2008年10月28日火曜日

35.武蔵野北町 鶴の湯

今日はクルマで吉祥寺へ。
前から行きたいと思っていた銭湯へ向かう。

鶴の湯。駐車場付きとのことだが、細い路地に入ると確かに駐車場らしき空間はあるものの、奥にニッサンのティーダが停まっており、もし自分の車を停めたらあれは出られないだろうと思い、路地奥にあるコインパーキングに停めることにした。












ファサードは唐破風造。黄色で塗られている。
なかなかに迫力があるが、目の前の路地は狭く、離れた位置から拝むことができない。

向こうに見える煙突には「つるの湯」。入口には「鶴の湯」。どっちが正しいのだろうか。浴場組合のHPには鶴の湯だから正しいのは漢字の方か。

煙突は鶴って字を書きづらいからひらがなにしたのかもしれない。それか遠くから見ても鶴の漢字は認識しづらいからかもな。

夜、7時に到着。牛乳石鹸の暖簾をくぐる。

右手が男湯だ。
下足を預け、引き戸を開け中に入る。

番台はおじいさん。
ラジオの音が流れ、広い脱衣場に響き渡っている。

湯賃をお支払いし、スタンプ。自分で押してとのことで押しては見たものの失敗してしまった。かろうじて鶴の湯と読めるが、果たして平気だろうか。

脱衣場の天井は格子でとても高い。古く、趣がある。床も古びた木だが何年も経てきたというくたびれ感がたまらない。比較的清潔な様子である。

いくつか籠が散乱している。前の客がそのままにしたものだろうけど、全部で18個。かなり多い。きっといまでもこの籠はメインで使用されているに違いない。

扇風機が目の高さくらいの壁にあり、すぐ側に扇風機で髪を乾かさないでと書いてある。髪の毛が飛び散り、他のお客に迷惑だからだそうだ。いつも自分は扇風機で髪を乾かしてきたが、髪の毛が飛び散っているという認識はなかった。以後気をつけなくては。

アナログの体重計があり、寺岡式自動秤。貫、匁の目盛りが入っている。錆びてはいるが全体的にきれいだ。
庭もある模様。後でのんびりしよう。

さて、パパッと服を脱ぐ。
いざ浴室へ。

こちらも天井が高い。二段式でしっかり湯気抜きがされており、むしろこの季節にしては寒いくらいだ。
奥行がさほどない代わりに幅が広いようだ。

島カランは2。両端7、片方の島カランは6-6でシャワーも完備。もう一つは片側に蛇口のみ。この島カランはなんか殺風景だが、シャワーを使うのも水が無駄なのでここで十分かもしれない。

お客は5人ほど。若者がおり、最初はやかましかったが帰ったあとは静かでお客は自分を含め2人になった。

それでは体を洗うことにしよう。
カランの一つを確保し、体を洗い始める。
床は全体的にカビが目立つようだ。しかしカビも年季が入っており、昨日や今日できたカビではないので臭くはない。ここのカビはしっかり根付いたまま死んでしまったようで、こうなるともはやカビとは呼ばないのかもしれない。

浴槽は二つ。
浅風呂、正方形の深風呂。典型的な組み合わせだ。王道といっていい。
浅風呂にはジェット二基、赤外線もあるようだが明かりは灯っていない。
ガリウム石温浴泉の能書きがあり、奥の壁に檻。石が入っていてどぼどぼ石に湯があたり、そして浴槽に流れ込んできている。

ん?檻の中に石とともにカエルが座っている。しかもかなり大きい。
これもガリウム石なのだろうか。湯温は43℃ほど。湯温計が故障しており、35℃を指している。表情は普通。なんか見られているようで少しだけ落ち着かない。

それにしても湯が柔らかい。肌触りがいい。カランの水も冷たく、浴槽で十分に暖まってからのクールダウンが最高の心地だ。

次は深風呂へ。
バイブラで湯温は浴槽下で浅風呂とつながっていることもあり、ほぼ同じ。やや熱いくらい。

さて、ペンキ絵を拝むことにしよう。奥利根川 早川 二十年四月四日。と記述がある。

奥利根川は初めてペンキ絵としてみるが、松があり、しぶきがあり、岩がある。全体的に違和感はない。女湯側には富士山が見える。うらやましいとこだ。

そして素晴らしいのがペンキ絵下にある章仙のタイル絵。これはほんと素晴らしい。
鯉が滝を上っているところで11尾いる。あと鴨に鶴。ん?鴨が悠然と泳いでいるところを見るとここは滝ではないのか。

そしてタイルの一つがくりぬかれ、亀の像がある。湯口のようだ。亀の口に穴が開いているのだ。
その口からは湯は出ていないがもし出ているなら深風呂に流れ込む位置だ。

さらに女湯境の壁にはやはり章仙作のタイル絵。
三ヶ所にある。
タイル絵があると浴槽にぐっと品が備わる気がしないでもない。

何度も水を浴び、そして浴槽への往復を繰り返した。
お客も少なく、自由に湯を楽しむことができた。なんてシアワセなんだろうか。

湯から上がると番台はおばあ様に変わっておられた。
女客と話し込まれており、最近の若者について話をしている。いろいろ聞き込んでいるようだが向こう側にいるお客は銭湯マニアかな?

そんな中、自分は庭を拝見させていただく。
手入れがよく行き届いており、縁側も広く心地がよい。池はないが大皿に水が貯まっている。金魚は・・と期待したもののいないようだ。

ビンコーラ90円を購入。ばあ様は虫眼鏡で新聞を読んでいる。
この銭湯はじい様とばあ様の暖かい笑顔が印象的だ。いつまでも失われて欲しくない銭湯。
じい様とばあ様は不老不死で元気で番台に上がり続けてほしい。

廃湯となる日がいつか来るのか想像するとそれだけで切なくなってしまった。
たまたま今日、駒沢大学の弦巻湯が10月いっぱいで廃湯となることを知り、センチメンタルな気分であったのだ。

それに加え、脱衣場の蛍光灯が少し暗く、音が全く流れていない。じい様はラジオを聞いておられたが、ばあ様は無音。
そして脱衣場のロッカーの上に放置され埃が積もった風呂桶やシャンプーなどの常連グッズ。
それもまた、感傷的にさせる要因の一つなんだろう。

いい湯でしたとばあ様に声をかけ、外に出た。
鶴の湯は柔らかい湯を提供してくれる、そして番台の温かい笑顔が心地よい、武蔵野の伝統的銭湯であった。

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