2009年1月27日火曜日

76.世田谷区池尻 月の湯

今日は電車での移動。
仕事帰り、池尻大橋で下車する。

目指すは月の湯だ。
南口を出て、246号からささくれの様に伸びる測道を進み、サンクスを越えて左へ。

栄養学校が左に見えると月の湯は右手の緩やかな坂の下にある。ここまで4分。


やや高台から銭湯の全貌が拝める。

千鳥破風の立派な出で立ち。左手には松の木が伸び、その奥には庭があるようだ。男湯はこちら側だろうか。
月の湯オリジナル暖簾が迫力のある書体でお出迎えしてくれる。

改装されフロント形式に生まれ変わった様子。
下足を預け、中へ入ると二人ほどが休めるコンパクトな休憩スペースがあり、正面にフロント。笑顔豊かなメガネの若旦那がお相手してくれる。

スタンプノートを見て、「あと少しですね、がんばってくださいね」
とのお言葉を頂いた。
左手に入り、ロッカーを確保しているとまた旦那さんが登場して、
「庭には池もあり鯉もいますんでどうぞ見ていってください」
ともおっしゃられた。

脱衣場の天井は高く、折り上げ格天井。
床の木の艶も深みがあり落ち着きあるもの。
窓が大きく、わずかに凹凸がある古いガラスだ。一定の平面でないところがまた良い。

その向こうは庭が広がり、池がある。
そこに泳いでいるのは立派な鯉。
全長60cmはあるものもいる。
中には尾びれが長く、ひらひらと優雅に泳いでいる鯉、ヒレ長錦鯉(wikipedia)も見える。
少々窮屈そうではあるが、皆これだけ大きく育っているところを見ると幸せにやっているのだろう。

縁側に出て左手にはお手洗い。
さぞ古めかしいお手洗いかと思いきや、改装され異世界の如くきれいな洋式便所。
また、お手洗いに向かう途中でセンサーに反応し、チャイムが鳴る。そして明かりが点く。何の演出かはわからないが、おそらくお手洗いを利用している人がいるかどうかを把握されたいのが理由だろう。

体重計はHOKUTOW。それほど古くはないようだ。
あと目を引くのはうさぎ薬局と書かれた大きな温度計。

パパッと服を脱ぎ、浴室へ。
大型の浴室だ。島カランは一列で6-5-5-6の構成。立ちシャワーは一基。
お客は6人ほどいらっしゃる。平日の8時台だがなかなか賑わっている様子だ。
しかし女湯の方からは物音がしてこないので、誰もいないのではと思う。

カランを確保し、体を洗う。
湯がぬるいというか冷たいほどで、しばらく放出していてもなかなか熱い湯は出てこない。
シャワーはしっかりとした湯が出てくるのだが。

さて浴槽を攻めよう。
大きく分けて二つの浴槽。広めの浅風呂には打たせ湯、寝風呂、ハイパワージェットである。
鉄の籠があり、備長炭が入っていると記されている。
湯温は42℃ほどで柔らかい心地よい湯だ。

打たせ湯は外壁よりのくぼみにあり、しかしどうやら壊れている模様。
他のお客が打たせ湯のしたに背を付けるが、それはそのくぼみの座り心地が良いというだけで、決して打たせ湯を利用しようとして座る訳ではないようだ。

その隣に備長炭の籠。そしてハイパワージェット。
これは一穴の強力なジェット。深めになっており、自由に体を動かしてジェットを当てることができる。

寝風呂は奥行きがあまりないので、書いてある通り寝るわけにはいかないが体育座り程度なら可能。水枕はあるものの、機能していないのは残念なところ。

設備的に少しメンテナンスが必要なようだ。

湯は素晴らしいので体はしっかり温まっている。ここで立ちシャワーでクールダウン。
立ちシャワースペースには鶴のタイルがある。二羽が寄り添いこちらを見ている。

さて、続いて深風呂へ。
薬湯になっており、マゼンタ色の湯だ。
湯温は44℃。湯温もちょうど良く、柔らかい湯に薬湯。これは最高のコラボレーションである。

背景を仰ぎ見る。
その立派なペンキ絵は女湯境に富士山が位置し、裾野が広がっている。手前には湖。ヨットもたくさん浮かんでおり、松の木も何本か。
字は書かれていないが松の木の描き方、緑を描くハケの使い方などから見て中島盛夫師の作品に思える。

富士を従える青空は浴室天井の青へとつながり、二段式の天井自体が自分を包む大きな空のように思えてくる。

何度か薬湯と立ちシャワーを行き来し、体の芯までしっかり熱を入れる。
気づくとお客は自分一人となっていた。
女湯側から相変わらず物音が聞こえてこないし、どうやら今現在この浴室には自分しかいないようだ。なんと贅沢な空間の使い方であろうか。

設備的に残念な部分もあるが、何よりも池に鯉、熱意を感じる若旦那、富士山に折り上げ格天井、見るべき物は数多くある深みのある銭湯だ。
なぜ月の湯というのだろうか。
そんなことを考えながら、湯から上がり鯉を眺めながら火照った体を夜風にさらす。
答えは見つからなくてもいい。
ああでもないこうでもないと、勝手な憶測をつけて過ごすことが楽しいのだから。

旦那さんに挨拶をして表へ出る。
緩やかな坂道の下に、昭和を越え平成の今日に至るまで、長いこと池尻の街の変遷を見守って来た銭湯。ぜひまた湯に浸かりに来たいと思わせる、名銭湯であった。


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