2009年10月28日水曜日

129.大田区新蒲田 秀の湯

大田区新蒲田にある秀の湯を訪れた。
車で行ったのだが、100mほど離れた位置にコインパーキングがある。
民家の立ち並ぶ街並で高層ビル等はない。
車通りも少なめで、静かで過ごしやすそうな一帯だ。





秀の湯は大きな民家のような屋根をしている。
右手にはコインランドリーがあり、暖簾はオリジナルのもの。
「天然鉱泉」と書かれている暖簾だ。



男湯は右手。
下足を預け、木札を手に取る。
正面には傘立て。番台裏の天井部分には招き猫が大小二匹。お客を招き入れている。



脱衣場へは自動ドアであるが、マットを踏み重みで開くタイプのもの。昔はよくこのタイプの自動ドアも街で見たものだが、このところは赤外線のセンサーばかりである。

中から番台で話し声がする。すぐに終わるかと思われたがなかなか話も途切れないため中に入る。案の定番台前にお客がおり、私が入る事で話を途切れさせてしまう。
親父さんに湯賃をお支払いすると無事会話は再開された。

番台は低めだが衝立がされており、女湯を覗く事ができないよう完璧に視界は遮られている。番台からもよく見えないのではないかというくらい幅広の衝立だ。

脱衣場は天井高いが船底のように中央部分へ傾斜する形になっている。
厠への扉を開けるとコインランドリーへの扉もある。元はコインランドリーはなく庭か縁側かがあったのかもしれない。

ロッカーを一つ確保し、パパッと服を脱ぐ。
脱衣場には歌謡曲が流れている。親父さんの好みであろうか。
それにしても親父さんとお客さんの会話がやまない。

体重計はアナログのもので、非常にレトロ。静かにお乗りくださいと書かれているが、文字盤にメーカー名等は書かれていない。周りをいろいろ調べてみたが見つけられず。他のお客に変な目で見られだした所で調査を終了。

浴室に入ると広々と快適な空間。
二段式の天井でどちらの天井もやや丸くかまぼこのようになっている。
そしてペンキ絵も素晴らしい。「伊豆 早川」と書かれている。富士と岩に当たる波しぶきが荒々しく描かれている。

島カランは二列。女湯境より7-6-6-6-6-5。立ちシャワーは二基である。
横幅が広い銭湯で、島カランが二列でありながらもゆったりとした通路スペースが確保されている。タイルもきれいに輝いており、貝がらの内側のように光の辺り具合によってはきらきらと光っている。

体をしっかり洗うと浴槽へ。
数は3つ。
外壁側に黒湯の深風呂。
中央にバイブラ、女湯境側には座ジェットが二基ある。

バイブラから楽しむ事にする。湯温は41℃ほどでやや塩素の匂い。しかし細かい泡のおかげと早川氏のペンキ絵を仰ぎ見つつ、至福のひとときを過ごす。
座ジェットはジェットの力が弱めであるが水枕は適度に冷たい。ただ高さがありすぎるので姿勢をかなり良くしないと恩恵には預かれず。

最後に黒湯浴槽へ。
こちらの黒湯はさらっとしている。色もやや薄い気がするが肌触りはマイルド。ジェットがぼこぼこ出ており、バイブラ浴槽のように賑やかな浴槽である。
水曜日の7時から8時に掛けての滞在だったが終始お客は6人ほど。湯がぬるめのせいもあってか浴槽で長湯を楽しむ方が多く、黒湯は特に入りたくても行きづらいタイミングが何度かあった。しかし湯は最高に気持ちいいのでお客の気持ちもよくわかるのである。

さてしっかり温まった所で湯から出る。
脱衣場で親父さんとしばし会話をさせて頂く。
「こちらの銭湯は昭和12年から始めている」
「代沢でも銭湯を持っていたがやめてしまった」
「弟も銭湯をやっていたがやめてしまった」
「背景は早川氏の生前最後の作品である」
「中島氏の事は嫌いである(ケンカを良くしたとの事)」
「設備を増やすと維持費がかかるのでシンプルにやっていきたい」
などなどお聞かせいただいた。

途中、5人の男の子をお連れになっているお父さんがいらっしゃり、脱衣場は一気に賑やかになる。ちなみにそのご家族は男の子ばかりで奥さんの方は一人でのんびり湯を楽しむとの事。

最後に銭湯の親父さんは「大田区銭湯が全てなくなってもうちだけはやめない」とおっしゃっていた。笑顔で楽しそうに他のお客ともお話をされている。秀の湯は元気にいつまでも経営が続きそうな、素晴らしい銭湯である。


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