2009年1月31日土曜日

77.世田谷区太子堂 清水湯

今日は土曜日である。
仕事は休みで、午前中降っていた雨も昼過ぎには上がり、晴れ間が覗き始めた。
雨模様の中銭湯へ行くのは少しはばかれるものだけれど、天気もよくなってくるとむくむくと湯に浸かりたいという欲望が湧いてくる。

さて、田園都市線に揺られ三軒茶屋で下車。
パティオ口を出て、キャロットタワーのふもとを北上。
釣り堀を左に見ながら、さらに北へ進み、茶沢通りに合流。
目的の清水湯へは徒歩12分ほど。

目の前が幸運なことに駐車場になっており、全景を拝むことができる。左手は道路で薪が積み上げられている。

暖簾をくぐり、男湯は右手。
引戸から中に入ると番台では娘さんだろうか。女性の番台さん。
ゆったりといらっしゃいませとお話しになる。
帰っていくお客にはおやすみなさいと言っている。
まだ4時過ぎだが・・・。

さて、湯賃をお支払いしロッカーへ。
天井やや高く、格天井。
壁には柱時計が立派に今の時間を刻んでいる。
外壁には庭へ出る為の引戸。庭には池があり、縁側には灰皿、イスが設置されている。
引戸の手前には最新型の空気洗浄機が置かれ、タバコの匂いをシャットアウトしてくれている。愛煙家にも嫌煙家に対しても、とても気配りが行き届いている。



ロッカーは竹籠をそのまますっぽり入れることができるクラシカルなものがある。これは四谷の蓬莱湯や、世田谷の第二千歳湯で見たものと同じタイプの物だ。気軽に手に入る物ではないというのはよくわかるので、出会えるだけでうれしくなる。実際利用したことはないのだが・・・。

体重計はKEIHOKU。細く、背が高いものでりりしい出で立ちだ。目盛りがシンプルでデザイン的に完成されたものだなと感じる。

パパッと服を脱ぎ浴室へ。
お客が一人もいない。脱衣場にはお二人いらっしゃるが浴室に関しては実質貸し切り状態だ。

壮大な背景は富士山のペンキ絵。
本栖湖 平成18年5月9日と記されている。
早川氏だろうか。緑を描くその筆致はとてもやさしい。
その下にはチップタイル画。こちらは洋風で、湖畔に経つレンガ造りの建物。どこかの背景に見た気がする。つい最近行った渋谷区の広尾湯だ。あちらは背景なので規模は全く違うが、本当にある建物で、それをモチーフとしているのかもしれない。

体をしっかり洗い浴槽へ。
深さの違う二つの浴槽で、両者は中でつながっている模様。
まずは浅い浴槽へ。

湯温は43℃ほど。
浅い浴槽ではあるが、底が平坦でなく二段型になっており、腰掛けるような感じで湯に浸かることになる。初めはやりづらい気もしたが慣れると快適なものである。
湯も柔らかく優しさのある湯。肌にじんわりと浸透してくるイメージだ。
かといってそれほどぬる湯でもない。

ジェットは二カ所から噴出しているが威力は弱め。
ジェットの音以外は聞こえてこない、静かな浴室である。
この浴室一杯にお客が入っていた時期もあっただろう。そっと目を閉じ、想像の世界でこの浴室を賑やかにしてみる。
そんな中、お客が一人、二人と入って来た。
現実の世界でも少し浴室が賑やかになってきたようだ。

さて、続いて深風呂へ。
湯温は同じ。ここからは女湯境にある立派なタイル画を間近に見ることができる。
「九谷 鈴栄堂 章<仙>画」。仙と書かれているかどうかはかすれていてよく読み取れないが、おそらくは章仙。
俯瞰で川を描いている。
小さな帆船が網の目のように伸びた川を往来している。
壁の端から端まで、立派なタイル絵だ。湯に浸かりながら、その迫力に感動を覚える。
43枚×5枚のタイルなので215枚。
手間がかかっている。
タイルといえば、浴室の床のタイルだが手裏剣のような模様をしていて面白い。所々剥げているのだが、しっかり補修されていて、定期的にメンテナンスされていることが分かる。仕事に対する情熱、銭湯に対する愛情を感じる。

深風呂はでんき風呂になっている。
威力は弱いがかなり近づくと、気持ちのよい電気を感じることができた。

さて湯から上がる。
番台は親父さんに変わっている。
80円のラムネを飲みながら、いろいろお話を聞かせて頂いた。
こちらの銭湯と全く同じ建設業者が大田区山王「第一京浜浴場」もしたといい、写真を色々見せていただいたが、確かに番台や引戸、その他飾りなど似通った物であった。
ぜひ近いうちに行ってみたいと思う。

親父さんが用事で釜場へ消えた時に庭を鑑賞。
すっかり外は真っ暗になっている。もう二時間近くもいるだろうか。
池にはかわいい金魚がゆらゆらと泳いでいる。

現在東京の銭湯は874ほど。
全ての銭湯を巡り終える頃にはいくつほどに減ってしまっているのだろうか。
そして自分はいくつの齢を重ねているのか。
とはいえ焦らず地道に湯を楽しみつつ進んでいこうと思う。
こちらの銭湯もいつまでも元気に心地よい空間を提供し続けていってほしい。
そう願ってやまない1月最後の夜であった。


大きな地図で見る

0 件のコメント: