯だ。
20人ほどの湯客がいる中で、これだけ快適な空間を提供できるというのは完成された空間設計である証拠だ。店の人間が秩序を保ちにくることなく、湯客が勝手に雰囲気を盛り上げてくれる。素晴らしい銭湯である。

途中入れ墨の方や、金髪の方、外人さんもいらっしゃったが、それぞれがみなこの銭湯を崇めているような雰囲気がある。ただ自分が楽しめればよいという感じはない。つまり、そこにいるのはとても心地がよい。

湯から上がると脱衣場でノートにひたすら書き込んでいる方を見かける。銭湯日記なのかもしれない。

ロビーでは間接照明の中、漫画を読みふける青年が3名。うらやましい金曜の夜の過ごし方だ。
ビン牛乳110円をいただきながら、綿棒で耳を掃除(綿棒は持参)。これがまた至福の時間。

壁には昭和八年から創業してますとあり、改装の際に趣を残しつつ、がんばったみたいなことが書かれている。創業75年とのこと。これはスゴい。しかも今でも活気が全く失われていない。高円寺北という街のおかげかこの銭湯の持つポテンシャルの高さか。たぶんどちらもだろう。

フロントを見ていると、男客の若さだけでなく、女性客の若さも目立つ。かわいい子が結構来ているな。ばあさまには申し訳ないが、正直なところやはり若い女性客にも銭湯にはたくさん足を運んでもらいたいもの。

杉並、かなりいい街だ。

帰り際、自然回帰水をゴクリ。
とても飲みやすい。おいしい水です。

2008年10月19日日曜日

32.赤堤 月見湯温泉

今日は近くの銭湯へ。

奥さんも一緒なので車で行く。近場の駐車場付きで訪れていない銭湯だとレビランドがある。さっそく向かってみる。

10分ほどで到着。しかしこの辺は道が狭い。一方通行も結構あるので注意が必要だ。
しかしレビランド周りには駐車場がない模様。銭湯マップにはあると書いてあるんだがなぁ。
よく探せばあるのかもしれないが見当たらないので近くの月見湯温泉へ。

銭湯マップによると、駐車場はないが前から行ってみたかったので行くことにする。
近くのコインパーキングに車を停め、入り口へ。

千鳥破風が改装された入り口の向こうに見えかくれしている。













下足を預け、正面にある屋号をパチリ。













和であって和でないような、大陸の香を強く感じさせるフォントである。

さて中にはいるとフロント。白くきれいなムートン調のカーペットにゆったりとしたロビーが広がる。ドリンクケースは二つもあり、アイスもある。

左手の男湯へ。
脱衣場は広々。ロッカーも多くあり、ロッカーを手前にして背面と外側の間を休憩スペースにしてある。縁側もあり、うねりのある細い樹が生えている。

居心地はなかなかいいな。
さて、服を脱ぎ、浴室へ。

そこに拡がるのはとにかく巨大な浴槽群。

一面、浴槽である。

じっくり観察したい気分をこらえつつ、カランへ。
カランは19。
浴槽が大きいだけに、壁の周りをコの字型にカランが取り囲む形。
外壁側にはサウナ室、水風呂があり、こちらは増築されたようである。その増築スペースにはカランが5つあり、サウナ・水風呂往復客には使い勝手が良さそうな位置にある。

体をしっかり洗い、浴槽をひとつずつ攻めようか。

まず奥、背景の手前には月見湯温泉がある。こちらは透明な湯。正方形の浴槽で温泉が楽しめる。湯温は低めに設定されており、40℃ほどなのでじっくり温泉成分を体に染み込ませることができる。
とろみはないが、肌がつるつるになるような気分。極楽極楽。

次は巨大浴槽へ。
こちらは普通に入るスペース、ジェット二基、ボディジェット、電気風呂がある。
湯温は41℃ほどで、泳ぐことが可能なくらい広い。実際、少年二人が泳いでおり、それはそれで鬱陶しいが、気持ちはわからないでもないのでぐっとこらえることにする。

ジェット二基には水枕があり、これがまた素晴らしく冷たく心地よい。
望むとすれば、向きが背景を向いていればのんびりと景色を楽しむことができたのだが・・。

さて、もう一つの浴槽。こちらは高温槽である。
とくにそう書かれてはいないが、入ってみると43℃ほどと、なかなかの湯を楽しむことができる。しかもここからの背景はとても見晴らしがよく、心地よい時間を過ごせる。

背景はチップタイル。1.5センチ平方ほどのタイル画整然と男女ブチ抜きであり、中心に神々しいまでの巨大な富士山である。手前には海が広がり、松があり、町人が一人いる。
チップタイルなので遠目から見るのが一番よい。やはりこの高温槽から見るのがいいようだ。

充分に体が温まったところで、すぐ隣の水風呂へ。
23℃ほどの水風呂は立派に温泉である。
やや土色をした水で、ライオンの口から次々と水が流れ込んで、そしてオーバーフローしている。これは贅沢。

ややぬるい気もするが、十分に体はクールダウン。

とても気分が良い。
時間は10時ほどで相客は10人ほど。
年齢層は若めで30、40代が中心といったところ。なかなかに活気はある模様。
少年二人が帰った後はこの月見湯温泉の雰囲気にしっかりと浸かることができた。

さて、肝心の月見であるが、カラン上の壁にかかるライトが月のように見える。まんまるであり、いくつか並んでいる。
まぁそういう目で見ると風情があるというもの。楽しみ方は個人個人ある訳だ。

湯から上がり、ロビーにて奥さんと合流。
ラムネを100円で購入し、テレビではお笑いをやっている。

女湯の方のチップタイルでは町人三人が描かれているということ。
ふむふむ、見てみたいものだなぁ。

ちなみに女湯の方ではバスタオルを体に巻いて入ってきたお客がいたようで、湯船に浸かるその直前までバスタオルを体に巻き、バスタオルを淵に置き、そして湯に浸かったそうである。
なんともまた恥ずかしがりやな女性だろうか。

ちなみにその方とロビーで一緒になったけど、なかなか若かったような雰囲気。あまりじっくりは見なかったが。

まぁ、それはさておき下高井戸の住宅街に温泉が湧き、そして銭湯料金でいつも疲れる幸せ。この近辺の住人達はそんなメリットともにこれからの暮らしを楽しめる訳だ。
どうにもうらやましい限りである。

2008年10月13日月曜日

31.豪徳寺 鶴の湯

今日は体育の日だ。
なので祝日。

天気も秋晴れで心地よい。そんな中、自転車で豪徳寺へ向かった。
時間にして30分ほど。
豪徳寺商店街では「沖縄まつり」をやっていて賑やかだ。

目的の鶴の湯はそんな豪徳寺商店街の中にある。




















煙突は太巻きのように太い。
あれは23メートルあるのかな。いやないな。
となると現役で使用していないのか。よく見れば煙突が倒れたりしないように短くしているようにも見える。













招き猫の風鈴あり。
さすがに豪徳寺は招き猫で有名だからな。

中に入ると透明の下足入れ。
靴を預け、フロントで湯賃をお支払い。
恰幅のいいお兄様である。
正面にテレビが設置してあり、ソファとドリンクケースがある。
このテレビはフロント用といった感じだな。

左手が男湯。
脱衣場にはお客がたくさん。
沖縄まつりのせいか、休みの4時くらいが混むのか、なかなか活気のある様子。

天井は格子でそれほどたかくないものの、とてもきれいで気持ちがよい。
境には普通の時計だが、下にだるまがお座りしている。

ささっと服を脱ぎ、浴室へ。
中型銭湯といったところか。

島カランがあり、6-6-6-7の構成。
天井は高く、心地よい。壁側を拡張して立ちシャワースペースにしている。でもこの立ちシャワー、5基あるうち2基は使用できず。

さてさて体を洗い、浴槽へ行こう。
浴槽は3つ。
右から「スーパージェット」、「ボディマッサージ」の浴槽。
そして「ポイントマッサージ」、何も書かれていないスペース、「うきうき風呂」、そして二段ほど上がって増築されたスペースに「薬湯」の浴槽だ。

まず「スーパージェット」から。
なんか早そうな名前だなぁ。
湯温は43℃ほど。なかなか温かい。
♪マークの付いたボタンを押すと、激しいジェットが出てくるもの。
かなり激しく、手すりをつかんでいないと体勢をキープするのがつらい。
まぁ、でもすぐ飽きてしまう。
次は「ボディマッサージ」。
これは中延の「松の湯」にもあったけど丸形のくぼみにはまってジェットを浴びるもの。
ここにしゃがむと熱い湯と泡に包まれなかなか心地よい。泡がきめ細かいので柔らかい肌触りとなっている。

さて、立ちシャワーで体を冷やし、次はポイントマッサージ。
水枕があり、コの字型のくぼみに体をはめ込みジェットを体に当てる。うん、これも気持ちよい。しかし水枕は機能していない模様。

次は何も書かれていないところだが、ここは普通に湯を楽しむところだろう。
しかしこれだけあると、ここにいるのが物足りなくなる。

ではつぎに「うきうき風呂」へ。
これはかなり幅が狭く体一つを入れるのがやっと。
♪マークを押すとバイブラが出てくる。
それで体が浮くという訳だが、確かに少し浮く。
しかし全体的に浴槽の奥行きがないので、足をまっすぐ伸ばすのが困難なところが残念。

次は二段上がり薬湯へ。
今日は「健美泉」とある。漢方のようだ。
湯温は39℃とかなり低く抑えられており、長湯を楽しむ仕様。
さて、背景を見るとしよう。
ここは「陸中海岸」とあり、早川氏のサインがある。「平成15年10月10日」とあるので5年ほど経過している。すこしはげてきているが、まだしばらく行けるだろう。

薬湯のすぐうえに窓があり、柿の木が見える。座っていると見えないが。

お客は終始10人前後いて、なかなか賑わっている。まつりかなぁやっぱり。

時代の流れに敏感に反応してきた銭湯なんだろうな。
しかし設備は充実しているが、サウナ室と水風呂がないのでその手が好きな人には多少物足りないか。
設備を充実させようとしているだけ、サウナ、水風呂がないのが寂しい気がする。

豪徳寺商店街はなかなか元気。おだんご屋にかなり魅かれたが、晩ご飯も近いのでバスした。また来た時に買ってみよう。

2008年10月12日日曜日

30.上馬 栄湯

今日は10月12日。世田谷風呂まつりの日である。
これを知っている世田谷区民がどれだけいることか・・・。

とりあえず、二子玉川から自転車で三軒茶屋方面へ。

246をずっと上り、栗の湯を通過し、駒沢大学を通り過ぎる。

すると、右手に斜めに入る道があるのでそこを入ると中里商店街。
そして、コンビニ(サンクス)が見えたところで右を見ると立派な唐破風造の銭湯がお目見えする。「栄湯」だ。












時間は7時くらい。
お客は何人いるだろうか。
風呂まつりの日なので多少多いか。
下足の空き状況をみると、118あるうちの30くらいが使用中。
いや、しかしこれは壊れたかなくしたかしたかもしれないのでどうかよくわからない。
しかし、女湯の方はほとんど鍵はついている。

さて、番台裏の傘入れがよくあるところには何もなく、チラシ置き場になっている。
そして傘入れは下足に入りますと書いてある。
どれどれ、と見てみると下足の奥に丸い穴があいており、傘が入るようになっている。
試してみたいがあいにく傘を持ってないのでまた今度。

22番に靴をしまうが、こちらには奥に丸い穴があいていなかった。

脱衣場に入ると「いらっしゃいませ〜」と親父さんの声。
湯賃をお支払いすると、スピードくじをどうぞと言われる。
世田谷風呂まつりは独自にスピードくじがあるのだ。
神社のおみくじのような箸が入った筒を渡され、それを振り箸をだす。
どうやらはずれのようだ。
「ゆねこタオル」をいただいた。
これは中延の松の湯でもいただいたな。多くあって困るものでもないのでありがたくいただいておこう。

脱衣場を見渡す。これは広い!
中央にロッカーがなく、テーブルが一つあるのみであとは板張りのきれいに輝いた床が広がっている。
道場とは行かないまでも、かなり余裕のある広さ。
天井の高さもあいまって開放感が凄まじい。

男女境にテレビ。その下に招き猫がお座りしている。
ロッカーは壁側に30のみ。
ロッカーの上に「31〜50のロッカーは特に盗難が多いためご注意ください」の注意書きが書かれた札がある。う〜ん、今は撤去してしまったロッカーなのかな。中央には痕跡がないので、番台から見えない位置に置かれていたものだろうか。

奥にはソファがあり、居心地の良さそうな休憩スペースあり。

ちょうど、30あるロッカーの前にじい様達が3人ほどいらっしゃって隙間がないので、しばし休憩。

窓の外はすぐ壁で、「非常口」と書かれた扉が外にあり、壁に「今」と白い字で書かれている。これは何を伝えようとして書かれたものだろう。そんなに古いものではないのでいたずら書きかな。そんな思案を巡らしていると、どうやらロッカー前が空いたようで、服を脱ぐ。

ロッカーは大きめで、開けると男達の汗と湿気の匂い。
う〜ん、これは結構どこの銭湯でも臭う香りだ。

ぱぱっと服を脱ぎ、浴室へ。

おお、広い!
島カランが中央に一つあるが二つあってもいいほどの横幅の広さに一つ。かなり余裕のある広さ。
奥行きも十分で天井も高く、とにかく開放的な心地よさ。圧迫感が全くない。
ペンキ絵のせいもあるだろうし、壁の白さ、淵の青の色、どれをとっても抜けるような心地よさだ。

よく見ればどこも新しくきれいという訳ではないのだが、空気が吹き抜ける感じがある。

う〜ん、しばし呆然とした後、カランへ。
むむ、女湯境側は9つもカランがあるぞ。

体を洗いつつ、床を見るが丸い模様のタイル。継ぎ目がないのか、よく見る四角いタイルと違い面白い形のタイルだ。

では浴槽へ。
右が深風呂。
左が広めでジェット三基を備えている。
ということで二層なんだが、深風呂のバイブラによってボコボコになった湯がどんどんオーバーフローして浅風呂の方へ流れて行っている。

浅風呂はオーバーフローしていないので、どのみち湯の量は変わっていないようだが、けっこう見ていて迫力がある。景気がいい。

ではまずはぬるそうな浅風呂から。

湯温は44℃くらいかな。深風呂に湯温計があり44℃を指しているが、どうやら同じくらいの模様。
少し熱めなものの、肌触りがソフト。とても優しいお湯だ。だからかあまり熱さを感じない。
今日はラベンダー湯で二つの浴槽ともラベンダーの色と香りが充満している。
これが優しさの原因かもしれないが、おそらくこの湯自体が素晴らしいのだろう。

ジェットの一つに背中を当てるが、かなり元気のないジェットで背中を付けるとまったくジェットが出なくなってしまった。
まぁいいか。

立ちシャワーがないので、カランで何度もクールダウン。
この水もまた心地よい。
水の中に鉄が混じり込んでいるが、地下水なのだろうか。
それとも単に水道管の錆かな?
でも冷たく気持ちよいのでどちらでもかまわない。
周りにお客もいないので何度も水をかけることができる。
どうやらお客は自分の他に二人だけの模様。
それぞれ一列を独占状態だ。

では次は深風呂へ。
こちらはとにかくボコボコしている。
熱そうではあるが、足をそろそろと付けてみるとそうでもない。
体も出来上がっているし、湯の柔らかさもあって熱さが気になることは全くなかった。

ラベンダーの香りに湯の肌触りを存分に楽しむ。
何度も水をかぶり、湯に浸かり、を繰り返す。

体を洗いに出ようかなと思いつつも、また湯に入りたくなり深風呂に舞い戻ってしまう。
いやぁ極楽だ。

背景は富士山。
男湯の方にあり、女湯側の方はよく見えないがあちらにもあるのだろうか。

それと、女湯との境にあるタイル画も素晴らしい。章仙の印はないので違うようだが、それでも壁一面に素晴らしい山と河の景色。ヨットも緻密に描かれている。
ぜひ目の前のカランをゲットしたいところだ。

小一時間、じっくり湯を楽しむ。
その間訪れるお客はじい様ばかりであるが、基本的に体を洗わず、簡単に湯で流す程度で浴槽にやってくる。
う〜む、昔は気にならなかったが自分がしっかり洗ってから入るようにしていると、とても気になってくる行為だ。

みなさん体が清潔であるのだろうと思い込むことにし、ここの湯の良さばかりを頭に詰め込みつつ浴室を出る。

ドリンクケースにはリンゴジュースなどがあるが、珍しくビン入りコーラがある。これが80円。安い!
自ら栓を抜き、飲み干す。
なんか薄い気がするが、これはコカコーラなのかなホントに。

それはさておき、とてもすばらしい銭湯だ。
設備や能書きなど、飾りっ毛がないところがまた懐の深さを感じる。
湯の良さを全面に感じてしまうな。

近くにあればしょっちゅう来たいところだが、さすがに自転車で20分となると・・・。
でもまた必ずやってきたい、そんな気になる素晴らしい湯を沸かす銭湯であった。

29.御徒町 燕湯<登録有形文化財>

今日は休日である。
昼から銭湯に行こうと思う。

向かう破東京メトロ銀座線上野広小路駅 徒歩4分の燕湯。

登録有形文化財に指定されている銭湯だ。

上野広小路を降り、松坂屋を左に見ながら、4分歩くと建物の前に到着。













松の木が建物の左右に生え延びている。松にしてはまっすぐ天に向かっている。暖簾をくぐり、下足入れが左右にある。
正面、番台の裏には傘入れでなく植木がある。
右手が男湯だ。




















シンフォリカルポス(雪晃木)が傘入れのあったであろう番台裏に飾ってある。

脱衣場へは意外にも自動ドア。

女将さんのが元気に「いらっしゃいませ」と声をかけてくれる。
この燕湯の番台の女将さんはとにかく最高である。よく動き、左右に目を配り、世間話をしながら機敏に湯賃を受け取っている。
時おり、脱衣場に来ては床をモップで磨いている。
素晴らしい。

外に見えた松は洗面所へ行く扉の向こうに生えている。しっかり地面はコンクリに覆われているが元気なようだ。

脱衣場の天井は高い。飴色に鈍く輝いている。
天井扇風機の後があるが取り外されており、代わりに壁に大型扇風機、中型の背が高い扇風機が一台ある。

お客はかなり多い。
脱衣場に7人ほどいる。

テレビもないので女将さんとお客の話す声がよく聞こえてくる。昔のままの銭湯の姿がここにあるような気がする。

体重計はデジタル、柱時計もなく普通の学校の教室にあるような時計だ。
趣はないものの、体重計や時計が役割を果たし終えた為に新しくなったんだろう。

服を脱ぎ、浴室へ。
中型の大きさで奥行きは感じられないが天井はかなり高い。
三階まで空間が広がっている。
三階の窓から明かりが取り込まれているが一階外壁にある窓の外はすぐ建物なので明かりが入ってこない。
少々暗く感じるが、壁は青く塗られておりきれいで清々しい。

まだ昼12時だが蛍光灯が点いている。

島カランはひとつ。
お客は10人ほど。
シャワーのあるカランは左右の島カラン以外だが、混んでいるので島カランへ。体を洗い、浴槽へ。

外壁側には高い岩壁。三メートルはある岩壁だ。
武蔵野虎の湯の岩壁のようである。あそこまで全面岩に囲まれていないが、似たような形の岩でごつごつしている。

湯が岩の高い部分から湯が流れ落ちていた形跡があるが、今は流れていない。一番下の部分からちょろちょろ流れ出している程度。

浴槽は二つ。右は広めで浅い。ジェットが出ていないので水面は流れ出す湯でわずかに揺れる程度。

湯温は熱めで45℃。
泡など出ていないので水面は湯口から出ている湯によって少しゆれる程度。
静かに長湯ができる。

立ちシャワーがないのでカランの水を何度も浴びる。
さて深風呂へ。

こちらはバイブラがかなり激しく噴出している。湯温は45℃。しかしブクブクわきだす泡のおかげで体感温度は上回る。

蛇口が取り去られているので水を埋められることはない。
ぐっと湯温をこらえていると、みるみるうちに湯温が上がり46℃になった。

では壁を見上げて背景を拝んでみよう。

背景は富士山。
背景に岩が溶け込む形になっている。
20.3.19と書かれている。

お客を見てみると、地べたに直接座っている客や、墨を入れたお客、なかなかディープな湯客が多そうである。

外国人もいるかなと思ったが自分のいる間には遭遇しなかった。

さて、帰るとするか。
どうもと女将さんに声をかけると元気よくありがとうございましたとお返事をいただいた。
毎日会いに来たくなる、そんな気持ちのよい女将さんだ。

建物は長い間、国に守ってもらえることができるので安心だ。
できれば銭湯全体が有形文化財に登録されれば喜ばしい。
もっと多くを願うならば、世界遺産に銭湯が登録されればいいなと思う。

2008年10月11日土曜日

28.戸越 松の湯

金曜日。
しかも今日は10月10日(銭湯の日)だ。

こんな日はやっぱり銭湯へ。
歌舞伎町で開かれている銭湯ナイトにも興味があったけど、う〜ん、銭湯をサブカル的に楽しむのはさておき、自分は単に湯を楽しみたいので今日のところは銭湯ヘ行こう。

いつか行ってみたいイベントではあるんだけど。

奥さんを引き連れ、大井町線中延駅で降りる。
降りるとすぐ右手に第三京浜が走っており、少々長い信号待ちの後200メートルほど直進ですぐ松の湯に着いた。駅近銭湯だ。













到着時刻は9時。
立派な破風造がお出迎えしてくれるが、せり出したコインランドリーと玄関に覆われ、少し控えめな様子。
これがなかったらかなり迫力あっただろうな。

さて、入口から入ろうと下足を脱ぐと右手には立派な坪庭。












これはアートだな。光の当たり具合といいじっくり鑑賞したい庭だ。
ガラスの手前の床も小石が敷き詰められていて演出が素晴らしいのだが、ほうきが倒れていて美観を損ねていた。これを見て少しほっとした。
やはり街の銭湯なのだからなにもそこまで追求することはないのだ。

入口をくぐると右手にフロント。
左右に脱衣場の入口がある。
フロント前にロビー。
世田谷のえのき湯と広さといいそっくりである。

左手が男湯だ。これは日によって変わるみたいだ。幸か不幸か。まぁどちらにしろ新しい発見がある訳だから期待に胸躍らせつつ湯賃をお支払いし、中へ。

脱衣場はきれいな模様。
天井扇風機はなんとおしゃれな洋風型。ゆっくり優雅に回転しておられる。
天井は青空に雲の壁紙でさわやかである。
これは破風造には似つかわしくない光景だなぁ。改装されて破風屋根が奥に行く気持ちもわかる。
境にある時計も今風の普通のもので、たぶん柱時計が昔はあったんだろうけど(かなり強引な憶測)いつの日か止まってしまい長いその歴史の幕を下ろしたんだろう。
そういう想像を膨らまして勝手に懐かしむのも一つの楽しみだ。
しかし、その場にいるとまさに昔の光景が呼び起こされるような気がするのである。
これは歴史のある街やなんかに趣いた時もそう。
当時の人が往来する様子や声や建物やなんかが肌で感じられる。
まぁ答えはないので、ほんとにひとりよがりなものなんだけど。

さてさて服を脱いで浴室へ。
ロッカーの鍵は腕に巻き付けるタイプ。
しかし混んでいる。
お客が7人ほどテレビを見ながらまったりしている。

今日は銭湯の日だからか、金曜の夜だからか、活気がある銭湯なのだからか。
たぶん全部当てはまるだろう。

体重計はHOKUTOWのアナログ。しかしとても新しい。こりゃつい最近ご購入したものだろう。若手だ。

浴室の中へ。
こちらも混んでいる。パッと見て10人ほどが金曜の中延の湯を楽しんでいる。
カランが少ないせいかな、空きを探してしばしうろうろ。
銭湯グッズが置かれたりしているので、少し時間がかかる。

やっと見つけ椅子と桶を置く。
桶は白くて広めの無地のもの。風呂椅子は大型のものと通常サイズのもの二種類。
外壁側は通路になっていて、島のは二つ。5-5-5-4。
境の壁にあるカランはハンドシャワー完備。しかも右端のシャワーは湯温調節機能付きでカランが壁で仕切られている。
水シャワーを出す時に冷たい水がお隣に飛ばないようにとのことだろう。
そして全身シャワーブースが一つ。

ハンドシャワー完備のカランを確保し、シャワーを使うもこちらがかなり良好。
きめの細かい噴射だ。
そして湯も水もばっちり。
冷やさないと熱い程度のお湯と、かなり冷たい水。
なので湯を作るかいがあるってもんだ。慣れてくると湯を作るのも早くなってくる。
しかしどれも新しく工夫を感じるので使い勝手がよい。

体を洗い、浴槽巡りへ。

まず右手から。薬湯があり、次は寝風呂・電気風呂の浴槽。そして深風呂でジェットとボディジェットとなっている。ここから外壁側にサウナ室があり、水風呂を中央に脱衣場側に檜露天だ。

なんとも設備が充実している。

まずは銭湯の日ということでラベンダー湯から。
網にラベンダーの花びらがたくさん入っており、湯はうっすら黄土色だ。
香りもするが、天然のラベンダーがそのままってところがいい。粉だと色がむやみについてしまってなんか作為を感じるんだよな。

湯はぬるめ。41℃といったところだ。
湯温計も新しそうで、なんか信用できるな。

さて、水シャワーでクールダウンしようにもぬるく体があったまってないので、続いて隣の浴槽の寝風呂へ。
こちらも湯温は同じくらい。よく見れば底から3つの浴槽はつながっている。

寝て浸かってみるが、水枕がない。こりゃ首の辺りの座りがあまり良くないので長湯できず。
しかし、正面に脱衣場のテレビが見えるのでなかなかよろしい。
脱衣場との間にあるガラスが曇ってないのもいいな。

さてさてすぐ隣の電気風呂へ。
こちらの電気は弱いような気がするも、座ろうとするとドクンドクン来る。すごいなぁ、ってことで足だけ当ててしばし背景を眺める。
おぉ!(気づくの遅い)
これは立派な富士山。しかも状態がきれいでまるでタイル絵のようだ。
青空に白い雲に波たつ海が絶妙なコントラストを生んでいる。
早川氏かな?
「南伊豆 20.9.22」とある。
なんと書かれてから3週間ではないか!
これはラッキーだ。何の情報もなく飛び込んだ銭湯がペンキ絵書き立てとは。
こりゃ引きの強さを感じる。
そして外壁の方に坂道があり、そこを曲がって上ってくる感じでバスが見えている。うむ、ペンキ絵でバス初めて見た。

あ〜幸せだ。
さて、まだ体は温まらないのでとなりの深風呂へ。
こちらはジェットバスとボディジェット。
ジェットバスはかなり強烈なジェットが主にある。これを背中に当てしばし湯を楽しむ。
続いて、隣のボディジェット。
一人分やっと入れる丸形のボディジェットで、入っているというよりは「はまって」いるという感じ。少々こっぱずかしい。

さすがに少し体もあったまってきたので水風呂ヘ行ってみる。
2人がゆったり入れるくらいのサイズで温度は18℃を指している。
ボコボコ手前に泡が出ている。
水風呂でジェット。これが余計に冷たく感じられていいんだよなぁ。
さて、入ってみるとさすがにこれはいい。
水道水ではないな。
そういえば、この銭湯はすべて温泉を使用しているとのこと。
主浴槽のみならず、この水風呂、さらにはカランの湯・水、シャワーの湯までもが温泉。
井戸水みたいなものなんだろうけどありがたみが100倍だ。

黒湯ではないので少々派手さはないものの、体に染み込んでくる感じはある。

水風呂からサウナ室のテレビを覗き見ることができる。
覗き見るというと悪いことをしてるみたいだが、そういう設計で窓を設置しているようなので正統的な視聴スタイルなんだろうな。

さて、体もクールダウンできたところで、隣の檜露天へ。

引き戸を開けると外気が冷やっと体を舐める。
心地よい。
東京23区の露天ということもあり壁で覆われており、天井のみ抜けているだけなので、開放感はさほどないものの、空が見える・外気を感じるというだけでそれは立派な露天なのである。
今日は曇で時折雨もぱらついている中、気持ちよく湯に浸かる。
湯温は43℃。ぬるいかと思いきや、なかなかいい感じだ。
蛇口がないので誰も埋められないのがいいのだろう。
しかもバイブラのようにボコボコ泡が全体的に噴出している。
じっくり座っていられないくらいだが、できないこともない。
これは快適。
なんどか水風呂と往復。
ちなみにこの露天からもサウナ室のテレビが覗き見できるのは設計の素晴らしさだ。野球でどうしても見逃したくない場面でもここから見ていられる訳だ。

そういえば今日は巨人が優勝を決めた。
阪神と最大13ゲーム離れていたのをひっくり返したのだ。
そういえばフロントのお兄さんも野球を見ていたが、ニヤついていた様子。
G党なのかな。

たっぷり一時間強も楽しみ、湯から上がる。
どこもきれいだし、狭さが心地よく、スーパー銭湯のように無駄に広い中を歩きまわる必要もない。坪庭の用に芸術的な狭さだ(褒めてます)。

金曜の夜で混んでいると言っても10人強。とても過ごしやすかったのだ。

フロントで奥さんの上がりを待つ間にスーパードライ250円。
お兄さんはとても接客がよろしい。
どこぞの番台でNintendo DSをやっていた兄さんとは大違いだなぁ。そういえばあれも屋号が松の湯だったような。

奥さんがしばらくして登場。
女湯には寝風呂でなく浮風呂があったとのこと。なんだそれは。かなり怪しい、奥さんが
(ちなみにうちの奥さんは銭湯ファンではないので確証はない。また今度確認に来てみよう)。
露天は岩風呂で坪庭が拝めるとのこと。それはいいな。
女湯側のペンキ絵には岩礁があり、こちらにはバスがあったというと驚いていたが、確かに自分も驚いた。まぁバスの大きさは小さかったんだけど、存在感はあったな。

さて、家までの帰り道、温泉のおかげで芯まで温まった体は、電車に乗って20分の二子玉川までしっかり持続された。これが地元の湯屋であったなら素晴らしいなと中延住民に激しく嫉妬しながら、寝床につくのであった。

2008年10月7日火曜日

27.三軒茶屋 千代の湯

仕事の帰り、三軒茶屋 千代の湯へ。

田園都市線三軒茶屋駅を降り、世田谷通り出口から外へ。
そのまま246沿いを歩くと右手に開けた土地が。駐車場の向こうにぼんやり煙突の陰が見える。
お、銭湯だ。

時間は19時で夜なわけだがそれにしてもこの土地は暗い。
恐る恐る中に入り、前に進む。

小さな子が夜中に歩いたら軽くトラウマになりそうだ。
さて手探りで駐車場を進み、手すりとポールが立つ幅一メートル半ほどの隙間を抜ける。
するとパレードコーヒーという化石化している自販機が立ちはだかっている。
その脇を抜けるとどうやら銭湯入り口にやってきたようだ。














そこで機械的な女性の声で『いらっしゃいませ』もう後にはひけない。
とにかくトタンに囲まれ、さながら秘密基地のようである。












右手が女湯。左手が男湯。傘入れがよく鎮座している番台の真裏のポジションには自販機。こちらは現役の自販機だ。
さて、入り口をくぐる。
番台。女将さんがいらっしゃる。
脱衣場はいろいろ物があり窮屈に感じるが中くらいの大きさ。元気に天井扇風機が男女両方回転している。立派な柱時計が境にあり、すぐ側にある大きな熊手はとても華やかだ。

テレビも境にあり、音も出ているが、なにかここは静かな気がする。
女将さんはたまに女湯側のお客と世間話をしたり、天井扇風機も回っているが、どことなく静かだ。

すぐそばを246が走っているのに、この静かさ。やはりトタンで覆われているせいだろうか。
単なる静けさと違う、何かうさぎの穴にいるような、深いビーカーの底に沈殿した物体になった気分だ。

KEIHOKUの体重計に、旧型マッサージ機が一つ、比較的新しいマッサージ機が二つある。
さて、服を脱ぎ浴室へ。

お客は他に3人。
うち若手(40代以内)が二人だ。

浴室は広さはなかなかあると思うが、閉塞感を感じる。
それは壁際奥にサウナ室がこしらえられ、浴槽スペースが随分はしょられてしまっているからだろう。
しかも壁際に全身シャワースペースが一基あり、個室のようにしっかり区切られている。
余った壁際スペースの手前側はなにやら用具入れのようになっており入れない。

過去はここら一体がすべて開けていたかと思えば広い浴室であると想像できる。

カランは壁際が4。しかしいきなり一つの蛇口が引っこ抜かれており使えない。
4-5-5-7なので、カランは少なめ。やはり、過去の改装で縮小されたんだろうな。

さて、体を洗い浴槽へ。
浴槽は狭いながらも2層あり、浅いものと深いもの。
浅い方は少し広めでジェットが3基。
熱そうな湯がこんこんと湧き出ている。
ガリウム石が檻の向こうに鎮座しており、例の如く石和田教授のお名前で注意書きがある。ほんとよくみるなぁこれ。

湯温計があり温度はなんと「53℃」!
まさかなぁと片足を恐る恐る突っ込むけど、やはりそこまではいかない。
44℃くらいかな。
沸き出してる部分に温度計があるのでそこら辺はそれくらいあるのかもしれない。

さて、あったまってから全身シャワーでクールダウン。
ここはご丁寧にも湯のひねりがもぎ取られており、水しか出すことができない。

さて、次は深風呂。
こちらの方が熱いのかと思いきや、こちらはややぬるめで43℃。

自然と正面の注意書きに目がいく。
「節水 あつ好きの方のために水をうめたら止めてください」
ふむふむ、これは気の利いたお達しだ。
無神経にどばどば水を埋める人がいるからなぁ。
少しはこれで遠慮してくれるってもんだろう。

それから背景を仰ぎ見る。
こちらは渓流の流れを手前に松が2本見え、女湯との境に大きな富士山。
麓からの眺めか富士山は随分遠くに見えるようだ。
なかなか新しそうなペンキ絵。ただ日付等は書かれていない。

さて、再びクールダウンの後、サウナへ。
こちらのサウナは無料。
こりゃラッキーだ。
スチームサウナと書かれたサウナ室へ。
中は3人ほどが入れる大きさ。
入口の温度計は55℃を指していたが、いやこれはもっとあるぞ。
鼻に高熱が入り息ができない。
苦しいが、小窓から背景を眺めつつ、修行開始。

う〜む、さすがに気持ちよい。汗がドバドバ出る。
そんな中、注意書きが目に留まる。
「お○っこをしている方を見かけたら番台まで」
なぬ、そんな輩が過去にいたのか。
そう感じると、このサウナ室がそのような匂いで充満しているような気分に包まれる。

う〜む、落ち着かなくなってしまいすぐ外へ。

お客は既に他に一人になってしまっている。
しかしあの若者、私が浴室に入ってからずっと体を洗っているな。

さて、湯から上がりテレビを見ながら天井扇風機の下で涼む。
1010のNO.94が出ている。いただき。
そういえば間もなく銭湯の日だな。
その日は飲み会があり、銭湯に行けないかもしれないが、銭湯好きになって初めての銭湯の日なので抜け出してでもいきたい。
先着でスピードくじだのあるとこもあるし、ちょっと気になる。
仕事が休みならなぁ。

女将さんにあいさつをし、暖簾をくぐり外へ。
いや、トタンにまだ囲まれているので外に出たという感じではない。
トタンを抜け、路地に出ると飲み屋が集中しているとこだ。
246の反対側。かなり渋い裏路地。
こういった場所にこのトタン銭湯は合っているかもしれない。
いつまでもしっかり千代の湯をトタンには守っていただきたいものだ。
そういえば、あの女将さんは千代さんって名前だったのかな。
女将さんでないにしても誰かから取った屋号なんだろうな。
そんな勝手な憶測を楽しみつつ、駅へ向かうのであった。

2008年10月1日水曜日

--.東大井 朝日湯

大井町の駅で銭湯を探す。
平日の5時だ。

今日は銭湯に行く予定ではなかったが、仕事も早く終わり、しかも大井町線が人身事故でストップしているので帰るに帰れない為銭湯マップを広げた。

この辺だと、末広湯、東京浴場、朝日湯といったところ。
どこにしようかなぁと考えていると末広湯は本日お休みで東京浴場は少し歩くので、ここは朝日湯にいくことにした。

JR東口を出て左へ。
LAOXの目の前の通りをしばらく歩くと左手に朝日湯だ。
途中に横丁が広がっており、かなり興味をそそられる。
昔職場の先輩が横丁好きで小便横丁や思い出横丁あたりに何回か連れて行ってもらったものだ。

しかしまだ空は明るいので、雰囲気は夜になってからよくなる感じ。
さて、朝日湯に入ろう。












破風造の構えは近づくとよくわからないが、改装される前は立派であったのだろう。
入口だけを見るとそうでもないが、中に入ると昔の匂いが漂ってくる。

右手が男湯。
改装されているので、フロント形式かなと思ったが銭湯マップにも書いてある通りここは番台。
やはり銭湯は番台がいいと思う。
自動ドアをくぐり脱衣場へ。
おや、自動ドアとわかりやすく書いてあるものの、なんか動いてないようだ。
女湯の方もずっと空きっ放し(中は見えない)。
電源を切ってあるのかな。

湯賃をお支払い。
親父さんはぼーっとしてるようだ。
タオルしか持ってないので石鹸を購入。
手ぶらセットも買う。
これでタオルが二枚になってしまうが、手ぶらセットの石鹸はどうみても少なすぎるのだ。

今はスタンプノートを浴場組合に提出中なのでない。
また朝日湯に来た時に押してもらうことにしよう。

天井はかなり高い。
けど、横幅は狭い気がする。
行ったところだと、駒沢大学駅の弦巻湯に近い。
けど、朝日湯の方が奥行きがゆったりしている。

立派な天井扇風機がぶら下がっている。
女湯にもあるけど、女湯の方は快調に回っているのに対し、こちらのはピッタリ止まっている。
天井は格子で白壁に茶色の格子といういかにも趣きのある天井だ。
液晶テレビが女湯との境にあり、麻生党首の所信表明がよくなかったという話題をやっている。

パッと脱ぎ、いざ浴室へ。
やはり縦長だ。
カランが両端に8。
島に7−7。
つまり30か。
30と聞くとすごい多いような気がするけど、島にはシャワーがない。
今日は手ぶらセットなのでゴミ箱近くの手前の壁側へ。
外壁側は分厚い正方形のブロックガラス。たまにステンドグラスのように色がついている。おしゃれだ。
どれどれ、体を洗いながら周りを見渡すとお客は8人ほど。
なかなか入っているではないか。ほとんどはじいさまだが、中には30代くらいの方もいらっしゃる。
それでは浴槽へ。
ここは二層で左が正方形の深風呂。右はジェット3基付きの広めの浅風呂だ。
ではまず右から。

むむ、ちと湯は熱め。44℃くらいかな。いやぁでもこれくらいは何てことない。万才湯(田町)の深風呂に比べたら。

ジェットの一つに背中を当てる。
おや、赤外線が二つついているが点灯していない。点灯していない赤外線を見るのも珍しいな。親父さんつけ忘れてるのかな。

湯に浸かりながら背景を見上げてみる。
おお、湖かな。西伊豆かな。
しかし富士山は見当たらない。
なんか目線に富士山が飛び込んできたような記憶はあるのだが気のせいだろうか。
まぁ富士でなくとも立派なペンキ絵。
これでお湯を楽しみながら素晴らしい景色を楽しむことができる。

ここは天井は青色のペンキで塗られており、背景から空がつながっているようで全体的に明るく感じる。しかも、背景は大体1面で終わっているんだけど、ここはL字型に背景が1メートルほど外壁側に続いている。
こりゃ書く方も大変だろうな。
L字になってるところはどう書いたんだろうね。

では全身シャワーがないのでカランの水を何度も浴びクールダウン。
この水が非常に冷たくて心地よい。井戸水か?

続いて深風呂へ。
こちらは浅くなっている一段目の面積が非常に細く、しかも欠けていて丸くなっているので危ない。
薬湯にして中が見えなくなってたら・・・。一見さんは要注意だな。しかも子供は危ないね。
泡がちょぼちょぼでているがかなり弱いので湯の底がよく見えるので助かった。

まぁそれはさておき、湯はぬるい。42℃くらいだ。
しかし、左奥の方からぐんぐん熱い湯が迫ってくる。
これはだれか水を埋めたのだろうな。

さて、浴室を見渡す女湯との境の壁にあるタイル絵がかなり素晴らしいことに気づく(気づくのが遅い?)。
浴槽からだと富士山が遠い位置にあるが、端から端まで続く立派な絵だ。右端にサインがしてあり「章仙」と書かれている。待つが何本もたつ中に富士山がそびえている絵。

章仙とはタイル絵師・石田庄太郎さんの雅号で、昭和55年頃まで書かれていた。九谷焼のものが多く、これもおそらくそうなんだろうな。
江戸東京たてもの園の子宝湯にも章仙のタイル絵があるらしい。
実家が近いので、今度ぜひ行ってみよう。

さて、タイル絵に感銘を受けたところで、湯から上がる。
お客はそのころ10人ほどにふくれ上がっていた。
なかなか繁盛しているな。

さて、帰るかと番台横を通り過ぎる時に「どうも」と声をかけるも親父さんは気づかない様子。なにか考え事をされている最中だったのかな。
これまで何人もこの大井町の飲屋街側にある朝日湯にはお客が訪れ、そして横丁に消えて行った。
自分のようなぽっと来た客など目にも入らないのかもしれない。
また今度来てみることにしよう。