サミットの近くにコインパーキングがあり、車を駐車して歩く。区立南中野中学校というのがありぐるっとまわって銭湯を目指す。時間は21時過ぎ、この辺りはひっそりとしている住宅街だ。ミニバイクが後ろから近づいてくると少し緊張してしまう。
川が学校の側を流れている。この川は神田川。中野にも神田川があるのだ。銭湯といえば昔から神田川。何となく覚えているそのフレーズを口ずさみながら平和浴泉を目指す。
曲がりくねっている道を進み、商店街と思しき街並をひたすら進む。
平和浴泉は表向きは宮造り銭湯でなく、一軒家のようである。
入口をくぐるとSAKURA-Gの下足入れ。118ある。
プラスチックの札を手に取り自動ドアから中へ。
そこはフロントスペースで、ロビーにはソファが置かれており、テレビや雑誌なども見える。フロントは番台を裏にしたような位置に置かれ、脱衣場から用を聞く小窓がある。
フロントには女将さん。丁寧で明るい、さらには親しみ深い接客。常連さんのお母さんがお二人、女将さんより包み紙を受け取っている。何かのお土産だろうか。
湯賃をお渡しし、私が右手に進もうとすると「そっちは女湯ですよ」と女将さんに笑顔で注意される。そして常連さんお二人が大声で笑ってくれる。一気に場は和やかになる。
湯賃は確か420円だった。今日は奥さんも一緒なので二人で840円。都で決められている湯賃よりお安く設定していただいているようだ。ありがたい。
左手の男湯に入ると天井高く、格天井ではないが大型の天井扇がぶらさがっている。
体重計はデジタルで「エーアンドディ」の腰の高さまでのもの。
洗濯機やマッサージチェアなど、定番のアイテムもあり、全体的に昭和の匂いがぷんぷんと漂っている。格式の高さは感じないが、そのおかげで居心地のよさを生んでいる。
パパっと服を脱ぎ浴室へ。
浴室への扉にはいくつか注意書きがある。中に入っても奥の壁に注意書きが目につく。特に気になったのは「お尻を流してから浴槽に入ってください」との文字。しかも筆書きでやけに達筆。確かにお尻は流すべきだが、改めて書かれると笑ってしまう。
他にも「軽石を浴槽に入れないでください」や「イス・オケを浴槽に入れないでください」などなど。直接注意すると気まずくなるので張り紙をするのだろうけど、これだけいくつもあるとこちらの銭湯に訪れるお客の個性の強さを感じずにはいられない。
島カランは二列。外壁側は立ちシャワー二基、それにサウナ室があるだけ。その前は通路になっている。カランは外壁側から0-0-5-6-6-7。湯客は5人程。皆さん静かに湯を楽しんでいる。
浴室内には湯煙がほとんどなく、温度も低い。おまけにシャワーがぬるく、湯船に入るまでは寒くて仕方がなかった。そうはいってもしっかり体を洗い、浴槽へ。
こちらは二槽式である。広い浴槽にはバイブラ、赤外線ライト、座風呂、それに狭く深い浴槽
があるのみだ。シンプルな銭湯である。
サウナが無料であるが、掘建て小屋のようにとってつけたようなサウナ室。本当に機能しているのかどうか、入るのにしばし悩んでしまう。
まずは広い浴槽から。湯温は41℃程。柔らかく心地の良い湯だ。バイブラは控えめな程度であまりありがたみはない。赤外線ライトは二基あるので効いているのかどうかわからないが体をつけてしばし目を閉じる。
目を閉じて耳を澄ますとどこからかBGMが聞こえてくる。クラシックでなく、演歌でなく、何かの歌謡曲という訳でもないような音楽。かすかに聞こえてくるが近隣の建物からでなく、確かに浴室の中に流れている音楽のようだ。
こちらの広い浴槽には水枕があるのだが、これが5mにも及ぶ長さ。しかも適度に冷たい。残念ながら高さがありすぎるので首の座り心地はよくないが、長さだけでも一見の価値がある。座風呂にもつながっているので座風呂で水枕を試してみるが、こちらのほうが高さは合っているだろう。それでも少し高いように感じるが。
一旦シャワーでクールダウン。しかしまだまだ体は温まっていない。続いて深風呂へ。
浴槽の中で広い浴槽とつながっているので湯温はさほど変わらず42℃程。
こちらから背景を仰ぎ見るが、残念なことに真っ白な壁である。
過去には描かれたこともあっただろうが今は純白だ。背景はなくても浴室の壁には数カ所、お花のタイルが使われているので、それを見たりして時間を過ごす。
それと浴槽のタイルは古くひなびているが趣がある。湯によって鉄の色に変色しているのだ。飴色というか銅色と言っていいのか、もとのタイルの色からは想像できない程に変色してしまっている。井戸の鉄分に反応しているのだろうか。その深い色のおかげで湯にも威厳があるようだ。
天井は高く二段式。湯煙もないので広い空間がひたすら広がっている。
続いてサウナ室へ。
こちらは超低温サウナだ。赤外線と書いてあるが、夏の東京にいるよりもぬるい。
10分ほどいてもさほど汗をかかない。無料なのはいいが、二人入るのが精一杯のサウナだし、浴槽で手足を伸ばしてのんびり温まる方が数倍楽しめるように感じた。
湯から上がると休憩所で牛乳(110円)を頂く。
テレビの上に称名滝(富山県)のポスター。こちらの経営者の方は富山出身だろうか。銭湯経営者には富山の方が多いと聞くが、称名滝のポスターがあるからといって富山出身と結びつけるのはやや短絡か。
奥さんがあがって来たので女湯側の様子を聞くとマッサージチェアが4つあったとのこと。横になって使うマッサージ機もあるそうだ。見てみたいものだがそうもいかず。休憩所にもマッサージチェアが二基、こちらの銭湯はマッサージに力を入れているのかもしれない。
女将さんのおやすみなさいというお声とともに店を出る。そんな一瞬に平和を感じずにはいられない銭湯であった。
1 件のコメント:
達筆の注意書きを書いたのは私の父です。
懐かしい思い出が沢山ある銭湯でした。
残念ながら、2013.4.20で閉店となってしまいました。
下町から銭湯が消えて行く…
悲しい(T-T)
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