京王線笹塚駅、学生の頃笹塚で一人暮らしをしていたので少しは詳しいつもりだったが栄湯の存在は知らなかった。暮らしていたのは笹塚一丁目で、栄湯のある二丁目は甲州街道を挟んで反対側にあるためあまり来ることもなかった、という理由もある。
栄湯は笹塚小学校のすぐ側、住宅街の中程にあるマンション銭湯。
入口をくぐると下足入れ。左右に分かれているが中に入ってもまだ休憩スペース。その先に進むと脱衣場である。こちらの銭湯は番台。フロントのような入口の造りではあるが、何か思うところがあって番台形式にこだわったのかもしれない。
右手の男湯へ。
番台は低いもので目線より座っている女将さんの位置の方が低い。
間口がかなり狭く、表情を伺うのも一苦労。お若いようだがよく顔が認識できなかった。しかしながらはっきりとしたお声で、明るく接客されていることは確か。
脱衣場は天井低め。明るい照明のおかげで閉塞感はない。モダンな造りだなと思ってお手洗いに入ると和式。そのギャップは面白い。
パパっと服を脱ぎ浴室へ。
湯煙で視界が悪いものの、雰囲気は最高。島カランは一列で女湯境より、8-7□7-(□は島、-は通路)。奥の壁に3つ、手前の壁にシャワー無しのカランが2つ。合計20のカランである。奥に長細く広がる浴室である。湯客は5人程。土曜の夜11:30位だが学生と思われるお客が多いようである。
立ちシャワーは二基。こちらも一面丸タイル。シャワーブース自体も丸くなっていてその空間デザインは一見の価値がある。
カランを一つ確保し体をしっかりと洗う。
床のタイル、壁のタイルも500円玉サイズの丸タイル。床の丸タイルは水色でほのかに色も異なり美しい。壁の丸タイルは色が統一されていて紺色、白、そして所々に金色という構成だ。丸タイルは趣があって優しさもあるし見ていて飽きない。和のモダンを感じるタイルだ。
さて浴槽へ。
こちらの銭湯は外壁側に浴槽が並んでいる。広い浴槽が一つと深い薬湯層、そして極端に狭い水風呂だ。外壁より外にせり出す形でサウナ室も別料金で存在している。
まずは浅く広めの浴槽へ。
座ジェットが二基と、ミクロバイブラが設置されている。湯温は41℃程。
普通の銭湯の雰囲気ながらこちらの湯は立派な温泉と認められている。無色の湯なのでありがたみは薄いが、柔らかさも感じるし、温まりも良いような肌触りの湯だ。黒湯やにごった湯と違いインパクトがないためもあって、それほど大々的に温泉を売りにしている訳でもない。脱衣場に温泉証明書が掲げられているくらいである。
せめて暖簾や突き出し看板に温泉とでも書いてしまっていいような気もするが。
座ジェットは勢いが弱めながらも水枕完備でしっかりと冷えている。位置が低めで、座った位置で水枕に頭を当てようとすると背中に当たってしまう。特に私の体が大きいから、という訳ではない。
続いてミクロバイブラへ。
久々にこれぞミクロバイブラという感じを味わえる湯。
プチプチと肌にあたり、そしてしばらく肌に泡が名残惜しそうに張り付いている。マイルドな肌触りで音も感触も二度楽しめる快適な入浴感。
外壁の外は40cm程の奥行きで建物に沿う形で玉砂利が敷かれ、木が植えられていてちょっとした庭になっている。窓が激しく曇っている(もしくは汚れている)ので美しさを楽しむ訳にもいかないのが残念なところだが趣は十分に感じる。
続いて薬湯の浴槽へ。
あつめの湯であり、湯温を保つためにご協力をお願いしますと注意書きがある。
カランの当たりは岩になっていてどこかの温泉宿に来た心地だ。今日はワイン風呂。紫に薄く染まった湯でワインの香りは感じるか感じないかほどのささいな物だが心地は良い。熱めの湯と言っても43℃ほどで飛び上がる程熱い訳でもないので長く楽しめる。
十分に温まったところで水風呂でクールダウン。
すぐ側にサウナ室があるのでこれらの往復が楽しめる。本日は別料金を払ってないので浴槽と水風呂の往復を何度か実行してみる。水風呂の水温は18℃程。こちらも温泉のようだ。つまりは井戸水と言ったところだろうが非常に冷たく感じる。
一人のみ楽しめる広さなので長く入る訳にもいかず早めに出ることにする。
湯から上がると番台の一つ外、休憩スペースのソファで一休み。
休憩スペースにはテレビやマッサージチェア(二基)、それにぶら下がり健康機もある。車の通る音もなく、静かな空間でのんびりとほてった体を冷ますことが出来る。
丸タイルの渋い浴室の空間美、そして基本を抑えた設備と湯煙が充満する温泉旅館のような雰囲気、そして渋谷で楽しめる天然温泉の湯。これらが銭湯料金で利用できるというのは実に贅沢。次回はサウナも利用することにしよう。